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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第十部・幻想郷探訪と、新たな敵

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第563話・神出鬼没、急いては事を仕損じる(とらぬ狸の皮算用……というわけではないけれどねぇ)

 封印大陸からの避難民受け入れについて。


 ローラさんがどうにかやって来たのはいいとして、問題はその受け入れ先と、大陸に残っている人達の移動方法について。

 前者は俺一人で考えていても解決するものではないので、ここは日本政府に打診してもらうしかない。

 そして後者については……俺が回廊を開くしかないよなぁ。

 もしくは、借りて来た箱舟を使って一度封印大陸に移動し、武神ブライガーの神殿で鍵を使って開くという方法しかないか。むしろ、こっちの方が建設的だわ、箱舟でのピストン移動となると、一体何万回往復しないとならないのか分からないからなぁ。


――大通一丁目ラティエ領・札幌テレビ城下

 という事で、急ぎ様子を見に来た川端政務官と忍冬師範を交えての、会議を始めようと思います。

 場所は札幌テレビ城下の広場、此処に簡易テーブルとか椅子を用意して、ついでにウォルトコで摘まむものと飲み物も取り寄せて。

 

「という事で、まず紹介します。封印大陸の住民の、ローラ・ギャリバンさんです。武神ブライガー神殿のある城塞都市アウズンフラの騎士団長を務めています」

『ローラ・ギャリバンだ。よろしく頼む』

「そしてこちらは、日本国防衛省に所属している川端防衛大臣政務官と、内閣府退魔機関第6課責任者の忍冬師範です」

「川端泰明だ、よろしくお願いします」

「忍冬源一郎です」

「では、自己紹介は終わったので、今後の対策について……」


 そう告げると、川端政務官が小さく手を挙げた。

 

「今後の対策も何も、我々は彼女の会話を理解できない。お前たち現代の魔術師チームは魔術による自動翻訳が出来ているのだろうが、我々には異国の会話としか聞こえていないからな」

「え、マジで?」


 思わず問いかけたけれど、どうやら本当に判っていないらしい。

 これってさ、自動翻訳機能の弊害だよなぁ。

 ということで、対策としては俺が作った翻訳指輪をローラさんに手渡すだけ。

 

「それじゃあ、ローラさん、この指輪を付けてくれますか?」

『これをつけるのか……ああ、なるほど、そういう事か』


 どうやら理解してくれたらしいので、今一度彼女も交えて封印大陸で起こった出来事……の中から、破壊神ナイアール関係の部分だけすっぱりと切り取って説明する。

 つまり魔神ダークの封印が開放されて、封印大陸が崩壊の危機を迎えている部分だね。

 もっとも、破壊神ナイアールとの戦いについては、当事者である俺とナイアール以外は知らない事実だから、それほど隠す部分はなかったんだけれどさ。


「……という事なのです。それでですね、私たちの住む大陸の住民を避難させる事が出来るかどうか、それを教えて欲しいのです」

「封印大陸の住民、約80万人か……それはまた、なんというか」

「日本国政府としては、すぐに答えを出せません。この件は慎重に進めるべきであるので」


 んんん、川端政務官なら、すぐにでも日本国政府に話をねじ込めそうと思ったけれど、そもそも避難して来た人達の住居についても準備する必要があるんだよなぁ。

 そりゃあ、一長一短で答えなんて出せるはずはないか。


「分かります。では、私も一旦、封印大陸に帰還して、責任者に状況を報告する必要がありますので。また後日……そうですね、一週間後にでも再びここに訪れる事にしましょう」

「分かりました。では、この件は一度、国会へ持ち帰るとします、その後、ローラさんの住む世界について、色々と教えて頂くことになりますがよろしいですね」

「それは構いません。では、よろしくお願いします」


 これで話し合いは一旦終了。

 川端政務官は席を外し、急ぎ東京へ向かうらしい。

 そしてローラさんは、もう一度封印大陸への扉を開くべく、祐太郎を捕まえて異界門のあった場所へと向かっていった。

 暗黒闘気で扉が開けるかどうか、試して欲しいんだってさ。

 そして次元を越える第一人者の白桃姫もついていったので、ここには俺と新山さん、瀬川先輩、そして忍冬師範の4人が残っているんだが。。

 忍冬師範が、難しい顔をしているんだよななぁ。


「やっぱり、そういう反応になりますよね……忍冬師範、どういう結果になると思いますか?」

「今回の難民受け入れの件だが。浩介、鏡刻界(ミラーワーズ)にも打診しておいた方がいい。日本政府は恐らく、この件では動かないと思う」

「あ、やっぱりそうなります? 実際に、日本政府としては人道支援という体裁で動くのが普通ですが、リターンがないので難しいですよね」


 そもそも、俺が主導でアメリカ政府要人を鏡刻界(ミラーワーズ)に連れていかないとならないんだよね。その件で日本政府も敏感になっていて、アメリカに異世界の資源や領土が奪われるのではないかと危惧している議員もいるんだと。

 ばっかだよね。

 そもそも、日本国は異世界であろうと、他国に対しての武力侵攻なんて出来る筈がない、してはいけない。

 にも拘わらず、やれ異世界の領土がどうとか、資源調査を目的にとか、そんな訳の分からない話を振って来たとしても俺が対処する筈がないでしょう。

 そして日本の外務省を通じて、俺に接触を求めているアジア諸国のみなさん。

 自力でいけ、以上です。


「あはは……乙葉くん、声に出ているよ」

「え、マジで?」


 新山さんの軽いツッコミで、俺ちゃんも我に返る。 

 うん、落ち着け落ち着け俺。


「それにしても。問題なのは、ローラさんが魔族という事ですわね。確か乙葉君の説明では、封印大陸に住む住民は全て魔族という事でよろしいのですよね?」

「ん~と。元々封印大陸に住んでいたのは神人で、魔神ダークの眷属が魔族で。その魔族は魔神ダークの封印時に、鏡刻界(ミラーワーズ)の魔大陸に幽閉された……っていうことなので、多分、彼女は神人っていう種族になるんじゃないかなぁ。城塞都市アウズンフラには、普通にレストランや喫茶店もあったように記憶があるんだけれど」


 実は、この辺りの記憶ってすっごく曖昧になっているんだよなぁ。

 破壊神を倒しに行った辺りは覚えている、でも封印大陸の歴史とかについての話は、不思議と記憶から消えていった感じがするんだが。

 そもそも、封印大陸って神界とも呼ばれていて、俺みたいな普通の人間が行っていい場所ではないんだよなぁ。そう考えると、この記憶の薄れゆく状態ってさ、神の摂理なのかもしれん。


「こ、浩介、それってつまり、彼女たちは神の眷属っていうことなのか?」

「え、また俺の考えが声に出ていましたか?」

「いや、さっき『神人』っていう説明をしただろう」

「ああ、そういう事で……えぇっと、ちょいと待ってくださいね……って、直接聞いた方がいいんですけれどね」


 そう説明してから、ローラさんたちの方を見ると。

 うん、祐太郎と白桃姫が手を組んでなにか詠唱を始めているし。

 そして二人の目前に巨大な扉が完成して、一瞬で砕け散ったんだが。


「オトヤン、俺と白桃姫では魔力が足りない。そもそも封印大陸に向かうためには、通常の転移門では無理らしいんだ」

「封印大陸はすなわち、神の住む世界。よって通常の魔力ではなく、神威による転移術式が必要となってしまうのじゃよ。乙葉ならできぬか?」

「うへぇ……マジで? 神威を伴う転移術式ってつまり、『神域回廊』を開けっていう事だよね? 今の俺で出来るか分からないんだけれど」


 あれってさ、聖徳王の天球儀があったからこその術式なんだよ。

 鍵である天球儀なくては発動しない『盟約術式』なのだから、今は使えないと思う。

 まあ、かといってここで放置しておく訳にはいかないので、ここは久しぶりに気合を入れていきますか。

 一旦、忍冬師範たちとの話し合いは中断、ローラさんたちの元に向かうと、砕けた異界門があった場所に立つ。


「ほんと、今は出来ないと思うよ……それじゃあ、試してみますか」


――パンッ

 両手を打ち鳴らして、思念の創造球(マギ・スフィア)の腕輪に神威を注ぐ。

 そして神威回廊の術式をゆっくりと唱えていくと、目の前に巨大な立体球形魔法陣が広がり……。


――ビシッ……ビシビシドンガラガッシャァァァァン

 魔法陣に亀裂が走り、音を立てて砕けていった。


「ほら、ね」

「うむ……神威濃度が濃すぎるのじゃなぁ。乙葉や、その腕輪では、天球儀以上の神威出力を生み出すようじゃ。その濃密な神威に魔法陣の強度が持たん」

「はぇ? 神威で形成しているのに? なんで持たないの?」

「う~む、どう説明していいか分からん。ともかく、今の乙葉では神威も規格外なのじゃよ。以前よりも格段と落ちているのは理解しているが、密度が違う」

「数値換算では、かーなーり低下しているんだけれどねぇ」


 ということで、思念の創造球(マギ・スフィア)経由の神威増幅は危険であることが判明……と。

 そうなると、一度、ローラさんを箱舟で送り届けるしかないんだよなぁ。


「それじゃあ、一旦、ローラさんを封印大陸まで届けてきますわ」


――シュンッ

 はい、取り出しましたる箱舟。

 ローラさんは目を丸くしているけれど、こういうのって早い方がいいよね。

 ハッチに魔力を注いで開放し、そのまま箱舟に乗り込む。

 当然、新山さんや瀬川先輩、祐太郎も同乗するよねぇ。


「ローラさん、まずは乗ってください。そして忍冬師範、ちょっと封印大陸に行ってきます。すぐに帰って来ると思うので」

「そんな、近所のスーパーに買い物にでも行くノリで……」

「まあ、そんな感じですよ。それでは」


 という事で、全員がコクピットに移動、ローラさんの席がないので空間収納(チェスト)から椅子を取り出し、そこに座って貰った。


 パイロット・俺

 コ・パイロット・祐太郎

 エンジニア・瀬川先輩

 通信管制・新山さん


 さて、それじやあ思念の創造球(マギ・スフィア)を装着し直して神威を注ぎ、空間転移を始めますかぁ。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



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