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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第十部・幻想郷探訪と、新たな敵

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第561話・(異世界からの侵攻? いやいや、俺ちゃんですよ)

 その日。

 

 夜のニュースは、妖魔特区に出現した謎の巨大宇宙船で盛り上がっていた。

 夕方18時に突如出現した、全長50メートルの船体。

 形状は薄く長い四角錘の船体部分に、あちこち巨大な部品が付いている感じ。

 後方のひし形の部分には大型ノズルを始めとした推進装置らしきものが見えていることから、この船体は【仮称・未知の宇宙船】という事で各報道機関が共通認識する事にした。

 この異世界からの侵攻とも取れる宇宙船の出現について日本政府の公式見解を待っていた矢先、宇宙船がゆっくりと大通一丁目に不時着したものだから、二丁目の仮設テントで待機していた報道関係者はたまったものではない。

 

 今、まさに目の間に未知の遭遇が待っているという事もあり、各社とも中継カメラを回して宇宙船から出てくる存在を捉えようと必死だったのだが。


――プシュッ

「……うわ、何この報道関係者の皆さんは、なに、何かあったの?」

「乙葉くん……多分、この箱舟を撮影していると思うよ。突然、宇宙船が出現したら誰だって慌てるに決まっているじゃない……あの、お騒がせして申し訳ありません」

「ああ、これは失礼しました……それじゃあ、そういうことで」


――シュンッ

 未知の遭遇を期待していた者たちは、まさか宇宙船から出てきたのが現代の魔術師と聖女だとは予想もしていなかった。そしてあっけに取られている最中に宇宙船が消失したものだから、詳しい話を聞きたいと思って駆けつけるのは当然。

 だが、大通一丁目は白桃姫の施した結界により、許可無き者は入る事が出来ない。

 それは特戦自衛隊や退魔機関とで同じ。

 結果として、許可を得た者がやって来るのを待つしかなかったのだが、それよりも早く乙葉浩介と新山小春の二人は魔導具に乗って帰ってしまったという。

 急ぎ二人を追いかけていったものの、魔導具で空を飛んでいる二人を直線で追いかけることなど不可能。結果として自宅付近まで中継車を走らせたのだが、到着するころには自宅に入ってしまい、連絡を取ることが出来なかったという。


 この事件が夜に放送されるや否た、乙葉家と新山家に電話が殺到。

 急遽留守電に切り替えて事無きを得たものの、翌日から始まるであろう問い合わせに、二人は頭を悩ませる事となった。


………

……


――翌日早朝・妖魔特区ラティエ領

「なるほどのう……これが、ラナマバーナ王家に伝わる勇者の箱舟か。これほどの魔導具が存在していたとは、妾も知らなかったぞ」

「私も昨晩から深淵の書庫(アーカイブ)をフル稼働して、魔皇さんたちに問いあわせてみたのですが。残念ですが、勇者が活動していた当時の記録を持っている方は、妖魔王である父の元に居るそうでして。ちょっと私では解析することが出来そうもありません」


 今朝一番で、俺は新山さんと一緒に妖魔特区へとやって来た。

 ちなみに俺が新山さんを迎えに行って、そこから菊水方面の対物理障壁まで移動、俺が結界を中和して内部に入ったのである。まあ、当然ながらうちと新山さんの家を見張っていた報道関係者はいたけれど、透明化の指輪を急遽作成して姿を消して来たっていう事。

 俺の分はほら、ルーンブレスレッドが砕け散った時にぶっ壊れているからさ。

 足りないものについては、随時、作り直しているっていう事。

 そして同じようにやって来た瀬川先輩と祐太郎、りなちゃん紗那ちゃんコンビも合流し、今は状況の説明を行っている真っ最中。


「しっかし……これはまた、随分と……面白いものを持って帰って来たな。オトヤン、中にはどうやって入るんだ?」

「ここのハッチに手を翳して……と、ちょいまち、先に搭乗員登録が必要みたいだわ」


 先に俺がハッチを開けて中に入り、思念の創造球(マギ・スフィア)を起動して宇宙船を起動。

 そのまま現代の魔術師チームと魔術研究会のメンバー、そして白桃姫を乗員リストに登録しておく。

 こうすることで、ハッチに魔力を流し込めば開けられるっていう事。

 残念な事に、ハッチが空いてしまえば誰でも入る事が出来るのだが、操縦その他については思念の創造球(マギ・スフィア)が無くては扱う事が出来ない。


「そこで、私の深淵の書庫(アーカイブ)の出番ということですか」

「はい。先輩の解析能力で、こいつのコントロールシステムを丸裸にして欲しいのですよ。後、浮かび上がる文字配列を日本語対応に翻訳していただければという事で」

「そうですわね。では、そちらは引き受けましょう。とりあえずコクピット部分で深淵の書庫(アーカイブ)を展開しますので」

「お願いします」


 とまあ、瀬川先輩がコクピット中央で深淵の書庫(アーカイブ)を展開し、解析を開始。

 新山さんがサポートとして深淵の書庫(アーカイブ)に入っていったので、そっちは二人にお願いしますか。


「しっかし。オトヤンは、こいつを使ってあの封印大陸に行く気なのか?」

「そこの門がある以上は、向こうで何かが起きているっていうのは推測出来るからさ。祐太郎も気になるだろう?」

「ああ。ミルドゥーンで会ったトゥルーソン伯爵とか、無事だといいんだがな。それで、いつ頃行く予定だ? 俺の方は東京でのバイトは一段落したから、大学が始まるまでは暇なんだが? 当然、連れて行ってくれるよな?」

「あたぼうだよ、おまいさん……ということで、近くでワクワクしているりなちゃんと紗那さんも一緒に行けますので、ご安心を」


 そう二人に告げると、俺たちに向かってビシッと敬礼している。

 うん、彼女たちは相変わらずである。

 逆に元気そうな二人を見ると、ホッとしてくるよ。

 俺たちが卒業した後も、魔術研究会は存続しているそうだし。

 新入部員がいないって叫んでいたけれど、それはまあ、そのうちそのうち。

 そんな事を話していると、大通二丁目方面から忍冬師範と要先生、そしていつもの川端政務次官がやってくる。

 

「あれ……川端政務次官って、大通一丁目に入る許可を貰っていたのですか?」

「色々と打ち合わせが必要になったとき、妾から出向くのが面倒くさいから許可をしたまでじゃ。無礼なことをすると許可を取り下げるとも説明してあるので、安心せい」

「ま、そういう事だ。それで乙葉、この宇宙船は兵器か? もしくは兵器を登載しているのか? もしもそうなら違法行為になるので日本国が接収するが……」


 いきなりやってきて、そんな質問をされても困るんですけれどねぇ。


「まあまあ、川端政務次官。一方的に問いかけても話は始まりません。ということで浩介、こいつをどこで手に入れて、どうして持ち込んだのか説明できるか?」

「まあ、それは難しくはないですよ。それじゃあかいつまんで説明しますとですね」


 異界門の出現から始まった一連の事件について、俺は簡単に説明した。

 といっても、異界門の接続先である封印大陸に向かうため、虚無空間を越える必要があるかもしれないので鏡刻界(ミラーワーズ)のラナパーナ王国に赴き、過去に存在したという勇者の残した遺産を借りて来ただけですよって話をすると。

 

「あ、やっぱりそうなりますよね」

「当たり前だ……そもそも、異界門の向こうで何か事件が起こっている可能性があるのなら、それを開いてこっちにまで被害を補出さないようにするのが現代の魔術師の勤めじゃないのか? そもそも借りてきたといったな、それを示す証拠でもあるの……これがそうなのか?」


 一気にまくしたててくるので、ラナパーナ女王に書いて貰った一時貸与契約書を取り出してそれを見せてみるが。まあ、読めないだろうなぁ。


「……なるほどな。確かにラナパーナ王国女王、マリナ・カムラ・ラナパーナのサインが記されている」

「それと、この魔石からも魔力反応が出ていますね。これは正式なもので間違いはありませんわ」

「ということは、これを日本国で接収するということは出来なくなったという事で間違いはありませんね?」 


 しっかりと書面を読みこんでいる川端政務次官に、要先生と忍冬師範が援護攻撃。

 

「あの、川端政務次官? いつのまに鏡刻界(ミラーワーズ)の文字が読めるようになったのですか?」

「ふん……特戦自衛隊にいる魔族自衛官がいるだろうが。彼らと接触して、鏡刻界(ミラーワーズ)のことについて教えてもらう代わりに正体をばらさないという盟約を結んである。以前、乙葉にも手伝って貰った魔術講習会があっただろう? あの時、乙葉と接触したという二人の自衛官から学んだだけだ」

「そのことについては、俺も自衛官立会いの下で説明を受けている。だから怪しむことはない。という事ですので、これで宇宙船の貸与者である乙葉浩介が好きにしていいという事でよろしいですね?」

「箱舟だ。そう書面には記されている」


 はぁ~、これは驚いた。

 川端政務次官がそんなに手を回していたなんて、予想もしていなかったよ。

 でも、この人って意外と真面目なんだよなぁ。


「意外と……は余計だ馬鹿もん。それで、内部調査とかを依頼したら、許可は貰えるのか?」

「無理に決まっていますよ。まあ、見学だけならどうぞ、ハッチは空いていますので。あと、中で瀬川先輩が解析している最中ですので、邪魔はしないでくださいね」

「分かった。では失礼する」

「同行させていただきます」


 ハッチの中に入っていく川端政務次官と、それを追いかける要先生。

 うん、任せておいて大丈夫でしょう。

 

「それで、いつ頃向かう予定なんだ?」

「そうですね。せめてこいつを自在に扱えるようになれば。あの異界門から直接行くことが出来ればいいのですけれど、あいつは開ける事すら難しいですよ」


 そう呟いて異界門の方を見てみると、ちょうど祐太郎が異界門の前に立っていて、扉に触れて何かしている。いや、闘気を注いで何か反応がないか確認しているらしい。

 隣に立っている特戦自衛隊の歩哨が、祐太郎に何か問いかけているみたいだけれど、祐太郎は優しいから何か説明しているようだよなぁ。


――キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン

 ほら、祐太郎の闘気に反応して門が輝い……て……って、うはぁぁぁぁぁ。


「祐太郎、一体何をしたんだ?」


 そう叫びながら駆け寄っていくと、とうの祐太郎も狼狽気味である。

 

「いや、闘気を注ぎ込んで解析を試みただけだ。そうしたら異界門が少しだけ活性化したらしく、こんな感じで輝いたんだが……って、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


――ズルッ

 輝いている異界門の中から、一人の女性が姿を現わした。

 いや、正確には扉から落ちて来た(・・・・・)っていう感じだな。

 重力を無視して横に飛び込んできたから。

 それを慌てて祐太郎が抱きかかえた瞬間。


――ビシッ……ガラガラガラガラッ

 異界門に亀裂が走り、音を立てて崩れ落ちていった。


「むっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」  


 俺と祐太郎、歩哨さんが同時に絶叫。

 それが聞こえたのか、忍冬師範だけじゃなく川端政務次官たちも箱舟から飛び出してきて、砕けた異界門を見て呆然としている。

 

『新山さんっっっ、急患を頼むっ』

『今、向かいますので待ってて』


 急ぎ念話で新山さんを呼んだが。 

 これはか~な~り、やばいことになっていないかい?

 それにこの女性、確か向こうで会った事があるよな。

 女騎士団長のローラ・ギャリバンじゃないか?

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