第559話・画竜点睛、石に枕し流れに漱……げないよなぁ(つまり、やらかすまでがテンプレートです)
謎の勇者の宇宙船。
というか、箱舟と呼ばれているものの内部調査を行っていました。
結果としては、俺達では後方に存在するエンジン区画への侵入は出来ないという事。コクピット区画には入る事が出来たものの、今、目の前のモニターに映し出されている文字については解析出来ないという事まで理解出来ました。
搭乗員の人数は、恐らく4名。
コクピットの席数でそれは判断出来たけれど、どの席がどんな持ち場なのかまでは不明。
正面の二つは恐らくだけれど操縦士と副操縦士、入って左右の席はどっちかが通信員で反対側が機関士じゃないかっていう予測は出来た。
まあ、アニメや映画などの知識だけれど、概ねそんな感じじゃないのかなぁ。
「乙葉くんでも、このモニターに映し出されている文字は解析できないの?」
「そうなんだよねぇ。自動翻訳機能が働いているにも関わらず、此処に写し出されている文字配列は一切不明。っていうことは、これは俺の予測だけれど、この箱舟って俺たちの世界のものではないんじゃないかって思えてきてね」
「……んんん、それってどういうことなの?」
まあ、簡単に説明すると、俺の持っているチートスキル、つまりカナン魔導商会や自動翻訳っていうのは、ようは神様から与えられたもの。
そしてその能力の範囲内は、同じ神々が作った世界でなら使えるっていう事は想像出来る。
だってさ、災禍の赤月事件の時に幾つもの世界を旅して来たけれど、そのどの世界でも会話や読み書きについては不便ではなかったからね。
という事は、神の加護が正常に働いていて、神様の権能の範囲内だろうって想像できるんだけれど。
この箱舟の文字については、一切の解読が出来ない。
つまり、この世界の神々の権能が適用されない存在っていう事。
「……ここまではいいかな?」
「ふむふむ。それじゃあ、この箱舟が外宇宙……じゃない、仮称・外世界から流れて来たっていう事なのかな?」
「その可能性が、一番高いんだけれど。もう一つ、可能性として考えられるものがあってね。それはつまり、すべての神々の世界と繋がっているという空間。幻想郷レムリアーナならば、こういったものも存在していたんじゃないかなぁと思ったんだけれど……」
「ああ、乙葉君が虚無に飲み込まれた時、迷い込んだ世界の事だよね。確か、夢の中に存在するって……つまり、これはそこで作られたものっていう事なのかな」
「可能性は、十分に考えられる。だって、外世界の者であるのなら、どうして俺が身に付けている思念の創造球に反応して起動したのかっていう事。これはさ、全ての世界に24個しか存在しないっていうものらしいから」
という事は、全ての神々の世界に繋がっている幻想郷で作られたんじゃないかっていう可能性は否定できないし、それが正解なのかもしれないっていう事。
そして幻想郷には虚無の中で偶然迷い込んだのだから、この箱舟には虚無を越える能力が備わっていてもおかしくないんだ。
「……問題は、この文字配列ね。どうにかして解析できれば、この箱舟を使ってあの扉の向こうの世界にも行けるんだよね?」
「まあ、ね。でも……なんとなくだけれど、何とか出来そうな気がして来てさ」
そう告げながら、空間収納から魔導書を取り出す。
その中にある『錬金術』の項目を開いてみると、俺の予想通り、この箱舟の設計図が浮かび上がっている。流石は神の加護の一つ、見たもの、触れたものを作り出すことが出来る錬金術というのは伊達ではない。
魔導神さま、ありがとうございます。
そう神に祈ってから、魔導書を閉じる。
「まさかとは思うけれど……この箱舟を作るの?」
「いゃあ、流石に無理だわ。設計図とかは全て網羅されていたみたいなんだけれどさ、そもそも読めないから作りようがない。ただ、これがあれば、先輩の深淵の書庫で解析出来るんじゃないかって思っただけ。という事で、これ以上の長居は無用、とっとと札幌に帰りますか」
「目的はどうにか達成出来たっていう所……かなぁ。うん、そういう事にしよう」
「深く考えても分からない時は、ちょっと休むのが一番。という事で……」
――ガゴン!!
箱舟から出ようと思った時、突然、船体が大きく揺れた。
そして突如襲い来る浮遊感。
うん、まさかとは思うけれど、これって箱舟が動いているよね。
「ちょ、ちょっと待って、これはどういうことなの?」
新山さんが叫んでいるけれど、その対象は俺じゃなく箱舟に問いかけている感じだよね。
まあ、俺がなにかやらかしたと思われていないのでホッと一安心だけれど。
「思念の創造球、この箱舟とリンクしてくれるか? そしてコントロール権を俺に寄越してくれ」
『ピッ……ピピピッ……』
うん、思念の創造球からなにか『了解しました』っていう感じの意識を感じ取れた。これはひょっとして、コクピットに乗って操縦しなくても、この思念の創造球を通じて外部コントロールは可能なのかもしれない。
「全てのモニターに、外の映像を映し出してくれ」
――ブゥン
そして俺の言葉で、コクピット内部のモニターが全て光り輝き、外の風景が映し出された。
聖域の中央に浮かんでいるらしく、モニターには聖域の入口付近に逃げたらしいフリューゲルの姿が映し出されている。
こっちを見て驚愕しているようだから、まさか箱舟が動き出すだなんて思っていなかったのだろう。
「お、乙葉くん、これって動かせるようになったの? え、どういうこと?」
「この思念の創造球が箱舟とリンクしたらしいからさ。どうにか外部コントロールは可能になった感じかな。ということで、これからどうするかっていう事だけれど」
「無断で持って帰るわけにはいかないよね。一度着陸して、貸してもらえるか相談してみたら? 私も乙葉君も、一応はこの国の勇者なんだから」
「正確には、鏡刻界の勇者ね。つまり、箱舟が勇者のものだとしたら、使っていい筈……なんだけれどさ。まあ、一度着陸して、女王様に頼み込んでみますか。封印大陸がどうなっているのか、すっごく興味があるのでね」
うん、どうしてここまで興味が出ているのかは分からない。
ただ、直感的に、あれは無視してはいけないような気がするんだよ。
幻想郷レムリアーナで、封印大陸についての話を聞いた記憶はないんだけれど、なんだがモヤモヤするのでね。
だったら行ってみればいいじゃない、直接封印大陸に行って話を聞いてきたらいいんじゃないかって思うんだよ。
「そうだよね。でも、それって乙葉君の直感だよね……という事は、またなんだか大きな事件が待っているという事だよね」
❘頤に指を当てて、フムフムと何か納得している新山さん。
酷いっ、まるで俺がトラブルメーカーだっていう事じゃないか。
「い、いや、そんなことは考えていないよ、ちょっとだけだよ、うん、そうだよ」
「え、また俺、声に出していた?」
「しっかりとね。だって、乙葉君ってさ、思考がてんぱっているときって、考えている事が小声で出ているじゃない。だから判りやすいっていうか……恋人の勘?」
「うわ、そこに愛を感じなかったのは気のせいじゃないよなぁ……ま、とりあえず着地して貰いますか」
思念の創造球に着陸するように念じてみると、箱舟は静かに聖域に着陸した。
そして外に出ようとハッチ部分に移動してみると、俺たちが外に出ようとしていることを理解しているのか、ハッチが静かに開いた。
――プシュゥゥゥゥ
そして恐る恐る外に出てみると、フリューゲルが硬直したままこっちを見ているのに気が付く。
「乙葉、それに新山……まさか箱舟を操れるようになったのか?」
「あはは……そうみたい。それでさ、これ、借りていきたいんだけれど、許可ってラナパーナ女王に取らないと駄目だよね?」
ああっ、俺の話を聞いてフリューゲルが困り果てた顔でこめかみに指を当てて考え込んでいる。
いえ、ここで答えは求めていませんよ、このまま女王様との謁見をお願いしたいだけですからね。
「箱舟の所有者は勇者。だから、今の所有者は乙葉たちで間違いはない。でも、一応許可を取る必要はあると思うから、もう一度、謁見の間へいこう」
「ですよね~」
「うん、それではお願いします」
ということで、ここでの話はトントン拍子に進んだので、次はラナパーナ女王から許可を貰うだけ。
でもさ、女王さまは許可を出してくれるかもしれないけれど、あの宰相とかは気難しそうだからなぁ。
貸してくれるといいなぁ。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




