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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第一部・妖魔邂逅編、もしくは、魔術師になったよ、俺。

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第五十五話・禍福倚伏、逃げるにしかず(妖魔が世界に知られた日)

『ネット通販から始まる、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

 日本政府による妖魔の存在の公開。


 この直後、アメリゴやロシアなどの諸外国政府も妖魔という存在についての公式見解を開始した。

 おおよその内容については日本政府の発表に準ずるものが多く、大まかに挙げて以下のような情報が公開された。


1.現地球における生命体とは異なる肉体構成を持つ


2.普段は実体化せず、精神生命体として存在している。そのため、お互いに触れることはできない


3.人間や他の生命体の『精気』を糧としている。摂取方法は様々であるが、大凡『憑依』という形で精気摂取を行なっている。


4.妖魔にも様々なタイプがあり、中でも人間と同じような知性を持つ『人魔』と呼ばれるものが存在し、独自の文化を持っている。


5.地球上の人間たちと同じく、主義主張の異なる存在同士では抗争に発展することもあり、中には人間を襲う存在もある。



 これらの説明を行なった上で、各国政府は妖魔と歩み寄る姿勢をとると同時に、対立する妖魔及びその係累に対しては断固たる手段を取ると説明。

 アメリゴやロシアの対妖魔機関を代表として、各国に妖魔に対する組織があることも簡単に説明されている。


 だが、妖魔と戦う術については未だ細かい部分は説明されていない。

 妖魔は人間と異なる肉体構成を持っているため、現代兵器では妖魔を殺傷することが出来ないと説明されたものの、それらに対する対処については今後の課題として研究中であると伝えられた。


 日本でも連日、テレビやインターネットなどで妖魔についての推論を行う番組が数多く、中には現行政府の隠蔽体質を叩いて政権を交代するべきではという声をあげているものが多い。

 だが、野党各党は、現行政府は妖魔に対して出来うる限りの手を打つと宣言したので、それに対して会派を越えて協力するという話では終わっている。



………

……



「なるほどなぁ。こんな大きなことになるとは、晋太郎叔父さんもなかなかやるなぁ。それでさ、なんで土曜日早朝から、俺は祐太郎のうちのリビングで朝食を食べているのやら」

「それは、俺が誘ったからだな?」


 名店と噂されるパン屋の焼き立てパン、ヨード卵と自家製ベーコン、新鮮野菜のサラダ、搾りたてのオレンジジュース。

 その献立に乗ってやってきた俺なんだけど、どうして隣のテーブルでは井川巡査と忍冬師範、要先生も朝食を食べているのかなあ?


「そんな胡散臭そうな目で見ないでくださいよ。私と井川巡査、忍冬警部補は築地晋太郎さんに呼び出されてここに居るだけなのですから」

「そういうこと。別に私は、祐太郎も乙葉君もどうこうする気はありませんよ。私の弟子とその友達ですからね」

「わ、私は、貴方たちの秘密に少しでも触れられたらと…」


 三者三様な意見ありがとうございました。

 井川さんだけギルティな。


「まあ、折角だから朝食は楽しくいただきましょうね。それで、晋太郎おじさん、俺をここに呼んだ理由は?」

「朝イチで輪厚のベーコンファームから美味しいベーコンが届いてな。折角だからお裾分けと思って呼んだだけだが。ちょうど浩介くんがきた時に第六課も勢揃いしてきたのでな、それなら朝食をみんなでと思っただけじゃよ?」


 あ〜。

 おじさん、マジでベーコン食べさせたくて呼んだだけでした。


「それで、なんでこんな朝っぱらから第六課がここにきたのかな?」


 築地晋太郎は真面目な顔で忍冬達に問いかける。

 すると忍冬源一郎も、食べるのを止めて話を始める。


「御影警部補は東京本庁に戻ることになりまして。北海道の第六課は私が責任者となります。直属の部下として井川巡査長と要巡査が今まで通りに北海道駐在となりますので、御挨拶をと思いまして」

「え? 御影さん本庁に戻ったの?」

「まあ、本庁に戻ると言うか、新しく対妖魔機関が創設されるので、そっちに回ることになった」


 ふむふむ。

 第六課以外にも対妖魔機関ができるのね?

 今までみたいな問答無用で妖魔ぶっ殺す機関じゃないなら良いんだけれどね。

 けど、晋太郎おじさんは渋い顔をしている。


「第六課と、その新設される機関の関係は?」

「第六課は警察庁から外されて、内閣府国家公安委員会所属になります。対妖魔機関は防衛省所属ですね。正式には『日本国自衛隊・特殊戦術自衛隊』っていう名前ですね。陸海空三つの自衛隊に続く、新しい自衛隊です」


 要先生の説明を聞いて、俺も祐太郎もフゥンとだけ答える。だって、まだよくわからんもん。けれど、晋太郎おじさんは頭を抱えたくなっている。

 

「第六課は今まで通りの第六課という扱いになるのか。まあ良いわ、あの面倒臭い御影警部補がいなくなっただけでも気が楽だからな」

「視野が狭いという点では、第六課向けではありませんでしたからね。では、今日の予定の一つは終わったので、もう一つの方を終わらせたいと思いますが」


 そう告げてから、忍冬は乙葉浩介の方を向いた。


「乙葉君、我々のために退魔法具を作ってほしい」

「俺、退魔法具は作れません。では」


 トーストのおかわりもきたので、のんびりと食事を続けようとするんだけどさ。

 困った顔の忍冬さんに井川さんが何か耳打ちしている。


「ゴホン……乙葉浩介君。我々のために魔導具を作ってほしいのだが」


 そこは拘るところかって突っ込まれそうだけどさ、俺は退魔法具なんて作った覚えもないからね。

 ここは拘るよ。


「材料が無いのですよ。現行の地球産素材では、満足のいく魔導具は作れなくて。オリハルコンとか、そういったファンタジー系素材がないと強力な魔導具は作れませんよ?」


 これには祐太郎もコクコクと頷いている。


「忍冬師範、オトヤンの力に頼るのは悪いとは言いません。ですが、物事にはケースバイケースということがあります。まあ、お前が言うかってオトヤンに突っ込まれそうではありますけれど」

「ん言わないけど? ユータロ、俺になんかした?」

「いや、オトヤンは俺に色々してくれてるのに、俺はまだ何も返していないからな」

「友達じゃん。困ったことがあったら助ける。俺は友情に代価を求めるようなことはしないよ?」

「そうか、ありがとうな」


 うんうん。

 祐太郎なりに気にしているのか。

 まあ、俺が祐太郎や新山さん、先輩に色々するのは友達だからっていうのもあるけど、この面倒な世界に巻き込んだからっていう申し訳なさもあるんだよね。

 

「例えばだけど、築地議員や井川巡査長が所持しているような退魔……魔導具を作るには、どれぐらいの材料が必要になるのです?」

「ええっと。人間の所持能力を封じる宝玉、魔石、ミスリル銀、アダマンタイト。最低でもこれだけ」


 そう説明すると、要先生は必死にメモを取るし井川巡査長は指輪を見て青い顔をしている。

 どれもこれも、こっちの世界には存在しないものだからね。


「それらを用意してきたら、作ってくれるかな?」

「用意できればね。でも、俺も持っている材料が切れているし。そもそも、どうやって入手するの?」

「君が持っていたっていうことは、何か入手方法があるんだろう? それなら、調べてみるさ。当然製作費用は支払わせてもらうよ、本庁に査定してもらってるけれど、井川巡査長の指輪一つでも防衛予算に匹敵するっていう意見で一致しているからね」


 あ、ここでそれ言う?

 井川巡査長が青通り越して白くなってきたよ?

 指にはまっている指輪が防衛予算だなんて、そもそも聞いていないのでしょ?

 

 あ、気絶した。


「せ、先輩しっかりしてください‼︎ そうだ‼︎」


 要先生が慌てて、鞄からポーションを取り出して飲ませている。

 まあ、気絶程度なら、口に軽く含ませたら治るんだけどね。


──タラッ…ゴクゴクッ

 ほら、意識が戻って一気に飲み干した。


「ふ、ふぅ。乙葉君、今の話って本当なの? この指輪が防衛予算だなんて?」

「あ〜、そのあたり俺はわかりませんよ」

「だが、指輪の核になっている宝石はダイヤモンドと同一という鑑定結果が出ているんだが?」

「10カラットのダイヤモンドって、なんぼするんだろう? ユータロ知ってる?」

「さぁ? 前にトータル10カラットのダイヤモンドイヤリングが150万っていうのは見たことあるが。一つ10カラットはわからないなぁ」


 スマホでポチポチと検索する祐太郎。

 あれ、なんで井川巡査長は必死に指輪を外そうとするの?


「そ、そんな高価なものを私に送りつけて、あなたは何を考えているの?」

「んー。祐太郎と晋太郎おじさんの危機を教えてくれたお礼だってこの前話したでしょ? 危なく二人とも殺されるところだったんだから。人の命の価値に比べたら、その程度どうでもいいよ」


 そう告げると、忍冬師範は笑いを堪えている。

 要先生はウンウンって頷いているし、晋太郎おじさんは仕事の電話している最中。


「命は何ものにも代えられない。その通りだね」

「忍冬師範ならわかるでしょ?」

「あ、そうだ、忍冬師範。オトヤンが護身術を習いたいそうなんですけれど、北海道駐在って事は、また道場を再建するのですか? それなら是非お願いしたいのですが」


 おおっと、そうだ、身体を鍛えたかったんだよ、忍冬師範が札幌にいるのなら、都合がいい。


「前と同じところに道場は構えるよ。尤も、闘気を学ぶための道場だから乙葉君の役に立つかどうか分からないが」


 それでも良い‼︎

 そう思ったら、井川巡査長が。


「私の知り合いが古い武術の師範をしているわ。この指輪の御礼として、そこを紹介してあげられるわよ? 如何かしら?」

「ほう。古い武術ね。それはなんていう奴?」

「そこまで詳しくは聞いていないわ。でも、そこなら後で紹介してあげる」

「お願いします‼︎」

「あ、オトヤン、俺も興味があるから一緒についていって良い?」


 私は一向に構わぬ‼︎

 さあ、一緒に武術を学ぼう。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 挨拶も終わったので、第六課の御一行様は一旦戻るらしい。

 警察機関ではなくなったので、北海道庁に仮部署が作られたそうで。

 俺も午前中はカナン魔導商会のチェック。

 さーて、何があるかなぁ。


──ピッピッ

 サイドチェスト鍛冶工房から納品のお知らせです。


「来たぁぁぁぁぁ」


 前の注文からかなり時間が掛かったからさ、いったいどうなったか心配だったのよ。


……


『ご注文の商品については、担当部署との打ち合わせにより以下のものとなりました。


1.魔導闘衣

  アダマンタイト繊維とエルダードラゴンの鱗の粉末を融合化した『装甲繊維』により編み込まれた逸品。換装効果あり。


2.神装白衣×2

 聖別された世界樹の葉を用いた『神威繊維』により編み込まれた白衣。

 対刃、対魔導抵抗付与


 支払いは15億8千万クルーラもしくはそれに等しい食事をよろしく哀愁。


……


「……そっ閉じ。その金額はなんだぁぁぁ。意味がわからないけど、金額聞かないで発注したから仕方ないか。それよりも、その金額に等しい食事ってなんだろう?」


 思わず腕を組んで考えてしまう。

 まあ、一人で考えていても仕方がないので、これについては後でみんなと相談することにしようそうしよう。


 そんなこんなで足りなくなっていた中回復薬と大回復薬を追加購入、チェスト工房からはミスリルとアダマンタイトのインゴットを三つずつ購入。

 今日の支払い分はこの前のお中元で補填してと…。そろそろまたチャージしないとならない。


「あ、ダイヤモンドの買取始まったか。でも最低10カラットかぁ。鉛筆で……いや、炭素ならもっと良いものがあるって先輩も教えてくれたからな」


 炭ですよ炭。

 ホームセンターで炭を買ってダイヤモンドを作りましょ。まあ、それは後日でいいや急がないし。

 そんな事をしていると昼。

 

 昼食は井川巡査長が奢ってくれるっていうから、そのまま迎えにきたワゴンに祐太郎と乗り込んで、いざ鎌倉‼︎


………

……


「紹介するわ。こちらが今朝話した古武術の師範で『リチャード・フー』さんと、そのお弟子のチャンドラさん。フーさん、この二人が古武術に興味のある二人なの、素質があるか見てあげてくださるかしら?」


 井川巡査長に連れてきてもらったのは、喫茶・九曜でした。

 そしてリチャード・フーさんこと羅睺さんが頬を引き攣らせながら俺を見ているし、その後ろのチャンドラは拳をゴキゴキッて鳴らしているし。

 あの、なんで井川巡査長が十二魔将と知り合いなの?


「「ええっと、井川さん、ひとつお聞きしたいのですが、此方の方々とはどのようなお知り合いで?」」


 俺と羅睺さんが、同時に井川巡査長に問いかける。

 何、この息ぴったり感は。


「ええっとですね、私の後輩が教師として派遣されている高校の生徒です。部活は文学部だそうですけど、身体を鍛えたいとかで。そしてフーさんとチャンドラさんは、ここの喫茶店の常連さんで、私の家がここから近くてね」


 あ〜。

 さいですか。

 偶然とは恐ろしいものですね。

 それで、井川さんは、羅睺さん達の正体は知らないのね。

 羅睺さん達も井川巡査長のことは知らないんだろうなぁ。

 それなら都合がいい。


「初めまして、乙葉浩介です。武術に興味がありました。よろしくお願いします」

「築地祐太郎です。詠春拳を学んでいますが、他流派の武術も知りたいと思いまして。よろしくお願いします」


 挨拶は大事。


「うんうん。ワシはリチャード・フーという。それじゃあうちの道場に来てもらうかな。井川さんや、あとは、ワシらに任せてもらって良いかな?」

「ええ。私もこのあと、色々と引き継ぎの仕事が入ったもので。夕方には迎えに来るわ」

「あ、場所がわかったので自力で帰れますから大丈夫です、ありがとうございました」


 そう挨拶をして井川巡査長を見送ると、ゴーグルをセットして店内周囲を見渡す。

 うん、しっかりと結界が張ってあるね。



「あの、羅睺さんって武術の達人なの?」

「達人も何も、チャンドラに武術を教えたのはワシじゃからな。それよりもなんじゃ貴様、第六課と知り合いじゃったのか?」

「前にも言ってなかったっけ?」

「覚えとらんわ‼︎」


 俺と羅睺さんの話の中、祐太郎は目に闘気を集めてチャンドラを見て絶句する。


「なあオトヤン。周りが妖魔だらけなんだけど」

「あ、こちらが前に話した初代妖魔王の十二魔将です。こちらは俺の友人の築地祐太郎、闘気が操れます」


 そう説明すると、チャンドラと祐太郎が握手。


──ギリッ、ミシミシミシミシッ

 二人の拳から聞こえてはいけない音がする。

 お互いに右手を握りしめている。


「へぇ。人間の割には良い力だな」

「まだまだ。闘気解放したらもっと凄いぞ?」

「俺も獣化したら、こんな程度じゃないがな」


 そう呟いて手を離す。


「羅睺、この坊主は俺が面倒を見る。乙葉のガキンチョは羅睺に任せて良いか?」

「うむ。それじゃあ道場にでも向かうかのう。二人ともついてきなさい」


 そう説明されて、俺と祐太郎は喫茶店裏の住宅地に向かった。

 はて、この辺りに道場なんてあったっけ?


誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。


ああっ、知らないうちにネタを挟んでいた。

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― 新着の感想 ―
[一言] お、やっとダイヤの原料が炭になった。
[一言] 現代兵器では妖魔を殺傷致しめることが出来ないことが説明されたものの、 →現代兵器では妖魔を殺傷する事が出来ないと説明されたものの、
[良い点] 筒美京平先生のよろしく哀愁とは、タイムリー。カラオケで歌った直後だったのでびっくり(((゜Д゜;)))
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