表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第九部・終わりの始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

540/601

第五百四十話・寒山拾得、塞翁が馬(大きな奇跡と大きすぎる代償)

 乙葉浩介が、封印大陸にて破壊神もろとも虚無へと飛び込んだ頃。

 

 地球でも、龍脈をめぐる最後の戦いが繰り広げられていた。

 龍脈に巣食っていた破壊神の残滓、それを中和し浄化させるべく、神楽もまた最後の神威をぶつけている真っ最中。

 すでに小春から送られてくる神威も限界をとうに越え、今は治癒神シャルディと貴腐神ムーンライトからとぎれとぎれに届いてくる程度。

 龍脈洞に出現していた使徒の群れも力を失い、今は十分ごとに一体ぐらいが出現し、そして祐太郎がカウンターで破壊するという事を繰り返しているのだが。


――ガクン

「え……何が起こったのですか!!」


 突然、破壊神の残滓の力が大きく膨れ上がる。

 それまで弱っていた力が突如として復活し、神楽の力の全てを呑みこもうと反撃を開始したのである。

 

「嘘でしょ……カグラさま、イングランドが消滅……いえ、龍脈に引きずり込まれています」

「……破壊神が、イングランドに存在する特異点に気が付いたのですか……そうですね、龍脈に引きずり込まれたのは、恐らくはイングランドを守護する中間世界・アヴァロン……奴は、精霊の力を取り込み、さらに活性化を始めたのですか」

「そ、それじゃあ私たちは……地球は無くなってしまうのでしょうか」


 悲痛な声を上げる小春だが、カグラはまだあきらめてはいなかった。

 つい先ほどから、彼女以外に龍脈に干渉している力を感じている。

 それが敵か味方か、神楽は知っていたから。


「いえ、アヴァロンの全てが破壊神に取り込まれることは無いようです……ですが」


 神楽の言葉、その続きを雅は分かっていた。

 深淵の書庫(アーカイブ)が察知した、龍脈に飛び込んで来た力。

 そのひとつは魔神・羅刹。

 そのひとつは魔神・玉藻前。

 そして最後の一つは、乙葉浩介と同化したことにより魔神となったピク・ラティエ。

 その三つの魔力波動が、龍脈の中を超高速で飛んでくるのを確認していた。

 だが、雅は何も告げない。

 今、更なる力が龍脈の中に生まれつつあったから。


「……もう限界です……ごめんなさい」


 小春の身体を通じて送られていた神威。

 それが限界を超え、小春の肉体だけでなく魂まで傷つきつつある。

 そして意識が途切れると同時に、小春の代わりに一人の人物が姿を現わす。


「……全く。定命の人間風情が、無茶をしやがる……」


 雅が察知したものは、龍脈に出現した転移門。

 そこから姿を現わした壮年の男性。

 それが小春を抱きかかえると、深淵の書庫(アーカイブ)の中にいる雅の元へと連れて来た。


「……うん、ご助力感謝しますわ。でも、よろしいのですか?」

「よろしくはない。が、やらなくてはならない。これもまた、魔皇となった俺の仕事だからな」


 龍脈内部に開いた転移門。

 そこから姿を現わしたのは大量の魔皇たち。

 その中の一人、魔皇・ディラックが小春を助け、そして彼女の代わりにカグラに神威を送り始める。

 そもそも、魔皇の存在は、このような事態が起きるのを防ぐため。

 封印大陸に眠る魔神ダーク、その中に眠る異界の破壊神を止めるために、魔皇たちは代々、その力を蓄え、魔人王にその秘儀を託していた。

 ゆえに、今現在の世界の崩壊は、魔皇らが知りえる【最悪の結末】ではない。

 最悪の結末は、【魔神・乙葉浩介】の体に破壊神の残滓が宿ること。

 神の器を持ち、破壊神の加護を受けた存在である乙葉浩介。

 彼の精神が崩壊し、その隙間に破壊神が宿ったとき、一瞬で世界は終末を迎える。


 とある始原の魔族は、その未来を予知していた。

 とある始原の魔族は、そうならないために龍脈を制御していた。

 彼女・カグラが見ていた未来、それは世界の崩壊。

 だが、ある時を境に、その崩壊した未来は確定ではなくなっていた。

 そして今、崩壊した未来が来ないようにと、魔皇たちも持てる力を発揮し、破壊神の残滓に対して楔を穿つ。

 

『カグラさん……アヴァロンは私と羅刹さんに任せて。あなたは白桃姫さんとともに、破壊神の残滓を』

『さよう。破壊神が取り込んだアヴァロンの一片、わたしが千切り抉ってみせましょうぞ』


 玉藻前が九尾の尻尾を振るい、破壊神の残滓の動きを止める。

 そこに羅刹が掴みかかり、そして力任せに残滓の右腕を引きちぎった。

 決して傷つくことが無い残滓の肉体。

 それをカグラが中和しつづけることで、破壊耐性は消滅した。

 そこに玉藻と羅刹の力がぶつかり、吸収されしアヴァロンは瞬く間に引き剥がされ、そして龍脈の彼方へと溶けていく。


「カグラよ!! 乙葉がやりおったわ!!」


 アヴァロンが溶けてあるべき場所へと帰っていったとき、白桃姫は感じ取った。

 彼女と魂レベルで融合していた乙葉浩介が、封印されし破壊神を自身諸共虚無へと封じたことを。


――ヴゥン

 その瞬間、それまで世界を睨んでいた災禍の赤月が消失し、龍脈の中をめぐる残滓の力も一気に弱まっていった。


『馬鹿な……何が起こった、瞳から力を感じない……災禍は、災禍の赤月はどこに消えたのだ』


 龍脈の中、片腕を失った老人は、血涙を流すかの如く悲痛な顔で叫ぶ。

 災禍の赤月が失われたことで、彼に送られていた力も、世界から届いた人々の嘆き・苦しみの感情も途切れてしまう。

 いや、途切れたのではなく、彼はもう、それを感じることも受け入れることも出来なくなっていた。


「これで終わりです……破壊神の残滓……いえ、遥か彼方の悪神・ナイアール。もう、貴方は再生しない。ここで、貴方の旅は終わりを告げましょう……」


 カグラが呟くと同時に、破壊神もまた光となり、散り散りになって龍脈へと溶けていく。

 すでに彼の本体は消失している為、あとは龍脈の一部となり、そして大地へと帰るだけ。

 そしてそれを見届けると、魔皇もまた龍脈の中に消えていく。

 あるものは転移門を通りあるべき世界へ。

 またあるものは、新たな仮宿を求め、龍脈の彼方へ。

 そして全ての意識が消滅すると、龍脈洞に広がる金色のマナも穏やかな湖面を浮かび上がらせる。


「お、終ったのですか……」

「破壊神の残滓は感じない……カグラさん、終ったという事でいいんだよな?」


 小春と祐太郎が問いかけると、カグラはゆっくりと振り向く。

 穏やかな笑みを浮かべ、そして瞳を落として頭を下げる。


「これで、終りました……地球は、いえ、二つの世界は終末を迎えることは無く、人類は滅びの道を回避することが出来ました……」


 その言葉に安堵する二人だが、雅だけはまだ深淵の書庫(アーカイブ)から出てくることは無い。


「乙葉くんは……破壊神と共に虚無へと飛び込んだ、乙葉君はいつ、戻ってくるのでしょうか……」


 その問いかけで、小春も神楽を見る。

 だが、神楽の口から零れた言葉に、小春は意識を失ってしまう。


 虚無からは、何人たりとも戻ってくることはできない……と。


 〇 〇 〇 〇 〇


――その頃の虚無

 うん。

 いつまでもここにいては駄目。

 とはいえ、ここから帰るすべもなく。

 魔導鎧クリムゾン・ルージュもさっきからミシミシと音を立てている。

 これが砕けた時が、俺の最後。

 その前に、世界だけはどうしても修復したい。

 かといって、俺は命を代償にすることは出来なくなっている。


「はぁ……それじゃあ、覚悟を決めますかね」


 カナン魔導商会のメニューにもう一度触れる。

 そして奇跡の宝珠の購入画面を表示すると、迷うことなく購入ボタンをタッチ。


『ピッ……奇跡の宝珠は神威対象商品です。購入については、チャージではなく同価値の物品を必要とします。何を査定しますか?』  


 俺の命よりすごいものが、一つあったからさ。

 それを使うことにする。


「査定するのは……俺の持っている『破壊神の加護』だ」


『ピッ……それを査定し代償とすることで、貴方は【カナン魔導商会】の会員資格を失います。また、破壊神の加護により得ていたものすべてを失いますが、それで構いませんか?』

「ああ、その代わり……地球を元の姿に戻してほしい」


 どうだ、いけるか?

 世界を作り生み出した破壊神……つまり創造神マチュアの加護だ、個人が保有できる最大の力だ。

 できるならば、死んだ人たちの魂も元に戻してほしい……。


『ピッ……受諾しました。ただし、地球は完全なる修復は不可能。また、死者の蘇生には代償が足りません』

「聖徳王の天球儀、これも持っていけ。人が神となるための器だ、これでも駄目か?」


 さあ、俺がベットできる最大条件は出した。

 あとはカナン魔導商会が、それを認めるかどうか。


『……受諾した。では、君の身体から私の加護と天球儀を引き払わせてもらう。君はただの人間になるけれど、一つだけチャンスは残してあげる……そこにたどり着いたら、魔導師としての力は取り戻せるとは思うけれどね……あとは君の努力次第ということで』


 んんん?

 この声って破壊神さんだよね。

 まあ、それが温情なのは判っているさ。

 そして俺の意識がゆっくりと消えていくのを感じる。

 体の中にあった、神の加護、それが一つずつ、ゆっくりと抜けていくのを感じるよ。

 まあ、これで世界が元に戻るのなら。

 死んだ人たちが、元に戻るのなら。

 

 それで、いいんじゃね?


 うん、虚無から帰りたいっていう願いもあったけれどさ。

 それこそ、大きな代償が必要だと思うんだ。

 はぁ。

 高校ぐらいは、卒業したかったわ……。

いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ