表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第八部・狂乱のアメリカ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

506/601

第五百六話・同心協力、狐と狸の化かし合い? (手段と目的と、計画と真実と)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日と金曜日を目安に頑張っています。

 ボルチモア・ノーブル・ワンの簡易妖魔収監施設。

 

 そこでは、魔力拘束具を架せられたニセ乙葉ことドゥアムからの聞き込み調査が始まったばかり。

 証拠として雅の深淵の書庫(アーカイブ)が起動し、ドゥアムの一挙手一投足、及びすべての会話が録音されるようになっている。

 そのうえで、京也とユング本部長は室内に入ることは無く、鉄格子の嵌められた扉の前で彼と話を始めていた。


「まあ、端的に質問をするのだが。君たちを作った存在は、一体何を企んでいるのかな? 大統領の暗殺未遂、そして各地に出現しては捜査を搔き乱している現状、ただの愉快犯とも思えない。かといって、乙葉浩介本人であるのなら、暗殺未遂などで終わるはずもなく、確実に仕留めているはず……ということで、話してくれるかな?」


 ユング本部長が問いかけるが、ドゥアムはヘラヘラと笑っているだけ。

 その態度にムッとした表情をするものの、京也はドゥアムをじっと見て一言。


「クローン体の調整、どうやら君も、体組織の定着が不安定な状況だね。体内に魔石を組み込んであるのは、そこに疑似魂が収まっていてるから。そして乙葉浩介の体細胞を使い、適合妖魔と遺伝子レベルで融合。そこまでは良かったものの、体は安定して乙葉浩介の外見を作り続けることはできない……」


 淡々と話を始める京也であるが、その言葉にドゥアムも焦りを感じたのか、表情がこわばり始めた。

 

「そ、それってどういう意味なんだ? 俺の身体は調整さえ続けていれば、安定するんじゃなかったのかよ?」

「うん。どうやら摩周博士は、大切な部分の調整についてはまだ解決策を見出していないっていうところか。肉体構成を行った妖魔の体細胞と人間の細胞を組み込んで培養した場合、その増殖速度を押さえるのは大変なのだよ。それこそ、周辺の魔力を吸収しつつ、無限にまで膨れ上がり最後は自死してしまうことだってざらにある。摩周博士は、それで頭を悩ませていたんだが、ある日を境に居なくなってしまってね……」


 目の前のドゥアムにも、同じような兆候が表れていると京也は読み取った。

 そのうえで、ネイトという研究員が同行していることを考えて、一つの結論に達していたのである。


「君の体内には、疑似魂である純魔石以外に、体細胞の増殖を抑える信号を発する魔導具が組み込まれているね? それはネイトの体内にも同じようなものが組み込まれてあり、二つの魔導具の共鳴反応により、君の体細胞の無限増殖は抑えられている……うん、二人の身体から発している特殊な魔力波長が、その証拠だが。君はそれには気が付いていたかい?」


 淡々と告げる京也の言葉に、ドゥアムは頭を振りつつ、何かに抗おうとしていた。


「嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だっ。ネイトは、調整さえ続けていれば俺は一人の人間として独立した存在になれるって話していた。そのためにも、オリジナルの乙葉浩介の魂を吸収する必要があるって。奴の魂は神の器、それさえあれば、俺はこの姿を維持したまま、普通に生活を送ることができるって……」

「うん、嘘だね。今のままでは、君はいずれ死ぬ。そもそも、人造妖魔の肉体維持に必要なものが足りていない。それを摩周は『ツインズ』という私たちが計画していたシステムを完成させて、それで制御しようとしていたのだろうね」


 二つの魂による共鳴。

 これは双子の魂がお互いに共鳴し、相互に理解力を深めるだけでなく感覚も共有することがあるという説から始まった。

 これをヘキサグラムでは兵器開発や妖魔のデータ収集、はては人造妖魔プロジェクトにまで応用していたのである。


【科学により妖魔を全てひん剝く】


 その言葉の通り、ヘキサグラムは非人道的ともいえる研究にまで手を染めていた時期があった。

 正確には、手を染めていた科学者たちの派閥が存在し、無許可で様々な実験を行っていたのである。

 その一人が摩周博士こと、春日部摩周である。


『人の魂を解析する、私の手で新たな魂を作り出す』


 人類にとってタブーであったクローン体の開発ではなく、魂そのものを複製するという蛮行。

 そのために数多くの妖魔を実験体に使い、莫大な資金を使って死刑囚をも買取り、魂の採取を行っていた。

 その結果、彼は『疑似魂』と呼ばれる人工魂の開発に成功するものの、それを定着させる肉体については完成させることが出来なかったらしい。

 そののち、ヘキサグラム・ノーブル・ワンで知り合った乙葉京也と乙葉洋子の研究データを入手し、人造妖魔計画を独自で再現。

 その結果、幾つもの試作型人造妖魔の開発に成功した。

 だが、そのあまりにも非人道的な行いがヘキサグラム上層部に見つかり、彼は記憶を封じられて放逐された……。


「……ということがあってね。君のその体は、私たちの作り出した人造妖魔の発する魔力波長と一致しているのだよ。まあ、一つだけ簡単に説明するが、ただの調整程度では、君の身体はいずれ崩壊し、君は死ぬ。それに、ツインズのシステムを組み込んで安定させているという事は、君は一生、ネイトから離れることはできない。それどころか、彼女が不慮の事故や病気で亡くなった場合、君も恐らく死亡することになる」

「嘘だ……そんなこと、摩周博士は話していなかった!! 乙葉浩介を捕まえて、その魂を引きずり出して解析する。奴の波長を調べて俺たちの魂に組み込む。そのために、俺を始め、ナンバーズの連中は、乙葉浩介を引っ張り出すために各地に散ったんだ……」


 その結果、もっとも効率のいい作戦を考えたニセ乙葉……ナンバーズは、要人暗殺事件を引き起こし、本物が怒りに我を忘れて現れるのを待っていたのであるが。

 未だ本物の動向がつかめないまま、現在に至っているということらしい。


――ガチャッ

 そのドゥアムの絶叫に似た叫びを聞いていた時、部屋の扉が静かに開く。

 そして疲れたような顔をしたクリスティンが室内に入って来ると、手にした報告書を京也とユング本部長に手渡した。


「これがネイトの知っている計画らしいわ。『人造神プロジェクト』、彼は自らの手で神の身体を作り上げ、そこに神を降臨させるらしいわね。そのためにも、神の魂が収まる器、つまり神の器を手に入れなくてはならないらしくてね。その器を簡単に作り出すために、器の継承者である乙葉浩介のクローンを作って実験を行っていたらしいわ。つまり、ドゥアムを始めとしたクローン体、ナンバーズって呼ばれているらしいけれど、すべては、摩周に情報を与えた妖魔がいるらしいのよ……」

「それが、伯狼雹鬼(はくろうひょうき)ということか」

「ええ。人造神についても、黒龍会に保護されていた摩周に伯狼雹鬼(はくろうひょうき)が話を持ち掛けたらしいわ」

「なるほどなぁ。ちょうど彼とも話をしていたが、どうやら二つの話が一つに繋がった。さて、ここまでの話で理解しただろう?」


 そうドゥアムに問いかけるものの、彼はすでに瞳から生気が消えかかっている。

 自分の信じていたこと、それが全て偽りであり、自分はただの実験体でしかなかったという事実が、彼から正気を奪い去ってしまっていた。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ