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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第一部・妖魔邂逅編、もしくは、魔術師になったよ、俺。

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第五十話・豪放磊落 、糾える縄の如し(ガチ妖魔の強さは、今までの妖魔の何倍?)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日と金曜日、日曜日を目安に頑張っています。

 空間結界。

 妖魔の作り出す特殊な空間の一つであり、平均的な大きさは一辺が100m程の立方体空間を生み出す。

 この中に外の世界と全く同じ世界を作り出すが、基本無機物のみ作り出すことができ、有機物は作り出すことができない。

 いや、正確には『魂を持つ有機物』を作り出すことができないだけであり、食材などは作ることができる。


 そして、この空間は作り出した妖魔が望む対象を閉じ込めることができ、閉じ込められたものは結界外部に干渉することができない。

 外部からは視認することもできないため、妖魔が獲物を捕らえるために罠として空間結界を作っている場合もある。


 そして今の場合。

 それは間違いなく、俺を閉じ込めるためであると認識できた。 



「確か、空間結界ってこんな感じだったよなぁ。それで、今、選ばれたのは綾○でした……じゃないわ‼︎ 俺だけかよ!!」


──シュンッ

 目の前から走ってきた虎人型妖魔が、鋭く伸びた爪で俺を引き裂こうとした。

 だが、その程度の速度ならブーストしなくても見える。

 軽くステップを踏んで華麗に躱そうとしたのだが。


──ズバッ‼︎

 軽く後ろに躱した筈が、胸元が引き裂かれ皮一枚引き裂かれた。

 うっすらと血が滲むが、痛みはそれほどない。


「ま、待った待った、その爪伸びるのか‼︎」

「伸びないと告げた記憶はないな。まあ、ここで死んでもらうから関係はないがな」


──シュシュッ

 次々と繰り出される爪の斬撃。

 なるほど、伸びた爪のさらに先、妖気を凝縮して見えない爪を作り上げているのか。

 目に魔力を集めたら、それがはっきりと分かる。

 いつもならゴーグルを装着するんだけれど、近接で来る妖魔相手にゴーグルだと視界が悪いので、直接目に魔力を集めたほうが速い。


 それに折角だから、この前買った魔導強化外骨格メイガスアーマーのテストを兼ねるとしましょうそうしましょう。

 本当ならカッコいい変身ポーズも付けたいところだけど、戦闘時にそんなことしたらリアル死ぬから。


──パチン

 軽く指パッチン。

 これで仮面とマントをつけた魔導紳士の出来上がり。魔導紳士って呼び方かっこいいよね。


「ふん。防具を着るのならともかく、そんな服程度でこのワシ、チャンドラの爪を止められるとでも?」

「そのチャンドラさんは、なんでこの俺を殺そうとするのですかぁ」


──ブゥン

 以前、トイレの妖魔を叩ききった魔導式マナフォトンセイバーを引き抜いて身構える。

 あ、気分はなんとなくジェダイ感満載だけどさ、俺、剣技なんて習ったことない。


「知れたことを。貴様が強者だからだ‼︎ 失われた魔術を操る人間が相手ならば、此方としても願ったり叶ったりだ‼︎」


──バヂッ、バヂッ

 チャンドラの爪とマナフォトンセイバーがぶつかり合う。

 火花らしきものが散り、お互いに間合いを外す。

 やばい。

 このチャンドラとかいう虎人、さっきの阿修羅男とは比べものにならないぐらい強い。

 しかし、よく見れば見るほどチャンドラはカッコいい。


 俺の好きな漫画家・真○譲治の漫画に出てくる獣人そのまんまじゃないか‼︎

 くっそ、ズルすぎるわ。


「……ほらほら、よそ見していると死ぬぞ?」


──ガギィィィィーン

 チャンドラの強力な一撃が浩介の胸元に突き刺さる。だが、鋭い爪は衣服を突き破ることができない。


「ふぅ。今のはマジやばかった。ということで、ここからは俺のターンだ‼︎ 城之内のように華麗に決めてやる‼︎」

「そ、それは負け犬……」

「そっちの城之内ちゃうわ‼︎」


 なんでデュエリストの方と間違えたかなぁ。

 って言うか、妖魔のくせに随分と現世界について詳しいなぁ。


「そらそら、そろそろこちらも本気で行かせてもらうぞ!!」


 そうチャンドラが叫ぶと、全身が真っ白に輝いて巨大化した。

 身長は4mほどの巨大な虎人、なんというか神々しさも感じられる。

 ただし、危険度はさらに上回っていた。


――バギィィィィッ

 鋭い爪の一撃をどうにかマナフォトンセイバーで受け止めた。

 だが、そのまま力任せに後方に吹っ飛ばされてしまう。

 祐太郎宅の壁に激突し、そのまま壁を破壊してしまう。

 もしも生身だったらミンチ確定の威力である。

 それでもどうにか体を起こして、ふらふらする頭を軽くたたいて正気を取り戻した。


「い、いててて‥‥いや、そんなに痛くはないんだけど、慣性っていうのは抵抗しきれないんだよなぁ」


 レジストリングがあるおかげで、打撃系攻撃に対しての耐性はある。

 それでもすべての衝撃を逃がしているかというとそうでもなく、この身に着けている魔法強化外骨格メイガスアーマーのおかげでダメージがなかっただけ。

 だが、チャンドラはそんなことなど知らないので、瓦礫から出てきた俺を見て呆然としている。


「う、うそだろ? 人間なら今の一撃で即死のはずだぞ!! 貴様はまさか妖魔か!!」

「こんなプリティな妖魔がいるか!! 俺は人間だっ!! 零式起動!!」


切り札である強化外骨格・零式を起動する。

 瞬時に魔導紳士スタイルから、鎧を付けたヒーローに姿が変わる。

 実践投入は初めてだが、目の前のこいつ相手ならちょうどいい。


「そ、それはなんだ!!」

「内緒なっ!!」


 零式を纏ってから、マナフォトンセイバーをしまい込む。

 高速詠唱で俺の周囲に12本の力の矢(フォースアロー)を生み出すと、次々とチャンドラに向かって撃ち込んだ!!


――シュシュシュシュッッッ


「ふん、そんな弱い魔術などっ!!」


 そう叫ぶや否や、チャンドラの全身が輝き体毛が針のように硬質化し、飛び交う力の矢(フォースアロー)を次々と破壊していく。


「うわっ!! そう来るかぁ!! 次弾セット!!」


 今度は力の矢(フォースアロー)炎の槍(フレイムランス)を混ぜ合わせる。

 消費魔力は上がったものの、それでもまだまだ余裕がある。

 それをランダムに打ち出して、チャンドラの隙を狙いつつ次の一撃に備える。


「同じ手が、二度も通用すると思うなぁぁぁ」


――キィィィィィィィィン

 再び体毛が打ち出され、すべての魔法が迎撃された。

 その直後!!


「そんじゃ、これはどうだよっ!!」


 力いっぱい地面を殴りつける!!

 するとチャンドラの四方を囲むように巨大な岩の壁が生み出された。

 

「大地の壁っ、距離と範囲拡大っ」


 やがて天井まで作り出して、さらにチャンドラを覆う壁の周りにさらに壁を作り出す。

 完全にチャンドラを閉じ込めると、チャンドラから発している妖気をじっくりと感知する。 


「けっ。どうせ同じことよっ!!」


 中のチャンドラが動いたのを確認して、その正面に回り込む。

 ドゴッバゴッと鈍い音が響いてくるのと、俺がその方角にめがけて大量の氷の槍(アイスランス)を作り出したのは同時。

 やがて壁に亀裂が入ると、壁が破壊されてチャンドラが出てきた!!


「このクソガキがぁ!! こんなもので俺を閉じ込め‥‥え?」

「チェックメーイト!!」


 残存魔力を考えて、氷の槍アイスランスは8本だけ。

 ただし、威力64倍の強力無比なやつ。

 今までのものとはわけが違う!!


「く、くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 叫びつつ全身を輝かせ始めたがもう遅い!!

一斉に放たれた氷の槍アイスランスは一直線にチャンドラに向かって降り注いで!!


――ガギガギガギガギッ

 突然チャンドラと俺の間に姿を現した着物姿の女性が、手にした剣で全て切り落とした!!


「は、はぁ‥‥って誰だ貴様っ!!」


 とっさに叫ぶが、女性は俺に向かって右手を広げて差し出す。


「ちょっと待って、害意はない」


 そう告げたと同時に、呆然としているチャンドラに向かって走り出すと、そのままチャンドラを力いっぱい蹴り上げた!!


――ドゴバギグシャッ

 俺の作った石壁の天井を突き破って、血まみれになって後方に吹き飛ぶチャンドラ。


「なんで戦っているかなぁ。私は言ったよね? 話し合って、まずは私たちの存在を知ってもらおうって。なんで殺し合いしているかなぁ‥‥」


 黒い長髪おかっぱの女性が、無表情のままチャンドラに向かって叫ぶ。


「だ、だから拳でわかり合おうとしていただけじゃねぇか!!」

「なんで本気で殺しに向かうかなぁ‥‥羅睺も話していたよね。乙葉浩介とその友達は敵対意思がない限りは手出ししないって。なんで私の言う事も聞いてくれないかなぁ‥‥」

「け、計都姫、ちょっと俺の話も聞いてくれ!!」


 ユラリと剣を持ったままチャンドラに向かって歩いていく女性。

 いや、味方なら構わないんだけれどさ、今の話をちょっと詳しく聞かせてもらえないかなぁ。


「あ、あのですねおねーさん。とりあえず仲間割れはその辺で、詳しい話を聞かせてもらえませんか? ほら、今の話だと、俺に対して敵対する意思はないんでしょ? だったら俺も何もしないからさ!!」


 敵対妖魔じゃないなら、俺は何もしないししたくないからね。

 すると、計都姫と呼ばれた女性が立ち止まって、俺のほうに振り向いた。


「君が許すなら、この場は収めてあげる。よかったね戦捺羅(チャンドラ)

「あ、ああ、さっきはすまなかった」


 血まみれの体に妖気を循環しているのか、チャンドラは全身を淡く輝かせて傷を癒している。

 まあ、仕掛けてこないならそれで構わないし。


「では、立ち話もなんですから、私の店まで案内しますわ」

「店?」

「ええ。妖気遮断結界も施してありますから、外部から面倒くさい第6課が殴りこんでくることもありませんので」


 そう説明を受けて、半信半疑ではあるが俺はついていくことにした。



 〇 〇 〇 〇 〇



 札幌市、円山。

 裏参道の一角にある小さな喫茶店。

 俺はチャンドラと一緒に、計都姫の乗ってきたワゴン車に乗って案内された。

 一応事情はlinesで祐太郎に伝えてある。

 まだ俺たちが襲われたことについては瀬川先輩たちには伝えていない、まあ、明日にでも学校で説明することにするさ。

 思いっきり怒られそうだけれどもね。



「喫茶・九曜‥‥そのまんまじゃん!!」


 思わず突っ込んでしまったが、俺のその突っ込みには無関心なのかチャンドラと計都姫は店内に入っていく。

 カウンターと3つのテーブル席の小さな喫茶店。

 お客さんは一人だけ、カウンターに座っている老紳士のみ。


「いらっしゃいませ‥‥って、姫様お帰りなさい。そちらの少年が、噂の子?」


 カウンター内の店員らしき人が、嬉しそうに話しかけてきた。

 まあ、どんな噂なのかちょっと興味が尽きない。


「そう。綾女の話していた現代の魔術師。戦捺羅(チャンドラ) も危なく殺されるところだった」

「俺はまだ負けたわけじゃねぇ!! 俺にはコーヒーを頼む」


 ぶつぶつと文句を言いながら、チャンドラはカウンターへ。

 おれは計都姫と一緒に一番奥のテーブル席へ案内された。


「あの、一つ聞いていいですか? 綾女ねーさんと知り合いなのですか?」

「昔はここに住んでいた。今はふらふらとあちこちに飛んでいっているから」


 おおう、それはちょっと安心した。

 知り合いの知り合いという事なら、少しは危険度は下がったと思っていいよね?


「まあ、時間をかける気はないから聞きたいことを教えてほしい。乙葉浩介、貴方は私たちの敵? それとも味方?」


 表情が変化することなく、計都姫が淡々と問いかけてくる。

 俺としては敵対しなければそれで構わないし、共存できるのならそれでもいいと思っている。

 こうやって聞いてくるっていう事は、少なくとも俺と敵対する気はないんだろうなぁ。


「俺は、人間と妖魔は共存できると思っている。だから、俺の話を聞いてもなお攻撃してくる奴は敵だし、話し合いで解決できるなら味方というか、まあ普通?」

「その普通が判らない。私たちは、今までは人間たちにまぎれてひっそりと生きてきた。これは正しい意味では共存ではない。けれど、私たちは人間をむやみに襲ったりはしない。精気が必要な時だけこっそりと憑依して分けてもらっているだけ。これは、貴方の言葉の意味では敵対?」


 また難しいところを。

 ようはたけモッコス先生のようなものかぁ。


「ん~。憑依して精気を奪うことで、対象の人間が苦しむのなら敵対かなぁ」

「‥‥できるだけ気をつけてはいる。綾女のように」

「なら普通で。あんたたちがこれからどうするのか判らないけど、まさか、それだけを聞きたくて俺を襲ったの? そこのチャン虎さんは」

「‥‥今、発音が違ったような気がするが、気のせいか?」

「あ、気のせい気のせい。でもさ、計都姫さんの話で、なんでいきなり俺に向かって攻撃してくるのかなぁ」

戦捺羅(チャンドラ) は脳筋だからね。あ、私はここのマスター代行のハルフェ・ライネン。一応上級人魔ね。カウンターの老子は羅睺さん。十二魔将の第3位だよ」


 うん。意味が分からない。

 そして老子さん、頭を下げつつ俺を睨まないで、心臓わしづかみされたようで怖いから。


「どうも、乙葉浩介です。それでですね。この後は俺をどうにかするのですか?」

「‥‥敵対しないなら、何もしない。家まで送ってあげるだけ」

「計都姫、それじゃあ分からないって。老子、説明してあげて」


 脳筋チャンドラと淡々計都姫では、話が進まないとハルフェも思ったのだろう。

 すぐさま老子が椅子を回して、俺のほうを向く。


「我々は初代妖魔王配下でね。この世界に来ている三代目妖魔王配下とは敵対している。幸いなことに、君の言う妖魔と人の共存については、初代の理念とも一致している。それでだ、あと数年、正確には2年で転移門(ゲート)が解放され、妖魔王がこの世界に侵攻を開始する。我々はそれを阻止しなくてはならない」


 うん。

 いきなりスケールの大きな話になったねぇ。

 まさかとは思うけれど、そこに俺を巻き込もうというの?


「俺に戦えと?」

「いや、我々と敵対しないでほしい、それだけだ。君の持つ力がどれくらいなのか、私には判らない。ただ戦捺羅(チャンドラ) が本気でやりあって傷一つない人間など、私は見たことがない。ならば、敵対せず静観するのが一番と思っている」

「まあ、妖魔との共存が望みなら、力を貸してくれたら嬉しいけれどね。ほら、人間の世界にも、私たちを敵対存在として付け狙ってくる奴らがいるでしょ? 第6課とかいうやつら。あそこに協力だけはしてほしくないのよ?」


 う~ん。

 この話が事実なら、俺としても願ったりかなったり。

 だけどここですぐに返答なんてできない。

 

「この話ですが、戻って仲間たちと相談します。結論はそれからでいいですか?」

「仲間がまだいるとは。まあ、それでもかまわないよ。戻って話し合いと言っている時点で、少なくとも敵対意思がないことだけは理解できたからね」


 おおっ、老子は物分かりがいい。

 いや、計都姫がダメとかじゃないよ、なんていうか、話し合いになれた老齢な男って感じだよね。


「それじゃあ、戻って話し合ってみますわ。報告はまたここに来ても?」

「ええ。いつもは普通の喫茶店だからね。では、帰りは私が送ってあげるわ」


 エプロンを外しつつ、ハルフェがカウンターから出てきた。

 そして俺は皆に頭を下げてから、ハルフェさんに自宅まで送ってもらうことにした。

 

 はあ。

 この状況、みんなにはどう説明してよいものか頭を抱えたくなってくるわ。

誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

今回のネタは目立って3っつ、目立たず2つ。


いつも感想で正解を叩き込んでくれてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] なぜ脳筋を使者にしてしまったのか…! 暇だったのかな?
[気になる点] ネタが散りばめて有ると誤字なのかネタなのか分からなくなるよね!
[一言] ピクシー サキュバス&ネコマタ「聞き捨てならない私達はプリティだよ」
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