第四百四十九話・(予断を許さないけれど、どうとでもできる……はず)
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帝都ブラウバニアの悲劇。
その真相を知るべく、俺は『嫉妬のアンバランス』の案内で、朽ち果てた帝城の最上階へと向かった。
そして儀式に使われるらしい、太陽の光注ぐ大広間に到着したとき、俺は目の前の光景に思わず……ツッコミを入れてしまった。
「いや、金色の骸骨が太陽の光を浴びている姿ってどういうこと?」
「おお、やはり白桃姫の結界を越えてきたのは、乙葉殿であったか……」
俺の言葉に反応してこっちを向くと、プラティ・パラティ老師が浴衣のようなものを羽織り、立ち上がった。
「いや、あ、はい、俺ですけれど。ここで何が起こったのか、教えてくれませんか?」
「うむ、乙葉殿は知る権利があるからのう……実はな」
その場にどっかりと胡坐をかくプラティ老師。
それにつられて俺も目の前に座り、じっと老師の説明に耳を傾けている。
そして分かった事実。
どうやら白桃姫は『災禍の赤月』に関する何かを見つけたらしく、それを知った伯狼雹鬼が王城を攻撃。
証拠隠滅をするかのように白桃姫を始末し、さらに帝城まで破壊したらしい。
その時の攻撃の余波で帝都が崩壊したものの、間一髪で白桃姫が最後の力を振り絞り、帝都全域をこの超空間結界の中に封じ込めたそうだ。
だが、そこで白桃姫はすべての力を失い、休眠期に突入。
そして白桃姫以外ではここから出ることも、空間結界を解除することもできないため、この場で白桃姫の回復を促していたとのこと。
「そこで、わしはこのオリハルコンの身体に日光を受け、光を魔力に変換して白桃姫に注いでいたのじゃよ……まあ、白桃姫以外にももう一人、最強の魔族の回復も促していたところじゃがな……」
「なるほどねぇ。しっかし、老師の身体って化け物かよ。オリハルコンが太陽の光を受けて魔力を放出するって、俺は初めて聞いたんだけれど」
「はっはっはっ。こんな大切なこと、教えるはずがないじゃろうが」
そりゃそうだ。
魔族にとっても切り札のようなものだからな。
「それで、白桃姫の回復には、どれぐらいの時間が必要なんだ?」
「今の白桃姫は、魔人核そのものじゃ。濃厚な精気を大量に摂取したとしても、100年は再生は不可能じゃった……が、今は違う。乙葉殿、そなたの神威を白桃姫に注ぐのじゃよ」
「え、俺の神威を? そんなことをして大丈夫なのか?」
そう問いかけると、プラティも難しい顔をしたのち、静かに頷いた。
「濃厚なる生気より、神威の力による再生の方が加速する。完全なる再生は不可能だろうが、意識は戻るはずじゃ」
そう告げてから、プラティ老師が俺に手を差し出す。
そこには、テニスボール大の黒い球体が握られていた。
「これが白桃姫の魔人核。これに力を」
「ああ、分かった……」
受け取った魔人核。それを両手で握りしめると、ゆっくりと体内から神威を集め、それを黒い表面に向かって注ぎ込む。
――シュゥゥゥゥゥ
最初は魔人核表面を流れ、そして床に向かって零れ落ちていた神威だが、それが少しずつだか核の内部に浸透を始める。
『ん……』
気のせいか、核の中から白桃姫の意識が聞こえてくる。
よし、このまま少しずつ、ゆっくりと時間を掛けて神威を注ぐことにしよう。
………
……
…
俺が白桃姫の魔人核に神威を注ぎ始めて7時間後。
すでに俺の手の中から注がれる神威は、床にこぼれることなく核の中に全て吸い込まれていく。
――ピクッ
そして核が揺れたかと思うと、それは突然ひび割れ、砕け散り。
――ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
黒い霧が噴き出したかと思うと、それは俺の目の前で渦巻く竜巻を形成。
「ふうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。妾、復活じゃよ」
――ジャキーーーン
竜巻が真っ二つに裂け、そこから小さい白桃姫が姿を現した。
うん、幼女だな。
幼女化した白桃姫だな。
「ほほう、一時的に肉体を構成したか。しかし、それも長くは続くまい」
「プラティや、その通りじゃよ。肉体を構成するだけの力は戻っておらぬし、なによりも乙葉の神威により妾の魔人核は『魔神核』へと進化を遂げた。つまり、魔族の白桃姫ではなく魔神ピク・ラティエとなったのじゃよ! 乙葉や、大儀であった……というかありがとう」
「いや、それよりもなんで幼女? その姿で『おはようじょー』とか言い始めたら、色々と萌え落ちる人がでて来そうなんだけれど」
うん、なんといというか、白桃姫・幼稚園児モードという感じだよ。
「この姿はな、まだ魔神核が安定していないからじゃよ。ということで、今しばらくは乙葉の身体を借りることにするぞよ……」
「え、それってどういう意味なの?」
そうえ問いかけるや否や、幼女・白桃姫の姿が黒い霧に散り、俺の体内に飛び込んできた。
『ピッ……神の器に魔神核が注がれました』
「ちょっと待てぃぃぃぃ、白桃姫、ちょっと待って、一度俺の身体から出てくれない? 今の俺の身体ってさ、神の器なんだよ、だから何が起きるか分からないんだけれどさ」
『ふむ。これが伯狼雹鬼が求めていた神の器じゃな』
「ちょいまち、それってどういうこと? やっぱりあれか? 伯狼雹鬼は災禍の赤月を呼び起こして封印大陸に封じられている魔神ダークを復活させ、この体に憑依させるのが目的っていうことか?」
ここまでは、今までの状況からの推測。
そして多分だけれど、これは正解だと思うんだよ。
ただ、そうなると俺の肉体が破壊神のパーツの一つっていうことになるんだよ、災禍の赤月の目的は『破壊神の残滓』を集めることだから。
ってあれ、破壊神と魔神ダークって違う存在だよな?
『待て待て、出たくとも外に出られぬ。どうやら魔神核が再生するまでは、外に出る力も失われてしまっているようじゃ。だから、今しばらくはおぬしの身体に居候させてもらうぞよ』
「うっそだろ?」
マテ、それはシャレになっていないんだけれど。
『それよりも、乙葉の中にある聖徳王の天球儀というのか? これに記されている秘儀についてレクチャーしてやるから、今しばらく待つがよい。これは空間術式の祖たるラティエ家が、人間に伝えた秘儀のようじゃからな』
「うぉい、今、さらっとトンデモないことを話したよな。それってどういうことなんだよ」
『待て待て、まだおぬしの魂に触れることも出来ぬ。ゆえに表層から読み取ることが精いっぱいでな、解読に時間が必要じゃ……しかし、ここに伯狼雹鬼の目的も記されていると思うぞ』
そ、それは知りたい。
ということで、今しばらくの間、俺は白桃姫を体内に住みこませることに同意するしかなかった。
というか、出る方法も分からないらしい。
さて、この次は、この超空間結界の解除と、ここに封じられている魔族の開放。
そして日本への帰還だな。
やることが多すぎて大変だわ。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




