第四百二十一話・残忍酷薄。飛んで火に入る夏の虫?(バトル勃発? いやいや、其れ処じゃないわ)
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妖魔に奪われた天球儀の奪還のため、俺と祐太郎は一路、妖魔たちの逃げ込んだと思われる、西十六丁目方面へと移動を開始。
すでにあちこちでパトカーが走り回っていたり、警察や内閣府退魔機関の第四課の人たちの姿も見え隠れしている。
とせちらも制服を着ているので一目瞭然であるのはよいとして、俺と祐太郎の方を見るたびにどこかに連絡をしているのはどういうことだろうか。
「あ~、あれは俺たちが動いていることについて、第6課に確認を取っているとみた。ほら、第四課の連中は俺たちを見ても特におかしな動きはしていないように見えるけれど、警察は無線で確認を取ってうなづいているだろう?」
「確かに、祐太郎の言う通りだわ。ということは、そろそろ要先生からも連絡が届くっていうことか?」
そう考えるや否や、スマホがけたたましく鳴り響く。
「ほらな……もしもし、乙葉です」
『こんにちは、ということで瀬川さんたちから話は聞かせてもらったわよ、国宝を盗んだ妖魔を追いかけているって本当なの?』
「あ、よくご存じで。確かに俺たちは、国宝を盗んだ妖魔を探していますけれど」
『その盗まれた国宝に、何か隠されているっていうことかしら? 瀬川さんたちはかたくなに口を開いてくれないのだけれど、そういうことよね?』
あはは~。
ばれて―ら。
でも、天球儀のこととは思っていないようだから、ここは誤魔化しの一手に限る。
「まあ、そのあたりです。この件って、俺たちが調査をしていても問題ないですよね?」
『本当なら問題ありって言いたいところだけれど。まあ、相手に妖魔が関係しているっていう時点で、貴方たちにも協力要請をした方がいいって忍冬警部補に言われていたので。それじゃあ、正式に調査依頼を行います。警察各局にはこちらから連絡はしておきますので、うまく現地で立ち回ってね。今、忍冬警部補から築地君にも連絡を入れている最中だから、詳しい話は彼からも確認して』
「はい、あざっす。それじゃあ調査を開始しますので」
そう告げてスマホを切り、祐太郎の方を確認すると。
「あ、はい、了解です、しっかりと釘を刺しておきますので」
なんだろう、俺のことを色々と話しているような気がするんだけれど。
「ふぅ……オトヤン、師父がやり過ぎるなってさ」
「まあ、あの様子だとそんなところだろうなぁ。それで、祐太郎のオーラセンサーに反応は?」
そう問いかけた時、祐太郎は目をつぶって両手を左右に広げる。
パッシブセンサーのように目に見えないオーラの波長が周囲に広がっていき、対象物を見つけて来るのだろう。
「……んんん?」
「いたか?」
「いや、いたというかなんというか……うーん、なんだろう、これ? とりあえずついてきてくれるか?」
「あ、ああ」
とりま、祐太郎のいう場所に向かって箒を飛ばす。
そして目的の場所までやっては来たのはいいんだけれど。
一六丁目にあった幼稚園の真ん前の道路、そこが森のように変化している。
そしてそこで倒れている妖魔が一体。
「……なんだなんだ、なにがどうなっているんだ?」
慌ててゴーグルをセットして、目の前の森をチェック。
『ピッ……鏡刻界の中央大陸、マレフェネヴィル森林の一部と札幌市の大通西一六丁目の一部が入れ替わった状態』
「……はぁ?」
しかもぶっ倒れているのは藍明鈴だよな、一体どういうことなんだ?
そう思っていたら、祐太郎がそう考えている間にも、祐太郎が明鈴に近寄ってきて蹴りを一発。
ま、まあ、妖魔だし敵性存在的だから大丈夫か。
「ゴフッ、ゲフッ……な、なにがどうなったのよ、一体!!」
「それはこっちのセリフだわ、こんなところで何をしているんだ?」
腹を押さえつつ横すわりする明鈴。
そして目の前の祐太郎に蹴り飛ばされたと理解したのか、瞬時に腰から銃を引き抜いたので、今度は俺が超高速で力の矢をぶっ放す。
――ガギィィン
「おぉっと、危ないものは没収な。藍明鈴、それはなんだ? どうしてこんなところに鏡刻界の地形が現れたんだ?」
「……さあ、ね……って言いたいところだけれど、私も詳しくは知らないわよ。ただ、南雲がこの場に黒狼焔鬼を召喚して天球儀を渡し、彼がそれを起動させて鏡刻界とこっちの世界を入れ替えただけよ」
なるほどなぁ。
あの天球儀に、そんな力があったのか……ってウッソだろ?。
あれは俺が作ったものだぞ? そんな力があるはずないだろうが。
「へぇ、つまり黒狼焔鬼ってのは、天球儀の力を使って地形を入れ替えたと」
「そうね、そういうことよ。あの天球儀の正体、それは太古にこの世界にやってきた古の魔術師の残した遺産。大気中に存在する魔力を集め、それを神威に変換することができる『神威発生装置』なのよ……その神威を使って、黒狼焔鬼さまは、二つの世界を入れ替えるのに成功したのよ」
――ゲッ、ガーン!!
あれに封じられていた神威を使って、二つの世界を入れ替えたのかよ。
でも、なんてそんな面倒くさい……ってそうか。
「水晶柱に魔力を集めるため、その周囲の土地を鏡刻界と入れ替える……それが目的かよ!」
そう呟くと、明鈴は不敵な笑みを浮かべつつ。
「ふふっ。そういうことなのね、私も初めて知ったわ」
「……え、まさかお前、黒狼焔鬼から作戦の全容を知らされていないとか?」
「私が命じられたのは、貴方が持っていたという天球儀、それのオリジナルを奪取するようにと言われたこと、そしてあなたたちがおってきたら、時間を稼ぐように言われたこと。それ以外は、南雲と黒狼焔鬼さましか知らないわよ」
んんん?
つまり明鈴は捨て駒っていうことかな?
「なるほどなぁ。それで、黒狼焔鬼はどこにいった?」
「さあ、ね。そんなことは私も知らないわよ。実験的にこの土地を入れ替え終わったら、満足してどこかに転移したのですからね」
「転移能力保持者とは、また厄介な。それで、お前はこの後はどうするつもりだ?」
――シュンッ
一瞬でブライガー装備に換装する祐太郎。
それに合わせて俺も白亜のローブとセフィロトの杖に換装し、印を紡ぐ。
「そりゃあ、貴方たちを止めるのが私の使命だからね……だから、本気で行かせてもらうわよ」
そう呟くと同時に、明鈴の両手に銃が握られる。
コルトM1877の二丁拳銃、それを俺たちに向かって構えると、一瞬のうちに全弾ぶっ放してきた。
いや、いくらダブルアクションリボルバーだからって、一瞬で六発全弾打てるって化け物かよ!!
「ちっ!」
――ドドドドドドッ
銃声が聞こえたと同時に力の楯を展開したものの、三発目でそれは破壊され、二発が俺のローブに命中、そのまま炸裂してローブを吹き飛ばした……ってマジか!
「な、な、なんなんだその銃は!!」
「あら、こっちの世界の有名なガンマンの銃よ? 私の能力で召喚し、魔導具として再構成させた魔導兵装。たしか右のこれは……サンダラーって言ったかしら? 左はライトニングよね。でもこれを受けて平気だなんて、流石は現代の魔術師っていうところかしら?」
サンダラーとライトニング?
ちっょと待て、それってあれだろ、アメリカのガンマン『ウィリアム・ヘンリー・マッカーティ・ジュニア』の愛用していた銃だよな。
「ビリー・ザ・キッドか」
「そう、そのなんとかキッドよ。私は古今東西、いかなる武具をも召喚して自在に操ることが出来るから。ということでねそろそろ死んでね、さようならグッバイ」
――チャキッ
明鈴が銃を軽く振る。
その瞬間に魔法的にリロードしたのか、こんどは祐太郎に向かって銃口を向けると、さっきと同じように一瞬で六発の弾丸を射出した。
だが、祐太郎はその全てを、腕に装着したブライガーの籠手で殴り飛ばす。
「まあ、鍛えた詠春拳の前では、銃弾など稚戯に等しいな」
「詠春拳のハードルを上げるなぁぁぁ!! って、こんどはこっちかよ!!」
素早く12式力の楯を展開、こんどは強度上昇。
すると俺の目の前で全弾停止し、そして黒い霧のように散っていく。
魔力を凝縮して作り出した弾丸であるため、欠片もその場には残らないんだけれど。
「そこの女、銃を下ろして手を上げろ!」
そんなことをしているうちら、通報を受けたらしい警察官たちが登場。
しっかりと防護盾を構え、密集態勢で固まっている。
でも、明鈴はニイッと笑って、右手の銃を消して呪符を生み出すと。
「これも、黒狼焔鬼さまから授かった能力でね。あの方ほどの力はないし、回数も限定だけれど……こういうこともできるのよっ!!」
――スッ
手にした呪符を警察官たちの足元に飛ばす。
その瞬間、彼らの立っていた場所が瞬時に森に変化した。
「明鈴! まさかお前も黒狼焔鬼のようなことが出来るのかよ!!」
「警察官たちはどこにいった、まさか」
「ご名答。鏡刻界のどこかの場所じゃない? しかもさっきとは違うから、私でもこれはわかるわよ」
先ほどまで警察官たちが立っていた場所は、透き通った木々と草むらに変化している。
「よりによって水晶の森かよ」
「それじゃあ、私はこれで失礼するわね。早く助けにいかないと、最悪、あの警察官たちは野良魔族や魔物の餌になっているかもね」
「こ、の、や、ろうっ!!」
「それじゃあね~」
そう呟いてから、明鈴は再び呪符を取り出すと、こんどは自分の足元に札を落とす。
その瞬間、彼女が立っていた場所を中心に、直径1メートルほどの池が出来上がった。
「今度は水かよ……オトヤン、早いところ警察官を助けに行くぞ」
「おう……って、祐太郎。そこの池、それ海水だわ」
うん、天啓眼でしっかりと海水表記されている。
深さとかそういうのは一切不明な、鏡刻界の海。
つまり、明鈴はあっちの世界で海の真ん中に浮いている可能性もあるっていうことかよ。
「はぁ……しっかし、厄介な能力だわ、使っている奴が間抜けで助かったっていうところか」
「結果オーライっていう感じだけどな、それよりも急ぐぞ」
鏡刻界に安全に向かう方法は、水晶柱を使って鏡刻界への扉を開くだけ。
そのために俺たちは、再び妖魔特区の中へと戻ることになった。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




