第367話・進退両難? 君子じゃないけど危うきに近寄らず。(そして楽しかった時間は終わりを告げる)
『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日、金曜日を目安に頑張っています。
魔族が作り出す術式の中でも、空間結界系はとにかく魔力の消耗が激しい。
神威からの魔力転換を行なっても、人間である俺が使うと秒単位で魔力が減り続けるのはあまりにもキツすぎるわけで。
魔皇紋により多少は軽減されているものの、やはり人間では使えない代物ならば……人間が使えるように改良するのはお約束だよね?
それはまた今度、時間のあるときに行うことにして、今はこの現状をどうにかクリアしたいところである。
──ゴキュッゴキュッ
「ぷは〜。魔力回復薬・りんご味ウメェ」
「オトヤン、なぜにりんご味なんだ? あれは確かスポーツドリンク系の味だったよな?」
「まあね。それじゃあ味気ないから、りんごのフレーバーを添加してみたんだよ。ほら、祐太郎も飲んでみたらわかるさ」
空間収納から新しい魔力回復薬を取り出して放り投げると、祐太郎はそれを受け取ってから、腰に手を当てて空を見上げるように飲み始める。
──グビッグビッ
「ぶっはぁ。なるほど、これは甘くて飲みやすいな。これも作るのにレア素材が必要なのか? 値段は?」
「ナント・カナリ草って薬草が必要でさ。カナン魔導商会で購入したら高くなりそうだからさ、この代用品を近所のスーパーで探していてね。そうしたら見つけたんだよ、代用品を」
「へぇ。それってなんだ?」
「サラダトマト」
はい、祐太郎がフリーズしましたが。
天啓眼で魔力回復薬に必要な成分を色々と調べて、ほぼ同じ効果の素材を探していたら、トマトに含まれるリコピンが似た効果を発揮するんだわ。
リコピンに魔力付与を行い、そこから魔力回復効果のある『マナピン』という異世界成分を抽出する事で、魔力回復薬の素材用の粉末の一つを作れる。
大体ナント・カナリ草一束とトマト大玉二つが同じぐらいだから、これは画期的発見だったよ。
なお、それに気がついて魔力回復薬を量産したら、カナン魔導商会で薬草セールが始まってそっちの方が安くなっていたことは内緒だ。
「サラダトマト……か。因みにだが、野菜ジュースでも効果はあるとか?」
「いや、それがさ……野菜ジュースの成分を魔力で遠心分離してある成分を抽出するとさ……これができたんだよ」
空間収納から取り出しましたる飴の缶。
それを祐太郎に放り投げると、そこから飴玉を一つ取り出して眺めている。
「鑑定できるだろ?」
「ああ、まあ簡単に……って、ダイエット飴? マジか?」
「ふふん。それ一缶で原価は10万円を切った。一粒で大体2500円、それで確実に1kgは痩せられるから、高いか安いかは人それぞれっていう事だろう?」
「副作用は?」
「一粒で一キログラムの体脂肪を水に変換する。それはすぐに吸収されてオシッコになって体外に排出されるので、飲んでから10分ほどでトイレにダッシュ!! 以前のと違うのは、飲んだ後でどこの脂肪を充填的に削りたいかイメージしたら、そこから消えるっていう事だな」
因みにだけど、これはカナン魔導商会に買取依頼をしたら個数制限付きで買取可能だった。
従来品の販路を脅かすため、あっちの世界でも取り扱いにはかなり慎重らしくてさ。
「乙葉くん、言い値で買いますわ!!」
「へ? あ、あ〜、新山さんと立花さんか」
「見学の方は無事に終わりましたよ。乙葉くんたちは怪我はないようですね?」
新山さんが診断で俺たち二人の様子を見てくれたらしく。俺の怪我はもう回復薬で治ったし祐太郎は闘気治癒で自己治療したから。
足りないのは魔力のみ。
それも、魔力回復薬を飲んだのでそれなりには回復しているんだけどさ。
そもそもの魔力値が高すぎるので、全体的にみたらかなり減っているように見られる。
「それで、いきなり財布を取り出して万札を見せてくるのはどうかと思いますがね? 幾つ欲しいの?」
「その缶一つ、全て頂きますわ」
「はいはい。10万円でいいよ、同じ魔法使いの仲だから」
「あら、三倍はふっかけてくるかと思いましたわ」
いくら俺でも、そこまでアコギじゃないわ。
そう思いつつも新しい缶入りダイエット飴を取り出して立花さんに手渡し、お金を受け取る。これで次の分の素材購入資金は手に入ったからヨシ。
「それでね、さっきのあの途轍もない魔力反応は何? 魔族とかとも反応が違ったような気もするし、今まで感じたことがない魔力だったから」
「感知能力の低い私でも感じましたわよ」
二人の言葉を聞いて、俺と祐太郎は顔を見合わせる。
「多分、俺の空間収納に収めてある魔導具だな」
「ここでまた取り出すも危険だから、札幌に戻ってからでも説明する。まあ、戻ったら戻ったでやる事多すぎるが……」
祐太郎の言う通り。
休みを利用して、俺たちは遠野の様子を見に行きたい。
座敷童子の故郷がどうなっているのか、まだ魔族に襲われているのかなどなど、調べないとならないことが多すぎるんだわ。
「それじゃあ、札幌に帰ったら教えてね。どうせ妖魔特区の中で話をするのでしょう?」
「新山さんの言う通り、あそこが一番安全な場所だと思うからさ。俺としても、この魔導具については取り扱いを慎重にしないとならないと思っているし」
「あら? 乙葉くんにしては慎重ですわね」
「いや、オトヤンは意外と慎重だぞ? 昔は石橋を叩いて渡るレベルだったが、今は石橋を叩いてから強化術式を組み込んでから歩くようになったから」
そうそう。
魔法が使えるようになったから、より慎重に物事を進めたくなる。
って、ひょいひょい色んなことに首を突っ込んでいる俺が言うことではないんだけどさ。
「さて、そろそろ東京駅に戻るか」
「そこから空港に移動して、飛行機で千歳までゴーアゥエイ。まあ、俺たちは帰りも空の旅だけどさ」
「私専用の、魔法の絨毯も欲しいところですわね? 言い値で買いますわよ?」
「実費で作ってやるよ。量産化には成功したからさ」
「それはお願いしますわ。それで、実費とは?」
立花さんの問いかけに、祐太郎と新山さんが腕を組んで深く考え込んでいる。
「……私は、鉛筆20ダースでした」
「俺はどうだったかな? そんな感じか?」
「え? 鉛筆? それで魔法の絨毯が購入できますの?」
──ザワッ
あ、立花さん声が大きい。
近くで休んだり中庭を散策している生徒たちが立ち止まって驚いているじゃないか。
「ま、まあ、魔法使い特権で。因みに魔法の絨毯とかの飛行免許も必要だから、先にそれを取って来てからと言う事で。国家登録魔術師の証明と飛行許可免許があれば、身内価格で作ってあげるわ」
これは仕方がない。
まあ、鉛筆二十本でまたダイヤモンドを作って納品すれば……あ〜、まだ取り扱いは停止なのですね、わかりました実費で作りますよ。
一時期、やり過ぎたからなぁ。
「わかりましたわ。では、夏休み前には免許をとって来ますわ」
「はいはい、よろしく。そんじゃ、戻るとしますか」
「そうだな。怖いおばさんがこっちに歩いて来ているから、とっとと退散しますか」
「怖いおばさん? あ、燐訪議員が走って来ましたよ?」
──シュタタッ
大急ぎで前庭から外に出ると、そこからは魔法の箒を取り出して飛び乗り、東京駅まで高速移動。
新山さんの魔法の絨毯には立花さんも飛び乗ったし、祐太郎は俺の前を飛んでいるから問題なし。
「それじゃあ、久しぶりの札幌まで戻ることにしますか!!」
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
──国会議事堂前・前庭
乙葉浩介たちが国会議事堂の近くに来ていることを聞いた燐訪は、現在進めている案件についての協力を求めるために、乙葉たちの元へと向かった。
向かったのはいいのだが、彼女の気配を察した乙葉たちは前庭から外に出ると、魔法の箒などでその場から逃走。
今から車を手配して追いかけたとしても、魔法の箒などは高度を上げられると制限速度が変化するため追いかけることは実質不可能。
「逃げられたわ……今回の案件、どうしてもあの子たちの力が必要なのに」
ギリギリと親指の爪を噛む燐訪。
すると、その後ろからやってきた議員が燐訪に話しかけた。
「まあ、燐訪議員は乙葉たちにとっては敵のように認識されているらしいからなぁ。今日のところは、あいつらは抜きで話を続けましょうや。俺としても日本政府との協力関係が取れるかどうか、その話し合いの前の打ち合わせ程度と考えていましたから」
燐訪に話しかけているジェラール・浪川は、懐から一枚の呪符を取り出すと空に向かって投げ飛ばした。
するとそこから、鳥のような獣魔が姿を現れた。
「飛泉凰牙、透明化して乙葉らを追いかけや。さっきの化け物のような魔力の発信源はあいつだから、それがなんなのか確認して来てくれ」
──ヒュンヒュン
ゆっくりとジェラールの頭上を旋回すると、飛泉凰牙ほ姿を消して乙葉たちの魔力を追跡し始めた。
「さて、それじゃあ戻りましょうか。日本と中国、二カ国共同事業である『異世界トンネル』の建設及び運用計画について。しっかりと話し合うための下準備をして来いって、俺も国家主席から言われていますから」
「わかっているわよ、それじゃあ戻りましょうか」
ツカツカと国会議事堂へと向かう燐訪。
その後ろをジェラールはニヤニヤと笑いながらついていった。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




