第三百五十六話・誠心誠意、禍福己による(悪くない使徒? ぽぽぽぽしてますけど?)
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胡蝶の頼みで、彼女の仲間である遠野の妖を諭し故郷へと送った翌日。
朝食をとってから、俺たちは10時のチェックアウトのために荷物を纏めていたんだけど。
なぜか、朝から俺と祐太郎、新山さん、そして要先生が支配人室に呼び出されているんだけど。
「単刀直入に聞く。私の座敷童子をどこに隠した?」
「はぁ? 隠す? それよりも座敷童子が居たのかよ、このホテルには」
「それで、ここまで繁栄していたのか、なるほどなぁ」
「あの、もしも座敷童子さんがここにいたのなら、乙葉君ならすぐに気が付いていますよ? でも、私たちは初耳ですし、そもそも隠すってどう言うことですか?」
俺たちが問い返すと、山口支配人が引き出しの中から、一通の手紙を出す。
ほほう、今朝方にでも部屋の中を確認したのかな?
そうじゃないと、あれは外からは分からないだろうからなぁ。
「ここに、座敷童子の手紙がある。刻が来たから、ここを立つと書いてあったんだ。しかも、真っ直ぐに遠野には帰らず、旅をしてから帰るとまで書いてあるじゃないか? そもそもだ、あの結界の中からどうやって外に出る? それは当然、君たちが手引きしたからに決まっているだろう?」
淡々と説明するんだけど。
まあ、言っていることは正解なんだけどさ。
別に、胡蝶ちゃんは誰のものでもないんだから、別にどこにいってもいいんじゃね? そう思うんだけど。
「あの、俺たち、ずっとレポートやらなんやらかんやらで、ほとんど部屋から出ていないんですよ? そもそも、座敷童子がいる場所なんて知るわけないじゃないですか?」
「それならば、一昨日に渡り廊下の辺りでコソコソしていたよな? あれはなんだ? 旧館に来て座敷童子を探そうとでもしていたのではないのか?」
「うわあ、聞きもしないことを淡々と説明、ありがとうございます」
「このホテルの旧館は、歴史的にも価値がある建物だって観光案内に書いてあるじゃないですか。俺たちは魔術師、京都の古い建物の歴史に興味を持って、何か不都合でも? あ、座敷童子を隠していたって言うのが違法行為で?」
祐太郎が舌弁を振るっている。
こういう時の祐太郎は、かーなーり強い。
「妖魔や妖を隠したところで、違法になどなるはずがないだろうが?」
「妖魔特措法にある、魔族及びそれに準ずるものの能力を個人で使用することについては届出が必要である。もしも、ここに座敷わらしがいたというのでしたら、ここに抵触しますが? 不許可での魔族及び妖の能力の行使、それも営利目的で」
「さあ、私には何のことやら。私はただ、弱っていた座敷わらしを匿っていただけですよ。私と契約している退魔僧曰く、この地には座敷わらしは生きるのが辛いとね」
よし、目がキョロキョロと動いているし、挙動不審な身振りもある。
これはあれだな、図星を突かれたので困っているようだな。
「なるほど、それでしたら、その手紙に書いてあることが全てじゃないのですか? 刻が来た、つまり帰る刻が来たっていうことですし。手紙を置いていったのなら、特に問題はないのでは?」
「だから!! あの……う、う〜む。そ、そうだな、退魔官殿のいうとおりだ。では、改めて、座敷わらしを探す手伝いを」
「「「お断りします」」」
よし、要先生が論破した。
法律に強い人がいると、やはりこういうときは助かりますよ。
俺たちだけだと、法律にも詳しい祐太郎が頼みの綱だったけどさ。
それの上をいくからなぁ。
「ま、待て、座敷わらしの伝承を君たちは知っているだろう? つまり、この後で何が起きるかとか」
「……座敷わらしは繁栄を齎す。それが出ていくということはつまり」
「没落?」
「だから、それでは困るのだよ? どうにかして座敷わらしを捕まえてきてくれないか?」
「捕まえて?」
俺がそう問い返すと?慌てて口を閉じている。
さて、そろそろ手紙の秘密も教えたほうがいいよなぁ。
「因みにですけど。その手紙、何やら付与されているように見えますが、鑑定させてもらえませんか?」
「なんだと? いや、断る……そんなことを言って、何かする気なんだろう?」
「する気があるならとっくにやってますって」
そう告げると、山口支配人がゆっくりと手紙を差し出したので。
それを開いて内容を確認して、魔術を使ったように見せかけの詠唱をすると。
「なるほどなぁ。この手紙、座敷わらしがいた場所に置いておくといいですよ。手紙には強力な【繁栄の加護】が付与されています、多分座敷わらし本人のものほどではありませんけれど、ちゃんと神棚なりなんなりを作って納めておけば、没落は回避できそうですね」
「ほ、本当か?」
「ええ、間違いはありません。では、バスの時間もありますし、結界装置の解除もありますからこれで失礼します」
そのまま頭を下げて部屋から出る。
そして空間収納から魔導書を取り出して開くと、確かに新しく【繁栄の加護】の術式が浮かび上がっている。
霊力もしくは神威ベースでしか発動しない、本当の奇跡の術式。
そして何となく、座敷わらしは俺が手紙を見ることにも気がついていたんだろう。
術式の中には、【助けてくれた皆に、感謝を】という韻が含まれている。
「さてと。それじゃあ結界装置の解除と行きますか」
「俺は織田と合流して、最初に設置したものを回収してくる」
「あ、私はですね、立花さんに魔術を教える必要もありますので、要先生と私と立花さんで回ってきます。良いですよね?」
「良き哉良き哉。って、俺は一人か。まあ、それでも問題はないけどな」
ここから三手に分かれ、ホテルの敷地内の結界装置を回収。
その間に、うちの生徒達はバスに乗って奈良へ向かい、そこで見学コースに入るらしい。
俺たちは途中から合流。
先に指定された寺社仏閣の見学を終えたら自由時間、そして夕方に皆と合流になっている。
ツアーコンダクター曰く、移動中のバスが襲われないようにとの配慮でね、俺たちは別行動なんだよ、修学旅行なのに解せないとは思わないか?
「はぁ〜。とっとと終わらせて、向こうに合流するか」
まったく。
奈良ではゆっくりさせてくれよ。
………
……
…
京都を出た、北広島西高等学校の貸切バス。
今日は奈良に到着後、そのまま荷物はバスの中に置いて寺社仏閣の見学。
夕方にはホテルに移動して一泊し、翌早朝は大阪駅へと移動。
そして夕方まで自由研修。
その日の夕方に新幹線で東京へ向かい一泊。
翌日の午前中は国会議事堂などの見学ツアーを行い、そして午後に北海道へ。
すでに気分は、大阪での自由研修という生徒達を乗せたバスであるが、その少し後方を、透明化した何者かが走って追いかけていることには、誰も気が付いていない。
『ぽぽぽぽぽぽぽ』
背の丈8尺ほどの、黒い姿の女性型使徒。
昼間にも活動できることから新種、もしくは異形種と呼ばれるタイプであるが、乙葉浩介達を狙っているのならいざ知らず、何故、彼女はバスを追いかけているのか。
『ぽぽぽぽぽぽぽぽ』
爽やかな笑顔で走る8尺使徒。
その目的が判明するのは、もう少し先。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
──奈良県、春日大社
朝からホテルの支配人に呼び出されたり、結界装置を剥がしと忙しく走り回り、それでも昼前には奈良県まで到着。
時間的にこの辺りだと予測して、やって参りました春日大社。
観光および団体用駐車場には、うちの高校のバスもあったから、ここにいること間違いなし。
「さて、それでは私は、皆さんのところに合流してきますわ。新山さんは、どうしますか?」
「私は……」
そう呟きつつ、俺の方をチラリとみる。
せっかくの修学旅行なんだから、みんなで楽しんでくると良いよ。
「女子だけで積もる話もあるだろうから、いってきたら?」
「そうですね、では、私もご一緒させてもらいますね」
「はぁ、相変わらず硬いですわ。もっとこう、皆さんに溶け込んでくれて構わないのですわよ? あなたが聖女であっても、私たちにとってはクラスメイトのひとりなのですからね?」
「そうですね。ではいってきますね」
「構わん構わん。それじゃあ気をつけてな」
そのまま手を振って見送る。
さて、ここからが問題なんだが。
織田も、この異変に気がついているのか、俺たちの近くで待機している。
「方角は前方150メートル、場所はうちの高校のバスの上」
「透明化の術式を用いているので姿は見えないが、悪いな、俺と祐太郎は、この反応については嫌なほど知っている」
「……悪りぃ、俺には見えないが」
「うん、そうだよな。織田も聞いたことがあるだろう? 使徒って奴については。それが、この昼間に、そこにいる。しかもご丁寧なことに、うちのバスの上を陣取って、ボーッとしている」
──シュンッ
俺は大賢者のローブとフィフスガントレット、そしてセフィロトの杖を装着。
祐太郎も魔導闘衣とブライガーの籠手を装着し、闘気の循環を開始。
「ほらよ、不可視の可視化。これで見えるだろう?」
織田の肩を杖でトントンと叩きつつ、魔力を付与する。
すると、織田の顔色も少しずつ青くなっていく。
「嘘だろ? こんな昼間にバトルかよ?」
「織田は下がって、周りの人が巻き込まれないようにしてくれるか? 流石に空間断絶結界を張るほどの魔力回復はしていないからさ」
「お、おう、攻撃しちゃダメだよな? そうだよな?」
織田ぁぁぁ、自らヘイトを取りにくるな。
それよりも、目の前の使徒が異形種ってことがわかるわ。
明らかに、知性を持って動いている、姿を消して、こっちの動向を窺っているという事実だけで、その辺にいた、魔力の高いやつを無差別に襲うっていう輩じゃないのは理解できたわ。
『ぽぽぽぽぽぽぽ』
口から奇妙な音を流しつつ、バスから降りてくる。
その背の高さに、思わずビビりそうになるんだが。
黒いドレスに黒い帽子、顔まで漆黒に塗り込まれており、光の加減で顔らしいものはあることは認識しているが、それすら吸収しているように感じる。
「うわ、八尺様型使徒かよ」
「……そういうことか。さて、天啓眼、あの言葉を翻訳できるか?」
『ピッ……まもなく翻訳スキルが最適解に辿り着きます』
「……そっか。それじゃあ……」
戦闘態勢を解除して、話しかけてみるか。
「おい、その様子だと狙いは俺たちだろう? なんのようだ?」
堂々と問いかけると、八尺様型使徒、面倒だから八尺様はこちらにゆっくりと近寄ってくる。
そして祐太郎も困った顔で、構えを解いた。
「敵意、なしかよ。オトヤン、会話可能だと思うか?」
「わからんけど、ちょい待ってくれ……魔導紳士、念話モードで八尺様の言葉を解析して、祐太郎にも飛ばしてくれるか?」
『了解しました』
「ということで、これで会話は成立させられる……そこの八尺様、何か俺たちに用事でもあるのか?」
敢えて会話で解決するスタイルでいってみるか。
すると、八尺様はコクコクと頷いて、俺たちに近寄ってくる。
『魔力が欲しい。でも私は戦う力がない』
「お、理解できた。祐太郎は?」
「タイムラグがあるが、今のは翻訳できたな。さて、魔力か……」
「悪さしないのなら、あげるのはやぶさかでもないが。さて、どうしたものか」
「お、おい、二人とも戦わないのかよ?」
「まあ、話せばわかるようだし。京都の野良怨霊よりは可愛いものだ」
うーむ。
今は見えない存在で、使徒は妖や魔族とは異なる存在で。
生体エネルギーを必要なことは知っているが、それは魔力でも構わなくて。
「よし、八尺様、魔力供給を契約条件にして、使役契約は可能か?」
「オトヤン正気か? 使徒を使役するってことだよな? 召喚獣のような立ち位置か?」
「そんなところだろうなぁ。このまま放置していたら、多分消滅するだろうけれどさ。俺としては、使徒の能力で何ができるか知りたいんだよね」
そう問いかけたら、両手の人差し指同士をツンツンと叩いて困っている。
う〜ん。
君は何ができるんだろうなぁ。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




