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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第六部・饗宴なる修学旅行、或いは平穏な日常編

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第三百四十八話・物換星移? 当たらずと雖も遠からず(タイムリミットは近い?)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日、金曜日を目安に頑張っています。


9月30日に、待望の4巻が発売されます。

どうぞ宜しくお願いします。

 はい。

 夕食後の大広間で、俺は正座していますが。

 なお、俺だけではなく、俺から『性転換薬』を奪っていった男子も並んでいます。

 ええ、案の定、俺から持っていったた薬を好きな子に飲ませて告白しようとして、いきなり女子が男になって鉄拳によるお断りのメッセージを行ったのち、要先生に相談したそうです。

 その結果として、性転換薬を飲ませた奴と、それを出した俺まで怒られていますが。


「まあ、乙葉くんも被害者なことに変わりはないけど、無闇矢鱈に出さないこと。改正された魔術等関連法案は理解しているでしょう? 魔法薬の取り扱いについては、薬機法が……っていう部分だけど』

「俺は国家認定魔術師なので、魔法薬についての使用権限については、乱用さえしなければ認可されていますけどね……まあ、俺が用意した薬で、悲劇が起きたのだから反省はしますが」

「……反省していないわよね?」

「いや、俺よりもこいつが反省すべきかと。飲ませた張本人であり、俺から時価100万単位の薬を持っていった挙句、それを無許可で使ったんですからね。ということなので、請求書はお前の親に送るということでファイナルアンサー?」

「はぁ? 何言っているんだ? 魔法使いなら、そんな薬くらい簡単に作れるだろう? それを金とるのかよ、ぼったくりか?」

「お前、材料費って知っているか?」

「知るかよ!!」


 ほら、金額なんて理解しないで持っていったんだろうなぁ。

 お前が飲ませた薬のおかげで、飲んだ子は麗人のようになった自分の姿を鏡でうっとりと眺めてから暫くそのままが良いと言い出すし、これ見よがしに麗人化した彼女に言いよる女子もいたりして、夕食後は混沌となっていたんだぞ?


「知るかよ? じゃねーよ。お前の隣の坂東武者さんだって、日本刀を構えてお前を成敗する気満々だからな」

「隣の坂東さん? そんなやつどこにいるんだよ」


 チラリと男子の後ろを見ると、血まみれの坂東武者が刀を振り上げてウズウズしている。いや、霊体だから切れないよね、それ。

 ゴーグルフィルターを通しているから、恐怖はかなり緩和されているし、この坂東さんからは悪意は感じないんだけど。


『霊障は起こせる』

「あ、それ、いいね!!」


 思わず後ろにサムズアップ。

 すると戸惑いつつも、俺の真似をしてサムズアップする坂東武者さん。

 俺が挙動不審なことをしているのに気がいた要先生は、頭を傾げてから、何かを察したように真っ青な顔になっていった。


「あ、あのね乙葉くん。そこに誰かいるの?」

「エ、ダレモイマセンヨ、ヤダナァ、アハハ」


 セリフ棒読みの演劇部員のように話すと、要先生は少しだけ後ろに下がる。


「それじゃあ、乙葉くんはもういって構わないわ。でも、君はここで反省文ね。正体不明の飲み物を飲ませたっていうだけで、本当なら傷害とかで訴えられてもおかしくないのですからね?」


 そう言われて、ようやく自分がやらかしたことを理解した男子生徒。


「え、いや、だって、漫画とかだとさ、この程度のことじゃ何も起こらないし」

「この程度って考えている時点で、もうダメですね。修学旅行中は監視がつく可能性もありますので」

「嘘だろ? おい乙葉、どうしてくれるんだよ?」

「勝手に持っていったお前が悪い。俺は一度も、あれが惚れ薬だって言った記憶はないからな。では先生、やっちゃってください」


 俺の言葉で要先生が不思議そうな顔をするんだけど、目の前の坂東武者先生は勢いよく刀を振り落とした。

 それは男子生徒の首をすり抜けるんだけど、彼はいきなり真っ青な顔で震え始めた。


「うわぁぁぁ、なんだこの寒気は、何があった?」


『ピッ……霊障レベル1、悪寒及び目眩。解除には神聖魔法の状態変化解除が必要。なお、一週間程度で収まる』


「祟り、かなぁ。そんじゃ、あとは宜しくお願いします」

「え、ええ、これってまさか?」


 そう問いかける要先生に、手をひらひらと振って俺は部屋に戻る。

 さて、このあとは明日の朝までは外出禁止、夜9時になったら消灯時間。

 あと二時間の間に、どれだけ悪霊退治ができるかってところだなぁ。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 部屋に戻って来たんだが、何故か坂東武者の坂東さんが一緒に着いてきた。

 そして部屋では、布団がすでに敷かれていて、どこで寝るか皆が協議中だったんだけど。

 しっかりと斬首さんの座布団が片付けられていて、布団が並べられていてね。

 ばっちりと布団の枕の辺りに、斬首さんの膝がくるんだわ。

 

「……乙葉は、そこの幽霊のある場所でいいだろ?」

「良い訳あるか。まあ、いざとなったら退いてもらうから構わんが、その場所を俺に押し付けたら、後からどうなるかわかっているよな?」

「織田ぁぁぁ、頼むから乙葉を止めてくれ」


 石田たちが織田にすがりつくが、当の織田は無関心。

 広縁(ひろえん)で椅子に座り、祐太郎と地図を眺めながら何か打ち合わせをしているところである。


「ん? ちょいとホテル内部の怨霊スポットを調べているから、自力で頼むわ」

「そういう事。オトヤンも、ちょいとこっちを……なんで坂東武者の幽霊を引き連れてきたんだ?」


 祐太郎には見えるらしく、まあ、ゴーグルセットしているんだろうなぁ。

 そして織田は両手の人差し指と親指でメガネを作ると、それを顔に当ててこっちを見た。


「うわ、まじか?」

「それはこっちのセリフだわ、なんだその魔法は?」

「魔法じゃねーわ、魔力を指に込めて、メガネを形成しているだけだわ。それよりも、なんで幽霊を連れてくるんだよ」

「幽霊?」

「へ? また増えるのか?」

「「「「「勘弁してくれぇぇぇぇ」」」」」


 そう問いかける織田だが、彼の言葉を聞いたトリマキーズが真っ青な顔になって、部屋から飛び出していったんだが。

 まあ、どこにも行き場がないはずだから、後で戻ってくるだろうという事で、話を続けることにした。


「まあ、坂東さんは無害だからこのままで。それで、今は何を?」

「俺と織田は、オトヤンが説教されているうちに色々と調べていたんだが。この地図の通り、旧館に近寄るほどに幽霊が増えて、離れると悪霊が増える。でも、悪霊は旧館へと近寄るようなそぶりがない」

「旧館は地下に例の部屋があるだろ? そこに悪霊が近寄れない何かがあるのかと思っただけだ」

「ふうん。悪霊かぁ」


 とりあえず、俺が退治した場所もチェックしていくんだが、おおよそ新館のホテル側の悪霊怨霊は俺たちが浄化したことになる。

 そうなると、問題は旧館。

 そっちは別の高校が入っているので、うちの高校の生徒は出入り禁止と言われているんだよ。

 そうなると、みつからないように侵入して調査しないとならないんだが。

 

「なぁ、坂東さん。隣の旧館の地下って、何かあるのか?」


 ものは試しに、霊会話で話しかけてみる。

 すると、坂東さんは頷いて一言。


『御姫様が、閉じ込められている』


 そう呟いてくれた。


「旧館地下には、御姫様が閉じ込められているってよ。そういえば、廊下の怨霊も御姫様って呟いていたよなぁ?」 

「そいつが何者か知らないが、閉じ込められているっていうのは、穏やかじゃないなぁ。織田はどうする?」

「悪いが魔力切れだ。お前ら化け物級魔術師と一緒にするな、俺は庶民派だ」


 失礼な。

 と怒りたくなるが、そもそも織田の魔力回路は細く、保有魔力も少ないから仕方がない。


「まあ、それじゃあ石田達を守ってくれ」

「何からだよ?」

「何って、そりゃあ。なぁ?」


──シャッ!!

 カーテンを力一杯開く。

 すると、窓の外、ホテルの結界外に集まりつつある化物の群れ。

 その全てが、俺の立っている部屋を見上げている。

 つまり、日が暮れて活性化した化け物達が、俺の魔力に惹かれて集まってきたっていう事。


「うげぇ。ここまで来るのか?」

「いや、来ないとは思う。っていうか、乙葉印の結界を破壊できるものならやってみろって感じなんだけどさ」


 そりゃあ無理だよ、俺の作った結界発生装置の強度は伊達じゃないからな。

 

「問題はだ。あの外の化け物たちの声だが、恐らくは魔力の高い奴らなら聞こえるだろうなぁ。あの、地獄から聴こえるような、呪いの声。悲鳴にも似た恨み節……」


──ドダドダダダダダダ!!

 ほら、誰かが廊下を爆走する足音が聞こえてくる。

 そして勢いよく部屋のドアが開き、踏み込みにスリッパを脱ぎ捨てて新山さんと立花さん、そして要先生の魔力高い女子チームが飛び込んできた。


「おとおとおとはくん!! あのお化けの声は何かわかる?」

「築地くん!! 私は怖いのですわ」


 新山さんは俺に、立花さんは祐太郎に抱きつくものだから、相手がいない要先生がオロオロしている。


「あの、新山さんも立花さんも落ち着いたらどうだ? 確かに君たちの彼氏は化け物だが、浴衣姿で抱きつかれると気まずくないか?」


 冷静に突っ込む織田。

 すると新山さんと立花さんも顔を真っ赤にして離れる。


「まあ、あの声についてだけど、実はさ……」


 カクカクシカジカと説明すると、要先生だけが恐る恐る窓から外を覗き込む。


「薄らぼんやりとしか見えないけど、あれは全て妖魔?」

「いや、化け物。純地球産の魔物だよなぁ。そこで問題、これからどうするべきかという事なんだが」

「おそらくは、活性化してここにオトヤンが居ることを奴らは熟知した。そうなると、日が昇って非活性化しても、奴らは霧散化した状態で後をついてくる可能性もあるし、無差別にそこそこな魔力を持つ生徒に憑依する可能性もある。そうなると、後々が面倒臭い」

「「つまり?」」


──ガタッ

 俺と祐太郎、二人同時に立ち上がる。


「やるしかないだろうなぁ」

「まあ、広範囲に浄化術式を使うだけなんだけどね……って、なんで頭を振っているんだ?」


 俺が広範囲浄化について話すと、坂東さんが頭を振って止めようとしているんだが。


「へ? 誰かいるの?」

「坂東武者の坂東さん。それで、俺が広範囲浄化術式を使ってはダメな理由は?」

『御姫様が、悲しむ……彼らは彷徨っている我らの同胞、お姫様からの言葉が届かなくなり、悪鬼羅刹に変わり果てた』

「ふむ、ひょっとして坂東さんのお仲間?」


 そう問いかけると、坂東さんが頭を縦に振っている。


「う〜む。そういうことになると、あの集団の中に飛び込んで、一気に全て浄化ってことは難しいのか」

「そのようだな。しかし坂東さん、そのお御姫様って、旧館の地下に封じられているのか?」

 

 祐太郎も坂東さんに問いかけている。

 うん、闘気型霊会話を使ったのか。


『御姫様は、遥か彼方の地にて、妖魔による幽霊狩りから逃れるために、ここまで連れられてきた。小倉庵が御姫様を連れてきて、ここに封じた。ここは安全だから。でも、御姫様の力を求めて悪霊も集まった……』


 坂東さんの言葉を、新山さん達にも説明する。

 すると、ようやく落ち着いてきたのか、新山さんも霊会話を使って直接話を聞くことにしたらしい。

 

「要先生は、風の精霊を耳に集めて見ると聴こえるはずです」

「俺は魔力切れだから一抜けな」

「ほら、魔力回復薬をやるから巻き込まれろ」


 空間収納チェストから魔力回復薬を取り出して、織田に投げ渡す。


「くっそ、面倒くさいことに巻き込むなよ」


 そう言いながらも、織田は魔力回復薬を一気に飲み干すと、魔導書を取り出して、スピークウィズデッドという術式を唱えた。


 さて坂東さん。

 御姫様とやらの話、何があったのか詳しく聞かせて貰おうか。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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