二百八十六話・奇貨可居? 大事の前の小事の前の超大事!(ビ・サーイレーント!!)
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──中国・北京市の天安門西側にある人民大会堂
きらりと光る眼鏡をクイッと上げて。
李香蘭が、円卓の真ん中に浮かぶ立体映像の地球儀を指差す。
「崑崙八仙が独自に調査したデータですが。ハワイ諸島、ボナベ、フィジー、サモア、タヒチ、マルケナスの島々に存在する水晶柱は、他の地方、国家で確認されている水晶柱よりも大型です。まあ、日本の妖魔特区ほどではありませんが」
名前を告げつつ、座標点をタップ。
そして全ての水晶柱を結んだ円を書き記す。
「ジェームス・チャーチワード氏の提唱した、ムー大陸の地図にかなり共通点があると思いませんか?」
「……なるほどな」
ジェームス・チャーワードは、かつてアメリカに居た『ムー大陸の研究家』である。
数多くのムー大陸についての研究論文、書籍を発行しており、その道の人にとっての専門書として今でも語り継がれている。
「では、こちらの粘土板をご覧ください」
──ピッ
正面モニターには、古い一枚の粘土板が写し出されている。
見そこには見たことのない文字が刻まれ、少し崩れかかっている。
「チャーチワード氏の文献をもとに、崑崙八仙の賢者・パールヴァディ師が突き止めた、チベット寺院に納めてあった『ナーカル碑文』です。チャーチワード氏も、これを見てムー大陸の存在を確定したようです」
「ほう。信憑性が高いということか。それで、ムー大陸は存在するのか?」
劉国家主席が、李香蘭にあらためて問いかける。
すると、李香蘭も力強く頷く。
「パールヴァディ師曰く、私たちの世界には、鏡刻界へ向かうための幾つもの道筋が存在します。魔族にしか使えない転移門以外では、浮遊大陸アトランティス、同ムー大陸。そして、イギリスが抑えているアヴァロン。これ以外にも、『特異点』と呼ばれている場所は、いくつもあるそうです」
やや興奮気味に力説する李香蘭。
ムー大陸は置いておくとしても、アヴァロンについてはその存在はイギリスが公言している。
『我が国は、異世界アヴァロンからミスリルを入手している』と。
「特異点については、何か情報は? それがないのなら、我々が異世界へ向かうための道はアトランティスとムー大陸しか存在しないが」
「残念なことに、特異点についてはパールヴァディ師でも確定した場所を知らないそうです。ですが、そういった場所はあり、今でも鏡刻界から魔物が流れ込んでいる可能性があるそうです」
李香蘭は、仮説に仮説を重ねていく。
この場で必要なものは仮説だけでなく手法、手段。
それがわかっているからこそ、劉国家主席以外の議員や研究者は苦笑いをしている。
「引き続き、ムー大陸及び特異点の場所の調査を続け給え。ジェラール、君はアトランティスの存在について調べて欲しい」
「まあ、貰えるものさえ貰えたら、俺は仕事として調べますよ。そっち方面に詳しそうな人に、心当たりがありますからね?」
ニイッと笑いながら、ジェラールが呟く。
「では、期待して待っている。世界中の水晶柱を繋げた大魔法陣については、現状は保留とする。日本と西ヨーロッパの協力が得られないとなると、その方法はかなり困難であろう?」
今度は王健祐に問いかける。
すると王も、必死に頭をぺこぺこと下げる。
「は、はい。誠に申し訳ありません」
「いや、叱責しているのではない。相手が悪すぎた、そういう事だ。では諸君、引き続きの調査、宜しく頼む」
「「「「「 はい!! 」」」」」
ジェラール以外の全員が返事を返すが。
ジェラールは、そのまま部屋から出ていった。
………
……
…
──中国、崑崙八仙
北京から戻ってきた李香蘭は、早速パールヴァディ師を呼び出す。
すると一時間ほどしてから、アイマスクを額に乗せている眠そうな顔のパールヴァディが姿を表す。
「おはペンギン」
「……なんの夢を見たの?」
「ペンギンになって、南極をさ迷っていた。それよりも何の用かな?」
ちなみにパールヴァディ師、外見だけならどこかの女子高生のような顔。
長い黒髪を後ろにまとめ、ゆったりとした衣服に身を包んでいる。
「劉国家主席からの要望でね。本格的にムー大陸を探す必要が出てきたのよ。見つけられる?」
「見つけるも何も、ムー大陸は今は存在しませんよ?」
「……はぁ?」
あっさりと存在を否定するパールヴァディ。
これには李香蘭も茫然とする。
「あ、あの、パールヴァディ師はこのまえ、ムー大陸はあるって話してましたよね?」
「ええ、ありますよ?」
「今、存在しないって話したよね?」
「はい、今は存在しませんね」
「それって、どういう事なの?」
「物質界には存在しない。ムー大陸は、わたしたちの世界と多次元世界を行き来する存在。今はちょうど、地球上から姿を消しています」
淡々と説明するパールヴァディ師に、李香蘭は取り敢えず納得する。
「まさか、アトランティスも同じように多次元世界に?」
「いえ? アトランティスはこの世界と鏡刻界を行き来する浮遊大陸ですから。多次元世界に存在するのは、アヴァロンですね。月に一度だけ、精霊門を通じて行き来することができる場所。精霊界とも呼ばれている場所」
「はぁ。そのアトランティスに行くことはできるの?」
「……選ばれしものなら。あれは、禁断の地、踏み入ることを許されない禁忌の場所。だから、私はその方法を見つけても、誰にも教えないから」
キリッとした顔で呟くパールヴァディ師。
「はぁ。まあ、そういうことなら仕方ないわ。参考までに、アトランティスに行く手段、そのタイミングってパールヴァディは知っているの?」
「二週間前には、バミューダ・トライアングルに存在したけど? 船で行けたよ?」
「……はぁぁぁぁ。それを先に教えて頂戴よ。つまり、タイミングさえ合えば、バミューダ・トライアングルからアトランティスに行けるのよね?」
「それは無理。アトランティスの主人が認めてくれないと?」
なんで疑問系なのよ?
そう突っ込んでみた李香蘭だが、それ以上の返答を得ることができない。
「それじゃあ、ムー大陸の出現タイミングは?」
「そもそも封印されているから。封印を解除しないとむり。でも、なんで封印されているのか、それを考えて」
「封印? ムー大陸には妖魔か何かが眠っているの?」
「カリュブディス。魔族でも魔物でもない。あれは魔神級……だから、封印されている」
「でも、ムー大陸って、異世界に行けるんですよね?」
「その力を使って封印している。だから、ムー大陸は目覚めさせたらダメ。それじゃあ失礼する」
そう言い残して、パールヴァディは部屋から出て行く。
そして、残された李香蘭は、今の情報をどこまで信用するか、どこまで表に出せるか、しばらく考え込むことになった。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
──日本・妖魔特区
大通り地下・オーロラタウン迷宮に、俺と祐太郎はやってきております。
え、何をしているかって?
それは、調査依頼を受けたから。
「吹き飛べ、八の型・爆裂乱撃っっっっ」
──ドゴドゴドゴドゴォォォォッ
俺の目の前で、ミノタウロスがミンチになっていく。
ブライガーの籠手を装備した祐太郎が、地下街迷宮区画を徘徊するミノタウロスを吹き飛ばしただけなんだけどさ。
「うわぁ。ユータロ、前よりも破壊力が上がってないか?」
「ん〜。いや、まあ、アトランティスで毎日のようにガーゴイルと組み手をしていたからな。おかげで、全体的なステータスが底上げされているからな」
「はぁ、そんじゃあ、あの奥からくる二体のミノタウロスも宜しく」
「少しはオトヤンも手伝え!!」
え〜。
俺、全周囲対応型、アクティブセンサー稼働中なんだけど。
「まあ、それならそれで……右を引き受ける、五式・光の槍っ!!」
──シュンッ!!
俺の右に浮かび上がった、光り輝くランス。
それを握りしめて、力一杯、ミノタウロスに向かって投げ飛ばす。
「ブンモォグブゴバグバシャァァ!」
ミノタウロスが光の槍を受け止めようとして、手を伸ばしたんだけど。
光の槍って、超速回転しているドリルのような形状だからね。
伸ばした腕から挽き肉になっていくんだけど。
これが異世界なら、食材だったかもなぁ。
「左も終わらせる。 九の型・衝撃噴射撃!」
──ドッゴォォォォォォン
祐太郎が、闘気を纏った拳を、力一杯地面に向かって叩きつける。
その瞬間、俺たちに向かって巨大な斧を振り回しつつ走ってくるミノタウロスの足元から、闘気が噴き出した!!
「バブゥゥゥゥゥゥゥ!」
そのまま衝撃波に叩きつけられ、天井まで吹き飛ばされ、股間を抑えて落ちてくる。
「……オスだったか」
「魔物は肉体を持っている……からなぁ。オトヤン、トドメを頼む」
「了解。三式・真空斬」
──シュパァァァァ
右手に真空を纏って、それを三日月型に飛ばす。
その一撃でミノタウロスの首が飛ぶ。
「ほい、空間収納に回収……と。地図によると、この先が東豊線コンコースだよな?」
「そのはずだが、本当に迷宮化しているんだなぁ」
「ユータロは始めてだよな。札駅地下も、こんな感じだったぞ?」
あの時は、祐太郎は居なかったからなぁ。
おっと、仕事仕事。
空間収納から預かってきたデジカメを取り出して、地下空間を撮影する。
入口から突入して、ずっとモンスターを倒しつつ写真を撮る。
これは、第六課から要請があったアルバイトでね。依頼人はなんと、『札幌市交通局』。
依頼内容は、『地下鉄駅を再開したいのだが、それが可能かどうか調べてほしい』という事。
どうやって再開したいのか聞いてみたんだけど、俺が結界の外から『結界中和装置』と『対妖魔結界発生装置』で地下鉄の路線を魔物から守れるように結界で包み込むという作戦らしい。
この説明を聞いて、『確かに可能だけどやった事ないからわからない』って説明したら、まずは妖魔特区内の地下鉄構内が使用可能かどうか調べてほしいと依頼されたんですよ。
「オトヤン、妄想からの説明はOKか?」
「うむ。デッドプールのように第四の壁を越えることはできないけど、なんとなくわかってくれるよな?」
「だから、誰に向かって話をしているんだよ。それよりも、エスカレーターは動かなさそうだけど、どうする?」
「降りるしかないよなぁ。それじゃあ……行きますか」
──プルルルルルルルル〜
そう俺が告げるのと、祐太郎のスマホが震える。
「お、なんだろ?」
そのままスマホを取り出して祐太郎が電話に出る。
「もしも…はぅあ!!」
突然の悲鳴。
そしてスマホを落とす祐太郎。
なんだなんど、何があった?
「どうしたユータロ!!」
「こ、これ、それ、その電話!!!!」
「電話? スマホだよな? 誰からだ?」
思わず拾ってあげたとき、スマホから声が聞こえてきたんだけど。
『私、メリーさん。今、地下迷宮入り口にいるの……私、メリーさん。今、地下迷宮入り口に』
「「うわぁぁぁぁぁぁ!!」」
俺と祐太郎、思わず絶叫したわ。
いや待って? 妖魔や魔族、魔物は大丈夫だよ、存在するんだから。
百歩譲って、守護霊さんとも友達になったよ?
でもメリーさん、お前は別だ!!
「ど、ど、ど、ど、どうする」
「とりあえずスマホを回収。そのままルーンブレスレットに入れておけば、音は聞こえないから大丈夫だ」
「そ、そうだな」
ナイス俺のアドバイス。
そして祐太郎が慌ててスマホを拾うと、すぐさまルーンブレスレットに収納した。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




