第二百八十二話・千紫万紅!鬼に金棒?(いろんな紋章、ぶっちゃけありえなーい?)
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──地球・札幌市白石区大谷地
有馬重工では、日本に戻ってきたばかりの有馬祈念と沙那、そしてリナちゃんが作業を行なっている。
「ふむ。予想外の出力係数、魔力の増幅率も従来の二.八五倍。わしの発見した伝説の金属オリハルコニウムを遥かに凌ぐ魔力伝導率。これがあのアトランティスにあったと伝えられる伝説の金属オリハルコンとは。しかもだ、これは魔力を注ぐことによって布のように柔らかくもなり、ダイヤモンドをも越えるビッカース硬度8000から10万!! 魔力によりいくらでも硬くなるなど、まさに伝説の金属にふさわしいではないか!!」
沙那の体のメンテナンスを行いつつ、プラティによるアトランティス式強化義体のデータを集めている有馬。
そして知れば知るほど、その肉体の柔軟性や強度がありえないものであることに気がついた。
「あの、お父さま。詳しいスペックについては、こちらを保護者にお渡しするようにとプラティ様から預かってきていますが」
ルーンブレスレットから一冊の書物を取り出し、有馬に手渡す。
すると、それを受け取ってペラペラと捲りつつ、書き込まれている文字を頭の中に刻み込んでいく。
「おおお、これは……この魔導式はまさに、光から魔力を集めるアトランティス・レンズの精製方法!! こ、こんなものが我々の世界に溢れてしまったら……」
「溢れたら、どーなるの?」
──ビシッ
椅子に座ってツァリプシュカ改2のメンテナンスをしているリナ坊を指差し、一言。
「人類は、時間を支配する」
「つまり?」
「Back to the Future!!」
「でろりあーん!!」
嬉しそうな有馬祈念とリナちゃん
すると、リナちゃんの左手の甲がゆっくりと輝きだす。
「ふぇ?」
「リナちゃん、それってなに?」
慌ててメンテナンスベッドから飛び起きて、リナの元に向かう沙那。その右手の甲も、やはりゆっくりと輝き出していた。
「沙那ちゃんも光ってるよ?」
「そ、そうね……でも、これって」
『君たちは、魔人王ミヤビにより力を授けられた。二人で一人の十二魔将第二位。それ故に……魔皇より力を授ける』
二人の脳裏に声が響く。
そしてリナの左手には黒き力の紋章が、沙那の右手には白き技の紋章が浮かび上がった。
「おおう? これは十二魔将の体に刻まれる魔将紋だ。でも、二人で一つの紋章なんだね?」
「魔皇さん、これはどのような力が封じられているのですか?」
『二人の心を一つにして、紋章を一つに重ねよ。さすれば力は溢れ出す』
──ガシッ!
リナの左手と沙那の右手。
指を絡めて手を繋ぐと、二つの紋章が輝き、第二位を示す魔将紋になる。
──ブゥゥゥゥウン
そして二人の全身が輝き、沙那の体内から左手に魔力が、リナの体内から右手に闘気が流れて行く。
「これは、まさか合体技!!」
「二人の心を一つに合わせて!!!! 叫べ勝利の雄叫びを!!」
「リナちゃん、それは多分違うと思うよ? それに、ここでそんな力を使ったら、工場がなくなるからね?」
──プシュゥゥゥゥゥ
二人の手から魔力と闘気が排出される。
「うん、これは危険。築地先輩の闘気砲に匹敵するね?」
「私とリナちゃん、二人でようやく築地先輩と同じかぁ。暗黒闘気を使いこなしている先輩は、どれだけ強くなるんだろうね?」
「それでも、乙葉先輩には敵わない。それってぶっちゃけありえなーい」
笑いながら話しているリナと沙那。
そして今の一連の行動を呆然と見ていた祈念もまた、二人に起こった異変を解明すべくホワイトボードに仮説を次々と書き出していた。
………
……
…
──札幌市・喫茶九曜
「おやまあ。こんなに早く魔将紋が浮かび上がるとはね。それに、予想よりも強いねぇ」
店内のカウンターで、のんびりと軽食を取っていた綾女は、自身の右頬に軽く手を当てる。
ちょうど右頬から右目を掠め、耳のほうに流れるように、菖蒲をあしらったような紋章が浮かび上がっている。
そしてその内部には、古代魔法文字で『十二魔将第四位』を示す言葉が刻み込まれている。
「な、お、うぁ!!」
「落ち着けチャンドラ。どうやら綾女殿は、十二魔将第四位を拝命しましたか。それで計都姫は、第何位に任命された?」
綾女を見て動揺するチャンドラと、それを制しつつ隣に座っている綾女に問いかける羅睺。
「あたしは第四位だねぇ。しかも、【破壊の紋章】とはまあ、無難なところじゃないか?」
「そうか。それで、計都姫は何位だ? 流石に綾女殿よりも上ということは……」
そうカウンターの中でコーヒーを落としている計都姫に問いかけると。
──ガクガクブルブル
無表情のまま全身を震わせている計都姫の姿がある。
着物の胸元から光が溢れているところから、あまり人に見せられない場所に魔将紋が浮かび上がったのだと羅睺たちは察したのだが。
「わ、私は、これ……」
胸元の光が消滅すると、計都姫の右目に紋章が浮かび上がる。
それを見て、チャンドラ、羅睺、綾女は絶句した。
「魔将紋章ではなく、四天王紋章とは……」
「そう。これは、【風の紋章】。そして祐太郎も四天王。私は魔人王の右目であり、祐太郎は左目。右手は新山小春、左手はワイルドカードという魔族。でも、ワイルドカードという魔族に心当たりはない」
「ワイルドカード……あたしも知らないねぇ。まあ、そのうち会うこともあるだろうさ」
カンラカンラと笑いつつ、綾女がそう呟く。
「それじゃあ、今日から計都姫のことは、様をつけて呼べばいいのかい? 十二魔将である私を統括する立場なんだからさ」
「やめて欲しい。私の心が死ぬ」
「プッ!!」
困り果てた顔の計都姫を見て、チャンドラが噴き出す。
「まあ、このメンバー相手なら、いつも通りで構わんだろう? 計都姫も綾女殿も、その方が落ち着くのでは?」
「私は同意。お願いだから普通で」
「あたしも構わないさ。しかし、他の魔将も、とんでもないメンバーが集まっているんだねぇ」
紋章を通して新たな同志を知る綾女。
そこに人間が二人も存在するなど、誰が思うのだろうと心の中で笑っていた。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
──アトランティス・水晶の塔
「これが、魔将紋章かぁ」
額に浮かび上がった第一位紋章を鏡で見る。
いやぁ、まさか第一位が額とは思わなかったよ。
第二位は右手、第三位は左手。
ここまでは固定らしく、あとは身体のどこかに浮かび上がるらしく、表に示すときは右掌に浮かび上がらせることができるらしい。
ちなみに俺ちゃんの紋章の意味は、【魔導】を示す紋章だったよ。
「ちなみに師範はどこに?」
「右肩で、大地の紋章らしい。そして要巡査が左肩で、水を司っている。新山くんはどこに?」
「わ、私は……」
そう呟いてから、ボソボソっと先輩と要先生の二人に耳打ちしておりますが。
うん、聞こえなかった。
「あら。それはまた、大変なことになったわね」
「あらら。新山さんの紋章ですけれど、あまり表に出せない場所にあることだけはわかってください。そして示す紋章は、【光の紋章】だそうです。新山さんの四天王紋は右掌にも浮かび上がらせられるので、当面はそこで表示という形だそうです」
新山さんの代弁を要先生が行っている。
うん、本当に気になるんだけど、考えないようにしよう。
「それで、なんでユータロは頭を抱えているんだ?」
「俺の四天王紋が、ここだからだよ」
──スッ
右目の眼帯を外して目を開く。
そこには金色に輝く瞳と、その中に浮かび上がった四天王紋がはっきりと見えていた。
浮かび上がったのは【炎の紋章】。
実に順当である。
「うわぁ、それってあれだよな? 『静まれ!この俺の瞳に宿る、暗黒の炎よ』ってやつだよな?」
「まさにそれ。これは参った……眼帯が外せなくなった」
「ワイルドで似合っていると思いますわよ?」
「そう言ってくれるのは先輩だけですよ。オトヤンはどう思う?」
「頼む、右手で眼帯を隠して、決め台詞を!!」
「だと思ったよ。まあ、冗談が言えるだけ心配していないってことだろうから」
そりゃそうだ。
瞳の中に紋章が浮かんでいようが、眼帯を外さなければ問題はない。
紋章自体も、必要に応じて右掌に浮かび上がらせるだけだからね。
「ちなみに白桃姫さんとプラティ・パラディさんは何処に?」
「俺は背中だな。司る力は【死の紋章】である」
「妾は右胸元から半身に、桃の花のように咲き乱れておる。紋章が示すのは【刻】じゃ」
「まさに白桃姫か。まあ、とりあえずはこれで確定したし、確認も終わったので次のステップか?」
「築地の言う通りじゃな。では、あと数刻でここから王都に向かう転移門を作り出す。そのあとは王城に乗り込み、残ってあるであろう魔将共とゼロを捕まえて、従わせるまでじゃな」
にこやかに告げる白桃姫。
だが、それとは逆に忍冬師範と要先生は不安そうな顔である。
「我々が人間とバレた場合を考えると……あまり迂闊なことはしない方が良いのか?」
「ふむ。では、忍冬と要はこの地に残っていると良い。妾たちはとっとと話をつけてから、お披露目をして戻ってくる。半日ほどで終わると思うので、それで構わぬじゃろ?」
「私はそれで構いません。というか、そうさせてください。流石に魔族の真っ只中に向かうのは……」
「俺もそうさせてもらう。あまりにも突拍子もないことが続いてしまって、頭を休ませたいと言うのもある。それに」
そう話してから、忍冬師範が俺たちを見る。
あれ、俺また何かやらかした?
「浩介たちなら、うまく立ち回れるのだろうからな。俺たちは歳をとりすぎている、何処かでボロが出そうだからな」
「では、そうするが良い。プラティや、留守番を頼むぞよ」
「はっはっはっ。それは構いませんよ。むしろ、何も変わりませんので」
笑いつつ胸をドンと叩くプラティ。
骸骨の顔で喜怒哀楽を表現しているのは、本当にすごいと思うよ。
と言うことで話し合いも終わり、俺たちは数刻のちに白桃姫が作り出しある転移門で、魔大陸にある水晶の森に移動。
いよいよ、王都王城へ向けて移動を開始した。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
そして……負けた。
まさか紋章の件が読まれていたとは……orz




