第二百六十四話・国士無双。敵は本能寺にありというが(問答無用。格が違う!)
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──アトランティス・ポセイドン湾〜中央森林
突然のブルーナたちによるアトランティス襲撃。
大型木造船から飛び出した魔族の数は約三十人。
それに対して、守り手はガーディアン・ガーゴイル残り四体とリナと沙那、そして白桃姫だけ。
どう見ても劣勢間違いなしのこの事態、後方で高笑いするように見ていたブルーナであったが。
──ウォォォオオォォォォ
魔族の中に飛び込んできたリナと沙那に目掛けて、次々と魔術が飛んでいく。
長距離攻撃特化魔族が魔術を飛ばし、その背後から近接型の魔族が武器を構えて突っ込んでいくが、そこ目掛けてリナが右腕のツァリプシュカ改2を構えた!!
「白桃姫さんの引いた境界を越えたなぁぁぁぁぁぁ。リナ・コレダぁぁぁぁ!」
──ガゴン……キィィィィィン
前方に突き出したツァリプシュカ改2の外装甲が展開し、魔導シリンダーが傘のように開く。
そして半獣人化モードに変化したリナの体内から湧き出る『複合闘気』を吸収し、圧縮。
ツァリプシュカ改2内部の超小型魔導ジェネレーターが、高い金属音のような唸り声を上げ始めた。
「いっけぇぇぇぇぇ!!」
──ビシャァァァォァァァァァッ
リナの叫びと同時に、魔導シリンダーが稲妻を発生し、魔族目掛けて放出される。
それはまるで生き物のように、空を駆る竜の如き姿を浮かび上がらせると、次々と魔族を巨大な顎にとらえ、黒い塊に散らせていく。
「な、なんだあれは!! あんな化け物を相手したくない!!」
「そっちだ、その女の方から抜けろ!!」
リナ・コレダーの威力を見て驚愕した魔族は、手薄となっている沙那のほうに殺到する。
後ろを回るとか、別のルートを取るものもあるのだが、それよりも今は手柄を立てて、十二魔将に取り立ててもらうという野望が優先されてしまった。
「私は、乙葉先輩のような強力な魔力も、築地先輩のような闘気も、新山先輩のような神の力もありません」
──ガゴン
沙那が両手を左右に伸ばす。
その両掌から二つの魔法陣が広がり始める。
「瀬川先輩のような解析力も、リナちゃんのような超獣化能力もありません」
──ガゴン
左右の足元に小さな魔法陣が広がり、さらに沙那の背部後方に巨大な魔法陣が展開した。
「でも!! 私はファウストの最高傑作。それを有馬お父様が改造し、乙葉先輩が術式の最適化を行い!! この地で、プラティさんの手によって、アトランティスの英知の結晶を与えてくれました!!」
──ブゥゥゥゥウン
両手の先、足元の魔法陣がさらに大きくなると、背後から巨大な人型兵器の胴体部が姿を表す。
「これぞ魔導合身!! いでよ我が分身!! オリハルコンゴーレム・ラフインウォリアー!」
沙那の背後に現れた巨大なゴーレムボディが開くと、沙那の体が取り込まれていく。
そして左右の手足の先にあった魔法陣から腕が、足が召喚されて合体すると、最後に胴部から骸骨をモチーフとしたヘルメットを被った頭が飛び出す。
全高5.5メートルの巨大ロボット型オリハルコンゴーレムが、その姿を表した。
「な、なななななんじゃぁぁぁぁぁぁ!!」
沙那が普通の女の子と見ていた魔族は、突然の出来事に驚愕する。
慌てて立ち止まり、その場で攻撃を開始するのだが、魔術も飛び道具も、全てがゴーレムボディによって弾き飛ばされてしまう。
「ふふ……その程度の攻撃で……この私を、沙那を傷つけられると思って……ふふ……ははっ……あーっはっはっはっはっはっ!!」
声高らかに叫びながら、沙那・ラフィンウォリアーが魔族に向かって拳を振るう。
巨大な体にも関わらず、人間を超えた速度で間合いを詰め、力一杯の拳を魔族に叩き込む。
運が良い魔族は後方に吹き飛び、運が悪いものは一撃で魔人核ごと砕かれ、霧のように散っていく。
「や、やばい!! あいつは危険だ!! 逃げろ、いや回り込んでしまえ!!」
「させないよ〜!!」
後方に走り出した魔族の目の前に、リナが高速で回り込んでくる。
──ジャギン!
ツァリプシュカ改2の籠手部分の左右が展開して伸び、ザリガニのような巨大なハサミが完成する。
「リナちゃん・ずんどこパーンチ!!」
──ブゥゥゥゥウン
地を這うような体勢からのアッパーカット。
それを受けて魔族は空高くまで吹き飛ばされ、結界に激突して落下してくる。
「これぞ、白桃姫さんとの特訓の結果!! 強靭な肉体に、さらに山猫族のハイパー複合闘気を乗せた会心の物理攻撃!!」
なんのことはない、普通のパンチ。
でも、オリハルコンによって強化されたツァリプシュカ改2が、リナの複合闘気を限界にまで引き上げている。
「この私と沙那ちゃんがいたら、もう大変!! ここから先は、先に進めない!!」
「まってリナちゃん、台詞がおかしいから!!」
「え! あれ?」
高らかに見栄を切るリナに、沙那が突っ込みを入れる。
その直後、頭上から魔族が次々と落下し、意識を失っていった。
………
……
…
リナ坊と沙那が戦闘に突入した時。
離れた場所では、ピク・ラティエとブルーナが対峙していた。
「ブルーナや。マグナム派のお前がこれを欲する理由はあれか? このアトランティスを使って裏地球に向かうためじゃな?」
どこでアトランティスの事を知ったのかと、ピク・ラティエも興味津々であったが。
今の彼女の言葉で、ブルーナはさらに頭を捻りそうになっている。
「アトランティスを使って裏地球に? そうか、この浮遊大陸は、時空を超えることができるのか!!」
そう叫びつつメガネをグイッと上げる。
怪しげな笑みを浮かべ、ピク・ラティエをじっと見据える。
「ん? 違うのか?」
「いえ、私としては、この浮遊大陸を使ってフェルナンド聖王国に向かおうと考えていたのですよ。彼の地には、この鏡刻界最後の水晶柱が存在する。それを使って裏地球へと再侵攻を開始せよと、神のお告げがあったのです!」
「神のお告げぇ? またなんとも面妖な」
彼の言う神のお告げはすなわち、ファザー・ダークの神託。
そう素直に捉えたピク・ラティエであるが、何故、魔人王ではなくブルーナに神託が降りたのか、興味津々である。
「面妖とはまた、元十二魔将の言葉とは思えませんね。魔族にとっては、裏地球侵攻は悲願でしょうが」
「ふん。先代、先先代魔人王が勝手に始めた侵攻ではないか。初代魔人王は、転移門を平和に利用したと言う噂もある。二つの世界を結び、新たな文明を受け入れる……この地、アトランティスに残っていた碑文では、そのような記録があるぞよ!!」
ピク・ラティエはリナや沙那の修行の合間に、このアトランティスの調査を行なっていた。
もっとも、ほとんどはプラティ・パラディが終えていたので、彼の書き出した記録を眺めていただけであるが。
そこに記されていた記録の中に、初代魔人王であるカグラのレポートが存在していた。
二つの世界をつなぐ門。
これを使う事で、双子のように存在した二つの世界を行き来することができる。
それを侵攻としてではなく、文化交流として使えないかと、カグラは調査を進めていた。
もっとも、それを知った二代目魔人王によって転移門は悪用され、裏地球への魔族の大侵攻に利用されることとなったのである。
「まあ、私は所詮は宮仕のようなもの。上の命令は絶対です。我が主人の悲願、王印を回収することが使命です……さあ、ピク・ラティエよ、そこをどきなさい!!」
──ギン!
ブルーナの魔眼が輝く。
陣内の思考誘導のような生易しいものではない、支配の魔眼。
一度に支配する人数こそ数少ないものの、術式としての強度は十倍以上。
侯爵級魔族でさえ、操ることが可能である。
「ふむ、支配の魔眼か。デュラッヘ一族の固有能力じゃったよな。久しぶりに見たわ」
「……は?」
ブルーナは一瞬、呆然としてしまう。
その気になれば、彼の魔眼の力ならば十二魔将程度は支配できるはず。
それをいともあっさりと抵抗し、ピク・ラティエは何事もなかったかのような顔をしている。
「そんな馬鹿な……ピク・ラティエよ!!我に従え!!」
「断る!! 何を阿呆なことをほざいておる……妾はな、貴様の支配下に入ることはない。これがその証拠じゃ!!」
左手をブルーナに向け、ゆっくりと開く。
そこに記された古代魔族語を見て、ブルーナはざわめく。
『十二魔将・第八位』
掌の文字は、ピク・ラティエが十二魔将である事を表している。
「な、そ、そんな馬鹿な!! 貴様が新たな魔人王の十二魔将だというのか!!」
「そうらしいのう。突然、手のひらに浮かび上がってな。受け入れるかどうかという声があったので、面白いから受け入れたわ」
新たな魔人王である瀬川雅、その十二魔将は文学部によって構成されているが。
瀬川にとっては白桃姫も仲間という認識があったのであろう。
しっかりと第八位として任命されていた。
「ばかな……バカな馬鹿なBAKAなブゥアカな……新たな魔人王の十二魔将だと? いつ、貴様は魔人王から拝命されたというのだ!!」
「教える必要もないわ。ただ、貴様の支配の魔眼程度では、新たな魔人王の支配力を超えることは出来ぬという事じゃよ。さて、貴様には色々と聞きたいことがあるでな」
──ブワサッ
白桃姫の腰から翼が広がり、側頭部のツノが後方にメキメキと伸びていく。
手にしていた傘が一瞬で剣に変化すると、白桃姫が戦闘モードに変化した。
「マグナムの企み、全て吐き出して貰うとしようぞ」
「こ、こ、この尻軽ビッチがぁぁぁ。魔人王なら誰にでも尻を振る女如きが、このマグナム配下の俺に勝てるとでも!!」
──斬!
ブルーナの叫びと、彼の首が体から離れるのは同時。
「馬鹿……な。見えなかった……だと?」
「ふむ。貴様、妾と対峙してから。どれだけ『馬鹿』という言葉を吐いた? 妾が裏地球で得た知識ではな、『馬鹿と言った方がバカ』という諺がある。それによると、貴様は妾よりも八倍もバカじゃな」
──ズボッ
さらに貫手を心臓めがけて突き刺すが、それよりも早くブルーナの身体は灰のように散っていく。
「……魔人核がない……なるほど、デュラッヘ一族は、『本物の頭』に魔人核を持っているのか。残念じゃが、次にあった時にこそ、マグナムの企みを話してもらうとするか」
──ブン
剣を軽く振り、傘に戻す。
そして戦闘モードを解除すると、リナと沙那の方を向いた。
「あっちも終わりか。まあ、修行の成果は出てあったようじゃから、あとは築地の目覚めを待つばかりか」
──スゥゥゥゥッ
ゆっくりと霧が降りてくる。
それが『転移現象』の予兆だと理解すると、白桃姫はリナたちを連れて中央塔へと戻ることにした。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




