第二十六話・木を見て森を削足適履(街角妖魔観察日記)
『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週火曜日と金曜日を目安に頑張っています。
なお、前回のオトヤンのネタで『イカノオスシ』についてわからないと言う問い合わせが多数ございましたので、画像にてご説明します。
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北海道警察が公開している警鐘分の一つです。
すべては、少年二人の尾行から始まっていた。
上からの指示で護衛兼情報収集のために、ターゲットの高校生二人を何事もなく尾行していたはずなのに、彼らは突然二手に分かれて走り出した。
それを追いかけてビルの上まで向かったのだけれど、私は相手が高校生と思って侮っていたのかもしれないわ。
‥‥
‥
「‥‥あなたたちの所属は? 私たちに対して敵対意思を持つ者たちかしら? 妖魔について聞きたいっていうことは、妖魔のことを知らない術師っていうところかしらね?」
「まあ、そういうことにしておいてくれ。悪いが術師とか組織とかについてはノーコメントだ。俺たちは‥‥ただの学生なんでね」
「そうそう。買い物ついでにいきなり妖魔に襲われたただの学生なんだよ。そんな俺たちを、どうして尾行するような真似をしていたのさ?」
築地祐太郎と、確かその友人の乙葉浩介だったわね。普通の高校生かと思ったけれど、尾行を撒くために二手に分かれるとか、その片方を囮にして挟み撃ちにするとか、どう考えても普通の高校生の考え方ではないわ。
話し方から考えると、リーダー的存在が築地君で、乙葉君はおそらくは彼の護衛ってところかしら?
「‥‥オトヤン、なんで一人でてんぱっているんだ?」
「うっさいわ‥‥いいからユータロは井川綾子さん24歳、警視庁公安部特殊捜査課・捜査六課の呪符師さんから話聞いておいてくれよ」
な、なんなのよこの子たち。
どうして私の正体を知っているのよ、それも、私が呪符師だなんて第六課のメンバーしか知らないことまで。
違う、乙葉君がリーダーで、築地君が彼の護衛。
しかも、彼らの所属している組織はかなり大きいわ。
そうでなければ、絶対に表に出るはずのない第六課の名前なんて出るはずがない。
それに私の完璧な尾行まで知っていたの? 気配は完全に遮断していたのよ?
まさかこの二人、私たちの知らない力を持っているっていうの?
まさか、伝説の『魔術師』?
──ビクッ
ダメね。
私の正体は完全に知られているわ。それも、表向きの仕事先まで全て。
彼らの背後の存在が判らない、まさか私たちの敵であり妖魔と手を組んでいる?
アメリカの対妖魔機関『ヘキサグラム』所属っていう可能性もあるわよね?
もしそうだとすると、彼らは人造妖魔もしくは受肉した妖魔細胞を体内に組み込まれた実験体の可能性もあるわね‥‥。
「そう、そこまで調べているのなら早いわ。私は上からの命令で、貴方たちの護衛兼監視をしていたのよ。貴方たちは秋葉原で妖魔に襲われたでしょう? それを倒す技量があるのなら、私たち神楽に協力してほしいのよ。そのスカウトの意味もあったのですけれど」
ここは懐柔策に出たほうがいいわね‥‥。
でも力いっぱい断られたわ、そう、それなら仕方ないわ‥‥
それなら、力ずくでもあなたたちを抑え込んで、警視庁に連行するしかないわよね。
まだ私の式神は階下で待機しているわ。
遠隔で憑りつかせれば、そのまま術式変換で縛鎖符に切り替えられる。一人でも動けなくすれば、一対一なら私でも勝てるわ。
妖魔相手ではいまいちだけど、私は対人戦ではエキスパートですからね。
伊達に、私の先祖が平安時代の陰陽師だったのじゃないわよ? 先祖代々受け継がれた呪符師としての血は、まだ途絶えていないのですからね?
そのまま透明化した式神をコントロールして、築地君の友達のほうに向かわせたんだけど。
──シュパッ
突然、乙葉君がどこからともなく銀色のハリセンを取り出し、飛ばしていた式神を一撃で粉砕した。
うそでしょ!!
式神は魔力の塊なのよ、物理的攻撃はすり抜けてしまうのよ?
どうしてそれを、一撃で粉砕できるのよ‥‥。
それにあの武器、何処から出したのよ? さっきまで待っていなかったわよね?
これはやられたわ。
私なんかじゃ勝ち目はないわよ。
「‥‥今の飛んできた奴は井川さんの式神だよね? 透明だからって見えないなんて思わない方がいいよ。俺たちには丸見えだからね」
「そんじゃ、あんたたちの上の人にもよろしく伝えておいてね」
そう告げて、二人はその場から立ち去ってしまう。
今から私が彼らを追いかけても無駄でしょう。
こうなると、別の方法を取らないとならないわね。
──プルルルルルル‥‥ガチャッ
『はい、公安部特殊捜査課、御影です』
「井川です。ターゲットと戦闘状態に突入‥‥そのまま逃げられました」
『ほう。君の攻撃を躱せるとは思えないが、まあいい、一度戻りたまえ、報告はこちらで聞くことにする』
「了解です‥‥」
それ以上の言葉が出ない。
相手に正体を見破られ、術まで破られる。
こんな屈辱、初めてよ……。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
今朝の朝ごはんはホテルの朝食バイキング。
一階にあるレストランではなく、最上階一つ下のプレミアムラウンジでの食事だ。
祐太郎曰く、俺たちの泊まっている部屋は特別室らしくプレミアムクラブフロアって言うらしい。
しかし、昨日の夕方の出来事は、とにかくショッキングだった。
まさか妖魔と戦っている部署が警察組織に実在し、そこにスカウトされるなんて思ってもみなかったからね。
でも、そのおかげで新しく作ったセンサーゴーグルの性能もわかったし、井川さんのコントロールしていた式神をハリセンで破壊することもできた。
この調子で、俺たちは妖魔には関わらずに過ごしたいものですなぁ。
「まあ、無理だろうなぁ。あっちは俺たちのことはすでに調べ終わってあるからさ、どっかこっかで接触してくると思うぞ?」
「なんで、俺の考えていることを読み取るんだよ‼︎」
「長い付き合いだからな、いや、ボソボソと口にも出ていたから。オトヤンは深く考えると口に出してボソボソと話していることがあるから、気をつけたほうがいいぞ」
笑いながらベーコンエッグを食べる祐太郎。
まあ、その癖は昔からなので諦めてくれ、俺も直す気はない。
そもそも、この癖のおかげで中学校の時はキモオタ扱いされていてなぁ、俺、泣いて良いか?
「それでオトヤン。俺は女神から神託を受けている、その中で、俺たちは妖魔に狙われるかもしれないって言われたことは話してあるよな?」
「うむ‼︎」
「その直後に襲われた、そして俺たちの世界は妖魔に狙われている。俺たちはどう動くか……って普通なら考えるんだろうけれど、俺はヒーロー的自己犠牲なんてごめん被る」
「同感だな。じゃあどうする? ユータロは何かいい案があるのか?」
「今は自衛する手段だけ身につける、襲われたらやり返す、ついでに妖魔について調べてデーターとして取っておく。これが妥当じゃないか?」
おお、俺の考えていることと一致する。
さすがは祐太郎、勝手に決めた俺のブレイン。
「じゃあ今日は?」
「買い物三昧で良いんじゃね? ゴーグルは装備したままで」
「そうだな、それで行くか」
そうと決まると善は急げ。
朝一で新商品が入荷するかもしれないから、諦めて秋葉原へ向かうとしようそうしよう。
もし俺たちに妖魔から身を守る術がなかったら、多分、昨日の時点で井川さんに助けを求めたんだろう。
けれど今は違う、俺たちは身を守れる‼︎
………
……
…
朝食後、いつもの日課を終えて街に出る。
物は試しにセンサーゴーグルのアクティブセンサーで対象を妖魔にセット、サーチライト機能があるので範囲内の妖魔を感知したらゴーグルに矢印が出る。
これってかなり便利だよね。
残念ながら祐太郎は保有MPが少ないため、連続3時間しかアクティブセンサーが稼働しないので、俺がフルパワーでチェックしておく事にした。
「おおお、アニメ『ASURAファンタジー』の限定Tシャツがあるぞ‼︎ 士郎正宗書き下ろしのやつだ‼︎」
「こっちには『撃殺、宇宙拳』の限定グッズがある。良いなぁ、これは東京限定で手に入らないんだよなぁ」
「こっちを見ろよ、『衛府の七忍・一番くじ』があるぞ、一等は『信州無敵・桃太郎』だ。でも俺はC賞の『左近どんタオル』が欲しいぞ」
「オトヤン、それは違う。男ならD賞の『誤チェストマグカップ』だろ?」
「ううう、ラストワン賞の桃太郎・お供付きバージョンも捨てがたい……」
などなど叫びつつ買い物を続けていると、時折ゴーグルに矢印が出る。
「あ、ユータロ、左斜め前、距離250mに一体いるわ、どうする?」
「……無視するか。襲ってくるとしても、この前みたいに結界を張ってくるんだろう? なんで人前で堂々と襲ってこないのかが理解できないんだがなぁ」
そこな。
明らかに人外の力を持っているにも拘わらず、なんで街中で堂々と襲ってこないんだろう?
祐太郎の推測だと、今の俺たちの世界には妖魔とまともにやりあうことができる存在は少ないと考えたらしい。
そして妖魔は人間を糧にしている。
いわば野生の空腹ライオンのような感じなのに豊富な餌である人間を、どうして無差別に襲わないのか理解できないらしい。
「綾女ねーさんの話では、妖魔は憑依して精気を吸っているので、直接人間を殺害することはないらしいぞ?」
「ああ、そうだったな。迂闊に表に出ると、第六課とやらが動くから隠れているんじゃないか? 憑依された人間なんて、パッと見ても区別がつかないだろうからさ」
「成る程なぁ。あ、上空前方、距離590mに二ついるわ。なんかウロウロしているけどどうする?」
「俺も確認する」
すぐさま祐太郎もゴーグルに魔力を注いで起動させると、同じ方向を向いた。
蝙蝠の形をした魔族、ただし全身がトゲトゲしててなんか痛そうである。
「憑依されたやつは、前の交差点で立っているおじさんだな。こっちに気付いている様子もないから、そのままやり過ごそう」
「憑依された妖魔を剥がす方法があるのなら、剥がしてあげたいけどね。ユータロの闘気術式にそういう技はない?」
「無いなぁ。俺に聞くっていうことは、オトヤンもないか」
信号が変わったので、俺たちも前に向かう。
そしてすれ違う少し前に、おじさんに憑依していた魔族がスッと離れて、隣のOLに
憑依し直した。
──?????
その瞬間に、おじさんは頭を捻って肩を回す。
ああ、あれだいきなり肩こりが無くなった感覚なんだろうなぁ。
肩こりの原因は妖魔なのか?
そしてOLも少し辛そうな顔で肩に手を当てている。
とりあえずはOLに憑依している妖魔を鑑定するか。
『ピッ……下級妖魔ショルダープレス、人間に憑依して精気を吸うことで、対象の肩の血流を悪化させる。
HP12、MP10、魔族共通能力/透明化・憑依』
「あー。ユータロ、あれは下級妖魔だとさ‥‥ユータロも見たか?」
「最悪な妖魔だな。肩こりを作る妖魔って、それどうよ? じゃあ上で飛んでいる奴らはなんなんだ?」
交差点を渡り切ってから空を軽く見上げる。
『ピッ…下級妖魔フロートファング、魔力を感知し追跡する事ができる偵察妖魔。HP5、MP20、魔族共通能力/透明化・憑依、個体能力/飛行・魔力感知』
うん偵察だね、それも魔力を追跡するタイプだね。
「さて、ここでオトヤンに問題だ。俺たちのゴーグルは魔力で動いている、そしてあいつは魔力感知を持っている。つまり、俺たちは奴らに見つかる? ファイナンアンサー」
「どうだろう? 魔力って普通の人にもあるからそれはないんでない? あるとするなら魔法が発動する瞬間に反応するとか?」
「なら、このゴーグルを使っていることで見つかる可能性は?」
「あるんじゃね? まあ、ゴーグルの起動が魔法の発動と同じって考えると、起動済みのゴーグルには反応しないとか?」
間も無くフロートファングが俺たちの上空を通過する。だが、俺たちに向かって飛んでくるような反応はない。
「……試してみるわ。ユータロはあのフロートファングとの距離をゴーグルで測定しておいてくれ」
「試す? 何を?」
横で祐太郎が問い掛けるので、俺は物陰に隠れてインビジリングを起動する。
そして交差点に立っている信号機の上に向かって光球を発動すると、フロートファングの一体が信号機に向かって高速で飛んでいき、信号機に体当たりする。
──ガシャーン
一撃で信号機が破壊され、周りにいた人たちが物音に驚いてあちこち走っていく。
そして、破壊した信号機から全く無傷なフロートファングが飛び上がると、また何かを探すように飛んでいった。
──スッ
物陰で元に戻ってから、俺は祐太郎の近くに戻る。
「あ、阿呆かお前は‼︎ あんなのに体当たりされたら死ぬぞ‼︎」
「まあまあ、でも分かったわ、魔導具の起動には反応しない、純粋な魔法の魔力に反応する。詠唱時の魔力については反応するが、見えない場合は優先順位が変動する。俺たちとフロートファングの距離は?」
「20mちょい。この距離は奴らの魔力感知能力の範囲外なのか。因みにだが、もしもインビジリングの起動に反応したらどうするつもりだった?」
「力の盾で塞いでから、ハリセンでぶっ飛ばす予定だったぞ」
そう説明すると、祐太郎はハァ〜とため息をつく。
「まあ、やるなとは言わないけどさ、先に説明しろよ、もし何かあったらフォローできないだろうが」
「そうか、悪い悪い。でも、これであいつらの反応があったら魔法使わなければ良いって理解できたから安全だよな。安全確認、箪笥にゴンだよ」
「まあな、じゃあ買い物を続けるか……」
そのまま先行販売グッズや限定グッズを買い漁ると、俺と祐太郎はホテルに戻った。
夜にはコミケのコスプレを作るための材料をカナン魔導商会で購入。そのまま錬金術で軽量化や各種素材強化などの加工を行なって、どうにか二人分のコスプレを完成させた。
明日は一日中ホテルで体力温存……祐太郎も部屋で魔術の訓練らしいから、俺は錬金術の練習を続けることにしよう。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
・今回のわかりづらいネタ
撃殺!宇○拳 /破○拳 竜 著
阿修羅ファンタジー /ブラウニングカンパニー
箪笥にゴン /




