第二百五十七話・窮途末路、危ない橋を全力で走らない!!(無理、無茶、無謀の三拍子)
『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。
──放課後
「さて、今日は久しぶりに部活を頑張りますか!!」
「築地くんも有馬さんも、りなちゃんもいないので寂しいですけどね」
「たまに連絡をくれてもいいと思うんだが……まあ、その手段がないんだろうなぁ」
久しぶりの部活。
昨日までは、札駅迷宮に入ったり正体不明の導師に呪いをかけられたりで、散々だったよ。
まあ、それも昼休みの仮眠で疲労も回復、元気いっぱいがんばるか〜って感じだよね?
「あ、済まないな乙葉。二人っきりにしてあげられなくて」
「なんなら席を外す? 一時間でいい?」
「な、な、な、何を言い出しますか先輩たちは!!」
「私と乙葉くんは、まだそういう関係じゃ……プシュゥ」
普段は受験勉強で忙しいはずの先輩たちが、なぜか今日に限って部室にいらっしゃる。
いや、それがダメっていうわけじゃないよ、部室でイチャコラするわけじゃないからさ。
今日は忍冬師範に頼まれている魔道具を作る予定だっただけだからね。
「ちなみに先輩方、受験勉強はもう良いので?」
「今更慌てたところで、何も変わらないよ。毎日当たり前に勉強していたからさ」
「そうそう。過去問の復習とが終わったから、あとはいつも通りに……それと、あれは乙葉くんの関係者?」
高遠先輩が窓の外を指差す。
いや、何も見えないんだけど。
「へ? 何かいますか?」
「霧散化した魔族が一人。こっちを恨めしそうに睨んでいる。まるで映画に出てくる悪霊のように」
「高遠がそれに気付いてさ。二人で様子を見に来たっていうのもあるんだけれど……乙葉は、あれに気がついていないのか?」
うっそ!!
俺が魔族に気がつかないだと?
そう思って慌ててゴーグルゴーなんだけど。
『ピッ……男爵級上級魔族・ファン・ランカ・ダンサー。人間個体名・藍明鈴。現在、霧散化状態でこちらを監視中』
あ、普通に見えるわ。
学校って結界に守られているから、あまり気にする必要もないと思って探知系魔法はカットしているんだよね。
──ダダダダダダダダダ……ガラッ!!
「乙葉ぁ! あの外の魔族はお前の知り合いか!」
「よう織田。お前でも感じるのか」
「感じるも何も、一瞬だけ憑依されたわ!!」
いきなり部室に来たと思ったら、開口一番それかよ。
しかも、憑依した妖魔を自力で引っ剥がしたのか。
織田も意外と強くなっているなぁ。
「念のため、織田くんも魔法で診察します……診断……憑依痣が残っていること、無理やり引き離したので魔力回路が若干詰まり気味ですけど、それは体内循環をすることで治りますよ」
「サンキュー新山さん。それよりも、あれをどうにかできないのか? 魔力が高そうなやつに片っ端から憑依しまくっているぞ」
「はぁ。それじゃあ俺が行ってきますか」
──ガタッ、ドサッ
そう呟いて立ち上がると、美馬先輩が俺の方に手を当てて、俺を座らせたよ。
「乙葉はここで様子を見ていてくれるか? 高遠、行くぞ」
「了解。そこの織田くんはどうするの? 戦う? 戦わない?」
「お、おれも行く!!」
「ちよ、ちょっと待て、いや待ってください!! なんで先輩たちが魔族と戦うのですか?」
「自分なりに訓練してきたからさ。どこまで通用するのか、試したくてね」
「氷系魔術は完璧に覚えた。中級妖魔なら相手したことあるから。それじゃあ、行ってくる」
それだけを告げて、三人で廊下に出ていく。
いや、急いで追いかけないと!!
上級妖魔は、普通に洒落にならないんですってば!!
──ガギッ
慌てて立ちあがろうとしたら、俺の体が動かない。
ゴーグルで見てみると、闘気の鎖が俺をがんじがらめにしているかじゃないかよ!!
「う、嘘だろ!! 美馬先輩の闘気って、祐太郎よりも低いはずだよな!!」
「わ、私は三人のサポートにいきます。乙葉くんは鎖を引き剥がしたら追いかけてきてください!!」
──ブッチィィィィン
いや、闘気中和術式で外れるんだけどさ。
いきなりなので驚いただけだから。
「大丈夫!! それよりもこっちの方が早い!!!!」
窓に手を当てて開こうとして、またしても開かない。
やはり闘気で窓をガッチリと固定している。
「うわぁ……単純戦闘力なら築地くんの方が上かもしれないけど、美馬先輩は絡め手を使うのですね」
「くっそ、窓からショートカットも無理か。新山さん、走るよ!!」
「はい!!」
そこからはスーパーダッシュ。
三人とも、無茶をしないでくれよ。
………
……
…
──校舎正門外
美馬先輩と高遠先輩。
どうやら二人とも、俺と同じ魔術師のようだけど。
まさかいきなり、妖魔相手に戦うなんていうとは思わなかったよ。
築地がいない現状では、乙葉たちは明らかに戦力不足なのは目に見えている。
だから、俺が少しでも罪滅ぼしのために手を貸そうと思っただけだ。それに、俺の友達にも次々と憑依して、限界近くまで生気を奪ったあいつだけは許したくない。
「織田くんだったかな? 捕縛系は使える?」
「え、あ、はい、大丈夫です」
「そう。それなら、まずはそこの魔族を実体化させる……」
──ブゥン
高遠先輩が空間から魔導書を取り出す。
そして魔族のいそうなあたりに向かって右手を翳した。
「Invisible beings. Show yourself(不可視の存在よ。その姿を表せ)」
──キィィィィィン
高遠先輩の手から、魔力の糸が放出される。
それは俺たちの目の前で人型を形成し、スーツを着た女性に変化した。
「は、はあ? 貴方、魔法が使えるの? なぜ?」
「織田くん、やってしまいなさい!!」
「了解です。我が魔力にて、かのものを封じ取れ! そは鎖、そは枷。我が力となりて顕現せよ!!」
──プシュゥゥゥゥゥ
俺の手からも魔力が放出する。
蜘蛛の糸のように伸びた魔力繊維、それが相手に絡みつくのだけど。
──ブチブチッ
あっさり引き裂かれた。
「ふぅん。二人も魔術師がいるとはねぇ。でも今の君、まだまだ魔力の練り込みが足りない……ってえええええ!!」
──シュタタタッ
右手に闘気の塊を作り出し、美馬先輩がスーツ姿の魔族のねーちゃんに向かって走っていく!
そして足に闘気を集めてジャンプすると!!
「パワーダーンク!!」
ダンクシュートのように魔族に向かって闘気球を叩き込む。
「魔法じゃない!! まさか闘気使いの築地って貴方なの!!!!」
「ハズレ」
──ブシュッ
美馬先輩のパワーダンクをギリギリで躱し、距離を取る魔族。
だけど、その足元に高遠先輩の放った氷柱が飛んでいく。
いや、先輩たち、なんでそんなに実践慣れしているんですか?
──ドゴドゴドゴドゴォォォォッ
その攻撃を、魔族は懐から銃を引き抜いて撃ち落とす。
マジかよ!!
「悪いけど。このサンダラーの前じゃ、その程度の魔法なんて迎撃可能なのよ。さて、これで貴方たちの正体も分かったわ。闘気使いの築地と、そっちの氷使いが新山ね。すると、君が乙葉浩介に間違いはないわね?」
「……先輩。この魔族はポンコツですか?」
「まあ、私の闘気じゃ築地ほど強くないし」
「私は新山さんのように、人を癒す力はない……」
魔族にボソボソと呟くと、俺たちの声が届いたのか魔族も真っ赤な顔になっている。
「そ、それじゃあ乙葉浩介ってどこにいるのよ!!」
「ここだよ!!」
──ドッゴォォォォォォン
魔族の真後ろ。
上空から落下しつつ、乙葉が魔力の塊を魔族めがけてたたきこむ。
完全な不意打ちに、魔族の体の右半身が吹き飛んだ。
「織田ぁぁぁぁ!! なんでお前が魔族に立ち向かうんだよ、まだまだ修行が足りないわ!! 先輩たちはお疲れ様ですが、同じくあとで説教です。要先生が後から来ますので、教室で待機だそうです。織田もな!」
「「「うわぁ……」」」
先輩たちが絶句している。
それよりも乙葉、トドメはどうした!!
「こ、この魔力……貴方が魔人王となった乙葉浩介ね……覚えていらっしゃい!!」
──サァァァァァッ
魔族が霧のように散っていく。
そして俺たちの後ろからは、新山さんも走ってくる。
「乙葉くん、魔族はどうなったの?」
「魔人核の位置を読み間違えた。霧散化されちまったよ……おまけに俺が魔人王だって言っていたけど……」
そう話している乙葉たち。
ようやく、乙葉が魔法を使えるようになったら妖魔に狙われるっていう、その危険性を体感したわ。
道理で、必死に止めるわけだよ……。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
──部室にて
はい。
織田、美馬先輩、高遠先輩が到着した要先生に説教されています。
先生、本気でよろしくお願いします。俺が間に合わなかったら、最悪は死んでいたかもしれませんので。
「それで、浩介は何をしている?」
「へ? 忍冬師範に頼まれた魔導具を作っていますが。例の水晶柱に接続するやつですよ」
説教空間から少し離れた場所で、俺は忍冬師範に頼まれた魔導具を作成中。
新山さんはスクロールから式神を召喚して、周辺警戒を行なっている最中で。
「そうか。まあ、戦闘に参加したやつから魔族の特徴とかを聞きたかったんだが、説教が終わってからだと焦燥しきっているだろうからな。浩介は見たのだろう?」
「まあ、はっきりとではありませんけどね。上級魔族のファン・ランカ・ダンサー。魔術の封じられた銃弾を打ち出す銃を使っていました」
「銃使い……データベースには登録がない魔族だな。仕留められたのか?」
「いやいや、魔人核の場所の見極めができなかったもので。霧散化して逃げられてしまいましたよ」
でも、あれってダメージが蓄積して霧散化したわけじゃなく、自分で散ったパターンっぽいんだよ。
そうなるとまた何処かで実体化するだろうし、ここに狙いを定めて来る可能性だってある。
非常に厄介な事この上ない。
「そうか。まあ、それは仕方がないとしてだ……あの三人、お前の目から見てどう思う?」
師範がグイッと親指を立てて、説教中の先輩たちを指差す。
あ〜、スカウトですか?
正直に話した方が良いですよね。
「美馬先輩の闘気は、戦闘用というよりもサポート型。まあ、強いかどうかと言えば、そこそこ強いかと思います。高遠先輩は俺と同じ魔術師型ですけど……属性力が強いので、要先生の元で精霊使いとして修練を行えば、いけるかもしれませんが……でも、二人とも第六課に就職するかどうかわかりませんよ?」
「参考にはする。それに、あの三人にも『認定魔術師』の登録をしてもらう必要があるからな」
あ〜。
確か、この前の選挙で自由国民党が掲げてきた公約ですよね?
「それ、決まりそうなのですか?」
「魔術師を保護するという視点では、決まりそうではある。それよりも、あと1人の実力はどうなんだ?」
「織田かぁ……第六課に就職希望で、異世界の魔導書を所持している……魔術師の卵? ヒヨコ? 保有魔力値は低いけれど、俺とは別系統の魔術を使うのでどうでしょうかねぇ」
織田の魔導書って、子供でも覚えられるコストパフォーマンスがいい魔法なんだよ。
ちなみに俺の魔導書にもしっかりと書き込まれていたけど、俺は使い勝手の問題で使わない。
「そうか……まあ、考慮しておく。それで、魔導具が仕上がるのは、どれぐらい掛かる?」
「試作品は週末までに用意できます。あとはテストしてみて調節しますよ」
「それなら、土曜日の午後に京都に向かうか。そこで実地テストも兼ねて、要くんに魔導具のセットを行えるようにしてもらいたい」
あと三日。
まあ、余裕。
「了解です。ちなみに、この魔導具は買取で良いのですよね?」
「請求書は回してくれ。それじゃあ、俺も向こうに参加するか」
スックと立ち上がり、忍冬師範も説教組に移動する。
俺のサポートなしで、魔族相手に戦闘経験を身につけようとした罰です。素直に説教されてください。
今日は先輩たちに、合掌。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




