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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第四部・魔人王降臨編

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第二百三十五話・四面楚歌、犬も歩けば棒どころかとんでもないものに?(仕事の話をしようじゃないか)

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

 最悪だ。


 サンフランシスコが結界に飲み込まれた。

 内部に取り残されている人々は、街の外に出るために必死に抵抗を続けている。

 アメリカ海兵隊、サンフランシスコ駐留の米軍、ヘキサグラムのサンフランシスコ支部の警備員は、人々を安全な場所に避難させるべく動いている。

 

 妖魔特区と同じ対物理障壁結界らしく、戦車砲でもc10爆弾でも傷一つつかない。

 地下から逃げるべく重機を使った結界ギリギリでの掘削作業も、球形結界ゆえに断念。

 ライフラインが無事なのは良かったが、妖魔特区と同じならばやがて建物は風化し、倒壊する。

 それまでに、妖魔の魔の手からサンフランシスコ市民を助けなくてはならない。


「ゴーグル!! 私はキャンプ千歳に戻る。ヘキサグラムはどう動く?」

「アメリカへの帰還命令は出ていませんので、この地での任務を続けるだけです」


 十三丁目フィールドでの話し合いののち、クロム大佐は部下を引き連れて妖魔特区付近から撤退。

 ヘキサグラムは作戦任務続行のため、この地での活動を継続。

 そして第六課と特戦自衛隊も、国内での活性転移門対策のために現状維持だってさ。


「はぁ。これって、俺が日本に戻らないでサンフランシスコに向かっていたら、まだ対策はできていたんだろうなぁ」


 ため息をついてしまうが、だからと言って日本を見捨てるわけにはいかないからね。

 これには新山さんも先輩も頷いているから、俺の判断も間違いじゃない。

 ただ、何かもタイミングが悪すぎた。


「ここの対策については第六課と特戦自衛隊に任せて、一旦、カリフォルニア経由でサンフランシスコに向かうしかないか」


 俺がボソッと呟くと、御影さんが頭を振っている。


「いや、乙葉たちは日本国内での緊急時対応のために待機してほしい。サンフランシスコの件は、アメリカに任せておけ」

「いやいや、ちょっと待った!! ヘキサグラムで対応できるのか? ここの結界と同じもので、さらにでかいものが都市全体を包んでいるんだよ? 出ることも何もできないじゃないか」

「乙葉なら出口を作れる。それぐらいはわかるが、そのためにアメリカに向かった時、日本に何かあったら誰が日本を守る?」


──プチッ

 そりゃあ大人の理論だよ。

 たしかに、自慢じゃないが妖魔特区クラスの結界なら出口ぐらいは作れるさ。

 だから、それを作って市民を避難させるための手伝いをするだけなのに。

 俺に、ここでサンフランシスコを見捨てろっていうのか!!


「くっそ。俺だけじゃ手が足りないわ。頼みの綱の祐太郎も白桃姫もいない……前に立って戦える人間が、足りなすぎ……って、待った待った、つまりはあれだろ、俺の代わりに戦える奴がいるのなら、俺はサンフランシスコで結界に穴を開けに行けるんだな?」


 俺がそう叫ぶと、先輩や新山さんはアチャーって顔している。

 これはあれだ、とんでもないことをやらかすって顔しているのであって、反対した顔じゃないわな。

 そして忍冬師範も分かったらしく、慌てて俺の近くに歩いてくると、耳元でコソコソと話し始める。


(浩介、まさかとは思うが)

(蛇の道は蛇ですよ。表立って出て来れないのなら、変装なりなんなりして手伝ってもらうしかないでしょう?)


 そう。

 ここは、かつて最強の一角だった、初代魔人王が八魔将の方々にご推参願うことにしましょう。

 俺と忍冬師範のこそこそ話の中でも、御影さんはどこかに連絡をしているし。

 まあ、あとは直接俺がお願いに向かうしかないからなぁ。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



──夕方・札幌市円山・喫茶七曜

「……なるほどなぁ。つまり、浩介がサンフランシスコの結界に穴を開けて戻るまで、我々に妖魔特区の監視をお願いしたいということか?」


 俺と新山さん、瀬川先輩、忍冬師範は喫茶・七曜にやってきた。

 サンフランシスコの市民を見捨てることなんてできないし、だからといって日本を疎かになんてできない。

 この二つのバランスを取るためには、俺が守りが攻めのどちらかに徹して、足りないところを他の人に任せるという策に出るしかない。

 そして、現時点で結界に出入り用のゲートを作れるのは俺だけ。

 つまり、ここの留守をお願いするしかない。


「無理は承知です。ちなみに日本国政府は、俺がサンフランシスコに行くことについては良い顔をしないでしょうけれど、知ったことではありませんので」

「ふむぅ。乙葉が頭を下げるまでの状態か。チャンドラ、どうする?」

「俺としては、息抜き程度に手伝うのなら構わんと思うぞ。変装じゃなく、魔族モードに戻れば良いだけだからな」

「私も同意。基本的には十三丁目フィールドでの情報収集の護衛ということなら」


 羅睺さんの問いかけに、チャンドラ師匠も計都姫もやる気満々。

 そして傍で聞いていた綾女さんは、ニコニコと笑っている。


「二人はあれだろう? ここで乙葉に貸しを作っておいて、魔力玉を貰いたいって事じゃないのかえ?」


──ドキッ!! ×五名

 綾女ねーさんの突っ込みに、カウンターの中の蔵王さんやハルフェさんまで挙動不審になっている。

 あ〜。

 喫茶・七曜の全員が、そう考えていたのですね。


「日本政府としても、今回の協力については報酬は支払う。それと、皆さんの正体についても隠しておくことをお約束する」

「忍冬さん、我々の正体については、貴方が乙葉浩介の知り合いだから知ってもらったと思ってくれて構わない。逆に!日本政府にも我々の正体は知られては困る」

「それもお約束します。全て第六課の、私の胸の中に秘めておきます。報告には『協力魔族への報酬』という形で申請します」

「よかろう。それならば、協力するとしようじゃないか」


 上の話し合いは終わったらしい。

 あとは、俺たちの作戦になるんだけどさ。


「今回、サンフランシスコに向かうのは俺一人です」

「「却下(です!ね?)」」

「だよね」

「乙葉くん一人で、危険なところに向かわせるなんてできません」

「情報担当、回復要員。この二人は必要じゃないかしら?」


 うーん。

 これは困った。

 最悪、黒龍会を相手にする可能性もあるんだけどさ、そうなると前衛が足りないわ。

 だからといって、ボルチモアのミラージュやクリムゾンさんに手を借りるのも違う。

 そっちはフラットさんの守りに徹してもらわないとならないからね。


「ま、まあね。でもさ、万が一の場合、二人を守り切れる自信が……ないこともないけど、危険だよ?」

「私は深淵の書庫アーカイブがあります。それに新山さんだって、身を守る術ぐらいはありますよ」

「大丈夫!!」


 フンスと、両手をぎゅっと握って力強く告げる新山さん。

 はぁ、こうなると二人は引くことを知らないからなぁ。


「了解だよ。忍冬師範、ヘキサグラムに連絡して、俺がいうものを用意してもらってください。ゲートを作るためのフレームですけど、先に用意して貰えば、あとは俺が魔力を付与しますので」

「わかった。それじゃあ、すぐに手配する」

「俺たちは、明日からでも妖魔特区に向かうとする。忍冬さん、その辺りの話もつけておいてくれるかね?」

「わかりました。急ぎ手配しておきます」


 うんうん。

 話が早いということは、非常に楽で良い。

 すぐに向かいたいところだけど、ゲートを作るために必要な魔導具を用意するので、出発は明日の午後。

 ということで、今日は無事に解散となりましたとさ。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



──永田町・首相官邸

 サンフランシスコが結界に包まれた日。

 アメリカのパワード大統領から、日本の天羽総理にホットラインが繋がった。

 その話し合いの内容は、現代の魔術師の派遣要請。

 彼にサンフランシスコ結界を破壊してほしいという高難易度の要請であったものの、日本政府の回答は『保留』。

 サンフランシスコ市民を助けるという人道支援としては、これは受けるべきである。

 だが、その結果、日本が同じような窮地に陥った時、すぐに対処できるものがいないと被害が広がる。

 それ故に、日本としては乙葉浩介に国外へ出られると非常にまずい。

 また、同じような事象がアメリカ以外で起こった場合、その都度、高校生である彼を世界各国に派遣するというのも問題がある。


「ふぅ。本当に、魔術師が彼以外にも居てくれたなら、こんなに胃が痛くなる思いをすることはなかったのだがなぁ」


 ホットラインを終えてから、天羽は机の上の書類をチラリと見る。

 次の国会での審議の一つ、『日本国・認定魔術師システム』。

 これにより彼らの人権を保護する。

 決して国家公務員のように縛り付けるのではなく、また、日本からの強制力もない、本当に身分を守るためのシステム。

 現時点では、日本国内で認定魔術師としての資格を有する予定者は八名のみ。


 魔術師   『乙葉浩介』

 魔闘家   『築地祐太郎』

 聖女    『新山小春』

 魔導分析家 『瀬川雅』


 巫術師   『安倍緋泉』

 呪符師   『井川綾子』

 闘気使い  『忍冬修一郎』

 精霊使い  『要梓』


 国内の諜報機関を使って調査した結果。

 現時点では、八名の魔術師が存在する。

 過去に陰陽府があった時代は、安倍緋泉ら巫術師の系譜のみが魔術師として知られていた。

 それでも、実際に魔術が使えたのは安倍緋泉とその弟子の井川綾子のみ。

 闘気使いなど表に現れてはいなかったし、何よりも乙葉浩介たちのような強靭な能力など持ち合わせてはいない。

 名簿の最初に記された四人が、桁違いな存在であることは事実であり、彼らを守るための法案であるともいえよう。


「乙葉浩介の魔術理論、それを理解できたのは現時点では御神楽さまのみ。可能なら、彼にもっと魔術を広めてほしいところなのだが……」


 彼らが通う高校で、築地祐太郎が希望者に闘気コントロールのレクチャーを行なっていることも、新山小春や瀬川雅が知人たちに魔力コントロールを教えていることなど知らない。

 ましてや、彼らの同級生や先輩が魔術師となったことも。

 将来的には、まだまだ魔術師は増えるだろう。

 そのためにも、今は彼らを守るための法案を作るのが先決。

 

──プルルルルルル

 そして電話が鳴り響く。

 札幌市の特戦自衛隊からの報告内容は、乙葉浩介、新山小春、瀬川雅がアメリカに再び向かうということ。

 これを阻止しなくては、万が一にも外国で何かあった場合、国益が失われるということを報告しているのだが。

 そもそもサンフランシスコ結界が発生した時点で、国内からの渡米については制限が行われる事となっている。

 明日以降、日本からアメリカへ向かう便は全て停止し、渡米希望者についても緊急用件以外は許可が出ないことになっている。


「……乙葉浩介たちの渡米については、緊急事態ということで許可しろ。国益より何より、アメリカからの要請だ、人命がかかっていることも忘れるな」


 そして、彼らの安全のために護衛をつけるようにという指示を出してから、天羽は受話器を置いた。


「動きが早い……情報担当の魔術師がいるだけで、ここまで動きが早いとはな」


 今更ながら、天羽は乙葉浩介たちの行動力の高さに呆れる。

 これが普通の高校生なのかと思ってしまったが、魔術師である彼らはもう普通の高校生という括りにして良いのかと、頭を抱えることとなってしまった。

 

 

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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