第二百二十八話・一人当千、でも毛氈を被ってしまったかも(家に帰れない……)
。【ネット通販から始まる、現代の魔術師】第三巻は、本日発売です。
『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。
ニューヨーク州にある水晶柱。
その傍に出現した活性転移門については、緊急処置を行うことができた。
まあ、完全に封印できたわけではなく、別空間に隔離して動けなくして固定したと思ってくれればいい。
それと封印がどう違うかって言われると、違いはどこかにあるとしか言いようがない。
破壊耐性持ちの対象あいてに、ダメージを与えて疲弊させるなんてできないからさ。
【封印魔術】は相手を衰弱させて抵抗する力を弱めないと効力を発揮しない。
そのちょうどいい加減を考えてダメージを与えないと、オーバーキルになって霧散化する。
また、その前に霧散化して逃げられた場合、俺には対処方法がないんだよ。
だから、以前サイクロプスやミノタウロスに使った封印術式は使えないので、俺オリジナルの空間断絶結界陣を使って異空間に封じることに成功。
そして、研究中の魔術ゆえに、魔力消費量が果てしなく高くてさ。
意識が消えたかと思ったら、気がつくと何処かの医務室だったよ。
「あら、気がついたみたいね。気分はいかがかしら?」
声がする方に頭を傾けると、青いドクターコートを着た女性がたっている。
「可もなく不可もなく……魔力酔いなので、一定値の魔力が回復すると治りますから。ありがとうございます」
「あの子達の言っていた通りなのね。魔力酔いって言われても、私たちにはわからないことなのでね。ベットに横になっていれば、いずれ魔力が回復したら目を覚ましますっていっていたわよ」
「あ〜、あの子達って新山さんたちか。さすが、よくわかっているなぁ」
──ガバッ
ゆっくりと体を起こすと、ドクターが体に装着されていたバイタルセンサのモニタリング用電極を外してくれた。
「お世話になりました」
「いえいえ、こちらも良いデータが取れたので助かりましたわ。魔術師のバイタルデータって、こういう時しか調べることができませんからね」
「へぇ……」
まあ、ベッドを借りれたので文句は言わない。
血液や細胞片を調べてところで、魔術師と人間の違いなんて……あれ?
俺、人間の体じゃないような?
種族が人間(亜神)だったけど、同じだよな? 多分。
あの百道烈士との戦いの時も、肉体を完全に失って無からの再生とかじゃないから、魂の再生だから体は変化ないよな?
「……突然、無口になったけど。何かあったのかしら?」
「いえ、俺のデータで良ければ、研究の役に立ててください。それでは‼︎」
──ヒョイ
ベッドから降りて病衣から着替えると、部屋の外へと向かう。
ちょうど正面の部屋から新山さん達が出てきたので、軽く右手を上げて一言だけ。
「いやぁ、ただいま!!」
「ほら、やっぱり無事じゃない。新山さんは心配しすぎなのよ」
「いいえ、安心できません!! 診断!!」
おっと、新山さんが俺に魔法を掛けてくれた。
俺には見えない何かを見つめながら、新山さんがウンウンと頷いてホッとしている。
「よかった。急激な魔力消費で魔障中毒を引き起こす可能性もあるので……何もありませんでした」
「それなら俺がすぐに気がつくって。まあ、心配かけてすまないね」
「い、いいえ、無事でよかっ(ゴホン)はわわ」
俺たちを見て、先輩が咳払いひとつ。
イチャコラ禁止ですね、わかります。
そもそも、イチャコラしたことないんだけどさぁ……ないよね?
「さてと。乙葉くんが半日ほど眠っていたので、残りの日程はあと一日だけですけど、どうしますか?」
「ファッ!!」
慌てて近くの窓に向かい、外を見る。
「綺麗な朝日だなぁ……じゃないわ!! これはどうしたものかなぁ」
「ニューヨークの活性転位門は取り敢えず封印したのですよね? この調子でサンフランシスコの封印もしてしまうというのは?」
「それが一日でできるかどうか。寧ろ移動だけで半日は掛かるからなぁ」
単純計算で、距離にして4000キロ以上はある。
移動手段も色々と考える必要もあるからなぁと、瀬川先輩をチラリと見ると、すでに深淵の書庫を発動して調べてくれていた。
「そうですねぇ。航空機でも約七時間、陸路を車でとなると、大体二日近く掛かりますね。まあ、魔法の箒で飛べば、二時間ぐらいで着くことは可能ですけど?」
「やっぱり、魔法はチートだよなぁ。それで移動してから、情報のないサンフランシスコ・ターミナルの場所を探して……例の黒龍会とかいう魔族の集団とやりあう可能性も考えたら、時間は足りなすぎるよなぁ」
「かといって、放置しておくこともできないですし……ここは、ヘキサグラムの方々にも情報共有して、お任せした方がいいと思いますよ?」
「新山さんの言う通りよ。何もかも、自分たちだけで終わらせようって背負う必要はないと思いますわ」
まあ、それについては同意するよ。
なんでも背負ってしまうのは、俺の性格だからなぁ。
それに、魔術師になってから、色々と面倒なことが俺の近くに引き寄せられてくるような気もするんだよ。
そう腕を組んで考えていると。
──ポン!!
新山さんが両手を合わせてニコニコしている。
これは何か妙案を思いついたんだろう。
「そうだ、乙葉くんのあの鍵で、ニューヨークの水晶柱からサンフランシスコの水晶柱まで移動すればいいのでは?」
「サンフランシスコ・ターミナルは水晶柱の近くに存在する……ナイスですわね」
「それだ!!」
いや、【鏡刻界の鍵】の効果の一つ、水晶柱同士を繋ぐ扉を作ると言うやつを、すっかり忘れていたわ。
それで札幌とアメリカのメサを繋いだことがあったんだよ。
──ブゥン
右手に魔力を込めて鍵を具現化する。
すると、長さ30cmほどの銀色の鍵が生み出される。
「それじゃあ、早速向かうと『グゥぅゥゥゥゥゥゥ』、朝食食べてからな」
「ええ。その間に築地くんにも連絡をしておきますわ。向こうの動向も確認したいですし、計算ではすでにバミューダ諸島から海に出ている頃でしょうから」
「はい!! 本場のハンバーガーが食べたいです!」
と言うことなので、俺たちはマクレーン主任にお礼がてら挨拶に向かうと、そのままニューヨークの街に出かけることにした。
………
……
…
さて。
腹ごしらえも終わったので、速攻でサンフランシスコの転移門の封印作業に向かうことにしたい。
水晶柱の近くにあるのなら、到着してすぐにゴーグルで高魔力反応を調べれば、探すことについては問題はないはす。
ただ、気をつけないとならないのは水晶柱を監視していると思われる魔族の存在なんだけどさ、電撃作戦で一気にカタをつけようかと思うよ。
マクレーン主任に事情を説明して、俺たちは再びリバティ島にやってきた。
そして水晶柱の収めてある倉庫に入ると、いよいよ作戦開始となる。
「万が一の時のために、我々はここで待機している。危険を感じたら、すぐに逃げてきてくれ」
マクレーン主任の背後には、十二名の『機械化兵士』の部隊が待機している。
全員が戦闘用スーツを身につけ、銃器を構えている。
「それじゃあ、あとはよろしくお願いします」
「では、いってきます」
「緊急時には、ノーブルワンにコールをお願いします。そこで私の知り合いの魔族が待機していますので」
それだけを告げて、早速鍵を用意する。
俺が手の中に鍵を作り出すのをみても、機械化兵士たちは眉一つ動かすことない。
このあたり、さすがは訓練された兵士だよね。
この程度で動揺しているようでは、対妖魔戦は務まらないからね。
──ブゥン……ガキッ
鍵を水晶柱に突き刺し、ゆっくりと捻る。
すると妖魔特区でもよくみた扉が、水晶柱の前に現れたので、俺は鍵を抜いてノブを回して……。
──ゴゥゥゥゥゥゥッ!!
扉が開いたのと同時に、炎の玉が飛来してきた!!
「そう来る予測はあったよ!!」
──ブゥン
右手に魔力中和フィールドを纏わらせると、それを炎の玉目掛けて素早く振るう。
すると、俺の手に触れた炎の玉が右にそれて消滅した。
そして、扉の向こうから人外の姿をした魔族が飛び出してきた!!
「深淵の書庫!!」
「神の名において……魔よ退きなさい!!」
瀬川先輩が深淵の書庫で結界を作り出し、新山さんが神聖魔法で対魔族用シールドを発動する。
その後ろにマクレーン主任が隠れたのと、機械化兵士達が最前線に飛び出したのは、ほぼ同時。
「魔族との実践など、なかなか体験できるものではないからな!!」
両手に何か仕込んだ機械化兵士の兵士が、魔族の頭めがけて右ストレートからのボディブロー。
その瞬間に、殴られた部位が吹き飛び、霧散化していく。
別の兵士は対妖魔用のサブマシンガンを斉射、近寄らせないように必死に銃撃を始めている。
「ミスティック・コレダァァァァァァ!!!」
右腕だけが機械化した兵士は、魔族の頭を掴んだ瞬間に絶叫!!
その瞬間に魔族の全身に『擬似浄化術式』が雷撃のように走り、魔族が黒焦げになって行った。
「お、おおう……これが機械化兵士の戦闘ですか」
俺の役割は新山さんと先輩の元に魔族が近寄らないようにすること。
そして、扉の監視も忘れずに……って、来たぁ!!
──ドッゴォォォォォォン
扉から飛んできたのは、高出力エネルギーの塊。
体内妖気を圧縮して飛ばしてきた、いつぞやの百道烈士が使っていた『妖魔砲』とかいうやつ。
なんでも、高位魔族は普通に使えるらしいとクリムゾンさんが教えてくれたんだけどさ、それが使える相手が向こうにいるってことだよな。
──メキメキメキッ
「十二式・大地の壁結界術式バージョン!!」
セフィロトの杖を構えての高速詠唱。
それで話足元に広がる床材……金属板を盾のように^持ち上げて、妖魔砲を受け止め、弾き返した!!
だが、扉に向かって飛んでいった妖魔砲の塊は、扉の向こうに消えることなく消滅。
あの出力だと、流石に完全に反射することはできないよなぁ。
「……私の攻撃を止められる……か。現代の魔術師、そこにいるな!!」
「応さ!! 問われたから答えてやるやるよ、ここにいるともさ!!」
「それなら都合がいい、貴様の魔力を贄にしてやるわ!」
扉の向こうに立つ騎士。
全身鎧にシールド、そして剣を構えて俺に向かって走ってくるけど。
「乙葉くん、それは魔力形成された『動く盾』です!! 本物は姿を消しています!!」
「光の弓っっっ」
先輩の叫びと同時に、新山さんが神聖魔法の『光の弓』を構えて射出する。
それは俺に向かって走ってくる『動く盾』と呼ばれた騎士を無視して、その斜め後方の空間に突き刺さる。
──ドシュッ
何もない空間に光の矢が突き刺さると、そこから青い血が流れてくる。
「何故ここにいると見破った!!」
「深淵の書庫に見えないものはありません!!」
左肩に矢が突き刺さった老紳士が姿を現し、新山さんに向かって叫ぶ。
なるほど、新山さんは先輩の指示を念話で受けて、そこに向かって攻撃したのですね!! と、分析しながらも俺は走って老紳士に向かう。
「そこの鎧、どけぇぇぇぇ!!」
走りながら左手に魔導書を呼び出し、そして全力のカウンター攻撃!!
「十式力の矢っっっ」
──ドッゴォォォォォォン
高威力の力の矢を受けて、鎧が後方に吹き飛び分解する。
さらに俺は間合いを詰めていくが、老紳士は右手を奮って扉を閉じると、鍵を掛けたらしい!!
──ガチャン
「逃がすわけないだろうが!!」
俺も右手に鍵を作り出し、再度、水晶柱に向かって突き刺すんだけど。
──ガギッ、ガギッ
鍵が回らない。
「くっそ、鍵を変えられたのか? そんな馬鹿なことあるのか?」
鍵自体に魔力を込めても、鍵が回らない。
「乙葉くん、扉よりも妖魔の迎撃を!!」
先輩の指示があったので、やや形成不利な機械化兵士の援護に向かうことにした。
この戦闘で倉庫の外壁も破壊され、水晶柱が外に見えるようになってしまった。
観光客は待機していたヘキサグラムの別働隊が避難誘導したらしく難を逃れたんだけど、この一件で水晶柱の存在は完全に露見してしまった。
そして戦闘が始まってから一時間ちょいで、なんとか敵妖魔の殲滅は完了。
なお、封印数はゼロ、魔人核破壊による浄化は8。
残り26体は霧散化させてしまったらしく、このニューヨークに手負いの妖魔を放つ結果となってしまった……。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
・小説家になろう書報にで、この作品の三巻が公開されていました。
<a href="https://syosetu.com/syuppan/list/?p=3">小説家になろう書報<br /></a>




