第二百十七話・諸行無常、いや、自業自得とも(真実は一つ! とは限らないけどさ)
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マグナムのスパイの可能性があるテスタス。
彼女から直接話を聞くことになったのだけど、その内容は想像を絶するものであった。
彼女が魔族であり、マグナム・グレイスの統治する国家の民であること。
国民皆兵主義であり、生まれたときに教会で洗礼を受けること。
白桃姫の補足では、その時点で『支配の印』が魔人核に刻まれているらしい。結果として、グレイス王国の民は、マグナムへの忠誠を魂に刻み込まれている。
その彼女が前回の大氾濫のさいに俺たちの世界に辿り着き、帰ることができなくなってしまったこと。
人間に紛れ、ひっそりと生きていたのだが、仲間達が一人、また一人と減っていったこと。
そしてあの日。
盟約の石板が失われ、魔族の解放が始まったこと。
「ふむ、それは、盟約の石板の【原書】と言う奴じゃないか?」
「はい、マグナムさまは、魔鏡の術式で教えてくれました。盟約の石板には二種類あり、人が魔族と盟約を結ぶために使われるのが【盟約の石板】、それが発生した原因となったのが【原書】の存在であると」
「やはり原書か。妾もマグナムから聞いた話でしかないからのう。それがこちらの世界にあるというのなら、なかなか興味がある。雅や、調べられそうかや?」
「ち、ちょっとお待ち下さい!!」
慌てて瀬川先輩が深淵の書庫を発動し、原書についての調査を開始。
さて、友達がマグナムの手先だと知ったミラージュの様子を見てみるが、新山さんと一緒にキッチンに向かって何かを作り出しているので、問題ないかと。
『胃袋を掴むのよ! 私の好きなものはすなわち、お兄さまの好きなもの。もともと魂が一つだったので、好みは同じはずよ‼︎』
『な、なるほど、参考になります』
『新山さんは私の義姉になるのだから、覚えておいて問題はないわ‼︎』
『義姉!』
「まだそこまで考えるなや、早すぎるわ!」
全く。
ほら、自分のことを放り投げられた感じになって、テスタスさんが涙目だぞ。
「ミラージュ。友達なら助けてよ……」
「大丈夫よ。私のお兄様は優しいから、あなたが全てを話し贖罪するのなら許してくれるわ。罪を憎んで魔族を憎まず、そうお兄様ならわかってくれるわよ!」
ひょいとキッチンから顔を出して、ミラージュがテスタスに告げた。
まあ、そういうことなら、やぶさかでもないんだが。
まずは、罪を全て白状してもらおうかな。
「よし、ミラージュの言う通りだ。自分の罪を数えろ、いや、告げてもらおうか?」
「罪……わかったわ。私は、この研究施設で、マグナムさまに手を貸してくれる魔族を探していたわ。私の能力は念話と魔法、そして簡単な変身能力。これで味方になってくれそうな相手を探している最中だったのです」
そして、他のマグナム配下が魔鏡の術式で鏡刻界のマグナムと定期的に連絡を取っていること、裏地球でのリーダーが情報を一手にまとめ、各地の念話能力保持魔族に連絡を入れていることなどを説明され、ようやく話の合点がついた。
「それじゃあ、俺たちがここに来た時点で、フラットさんを拐ったマグナムの部下にも連絡が入れてあったのか」
「オトヤン、どうりでハートランド島に二人しかいなかったわけだ。奴らは完全に囮だったと言うことか」
「そして、三手に分かれての逃走。私たちがフラットさんの乗っている車を見つける確率は三分の一、当たりを見つけられても仲間達の隠れ家になりつつあるニューヨークに逃げ込めば、魔力波長はカットされるから逃げ切れると」
──コクコク
諦め顔で頷くテスタス。
なんというか、時代劇ならお白洲で罪状を暴かれた悪徳商人のような諦め顔になっているよ。
「さて、判決といきたいところだが、その前にもう一つ。ここ、ボルチモア研究施設でマグナムの息のかかったやつ、もしくはマグナム配下はいるのか?」
「居ないわね。ここは、ニューヨークのような私たち魔族にとって有益な場所ではないのよ。人工魔族とか、あとは保護魔族の施設でしかないからね」
その言葉が本当かどうか、嘘発見水晶で再度確認したけど、今度は赤反応がない。
つまり、この場所にいるマグナム派の魔族はテスタスのみ。
「先輩、おおよそ聞きたいことは確認できたと思いますが、あとは俺が気づいていない何かありますか?」
何か忘れているような、そんな気がする。
すると、先輩はニコリと笑って一言。
「マグナム派は、何を企んで行動しているの? フラットさんの誘拐、これは過去の話。今現在、王印を巡って鏡刻界でマグナムが企んでいることを教えてもらえるかしら?」
「「「それだ!!」」」
俺、祐太郎、二人揃ってのツッコミ。
何故クリムゾンが俺たちと一緒に突っ込んでいるのかは、知らんが。
「魔人王継承の儀、それに乙葉浩介や有力な魔術師を引き込むようにって言う命令は出ていたはず。まあ、私はここにいるのが仕事なので、その話にはノータッチだし、ここの魔族は魔人王から逃げてきたものたちもいるから」
「その、魔人王継承の儀について、テスタスさんはご存知?」
「詳しくはありませんが、簡単に説明しますと」
………
……
…
まず、魔人王継承の儀の宣言が行われると、その日から五十日の間に、魔人王となりたいものは儀式を司る魔族家に宣言をする。
この宣言は五名の推薦人が必要で、同時に推薦人たちはこの後の三つの試練と呼ばれる『禊』に参加しなくてはならない。
これを乗り越えたものこそが、魔人王であり次代の十二魔将の一員となることが許される。
・一つ目の試練『勇気を示せ』
魔人王となるものは、当然ながら武力が必要。
ただし、これは本人ではなく彼の味方となって戦うものでも構わない。
戦い、勝つことこそが勇気の証である。
「……なあオトヤン、あれかなぁ」
「あれっぽいよね。魔界トーナメント……」
「あら、良くご存知で、5人一組の勝ち抜き戦による、大バトルトーナメントですよ。上位八チームが、二つ目の試練に参加する資格を与えられるそうです」
「「マジだったかぁ」」
「そのために、現代の魔術師の乙葉浩介とその仲間たちを引き込めって、セレナは言われていたはずよ」
「あ〜。そう言うことだったよなぁ。それで、二つ目は?」
・第二の試練『智を示せ』
魔人王となるものは、当然ながら知力が必要。
王及び副官、宰相となるべきものは、如何な困難も知略で越えなくてはならない。
「……クイズかな?」
「いや、試験じゃないか? おそらく、過去の魔大陸での出来事であったり歴史であったり。治世を行うものの義務じゃないか?」
あ、さすがや祐太郎。
思わず、魔大陸横断、ウルトラなんちゃれみたいに各地で問題をクリアしろとか言われるかと思ったよ。
・第三の試練『統率力を示せ』
魔人王となるものは、魔族全てを率いる力がなくてはならない。
ゆえに、最後の二人に対しては、国民の総意を求める。
誰が魔人王として相応しいか、それを投票により選抜する!
………
……
…
「はぁ。統率力、イコール選挙とはまた、面白いな」
「でも、これは正しい選抜だよな。民が選ぶものが王。つまり、独裁者や圧政を行いそうなものは、ここでは選ばれない。オトヤン最初の二つは仲間達の力にも依存できるが、最後の一つは本人の実力がものをいう」
「あ〜、なるほどね。そんじゃ、そこに陣内みたいな仲間がいたら、当選確実ということか」
最後まで残れば、思考誘導で選挙などどうにでもできる。
それは日本でやられたから、良くわかっているよ。
思考誘導とか洗脳の恐怖は、身をもって見ていたからね。
「つまり、マグナムさまは最後まで残りさえすれば、後はどうにでもできるって寸法なのよ」
「そりゃあ、身内で最後まで残して、最後になって棄権すればマグナムの圧勝。あとは儀式をおこなっておしまいかよ」
「ユータロの言う理論だと、マグナムにつく仲間が必要なんだけどさ……なあ白桃姫、たとえば十二魔将でマグナムに付いて儀式に参加し、最後に辞退しそうなやつっているのか?」
「おるわけなかろう。そもそも、どいつもこいつも全力でマグナムを落とそうとするに決まっておるわ」
うわ、なんて人望のない。
そんな奴が、良くもまあ第一位になったものだよ。
「はぁ。そうなると、マグナムとしては実力で最後まで残り、最後は何か策を練る必要があると言うことか」
「奴が一位なのは策謀について奴の右に出るものがなかったからじゃなぁ。人間の持つ兵法書を参考に、独自の戦闘理論を作り出した男じゃからな」
「まあ、それを実践する事にコマが足りないと言うところが、あいつの詰めの悪さだがな」
白桃姫の言葉にクリムゾンが捕捉し、二人でドッと笑う。
「なんだ。戦闘力が高いとか、魔力が高いとか、そう言うのじゃないのか」
「じゃが、奴の戦略は気持ちが悪いぞ。まるで後出しジャンケンで負けるような感じじゃからな」
「後出しジャンケンで負ける? それって相手の手を見て自ら負ける手を出してくるってことなのか?」
「うむ。後出しジャンケン自体が囮でな。さらに後出しの方も全力じゃから、どう対処してもマグナムは常に二つの手を用意してある」
はぁ。
それって、予想外の事態には弱いってことだよな。
それでも勝ち残ってきたからこそ、マグナムは一位だったのか。
「あの、白桃姫さん、よろしいですか?」
「なんじゃ、雅」
「伯狼雹鬼以下、先代魔人王配下が、この継承の儀に参加する可能性は?」
「伯狼雹鬼か。むしろ黒狼焔鬼が動きそうな感じがする。まあ、確か先代総理大臣の秘書官とやらをしているのなら、まあ身動きが取れないじゃろうからな」
白桃姫とクリムゾン曰く、黒狼焔鬼は契約とか約束にうるさいらしく。
秘書官の任期が終わるまでは、動くことがないらしい。
なんて難儀な性格をしているんだか。
「あ、あの、ここまでが私の知っていることよ、もういいでしょ? もう許されるでしょ?」
テスタスが必死な顔で問いかけてくる。
まあ、俺としては構わないと思うが、当事者じゃないし。
でもなぁ。
マグナム配下なんだよなぁ。
「のう、雅や。お主の力、試してみぬか?」
「へ? 私の力?」
「うむ。その力を使えば、テスタスの魔人核からマグナムの刻印を消すことができる。そうすれば、このものは自由じゃ。ちなみに妾は、マグナム配下を許すことはできぬから、この場で浄化封印したいところなのじゃが」
ニマニマと笑う白桃姫。
その横では、クリムゾンが頷いている。
セレナさんの時のように、優しい対処方法はないようだが。
おかげで、先輩が深淵の書庫の中で腕を組んで考えているじゃないか。
果たして、どうすることやら。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




