第二百十六話・三百代言? 清濁併せ呑みたくないなぁ。(大円団じゃなかったぁ!)
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はい。
ボルチモアのノーブル・ワンに戻ってきました。
セレナさんのお母さんの救出も無事に完了し、残りの期間は魔術研究部としての合宿を行うことにし……まだりなちゃん達が到着して居なかったぁぁ。
そんなこんなで、やることがまだ残っている。
大団円には、まだ遠かったかぁ。
そんなことを考えつつ、ノーブルワンの居住区、俺たちが借りていた家に無事に到着。
荷物を置いて一休みしたいところです。
まあ、ぶっちゃけるともう夕方をとっこして夜に差し掛かるところだからさ。
このあとは、ゆっくりと体を休めたいところだよ。
「そうですわね。他にも色々と後始末が残っていますけれど、明日の朝から開始ということにしましょう」
「そうだよなぁ。なあオトヤン、明日は残っている懸念事項を一つずつチェックした方がいいんじゃないか?」
「まあ、まずは一息だよ。そういえば、ミラージュは居ない……って、ここがミラージュの家じゃないから当然だよな」
「まあまあ、まずは一休みしましょう。はい、どうぞ‼︎」
──コトッ
新山さんがキッチンからジュースを持ってきてくれた。
わずか半日の出来事とはいえ、ここまで体も魔力も酷使したことは久しぶり。
特に祐太郎は、魔障中毒だから、それをどうにかして抑えないとやばいからなぁ。
「新山さん、祐太郎に診断を頼める?」
「はい。ではいきます、診断!」
『ピッ……闘気枯渇、闘気欠乏症。進行型魔障中毒、命の危険はないが、対象者は闘気を活性化させるたびに激痛に襲われる』
その表示を見て、新山さんが淡々と説明してくれた。
ははぁ、いつぞやのファザー・ダークが新山さんに施した『神威型・魔障中毒』とは違い、祐太郎は闘気を練ることと引き換えに痛みが体を襲うらしい。
「はぁ、どうりで魔障中毒を闘気治療できないか試そうとするたびに、神経がピリピリと痺れるように感じるのか」
「それって、やばくね?」
「いや、闘気を練らない限りは痛みはない。術師殺しの魔障中毒とは、参ったなぁ……」
祐太郎は少し笑いながら呟いているが、俺としては命が無事だったから良かったよ。
新山さんの時のように、残りの寿命があとどれくらいって表示されなかったらしいからさ。
「私の時とは違って、命の危険がないのは良かったですよ」
「そうね。それに、白桃姫さんが教えてくれた冥王、その人を探し出すことで解決の糸口が見つかるのですからね」
「その白桃姫はどこに?」
ふと思い出す。
いや、実は、魅惑のフラットさんを救出して、ここに連れ帰ったのはいいんだけどさ。
ノーブルワンの正面ゲートを潜るときに、力一杯の魔族感知機に引っかかったんだよ。
白桃姫、クリムゾン、フラットの三名がね。
それで大慌てで警備の軍人やら機械化兵士が出動して大慌て状態。
俺たちがクリスティン主任に説明して、どうにか話を丸く収めたんだけどさ。
白桃姫たち魔族の三人と、セレナさんは別棟で検査を受けることになったんだよ。
まあ、ここにくる魔族は一度通る道だそうで、セレナさんはフラットさんの付き添いでして同行したからなぁ。
──ガチャッ
「ここじゃ、検査とやらを終わらせてきたぞよ‼︎」
「ふぅ〜。人間の施設なんて初めてだからよ、色々と肩が凝ってキツいわ」
へとへとに疲れた顔の白桃姫と、肩をぐるぐると回しながらぶつぶつと文句をいうクリムゾン。
「まあ、これで白桃姫たちが人間に敵対しない魔族だって証明できたんですよね?」
「それがな。小春や、妾たちは要観察対象魔族とやらに指定されるらしいぞよ」
「瀬川先輩、それって何ですか?」
「深淵の書庫、要観察対象妖魔の検索をお願い……ふぅん。なるほどね。それじゃあ、簡単に説明するわね」
要観察対象妖魔とは、危険度B以上の妖魔、魔族に対して付加される危険度のようなものらしい。
制定したのは【ヘキサグラム】および日本の【陰陽府】、中国の【崑崙八仙】の三つの対妖魔組織で、規格というか危険度を示す指標を制定したのもこの三つの組織の合同らしい。
そして十二魔将クラスは危険度Aで【即座に封印もしくは浄化】という項目に当てはまるらしいのだが、白桃姫とクリムゾンは人間を殺めていないこと、元十二魔将であり現在はフリーの侯爵級および伯爵級魔族であることが加味されたらしい。
それでも危険度Bは【指定区域内での観察。定期的に検査を行い、危険を感じた場合は封印及び浄化対象】と言う項目に当てはまるらしい。
「それで? 危険度Bだとどうなるの?」
「対妖魔結界を施された場所以外での活動は原則禁止、まあ、妾については、乙葉らが保護観察者となるなら、同行することである程度の自由は認められたぞ」
「俺はダメだとよ。まあ、このノーブルワン内の活動なら許可されたから、俺はこの敷地内を散策することにするよ」
どっかりとソファーに腰を下ろすクリムゾン。
ちなみに、背中に背負っていた巨大な剣は、アイテムボックスに収納したらしい。
腰から下げている小さな袋が、空間魔法によりアイテムボックス化しているらしい。
持ち物チェックのさいは、所有者以外は普通の袋にしか見えないらしく、手を入れても普通の袋ということで返して貰ったそうだ。
「さて、それじゃあ先に食事にしましょうか。もう作るのが面倒なので、ピザでも注文して構わないですよね?」
「それでいいわ。俺はもう、ゆっくりと眠りたい」
「ユータロと同意見。それじゃあ、豪華なパーティと洒落込もうじゃないか‼︎」
そのあとはもう、おつかれさま会。
ピザやらチキンやら、このボルチモアにはなんでもデリバリーしてくれる店が多いらしくてさ。
ノーブルワンの敷地内にも何店か出店しているらしく、すぐに届けられてきたよ。
それじゃあ、おつかれさまでしたぁ!
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
──ノーブルワン内、治療棟
メディカルチェッカーという魔族のバイオリズムを調べる機器に繋がれたまま、フラットは静かに眠りについている。
その傍らでは、看病のために側についていたセレナが寝息を立てている。
ゆっくりと瞳が開き、フラットが目を覚ます。
「ここは……そう、助けられたのだったわね」
記憶をゆっくりとたどり、自分が安全であることを確認する。
そして側で眠っているセレナを見て、ふっと頬を緩ませていた。
「私が、魔人王の血を引いていたために、あなたには迷惑をかけたわね……」
優しくセレナの頭に手を当てて、フラットは少しだけ悲しそうに呟く。
マグナムの策略により幼かったセレナから引き離され、彼女には寂しい思いをさせてしまった。
ニューヨークからボルチモアへ移動しているときにセレナから今までのことを全て教えられ、ようやく落ち着くことができた。
ボルチモアの施設は安全だと、所長のクリスティンから教えられた。
そしてフラットがニューヨーク支部に勤めていたアンダーソン主任の妻であったことなどを加味され、療養という名目での安全が保障された。
「……もう、離れませんよ……マムと離れることなんて、ありません……から……」
それは寝言。
まるでフラットの言葉に反応したかのように聞こえるが、しっかりとした寝言であった。
実は意識がうっすらと戻り、フラットの言葉が耳に届いていたこと、まだ恥ずかしくて何もいえなかったセレナが、寝言ということでフラットに自分なりの意思を示したなど、誰にもわからない。
フラットも気が付いていないのだろう、ベットに体を半分預けるように座っているセレナの体に毛布をかけると、もう少し体を休めることにした。
………
……
…
朝。
清々しい朝。
「はぁ! ピーカンだねぇ!」
「全くだ。せっかくボルチモアにいるんだから、夏を満喫したいところだ!」
「それよりも、魔力玉をはよ!」
「さあさあ、朝食にしますよー」
「そのあとは、会議ですから食べすぎないようにしてくださいね」
「俺にも魔力玉を一つ頼む!」
うん。
朝から騒がしい。
女三人集まれば姦しいとはよく言ったものだ。
──ガラッ!
「お兄様が戻ってきたと聞いて! そして特濃妖気を確認しましたわよ!」
中庭に面する居間の窓を開いて、ミラージュがやってくる。
その後ろでは、困り果てたような顔の女子が一人。
ふむ、初めて見る子だけど、どなたさま?
「特濃妖気は置いておけ、白桃姫とクリムゾンの二つ分だろ!」
「ヒッ‼︎」
あ、二人の名前を出した瞬間に、後ろの子の顔が引き攣ったぞ。
と言うことは、魔族で確定か。
「ミラージュ、後ろの子は?」
「紹介するわ。このトンデンパラリ施設の友人、ベアトリーチェよ!」
「初めまして。ミラージュの兄の乙葉浩介です。君の名前は?」
もうね、ノーブルワンのことをトンデンパラリとか呼びはじめた時点で、ベアトリーチェと言う名前も適当につけられたのだろうと予測できたわ。
「は、はい、はじめまして……テスタロッサです」
「速そうな名前だなぁ、まあ、妹をよろしく頼みますよ」
「は、はい、それでは失礼します‼︎」
「だめよベアトリーチェ。今日の授業は午後からなのだから、あなたもここにいて。お兄様の話を聞きたいって言っていたじゃない!」
「俺の話?」
はて?
俺の話など聞いても、何も面白いことはないはずだが。
まさかテスタロッサさんはアニオタか?
ジャパニメーションを知りたいのか?
よしよし、それなら俺と祐太郎に任せろ。
白桃姫たちのような特濃妖気じゃないが、みっちりと濃い話まで付き合えるぞ!
「い、いえ、大したことじゃないのですよ。ミラージュのお兄さんって、どんな人って聞いたぐらいでしたから」
「嘘ね。テスタロッサ、あなたはこう聞いたじゃない。お兄さまがボルチモアにきたのは観光なの? それとも他に何か目的があるとか? って!」
──ギクッ
あ、テスタロッサさんが気まずそうな顔をしているわ。
はてさて、何かを隠しているようだけどさ。
俺は人の汗を舐めて『これは、嘘をついている味だ』なんていう器用な能力はない。
かといって、ミラージュの友達をいきなり疑うのもなんだよなぁ。
人には、知られたくない秘密だってあるんだからさ。
「ま、まあ、だってさミラージュ、このボルチモアなんて観光には不向きじゃない? 普通の若い人はさ、ニューヨークにいってマンハッタンを散歩しながら、路上のホットドッグ売りからホットドッグを買って歩きながら食べるじゃない? スラム地区の裏で、二つのグループが抗争するじゃない?」
「抗争はしないわ!」
「ふぅん。乙葉くん。嘘発見水晶を貸してもらえます?」
あ、瀬川先輩が何か企んでいる。
それならばと、空間収納から嘘発見水晶を取り出して机の上に置いた。
「お兄さま、これは私へのお土産かしら?」
「ちゃうわ! これはまあ、いいから座ってみていろって」
「テスタロッサさん、ちょっとだけお時間をもらえる?」
微笑を浮かべながら、瀬川先輩がテスタロッサさんを呼びつける。
「あ、は、はい! 少しだけなら……」
「それじゃあ、ここにきて、この水晶球に手を置いてもらえるかしら?」
「イエス、マム‼︎」
あ、テスタロッサさんも先輩の微笑に負けたか。
素直に居間に入ってきてソファーに座ると、テーブルの上の水晶球に手を置いた。
そして、ふと気がつくと白桃姫とクリムゾンもソファーに座って、ニヤニヤと笑っている。
白桃姫なんて、足を組んで猫を撫でながら、まるで悪の親玉みたいじゃないか。
いや、その猫はどこからきたの?
「それじゃあ、私の質問に答えてね。テスタロッサさん、あなたは何かを隠していますよね?」
「いえいえ、隠すなんてとんでもない」
──チカッ
赤く輝く。
「私たちに害をなそうとしている?」
「まさか! とんでもない‼︎」
──チカッ
赤く輝く。
「まさかとは思うけど、私たちがここに来たことを、誰かに告げたかしら?」
「そんなことはしませんし、そうする相手もいませんから‼︎」
──チカッ
赤く輝く。
「あの、この赤く光るのはなんですか?」
「点数みたいなものよ。それじゃあ……あなた、マグナムの配下?」
「マグナム? 誰ですかそれは?」
──チカッ
赤く輝く。
あの、最後の質問で白桃姫たちが大爆笑しているんですけど。
しかも、水晶が赤く光るたびに、猫がニャーって鳴いているのはどうして?
「雅よ、そのくらいで構わないぞ。それじゃあ、真実を語ってもらおうか? テスタスよ!」
──ドキィィィィィッ
あ、テスタロッサさんの顔が真っ青になった。
「あの、白桃姫さん、テスタスって?」
「此奴はな、マグナム配下の魔族じゃよ。奴の国の民は臣民と呼ばれていて、生まれたときに洗礼を受けて、マグナムの民である紋章が刻まれとる。ちなみに目には見えないぞ、魔人核に組み込まれるらしくてな」
「その話を俺たちは、マグナムから直接聞いたことがあってな。テスタスの中にある魔人核からも、マグナムの魔力波長を感じるのだが」
「そこで、妾の使い魔が見たのじゃよ。テスタスが本名で、テスタロッサは偽名であるとな?」
──ボウン
膝の上の猫が消える。
ははぁ、そういうことでしたか。
「あ、あの、その、えーっとですね」
「ベアトリーチェ、私を騙したのですね! 私はあなたのことを無二の親友と思っていましたのよ‼︎」
「はぁ……仕方ありませんね。私はテスタス、十二魔将第一位マグナムさま配下の臣民です。でも、ミラージュのことは親友と思っていましたし、今でもそう思っていますよ‼︎」
「信じるわ!」
「「「「「このタイミングで信じるの!!」」」」」
思わず全員で突っ込んだよ。
いや、我が妹は疑うことを知らんのか!
「ええ。テスタスは嘘をつける子じゃないわ!」
「……嘘発見水晶は、全力で嘘を見抜きましたけど」
「それは嘘じゃないわ、誤魔化しただけよ!」
「はいはい、ミラージュは少し静かにしてね。さて、テスタスさん、真実を全て話してもらえますよね? まさか十二魔将の白桃姫とクリムゾン相手に、これ以上の誤魔化しができるだなんて、思ってませんよね?」
そう俺が問いかけると、テスタスは諦めた顔で静かに頷いた。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




