第二百八話・生者必滅、しのぎを削り切る!(拳で語り、魔術で語る)
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乙葉浩介と築地祐太郎が、謎の魔族と戦闘を開始した直後。
──ピッ
「深淵の書庫、先ほど築地くん達が確認した魔族の反応を追跡して!」
【ピッピッ……十名存在した魔族固有反応については、現在は三、三、四に分かれて移動中です。ボルチモア内の都市部監視カメラでは、載っている人物が魔族かどうかの判別は不可能】
乙葉くん達が戦闘しているのを、黙って見ているだけじゃない。
私たちには、私たちのやり方があります。
「新山さん‼︎」
「了解です‼︎ 広域感知魔術式の発動を承認。対象は……魔力保有量100以上の存在‼︎」
──ブワサッ
車から飛び出して手にしたスクロールを投げるように広げると、新山さんが魔力感知術式のスクロールを発動しました。
深淵の書庫では広域魔力感知は不可能なので、ここは新山さんの出番です。
「反応値が七つです、セレナさん、12番のスクロールをこちらによこしてください‼︎」
「は、ハイでーす!」
後部座席一杯に並べられた大量のスクロール。
わかりやすいように一つ一つがナンバリングされているらしく、新山さんがセレナさんに指示を出してスクロールを受け取っています。
上手く連携が取れ始めていて、なんだか頼もしく思えます。
「十二番デス‼︎」
「ありがとうございます。新山小春の名において発令‼︎広域感知魔法を深淵の書庫に付与‼︎」
──ブゥン
【新山小春の発動術式をリンク】
十二番スクロールは、使用者の魔術を付与する術式なのですね。
これで深淵の書庫が広域魔力探知可能になりましたわ。
「セレナさん、次は八番と十九番をお願いします」
「了解デース‼︎」
──ポイッポイッ
すぐさま次のスクロールが新山さんに渡されると、すぐさまスクロールを広げて詠唱を始めています。
「猛り勇まし猛牛の如く! かのものに、ひとときの力を授けたまえ‼︎」
左手のスクロールが光り輝くと、それが一直線に乙葉くんに目掛けて飛んで行きました。
そして彼の背中に張り付くと、そこから翼が広がったのです。
「オーマイガー! 飛翔の術式デスカ‼︎」
「はい。ほんのひとときですが、乙葉くんに翼を授けました。これで勝負は互角になると良いのですが……」
いえいえ、互角どころかとんでもなく心強い力を得ていますよ。
これで乙葉くんも、本気でやり合うと思いますから。
「続いて……築地くんは大丈夫そうだから、これをいきます‼︎」
──スルスルスルッ
広げたのは十九番スクロール。
あ、なるほど理解しましたわ。
「天地仰天、謎の魔技。我が魔力より15の力を注ぎ、やって来い来い白き使いよ‼︎」
──ポンッ
スクロールが突然消滅した?
いえ、あれは姿を変えたのですよ。
白い小さな鳩に。
「ターゲットロック、広域探知魔力の中でも、最も大きな魔力に向かって‼︎」
──クルッポー!
魔力によって作られた鳩は、一鳴きしてから青空に飛び立つ。
そして上空で数度、大きな旋回をしたのちにどこかに向かって飛んでいった。
「新山さん、もう、十分よ。このあとは回復魔法が必要になると思いますので、少し体を休めてね?」
「あ、はい。わたしも少しは役に立ったでしょうか」
「もう十分すぎるほどにね。でよ、これだけは覚えておいてね、あなたの仕事はヒーラー。仲間が危険な時にこそ、あなたの力は必要になるのよ。だから、魔力は温存しておいてね」
「は、はい‼︎」
前線で戦っている乙葉くんと築地くんを癒せるのは、新山さんしか居ないのですからね。
それにしても、セレナさんはサポートに徹しているようですけど、何かセレナさんしかできなさそうな事はないかしらね……。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
くっそぉ。
完全に防戦一方になっちまったよ。
梟男は上空から攻撃を続けてくるし、地上から魔法を飛ばしても、それにカウンターで羽を飛ばして相殺するし。
こっちとしては、情報が欲しいから力を抑えないとならないんだぞ?
「ホーホホホーウ‼︎ 噂に聞いた現代の魔術師とは、この程度でしたか。これなら、わたしが二百年前に戦ったシャーマンの方が強かったですよ」
「シャーマン? アメリカにも魔術師がいたのかよ」
「ホッホッホ。かつて魔術師は、世界中に存在しました。アメリカのシャーマン、西洋の魔女、ドルイドとかいうのもいたそうですし……そうそう、中国には死体を操る導師というのもいましたか」
予想よりも多いけど、今はその力を失ってしまっているんだろうなぁ。
もしくは、その、血脈が閉ざされてしまったか。
──ダン!
すると背後から、まるで金属を殴るような音が聞こえる。
「お、オトヤンか! そっちはどうだ?」
俺に問いかけながらも、祐太郎は敵の骸骨というかミイラの乱打を受け流している。
型は詠春拳か。
機甲拳が通用しない相手とはまた、面倒な。
「空を飛ばれているから、なかなか手が出せなくてさ」
「代わってやりたいところだけど、この近接特化リッチは相手が悪すぎるだろうからな」
「うわ、なにその微妙なアンデッド。普通はリッチといえば、大魔道士クラスだよな」
──シュッ
すると、俺の背中に何かが張り付く。
いや、いきなりなんだって、不意打ちかと思ったんだけど、張り付いたそれから新山さんの魔力を感じたんだよ。
そして
──シュルルルルッ
俺の背中に翼が現れた。
なるほどら飛翔術式による翼の構築か。
察するにスクロールを展開したんだろうなぁ。
「お、オトヤンいけるか? やばかったら手伝うが」
「いや、これで百人力だわ」
背中の翼に魔力を注ぐ。
うん、扱い方は魔法の箒と同じ、イメージによるフライト。
「ホーホッホッ。そのような付け焼き刃で翼を授かったところで、このわたしに追いつけるとでも?」
「甘いな、翼はイメージの増幅用だ。まだ飛行免許を取ってから間もないけどな……スクランダァァァァァァ!!」
一気に翼から魔力を放出して加速。
梟男目掛けて高速で飛翔すると、魔導強化外骨格を零式に切り替える。
「これでもくらぇぇぇぇ!」
空間収納からセフィロトの杖を引き抜いて魔力を注ぎ、その白い刃の部分で梟男とすれ違い様に翼を切断した‼︎
──ズバァァォァァ
「ホホホッ! そんなバカな!!」
「バカはお前だよ。なんで俺が加減して攻撃していたと思っているんだ。お前達から情報を聞き出すためだよ‼︎」
落下中の梟男目掛けて加速して追いつくと、さらに魔力を込めた両足で飛び蹴りを敢行!
「メイガス・スラッシュキーック!」
──ドゴォォォッ
この一撃で梟男は地面に目掛けて直撃。
肉体構成しているから、ダメージはそのまま蓄積されるんだよな。
「こ、こうなったら‼︎」
──シュゥゥゥゥ
翼の切断面から霧が噴き出す。
霧散化の兆候なのは知っているんだよ。
──バッ!
すぐさま空間収納から封印媒体の宝石を取り出し、封印術式を発動。
「無詠唱、術式短縮、封印‼︎」
「ホ? ホォォォォォォォォォ!」
一瞬、呆気に取られていた梟男。
だが、俺が発動した術式がなんであるのか理解したらしく。
俺の手の中のトルマリンの中に吸い込まれていきました。
「乙葉浩介の名において、封印呪符を発動する‼︎」
──ブゥン
手の中に作り出した封印呪符をトルマリンに貼り付ける。
これで梟男は封印状態である。
「ユータロ、こっちは終わったぞ!」
「お、おお、了解だわ!」
………
……
…
オトヤンは終わったか。
敵の妖魔の姿が見えないから、恐らくは封印したんだろう。
「余所見をしている余裕があるとはな……」
「いや、かなり余裕がないから、奥の手を使うわ」
──シュンッ
素早く豪爆棍を取り出して構えると、リッチも俺の雰囲気が変化したのに気が付いたらしい。
「確か……獲物を持った詠春拳の使い手は、その強さが著しく高くなる、でしたか」
「まあな。さらに補足すると、この棍は剛剣のマイオスから接収したものを改造したからな」
──ブゥン
棍に闘気を流し込み、軽く二度三度と振り回す。
そして一直線にリッチ目掛けて構えを取る。
「素手の戦いに武器を持つとは卑怯なり、とか言うなよ。中国拳法は武芸百般、いかなる武器も使いこなしてこその武術が多いからな」
「分かってます。では参ります‼︎」
──ダン!
いきなり踏み込みからの、肘による一撃。
裡門頂肘を仕掛けてくるが、その体ごと豪爆棍で薙ぎ払う!
──ドゴォォォッ
そのまま勢いに任せて振り抜くと、リッチはバランスを失って地面に転がった!
「そ、そんなバカな、詠春拳は柔の拳ではないのか‼︎」
「武術の達人を気取るのなら、イップマンでも見直してこいよ。じゃあな」
油断なく、こんな鋭い突きを繰り出す。
それを躱しながら立ち上がって構えるが、すでに遅い。
そこは詠春拳の間合いだな。
──パパパパパァァァァァン
闘気を乗せた散打を撃ち込み、リッチにダメージを蓄積させていく。
そして止め!
──ガッゴォォォォォーン
闘気を拳から相手の体内に爆発的に放出する勁砲。
この直撃で、体内の魔人核を破壊する。
「……我の一撃で倒しきれなかったのが敗因か」
「普通の武術だったら、あの初手の鉄山靠であんたの勝ちだよ。俺は魔闘家だから、闘気による回復術が使える。その違いだな」
「ふふふ、意外と狡いな……」
──フワサッ
そう言い捨ててから、リッチは笑顔で消滅した。
さて、弱らせて話を聞きたかったのだが、ついやり過ぎた感が否めないなぁ。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




