第百九十九話・属毛離裏!柳眉を逆立てなくてもさぁ (真実は、常に一つと限らない)
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はいっ、妖魔特区でございます。
「……いきなりじゃのう。それで今日は、何があったのじゃ?」
俺と新山さん、祐太郎、リナちゃんと沙那さん、そして初顔見せのセレナさんは、白桃姫のいる札幌テレビ城にやってきた。
あとで瀬川先輩も合流することだし、まずはセレナさんの紹介だけでもおわらせておくとしますか。
「……あの、セレナさん、もう現地到着したので、絨毯から降りてもらえますか?」
「ワンダフル‼︎ ベリーインクレディブル‼︎ これがネットで噂の、空飛ぶ絨毯ですか‼︎ あと少しだけ乗せてください‼︎」
「はぁ。このままだと話が始まらないので、一度仕舞いますので。また帰りに乗せてあげますからね」
──シュッ
素早く絨毯だけを収納すると、新山さんとセレナさんはスタッと地面に着地。
「ほう? 新顔じゃな?」
「ああ。彼女はセレナ・アンダーソン。海外から来た留学生で、うちの新しい部員だ。ちなみに白桃姫、その後ろに立って、呆然としているリザードマンは誰だ?」
うん、ナイスだ祐太郎。
俺も気になっていたんだよ。
俺の記憶が確かなら、百道烈士や白桃姫の配下に、リザードマン系の魔族はいなかったはずだし。
そもそも、翼もあるし鱗もある、ついでに頭に竜のツノっぽいものまで見えているから、ドラゴニュートかな?
「おお、そうじゃった。このものは、元十二魔将の十一位、竜人のクリムゾン・ヴェーラじゃ」
「こちらはアメリカから来た留学生のセレナ・アンダーソン。って、今しがた祐太郎が説明したよな」
そう告げてからセレナさんの方を見る。
うん、固まってるね。
そしてクリムゾンはというと、俺たちを見て涎を垂らしているんだが、危険すぎるわ‼︎
「え、十二魔将? どうしてですか? え? 十一位?」
「ふむ、驚くのは無理もないのう。ちなみに妾が元十二魔将第四位、怠惰のピク・ラティエじゃ。乙葉らの友達なら、気軽に白桃姫と呼んでも構わぬぞ」
「え? 白桃姫? クリムゾン? へ?」
──パタン
「せ、セレナさん‼︎ 診断‼︎」
気絶したセレナさんを魔法の絨毯に乗せて、すぐに診察を開始する新山さん。
この辺りの動きが、実に滑らかになっているのは驚きだけど。
まあ、場数を踏んだからなぁ。
「うん、ショックで気絶しただけですね。しばらくこのままにしておきましょう」
「それが良い。ちなみにリナちゃんと沙那さんは?」
「あ〜、二人なら、そこの野菜の直売所で買い物中だな」
祐太郎がグイッと親指を立てて二人のいる方向を示すと、確かに野菜の直売所で新鮮野菜を仕入れているわ。
まあ、二人もルーンブレスレットを持っているから、荷物をしまうのには問題ないか。
「それで、そのクリムゾンさんは、俺たちと敵対するのか? さっきからよだれがダラダラとしているんだが」
──ヒュンッ
素早くブライガーの籠手を装備する祐太郎。
するとクリムゾンは手にした槍を地面に突き立てる。
「いや、いきなり美味そうな精気が並んだので、つい本能的にな。さっきも紹介されたが、クリムゾンだ。白桃姫から、この地にとどまるのなら人間を食べるなと言われたので、お前たちに危害を加えるつもりはない」
「そ、そうか、それは済まない」
すぐさまブライガーを収納する祐太郎。
しかし、二人とも自己紹介に『元』ってついていたよなぁ。
やっぱり、魔人王が死んだという情報は正解かぁ。
「ふむふむ? その様子じゃと、セレナとやらの紹介だけではないようじゃな? 何があったのじゃ?」
「それは少しお待ちあれ。そのセレナさんの用事だからさ」
………
……
…
あれ?
どうして私はここにいるのですか?
魔術研究部で夏休みの話をして、その後で王印に詳しい人を紹介すると言って。
妖魔特区の入り口で簡単なチェックを済ませてから、この場所に来て。
どうして白桃姫さんがいるのですか?
ぅていうか初めて見ましたよ、本物の十二魔将を。
普段は、お父さんの鏡に映るマグナムさましか見ていなかったもので、こうして本物に出会えるなんて。
しかも、その後ろにはクリムゾンという名前の魔族が。
え? 元十二魔将第十一位?
それって、もうフォート・ノーマが殺されたことを知っているのかしら?
それなら話は早いけれど、今はそんなことを言っている場合じゃないわ。
どうにかしてここから逃げないと、私がマグナムさまの命令で動いているのがバレるじゃない。
──パチッ
「はっ‼︎ 夢を見ていましたデス」
「大丈夫ですか? いま診察しますからね……診断。はい、問題ありません」
どうやらセレナさんの意識が戻ったらしい。
それねら、話の続きを始めようじゃないか。
「おーい、白桃姫。セレナさんの意識が戻ったからな」
「それは助かるぞ。そろそろ限界じゃ」
セレナさんが意識を失っている間、リナちゃんと祐太郎二人がかりで白桃姫と戦闘訓練を行なっている。
正確には、手合わせを頼んだ祐太郎とリナちゃんが白桃姫に翻弄されているだけ。
「な、なにが限界だよ……汗ひとつ掻いてないじゃねーかよ」
「私も限界だよ……」
──ドゴン
リナちゃんの右腕からツァリプシュカが外れ、地面に落ちる。
そして祐太郎もリナちゃんも、芝生に大の字になってクールダウン。
まあ、そうなるのか分かっていたから、俺は参加しなかったよ。
「それでこの小娘が、なんのようじゃ?」
「い、いえ、急ぎの用事じゃないので、これで」
「セレナさんのお父さんが、仕事で王印を探しているんだってさ」
そう説明すると、白桃姫とクリムゾンの顔が真面目になる。
「仕事で王印探しとな?」
「ふぅん。俺もちょっと詳しく聞きたいところだが?」
「あ、あのですね。私の父はヘキサグラムのサードセクションに所属していまして。それで、妖魔の可能性について詳しい調査をしているところで、魔人王の象徴である王印の話が出てきたのでーす」
必死に汗を拭いつつ、白桃姫たちに説明しているセレナさん。
すると。
「あら、私が最後のようですわね」
ここで瀬川先輩の登場。
これにはテンションも上がるよね?
「あ、大丈夫ですよ。まだ始まったばかりですから」
そう告げてから、俺はカナン魔導商会経由ウォルトコから、庭に置く屋根付きテーブルセットを購入。
すぐさまテレビ城前に配置すると、セレナさんと先輩に椅子を勧めた。
「お、は、はい、ありがとうございマース」
「私は記録も撮りたいので、深淵の書庫を展開しますわね」
少しだけ下がって深淵の書庫を展開する先輩。
これで役者は揃ったので、本題に入ることができる。
ただ、白桃姫とクリムゾンの雰囲気が、少しだけ殺気立っているのは気のせいじゃないよね?
「さてと。小娘、さっきの王印の話じゃが、誰からその存在を聞いたのじゃ?」
「この件は、ちょっとややこしいる話になるからな」
少しだけ魔力を放出して、セレナさんに問いかける白桃姫とクリムゾン。
「まあ、王印のことだけどさ。白桃姫、魔人王が死んだのか?」
「……乙葉も、どうしてそのようなことを?」
「いや、セレナさんが王印の話を持ち出した時にさ。親父と母さんに話を聞いたら、王印って魔人王が死去するか譲渡しない限りは、身体から離れないんだろ? それで探しているとなると譲渡ではなく死去。あとは、さっき白桃姫たちが自己紹介の時に『元十二魔将』って話していたからさ」
伊達に大賢者のジョブではない。
その辺りの思考ルーチンは、自信がある。
何よりも、いきなりセレナさんが姿を表して、王印の話で瀬川先輩に話を振ってきた時点で、彼女はそっちの関係者だって理解できる。
これは祐太郎にはLINEで説明しているし、祐太郎もそうじゃないかって思っていたらしい。
ちなみに現在、セレナさんは真っ青な顔でテーブルの一角を見つめている。
「無理、無理デース。お父さんごめんなサーイ。セレナは限界デース……」
あ、何かぶつぶつと話している。
「ふぅむ。隠し立てしても仕方がないから、正直に説明しよう。我らが魔人王フォート・ノーマは、謀反により殺された。犯人は十二魔将第一位、憤怒のマグナムじゃ」
「「「な、なんだってぇぇぇぇ」」」
俺と祐太郎、新山さんも絶叫。
そんな、祐太郎は離れているのに、わざわざタイミングを合わせなくても。
そして瀬川先輩は、驚くことなく深淵の書庫と睨めっこ。
入力が忙しくて、驚くところじゃないようで。
「それじゃあ、王印とやらはマグナムとかいう奴が奪ったのか? いや、探しているということは違うな」
「うむ。王印は意思を持つ象徴。王たる資格を持たない者に無理やり従わされる前に、逃げたそうじゃ」
「ダサっ‼︎」
「つまりは、マグナムは魔人王を殺して自分が王位に就こうとしたけど失敗。逃げた王印を探すのに……セレナさん、もしくは彼女のお父様を利用しているということですか?」
新山さんが、静かに告げる。
前半の答えになるのかわからないが、クリムゾンが力強く頷いている。
そして後半。
マグナムにセレナさんたちが利用されている件について、彼女の言葉を聞きたいのだけど。
──ダラダラダラダラ
あ〜。
脂汗が吹き出している。
これは当たりだよなぁ。
「セレナとやら。因みにじゃが、魔人王フォート・ノーマは、妾の古い親友じゃ。それを殺したマグナムを、妾は赦すことはない……じゃから、もしもそなたがマグナムの手下なら、この場で殺す‼︎」
──ブワサッ‼︎
背中から竜の翼が生える白桃姫。
しかも、頭のツノもゆっくりと可変して、後方に向かって鋭く、一直線に伸びていった。
「答えよ。そして命乞いを求めるなら、マグナムと縁を切れ‼︎ まだそなたの命があるのは、乙葉らの仲間としてここに来たからと知れ‼︎」
──キィィィィィン
白桃姫の右手に魔力が集まると、巨大な鎌が形成される。
いかん、白桃姫がマジだ‼︎
その証拠に祐太郎もブライガーフル装備だし、リナちゃんも立ち上がってツァリプシュカを構え始めた。
俺?
とっくに零式フル稼働状態だよ。
いや、本能的に、自動的に装着しているんだわ。
「わ、私は……私の母は、マグナムさまが配下でシタ。前大侵攻の際に、マグナムさまの命令で、ここに来たそうです……」
「名を告げよ‼︎」
「魅惑のフラット……そう呼ばれていましたソウデス」
「聞いたことがある。階位は確か男爵級。上級妖魔フラット……ふむ。では、フラットの娘に問う。マグナム配下の血として、ここで妾に殺されるか、マグナムと袂を分かつか……選ぶが良い‼︎」
やべえ。
白桃姫の迫力が凄すぎて動けない。、 何よりも、その後ろで剣を構えているクリムゾンが、俺たちに殺気をぶち込んできている。
百道烈士なんか目じゃない、この異様なまでの殺気。
なんだよ、この雰囲気は。
「わ、私は……父を、母を裏切ることはできないデス」
「では死ね‼︎」
──ガギィィィィーン‼︎
力任せに振われた鎌。
それを俺のセフィロトの杖と、祐太郎のブライガーが止めた。
っていうか、白桃姫‼︎
てめえ、直前で止める気満々だったろ‼︎
明らかに俺たちが受け止めた瞬間に、殺意のかけらもなかったじゃねーかよ‼︎
(オトヤン、ここからは多分、三文芝居だぞ)
(そうだよなぁ。ここは白桃姫に話を合わせるか)
すぐさま鎌を引く白桃姫。
そして俺と祐太郎はセレナさんの前に立つ。
「ふむ。そこの小娘を助けるか……」
「まあな。俺の目の前で、人を殺すなんてできると思うな」
「……まあ、良かろう。この場は引いてやるわ、小娘……セレナとか申したな。命拾いしたのう」
そう呟いてから、白桃姫はいつもの怠惰モードに戻る。
「あ、あ、ありがとうゴザイマス‼︎」
ペコペコと頭を下げるセレナさんだけど、髪の中からニョキッとツノが見えているんだけどさ。
人魔? じゃないよなぁ。
「フラットの血が濃いか。頭のツノが見えているぞ」
「え、あ、アワアワ‼︎」
必死に髪をかき上げながら、ツノを隠そうとするセレナさん。
すると、新山さんがトレードマークの赤い帽子を取り出して、彼女の頭にかぶせてあげた。
「最初から、全て話してもらえますか?」
そう新山さんが問いかけると、セレナさんも静かに頷いて、ゆっくりと話を始めてくれた。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




