第百六十一話・少壮気鋭、好きこそものの上手になれる?(実力行使と、異世界と)
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はいっ。
放課後ですので、俺たちは異世界に行ってきます。
特に持って行くものはなく、むしろ、鏡刻界でカナン魔導商会が使えるかどうかテストもしたかったのだよ。
同行するメンバーは祐太郎と新山さんの二人だけ、まだ沙那さんとリナちゃんには早いという意見で合致した。
部活は休みにして、俺たちは一路、妖魔特区へ向かった。あの巨大な水晶柱が、ターミナルを開くのに一番イメージしやすいということと、一度やっているので、同じように開けるだろうという考えである。
「……しっかし、お前たちも暇なのじゃなぁ」
「だってさ、広範囲型転移魔法陣の術式なんて、白桃姫は知らないだろう?」
「知ってはいるが、妾のは世界を越えることは叶わぬからのう」
「同じ世界での転移術式‼︎ それって、この水晶柱を使うやつだよね?」
白桃姫はこの前も、ターミナル接続してここから国会議事堂へ道を繋いだ。
その術式なら俺も知っているし、使うこともできる。
「いや、違うぞ。純粋に、自分を転移させるやつじゃな」
「それって、ここから出られるんじゃないのか?」
「それが無理なのじゃよ。この百道烈士の作らせた結界はな、魔力の動きも阻害するのじゃよ。地脈を使った水晶柱でなくては、無理じゃなあ」
「まだハードルが高いって事か、まあ、オトヤンならそのうち、使いこなせそうだが」
「無茶いうなよ……と、それじゃあ行ってくるわ」
「うむ、気をつけて行くのじゃぞ」
──ガチャッ
水晶柱に鍵を使って扉を生み出し、鍵を開いて世界を繋げる。
そしてゆっくりと開くと、この前も見た鏡刻界の王城付近に空間を接続した。
「そこのお前‼︎ 乙葉浩介だな、そんなところで何をしている‼︎ その魔法はなんだ‼︎」
俺たちが扉を開くと、離れたところから俺たちを呼ぶ声が聞こえてくる。
「やっべ、どこのどれか知らないけれど、ここに入れるってことは」
「政府関係者の可能性があるのよね?」
「それじゃあ、とっとといきますか」
三人同時に扉を潜り、鍵を握って扉を解除する。
──シュンッ
これで俺たちの世界の扉も閉じた。
目の前に広がるのは、王城へと向かう街道。
この前とは少し位置関係がずれているけれど、白桃姫の説明にあった公転軌道のずれだと認識している。
「これが異世界かぁ」
「……冒険者ギルドってあるんだよね?」
「あるが、まずはターンオーバー。王城へと向かうことにしましょうか」
くるっと回って後ろを向くと、王城へと向かう街道が伸びている。
距離にして300mほど、のんびりと歩いて行くとしましょうか。
………
……
…
俺は小柳真二郎。
国権民進党の議員であり、異世界対策委員会のメンバーでもある。
乙葉浩介に異世界と向かうための門を開いてもらう為に、俺は燐訪議員の命令で北海道にやってきた。
そして朝イチで乙葉の家に向かう予定であったのだが、いきなり内閣総辞職というショッキングな出来事があったので、午前中は待機して指示を待っていた。
そして午後からは、乙葉が異世界に向かったという噂のある『妖魔特区』まで足を伸ばしたのだが、流石に上級妖魔相手に話ができるほど.俺は肝が座っていない。
どうせ次の選挙は負けるだろうから、俺は時間を適当に潰して、妖魔特区内の視察をすることにしたのだが。
「おや?」
適当に時間を潰していたら、例の巨大な水晶柱の前に、乙葉浩介たちが集まっているのに気がついた。
「まあ、話だけでもしてみるか……うわ、横にいるのは上級妖魔だよな、白桃姫とか言ったか……」
話を聞き出せれば、断られてもなんでも、仕事をしたって堂々と胸を張って報告できるんだが、横に妖魔がいるからなぁ。
──ガチャッ
どうしようか考えていると、乙葉たちがいきなり何かやらかした。
よく見たら、あの巨大水晶柱に扉を作ったじゃないか?
「あれって……きっとそうだよな」
急がないと逃げられる。
俺は走りながら声を掛けた。
「そこのお前‼︎ 乙葉浩介だな、そんなところで何をしている‼︎ その魔法はなんだ‼︎」
そう叫んだが、三人は慌てて扉の向こうに消えていき、さらに扉も消えたじゃないか。
「畜生、逃したか……」
「ふむ、そなたはどこの所属じゃ?」
ふと気がつくと、真横で白桃姫が腕を組んで立っている。
いや、本物の上級妖魔の迫力、洒落にならない。
横に立っているだけで、全身の毛穴が開いて、いろんなものが吹き出しそうだよ、主に冷や汗が。
「お、おれは、国権民進党の議員だ……です」
「知らんなぁ。それで、ここになんの用事じゃ?」
「乙葉浩介たちを追っていまして、彼に異世界へと向かう門を開いてもらうためです」
「そりゃあまた、なんの理由で?」
「なんでと言われましても……まあ、こちらの都合としか言えませんが」
「そうか、それじゃあ仕方がないのう。とっとと立ち去るが良いぞ」
ええっと。
それではい、分かりましたって帰れるはずがないじゃないか。
「いや、彼が戻るまで待ちたいのですが、ダメでしょうか?」
「この札幌テレビ城のある大通り一丁目は、妾たちが借りた土地じゃ。無断で入って良いのは、第六課の者たちと乙葉浩介の友達だけじゃ」
「え、いや、ここは国の土地ですよね?」
「北海道知事から、しっかりと借り受けた‼︎ これをみるが良い」
白桃姫が懐から、賃貸契約書を取り出して俺に見せてくる。 やっべ、これ本物だ。
北海道知事の署名も押印もしてある。
「こ、これはまた、失礼しました」
「うむ、わかったのなら許す。帰るが良いぞ」
「は、はいっ‼︎」
回れ右で、俺は急いで立ち去ることにした。
大通り二丁目なら、文句を言われることはないだろうから、そこで待つことにしよう。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
鏡刻界にやってきた俺たちは、王城門番に話を通してもらい、先日、織田を捕まえた城壁内の迎賓館へと案内された。
先に連絡が届けられたらしく、俺たちが迎賓館の応接間に到着した時は、すでにフリューゲルたちは待っていた。
さすが王城、仕事が早いわ。
「よく来てくれた。私は嬉しい」
「ようこそ異世界の勇者御一行様。私たちは、あなた方を歓迎しますわ」
フリューゲルと、初めて見た女性。
服装から考えると、偉い貴族のような気がするんだけど。
「フリューゲルさん、お久しぶりです」
「また会ったな。短時間だけど、世話になる」
「新山も築地も、久しぶり。二人は、乙葉と共に戦ってくれるのか?」
「「「へ?」」」
思わず真顔になったわ。
なんで戦う前提になっているんだ?
「あ、あの、俺は戦いに来たんじゃなくでですね。実はカクカクシカジカでして……」
かいつまんで説明する。
フェルデナント聖王国が、俺たちの世界に侵攻したこと。
どうにか撃退したものの、またやってくる可能性があること。
フェルデナントの騎士たちを捕らえたものの、そもそものフィジカル能力に差がありすぎるため、逃してしまったこと。
その逃げた騎士たちが、水晶柱の前で陣形を張って待機し、ターミナルが開くのを待っていること。
一つ一つをゆっくりと説明しつつ、合間に新山さんと祐太郎が補足を入れてくれるので助かる。
そして話を聞いていると、フリューゲルと隣の女性の顔色も悪くなっている。
「こ、これは、私たちの世界のものが、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。鏡刻界を代表して、深くお詫び申し上げます」
「は、はい、ちなみにフリューゲルさんや、こちらの方はどなたですか?」
「ラナパーナ王国女王。マリア・カムラ・ラナパーナさまであられます」
「「「じ、女王さま‼︎」」」
──ザッ
慌てて跪き、頭を下げる。
新山さんも祐太郎も同時に動いたけど、みんな同じポーズなのは笑ってしまうなぁ。
とあるアニメの謁見のポーズなんだけど、これしか知らないんだよ。
「え、えええ? 頭を上げてください。ご迷惑をおかけしたのは私たちの世界ですから」
「そう言っていただけると、助かります」
とりあえず頭を上げて立ち上がる。
この建物の中はある意味では無礼講な部分もあるらしいから。
「立ち話もなんですから、こちらへどうぞ」
応接間に案内されて椅子に座る。
メイドが紅茶のようなものを入れてくれたので、折角だから俺もお茶菓子を取り出すことにしよう。
──スッ
カナン魔導商会を起動して、ウォルトコ経由で『春のフルーツのスコップケーキ』を購入。
『ピッ……届け先が登録された世界ではないため、手数料が二割加算されます』
まじか?
それでも二割り増しで買えるなら良い。
──ゴトッ
空間収納からスコップケーキを取り出して、メイドさんに手渡す。
「こちらは、俺たちの世界のケーキというデザートです。毒見しても構いませんので、切って持ってきてもらえますか?」
「はい、かしこまりました」
うん、翻訳スキルは正常に作動している。
俺だけでなく、祐太郎も新山さんも会話は成立しているみたいだから、まずは一つ目のハードルはクリアした。
「それで、本題に入る。乙葉たちは、何をしにここにやってきた? そもそも、鏡刻界は、こんなに気軽に来られる場所じゃない……筈」
「まあ、それはそれ。俺が大賢者だからで納得してくれると助かる」
「大賢者さま‼︎」
俺の言葉に、マリア女王が驚いている。
「あ、まあ、職業が大賢者というだけでして」
「俺は魔闘家で」
「私は聖女です」
祐太郎と新山さんも説明するのだが、フリューゲルたちは目を丸くして呆然とするしかないらしい。
「ど、どれも伝説のジョブではないか? やっぱり貴方たちは、おかしい」
「お褒めに預かったと理解するさ。それで、俺たちは、大規模転移術式を探しているんだが、何か心当たりはないか?」
「織田から、ここにきたら知恵を貸してくれるかもって教えてもらったんだよ」
「どんなヒントでも、構いません。お願いします」
俺たちは頭を下げた。
すると、フリューゲルが懐から魔導書を取り出して、机の上で広げている。
「うん、乙葉のいう大規模転移術式はあった。でも、これは世界の壁は越えられない」
「伝説の勇者さまが使ったと言われている『ブレイブアーツ』には、そのようなものはあった筈です。ですが、それは勇者にしか使えません」
勇者かぁ。
俺は大賢者だから、違うよなぁ。
それに、ここで勇者になんかなったら、色々と厄介ごとに巻き込まれる予感しかしない。
まあ、人助けというのなら、引き受けると思うけどね。
「その勇者しか使えないってやつなんだが。たとえばオトヤンや俺が勇者だったら、使えるのか?」
「……わかりません。勇者として選ばれたのなら、勇者の武具が反応する筈です」
「ええ。聖なる鎧『ミラーヴァイン』、悪を滅する光を放つ『オーラカリヴァー』、全ての魔法を弾く『ミーディアの盾』。この三つの装備こそが、勇者のみが装備できる、いわば勇者を示す証拠となります」
うん、嫌な予感がひしひしとしてくる。
予想では、このあとは、あれだろ?
「乙葉浩介、ものは試しに、勇者を示す儀式に参加してくれないか?」
「是非ともお願いします。築地さまも、新山さんも、可能性があるのです」
「え? 俺って勇者というより遊び人なんどけど」
「わ、私は聖女なので‼︎」
イヤイヤながらまとめた聖女のジョブ。
その効果で、魔力の消費量とかが激減しているからね。
祐太郎も魔闘家になってからは、体のキレが良くなっているし、俺はまあ、いつも通り?
解せぬ。
「まあまあ、そんなことを言わないでください」
「ものは試し、ダメ元という諺が日本にはある」
「なんで日本の諺をフリューゲルが知っているんだ?」
「「まあまあ、ものは試しで‼︎」」
くっそ、断れないじゃないか。
………
……
…
王城地下にある祭壇。
本来ならばここで勇者召喚の儀式が行われる筈であるが、ここにあるはずの水晶柱が消滅してしまい、今は王城最上階の儀式の間でしか行えないらしい。
この部屋の中央には、一体の巨大な像がある。
これこそが、勇者の像であり、身に纏っているのが三種の装備『ミラーヴァイン』『オーラカリヴァー』『ミーディアの盾』だそうです。
「これが初代勇者王、リーチ・フォーガさまの像です。勇者として認められたなら、勇者の武具が実体化し、装着されるそうですが」
「ふむ、それでは、もっとも可能性のあるユータロからどうぞ」
「俺か? まあ、誰がやっても順番なんてあってないに等しいんだが」
そう話しつつも、像に手を添えて闘気を練り上げる。
うん、体から湯気のように立ち上る闘気に反応して、勇者の像も輝いているよ。
──キィィィィィン
「な、なんだ、何が起こった‼︎」
「ああ、やはり貴方こそ勇者なのですね……」
──カッキィィィィン
そして祐太郎の身体に、鎧が装着された。
なんというか、生態系装甲というか、一狩り行こうぜの世界の装備みたいだわ。
「あ、あら? ミラーヴァインが、なんというか、生々しいと言いますか」
「うん、築地の闘気に引っ張られた。鑑定する……」
「あ、俺も鑑定するわ」
『ピピピピッ……魔装ブライガー。勇者の鎧がミラーヴァインがブライガーの加護により可変したもの。闘気練度を高め、オーラを強くする』
「魔装ブライガーだってさ」
「なるほどな、ブライガーぁぁぁ」
──カッキィィィィン
両腕と拳にブライガーの籠手が装着する。
これで魔装ブライガーが完成したのか。
「や、やはり築地さまが勇者さま……」
「でも、剣も盾も残っている」
「あら?」
うん、そこで俺を見ないでくれるか?
俺が剣なはずがないと思うんだが。
「ささ、と乙葉さまもどうぞどうぞ」
「……まあ、駄々をこねている場合じゃないからな」
「あ〜、白黒のあれか、赤目と青目と黄目の三人がいるやつな」
「三面怪人ダダな。親父が再放送を見ていたのを、俺も一緒に見ていたからわかるわ。ちっがうから‼︎」
そのまま手のひらを像に置き、魔力を高めて注いでいく。
──キィィィィィン
「まあ、そうなるよなぁ」
「ええっと、乙葉さまも勇者なのですね……」
──カッキィィィィン
そして、俺の手の中に杖が生まれた。
うん、発動杖だね、ごっついやつ。
金属製だけど軽い。
クネクネと曲がった杖で、表面に文字が刻まれている。
「はぁ、俺のは発動杖か。鑑定と」
『ピピピピッ……セフィロトの杖。勇者の剣オーラキャリバーが、破壊神の加護によりフォトンマナセイバーと融合、可変したもの。魔力練度を高め、術式の消費魔力を軽減する』オーラを強くする』
「うんぁぉぁぁ、俺のマナセイバーが取り込まれたぁぁぁぁ」
ぶんぶんと振り回すと、杖に魔力を伝達することができるのがわかった。
ふむ、杖の形だけどマナセイバーとしての機能もあるのか。
そして、その場の全員が新山さんを見る。
──ヒクッ
あ、頬が引き攣っている。
「わ、私もですか?」
「ええ、勇者コハル。まだ盾が残っています」
「諦めて、グッラック」
ここの女王もかなりフランクだけど、フリューゲルも大概だな。
そして新山さんが、俺に助けを求めるようにチラッと見るので。
「新山さんは拒否しても構わない。そもそも俺とユータロは覚悟は決めていたし、運命は受け入れるつもりだったから」
「無理はしなくていいぜ」
俺と祐太郎の意見は一致。
あとは新山さん次第なんだけど。
──グッ
両拳を力一杯握って、小さくガッツポーズする新山さん。
そして像に手を当てると、神聖魔法を発動し、像に注ぎ込んだ。
──ヒュウッン
すると、新山さんの両手に腕輪が装着された。
「これは、ミーディアの腕輪ですって」
──ブゥン
両手を左右に突き出して魔力を込めると、そこに魔法によって形成された盾が浮かび上がる。
そしてゆっくりと新山さんの周りを回ると、左右の肩のあたりでフワフワと浮いていた。
『ピピピピッ……フロートバインダー・ミーディア。新山小春のスキル『温故知新』とルーンブレスレット、そして癒しの神シャルディ加護の三つが融合した『ミーディアの腕輪』から形成される『完全中和結界』』
うん、凄いわ。
わかったことは一つ、この三つの装備を一人で使っていた勇者は化け物なんだなぁ。
「三人揃って一人の勇者……これで、この世界は救われます」
「先に、俺たちの世界をどうにかしてからね。ちなみに、これって俺たちが持って帰ってもいいの?」
「はい。それは勇者から与えられた加護です。ちなみにですが、この像により勇者の力を授けられたものが複数存在したという事実は、以前にも何度かあったそうです」
「へぇ。それでは、ありがたく預かっていきます」
「ありがとうございました」
「さて、これで分かったのは一つ。大規模転移術式がないということ……お?」
──キィィィィィン
俺たち三人の装備が光る。
そして理解した。
大規模転移術式も三つに分断され、魔装ブライガーによる『強制退場コマンド』、セフィロトの杖から発動できる『単体強制転移術式』、そしてフロートバインダーから生み出される『神罰の枷』、これらが転移用術式に該当するらしい。
つまり、俺たちが戦う必要ができてしまったということだ。
──ガクッ
膝から崩れる俺たち三人。
まさか、ここまで予想外のことが起きるなんて、思っても見なかった。
たしかにフェルデナント聖王国の騎士たちを強制転移させることはできるようになったけど、時空はまだ越えられそうにないんだよ。
強制的に牢獄に転移させることは出来そうだけどさ、なにか考えないとならないんだよなぁ。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
・今回のわかりづらいネタ
ウルト○マン / 円○プロ
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。




