第百五十話・開心見誠、石に灸だったかぁ。(よかったな織田。じゃあな)
『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。
発売まで、あと⚪︎日‼︎
っていうか、本日発売‼︎
どうぞ宜しくお願いします。
ごっつい騎士に護衛を任せて、俺は城下町の散策に出て来た。
「おや、ラーラ・ルンバさん、今日は市街地巡回かい?」
「あ、ルンバさんだ」
「おやルンバさん、ちょうどいいところに。これ持っておいきよ、今日はちょっと作りすぎてね」
「いやいや、今日は特別任務でね。何か困ったことがあったら、いつでも詰所まで連絡をくれるように、いいね?」
街の人が、この護衛の騎士に声をかける。
老若男女、皆笑顔で話しかけたり、袋いっぱいのパンを差し出したり。
「ラーラ・ルンバって、騎士さんの名前か?」
「ああ。こう見えてもルンバ伯爵家の後継者だからね。親父は俺にルンバ家を継がせたいらしいが、どうも貴族というのは性に合わなそうでなぁ」
笑いながら説明してくれるルンバさん。
そうか、ごっついおっさんと思ってすまなかったな。
「それよりも君は、街に散策といっていたが、何か目的はあるのか? 見たいものとか、そういうのがあれば、案内するけど?」
「見たいもの‼︎」
そう言われて考える。
この後も、この世界で生きていくのなら、何か手に職つけないとならない。
けど、俺ができるのは手品だけ、しかも今はなんの道具もない。
「俺が見たいもの……手品道具、いや、違う……ルンバさん、魔法を売っている店ってありますか?」
「魔法か。今の時間なら、運が良ければミスティ魔導商会はやっているはずだな、よし、ついて来たまえ」
よし、これで、俺がこっちの世界で生きるための何かを見つけられるかもしれない。
………
……
…
ルンバに案内されてやって来たのは、教会のような大きな建物。
正面扉は開けっ放しになっていて、時折、ローブ姿の『いかにも魔法使い』といういでたちの人たちが出入りしている。
そこに俺とルンバは入っていく。
「おやぁ? ルンバじゃん。今日は何かあったのか? 魔法が使えない君が、ここまでまくるなんて珍しいな」
「いや、今日はフリューゲル様の依頼で、この少年の護衛をって行っているんだ。織田くんといったかな? 彼女は、このミスティ魔導商会の主人のミスティ・バルディオだ。一応は男爵家当主になるのかな?」
「落ちぶれ男爵家だけどね。ようこそ織田くん。ミスティだよ、今後ともご贔屓にね」
すっと右手を差し出されたので、俺も右手で握り返す。うん、女性の柔らかい手を伝って、何かが体の中を駆け巡ったような気がする。
「織田です、よろしくお願いします」
「うん、魔力値は40マギパスカルか。初級魔法使いの卵ってところかな?」
え? 40マギパスカルってなんだ?
乙葉からは、散々魔法使いの才能はないって言われていたぞ?
いや、才能はないって言われたことはなかったか? 教えないとは言われていたよな。
つまり、俺って魔法使いになれるのか?
「そ、その初級魔法使いになるには、どうしたらいいのですか?」
「まあまあ、慌てない慌てない。一番早い方法は、一流の魔法使いの弟子になることさ。といっても、一流ってなかなかいなくてね。だから魔法学院に通うのが近道と言えば近道だよ」
「ミスティも一流の魔法使いだろ?」
そうルンバがミスティにツッコミを入れている。
「よしてくれよ、一流の魔法使いは、我が家のご先祖様だよ、わたしには、もうそんな力はないからね?」
「ご先祖様?」
思わず問いかけると、ミスティは奥の壁に架けられている、一本のスティックを取り出した。
「そうさ。時の勇者と共に歩んできた大賢者マリン・バルディオが、我が家のご先祖さまさ。これはご先祖さまの愛用していた杖でね、バルディオスティックと呼ばれているんだよ」
大切そうに杖を眺めるミスティ。
「まあ、店に飾ってあるのはレプリカでね、本物は王宮に大切に保管されているけどさ」
「マジかぁ‼︎」
「ということで、一流の魔法使いといえばフリューゲル師匠、あとは魔法学院に通う、このどっちかしかないよ?」
「い、いまの俺が使える魔法ってありませんか? どうしても魔法が覚えたいんです‼︎」
思わず前に出て問いかけた。
すると、ミスティが腕を組んで考えてしまう。
「う〜ん。基礎ができていないから、本当に簡単な、体に負荷のかからないものならなんとか。でも、お金が掛かるよ?」
「お金‼︎ お金……ない、です」
ああ、まだこの世界に来て二日だよ。
お金なんてあるわけないよ。
そう考えて、肩を落としてしまったよ。
「ふむ、面白いな。ミスティ、20クリスなら俺が払うから、それで何か見繕ってくれるか?」
そう告げながら、ルンバが細い銀色の棒を懐の袋から取り出してミスティに渡す。
「うん、これなら子供の訓練用スクロール程度なら間に合うよ、今はこれしかないけどいいかな?」
「構わんよ。彼が歩き出すための投資資金だと思えば、安いものだ。彼は、フリューゲルが召喚魔法陣で召喚した異邦人だからな」
「……本当に?」
「ああ。だから頼む」
そういう話をしているのを横で聞いていると、なんだかむず痒くなる。
しかし、今の俺に先行投資とは。
返せない可能性が高いが、本当にいいのか?
「だったら、これだね。君のマギパスカルでは魔導書契約も発動杖も使えない。けど、このスクロールに記してある術式なら、魔力の消費量はギリギリだけど、どうにか一日一回は使えると思う」
そう告げながら、ミスティが俺にスクロールを差し出した。それを受け取ると、ミスティが何かを詠唱している。
「……よし、これでスクロールは活性化した。あとは君が開くと、術式は君の頭の中に刻み込まれる。やってごらん」
「あ、ありがとうございます」
恐る恐るスクロールを開く。
すると、見たことのない文字がゆっくりと輝きだし、空中に上りながら消えていく。
そして、俺の頭の中に、魔法の詠唱文が刻み込まれていくのが分かった。
「こ、これが、俺の魔法‼︎ すげぇ、俺、魔法使いになったんだ‼︎」
「まだだね。魔法使い見習いの弟子のお手伝いってところだよ。魔法は使えば使うだけ伸びる。ただ、マギパスカルの限界値に達すると、そこでおしまい」
「その限界値って、どれぐらいなんですか?」
「さあ? 学者さん曰く、人間のマギパスカルの限界保有量は1000を越えられないらしい。そこを越えるのが賢者の称号でね、常人は100も届かないそうだよ」
そうか、俺はまだ40。
ひょっとしたら、魔法使いに転職したら、1000までは伸ばせるってことだよな?
よーしよしよし、希望が見えて来たぞ、これで俺も、勇者の仲間になって世界を救う道が開き始めるってことだよな?
「賢者になるには?」
「わからないね。しかも、神に認められた賢者は、大賢者になるって噂だよ。この世界にやって来た勇者とその仲間の中にも、大賢者はいたらしいからね」
「それってマリンさんですか?」
「うちの爺さんのさらに昔だよ。勇者ストラトス、大賢者エンジェ、ゴーレムマスターユウ。魔王を滅ぼした奇跡の勇者パーティって物語もあるぐらいだからね」
そうか、よし、昨日までのクヨクヨしていた俺にグッバイ。
明日から、俺は魔法使いになる‼︎
今日は魔力が足りなさそうだから、明日から‼︎
そう考えてニヤニヤしていると、ルンバが俺を見て笑っている。
「今朝方とは大違いだな。朝、君の護衛を頼まれてあった時は、もうこの世の終わりのような顔をしていたのに」
「はい、希望が見えたんです‼︎ 不可能を可能にすることが、俺にはできます‼︎」
「そうか。まあ、あまりここで大声を出したら、他の客に迷惑になるからな。今日はこれで失礼するよ」
「ああ、頑張りたまえよ、未来の魔法使いさん」
思わずVサインを返して、俺はランバさんとともに店を出た。
「あ、ありがとうございます」
「ん? 別に構わない。私は騎士として、迷っている青年に少しだけ手を貸しただけだ。君は、自分の力を過信しすぎているから、まずは足元を見るべきだ」
それで、最低ランクの魔法から、俺に覚えろっていうことか。
いや、そもそも、俺の考え方を改めろっていうことだよな。
いざ、そう指摘されると、俺自身の今までの生き方も考え直させられたよ。
「そうか、もっと謙虚に……自分のためじゃなく、こう、人にも優しく手を差し伸べる、騎士の生き様ってやつか」
「……まあ、あまり考えすぎるのも良くない。自分なりに考えがまとまったら、また歩き出せば良い。答えなんていくらでもある、その中から、自分の答えを見つければ良いだけだ」
「自分と、それを取り囲む周りの人のため、ですね?」
俺は、乙葉の都合も何も考えずに、突っかかっていったんだよなぁ。
そんな俺にも、乙葉は嫌がるそぶりこそすれど、拒否はしていなかった。
遠回りのアドバイスだって、俺のことを考えてくれていたんだろう。
なんだろう、そう考えてみると、世界は希望に溢れているじゃないか。
昨日までのクヨクヨしていた俺にグッバイ、明日からは、俺は魔法使いの仲間入りだ‼︎
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
妖魔特区にある水晶柱。
そこに、俺が作った異界接続鍵を使って、織田が向かったラナパーナ王国王都クルーラカーンへと向かう。
みんなとのお別れは済ませた、まあ、すぐに帰ってこないとか〜な〜り、やばい。
タイムリミットは一日、さて、どうなるか。
「……早く行かぬか、何を鍵まで開けて止まっているのじゃ?」
すでに水晶柱に鍵を差し込み、扉を出現させてある。鍵も開けたので、あとはノブを開いて進むだけなんだけどさ。
「あ、あのな白桃姫、こっちの時間と向こうの時間の進み具合が違うとかないよな?」
「違うぞ? まあ一日で誤差数分程度と言われたことがある」
「そっか、数分ならいいか。じゃあ行ってくるわ」
──ガチャッ
扉を開くと、そこは異世界。
中世ヨーロッパイギリスというかドイツというか、ファンタジーの映画のような世界。
「この前とは場所が違うな。目の前に王城があるが」
「どれどれ……ほう、クルーラカーン王城前じゃな。では、気をつけていってまいれ、異世界人には優しい国じゃ、王城に行って事情を説明するとよいぞ」
「了解、そんじゃ、ちゃっちゃと終わらせて来ます」
──ヒョイ
そう告げて一歩踏み出すと、後ろにあったとびらが消滅した。
まあ、鍵はあるので問題ない。
そのまま皇女前まで向かうと、門番に話しかけてみる。
「あの、すいませんが、こちらにフリューゲルさんっていますか?」
「宮廷魔導師のフリューゲルさまに用事か、何か身分を示すものは?ギルドカードでも構わないぞ」
おっと、そんなものは持ち合わせていない。
「ええっとですね、俺は、こっちの世界の人間ではないので、そういうものは持っていないのですが」
「ふむ、それは困ったな。身分が証明できるのなら、すぐにでも取り次ぐことができるのだが。それを持っていないということは、一般の謁見希望届けを提出してもらい、審査が必要になる」
「マジか。その謁見希望届けって、どこで出すのですか?」
そう問いかけてみると、門番は真っ直ぐに王城外の城下町を指さした。
「元老院議会場での申請になる。まあ、それが無理ならば、冒険者ギルドなり魔導師ギルドで登録して来た方が早いぞ、才能があるのならな」
「とほほ、そういうことか。意外と異世界人には冷たいじゃねーか」
「まあ、君も異世界人を名乗るのは構わん。結構、女王と謁見するために自らを異世界人だという輩も多くてな。それでなくても、街はまだ混乱の中にあるから」
たしかに、ここから見える範囲だけでも、城門は応急処置が施されているが破壊された跡があちこちにある。
石畳だって、あちこちに戦闘があったらしい返り血が見掛けられている。
一体何があったのかわからないが、織田がやばいことに巻き込まれたのは事実のようだ。
「あ、あのですね、俺が、あの壊れた城門を魔法で直したら、フリューゲルさんに俺のことを話してもらえますか?」
「魔法で修復だと? そんなことができるはずがないだろうが」
「できます!」
「そ、そうか、それなら、試しにやってみせろ」
よし、言質とった。
すぐさま壊れた城門に近寄ると、そこで手のひらを城門に向ける。
使う術式は、有馬とーちゃんから教えてもらったファウストの秘術。
「物質修復……」
体内からゴッソリと魔力が抜けていくのを感じる。
それと同時に、城門の周辺の瓦礫が浮かび上がり、城門をゆっくりと修復していく。
この光景を見て、門番の騎士たちも唖然とし、一人は城内に走っていった。
「これでどうですか?」
「……ま、待っていろ、今、フリューゲル様に連絡を入れているところだ」
………
……
…
「よく来た。魔法陣で召喚できなかった時は、どうしたらいいか困っていた」
あの後、俺は城内に案内された。
正式な、王家の来客ではないため、敷地内にある迎賓館のような場所に案内されたのである。
そこにフリューゲルは待っていたらしく、俺を見てニッコリと笑っていた。
「まあ、あの魔法陣を見たら、俺は何かあったって理解できますけどね。こっちも予定が詰まっていて、身動きが取れなかったのですよ」
「そうか。私たちも危険だった。乙葉は分からないだろうけど、我が国は、フェルナンド聖王国の侵攻に襲われていた」
またその名前か。
もう、どうにかしないとならないんじゃないか?
「そこで、我々は、勇者召喚術式を起動した。でも、水晶柱を失っていたため、乙葉浩介の魔力を頼りに、暫定的な召喚魔法陣しか作れなかった」
「そこに織田が飛び込んだということか。あいつはどこにいる?」
「今は、この建物の中で朝食をとっている。連れて帰ってくれるとありがたい。彼には申し訳ないことをした」
「まあ、連れ帰るのは当然なんだが、フェルナンド聖王国は大丈夫なのか?」
そう問いかけてみると、フリューゲルも腕を組んで頭を傾げる。
「大丈夫……かもしれない。我が国に侵攻して来た騎士たちは、勇者召喚の『光の道』を見た。乙葉浩介は知らないかもしれないが、この世界の勇者は絶対王者、何者も逆らうことができない」
「それが、この国に降りて来たのを見たから、逃げたってことか。そんなに怖いのかよ、勇者は」
「救世主だから、フェルナンド聖王国にとっては厄災以外の何者でもない。でも、ミラ・ヴァインを纏えるのは勇者だけ。いかなる攻撃も防ぐ、勇者の鎧」
ほう、それがあれば、東京に進出して来た奴らも押し戻せる……ダメダメ、つまり、こっちには勇者がいないってことになるし、そもそも誰が装備できるんだよ。
「そっか。まあ、手伝ってやりたいのも吝かじゃないが、こっちも明日にはフェルナンド聖王国が東京に進軍してくるからさ、自分たちの世界を守らないとならないんだよ」
「大丈夫、織田のおかげでフェルナンド聖王国は撤退した。暫くは安全、また何かあったら召喚する」
「そうポンポン召喚されても困るんだけどな。その時は、また考えるよ」
「うん、ありがとう」
──ガチャッ
「フリューゲルさま、なんだかメイドさんが俺に来客だって乙葉?」
ちょうど話が終わった時、織田が姿を表した。
よかったわ、探しにいく手間も省けた。
「よお、織田。迎えに来たぞ」
「断固として断る。俺は、この世界で魔法を身につけたんだ、これから俺の華麗なる魔法使いの道が開くんだ、もう現代世界には戻りたくない‼︎」
「拗らせているなぁ。まあ、俺も昔は拗らせていたから分からなくもないが、お前の親父さんたちと約束したんだから、帰るぞ」
「嫌だぁぁぁぁ」
いきなり振り向いて走り出す織田だが。
「拘束の矢‼︎」
──ビシッ!
部屋から出た瞬間に、織田を魔法で拘束する。
「次は、浮力の円盤。お、上手くいった」
織田の体の下から、直径一メートルほどの光る円板が浮かび上がり、織田を持ち上げる。
これは重い荷物を乗せて術者の後ろをついて来させるという魔法で、使い方は説明通り。
「⚪︎✖️△▫︎」
「うん、何言っているかわかんね。じゃあフリューゲルさん、またいつか」
「わかった、でも、どうやって帰る?」
そう問いかけるので、俺は懐から鍵を取り出す。
くる時は水晶柱だったけど、帰る時もあそこに出ることができるらしい。
鍵を空間に突き刺してガチャッと回すと、目の前に扉が開いた。
「フゴフゴフゴコゴゴゴ」
「うん、まあ、織田が何を言いたいかわかる。でもな、自分の世界に帰ろうな、『それがあれば、いつでも来れるだろうが』って叫んだんだろ?」
──コクコク
あ、かろうじて頷いている。
まあ、織田のことだから、頼めば言いふらさないだろうよ。
「誰にもいうなよ、その代わり、こっちに遊びに来たくなったら、一度だけ連れて来てやる。言いふらしたらそれまでだ」
──コクコク
「よし。それじゃあ、お元気で」
「うむ。こっちはこっちで、色々と対策する」
そのまま扉を潜ると、そこはよく知っている白桃姫のいる妖魔特区であった。
ふぅ、これで一つは問題解決、あとは織田を魔法の絨毯に乗せて、学校まで連行だ‼︎
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
・今回のわかりづらいネタ
機動◯士△ンダム




