第百四十五話・曲突徙薪、浅瀬に仇波?(敵性存在は人間です。偉い人にはそれがわからんのです)
『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。
今月、『ネット通販で始まる、現代の魔術師』が出版されます。
みなさま、どうぞよろしくお願いします。
この話の更新日あたりで、追加情報その二がでている頃かな?
東京で、フェルデナント聖王国から来た騎士相手にチャンバラしてきた翌日。
普通に登校して、普通に授業を受けて……って、無理でした。
教室に入った瞬間、みんなに囲まれて質問攻めにあっているよ、祐太郎が。
「築地、あの妖魔を袋叩きにした技はなんだ? 俺にも教えてくれ」
「築地くん、格好良かったよ。今度デートしようね」
「築地、俺たちを弟子にしてくれ。今のトレンドは魔法じゃなく武術だ。俺は天下一武フベシッ‼︎」
──スパァァァァァン
危ないことを言いそうな織田には、俺からハリセンのサービス。
祐太郎に対する質問攻めも、ある程度で落ち着いてきたし、授業の中休みでは他のクラスからも祐太郎を一眼見るために大勢の生徒が押し寄せていたよ。
うん、デジャヴーだな。
赤い蝶ネクタイのカラスじゃないからな?
次々と人が集まるので、昼休みには祐太郎もぐったりとしていた。
「……オトヤンの気持ちが、よく分かったよ」
「そうだろ? まあ、今回の件は、俺の活躍はなかったし。報道関係者も、俺じゃなくて祐太郎と騎士の戦闘を映していたからなぁ」
「まあ、それでも、ある程度の自信はついたかな。でも、殺しそうになると、やっぱ怖いわ」
妖魔相手なら、まだ人間外なので今までは普通に倒してきた。
転移門が消滅して魔族が普通に生活しはじめている現在は、魔族は倒せなくなった。
魔獣や魔蟲といったものが出現しはじめ、人に害をなす下級妖魔や中級妖魔、俺たちに悪意を持ってくる人魔については、今まで通りに戦えると思う。
だけど、異世界の住人は、無理。
向こうの世界の人間は、俺たちみたいな外見で知性があって生きているんだよ?
そんなの相手になんて、戦うことはできても、命を奪うことなんてできるはずないじゃないか。
これが、先日の白桃姫たちとの話し合いででた結論。
これが根底にある限りは、今の政府が俺たちに何をいってきても、一切合切、無視‼︎
──キンコンカンコーン。
『二年二組の乙葉浩介、築地祐太郎、新山小春は、至急、校長室に集まってください。繰り返します……』
長閑な昼休みを取り上げる、無慈悲な校内放送。
そして召集先が校長室ということは、来たんだね。
「さて、それじゃあ行きますか」
「面倒くさいけどな。ここはハッキリとしたほうがいい。俺たちは、駒じゃないからな」
「人助けなら構いません。けれど、それは強制されるものではないですからね」
相手がどんな手を使うかなんてわからないけどさ。
言いたいことは、ハッキリという。
………
……
…
「随分と待たせるわね。早速ですが、日本政府として、あなたたち三人には、あの水晶柱から現れる妖魔の殲滅をお願いします」
派手な白いスーツを着たおばさん。
燐訪議員が、校長室に待機していましたよ。
本当に予想通りの展開だわ。
「あ、その件ですか。わざわざ東京からご足労いただき、お疲れ様でした」
「悪いが、断る」
「私たちが戦う理由はないですよね?」
そう返事を返すけどさ、燐訪は傍に置いてある鞄から、書類を取り出したよ。
「そう。それなら仕方ないわね。妖魔特措法第二十一条二項、その三に記してますけど、貴方たちは明日より、日本国内閣府の管理下に入ってもらいます。これは命令ですので、拒否権はありませんわよ?」
堂々と、勝ち誇った顔で俺たちを見る燐訪。
確かに、そこの部分については、こう記してあったよ。
『妖魔関連による緊急事態が発生した場合、それを排除もしくは殲滅できる力を有する公務員またはそれに準ずるものは、可能な限り内閣府公安委員会の指揮下に入ることとする』
そして、しっかりと鷹川幸夫総理大臣の名前の記された命令書まで、用意してあったよ。
「皆さんを、一時的に準公務員として任命します。それでは、この後は東京に来てもらいます。生活に必要なものは全て、こちらで手配しますのでご安心ください」
そんなこと言うので、そろそろ種明かしと行きますか。
「あ、この命令書は無効ですよ?」
「何を言っているの? 妖魔特措法は前政権が成立させた法案よ? それが無効ですって?」
「ええ。あの水晶柱から出てきた【妖魔】って命令ですよね? あの騎士は【人間】であって、妖魔じゃないですからね?」
「つまり、この命令書は無効です。相手が人間なので、妖魔特措法は適用されません。それでは、失礼します」
「失礼します」
三人同時に頭を下げて、部屋から出ようとする。
けど、そこで引き下がる燐訪ではなかった。
「ちょっと待ちなさい。あの騎士が人間だって言う証拠はあるの?」
「あれが妖魔だって言う証拠を、日本政府は用意できますか? 俺たちは、自分の目で、あいつを鑑定して結論を出したんだからな」
「あの騎士の所属国は、鏡刻界にあるフェルデナント聖王国です。そこの白竜騎士団という組織に所属しています。つまり魔族ではありません」
祐太郎と新山さんの口撃が発動。
空いた口が塞がらないとは、まさにこのことなのだろうけどさ。
その程度で引くようじゃ、国会議員なんてやってないよね。
「でも、それでも、あの騎士を倒せたのはあなた達だけなのですよ? また出てきたら、その時はどうすれば良いのですか? あの暴漢を始末できるのは、貴方達だけではないのですか?」
あ、その一言は不味いわ。
よく、貴方達は、昔は与党議員の失言を責めまくっていたけれどさ、今回のはその比じゃないよ?
「燐訪さん。貴方は、高校生に『人を殺せ』って命じるのですか? あの中から出てきたのは人間です。住んでいる世界が違いますけど、一人の人間だったのですよ?」
「日本国は、国の命令で未成年に人を殺せっていう国なのかよ? 正直、やってられねーわ」
「それでは、失礼します」
それだけを告げて、俺たちは校長室から出てきたよ。燐訪も俺たちを止めるようなそぶりがなかったし、俺たちも、これ以上は話すことなんてないからね。
そのあとは、普通に授業もやったし、部活もしっかりと頑張ったよ。
それでも、今日の昼の話は、後味が悪すぎてね。
あまり真剣にできなかったというのが、俺たちの本音だよ。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
はぁ。
朝から目覚めが悪い。
昨日の燐訪議員とのやり取りが、頭の中に残っているよ。
今の日本政府だと、法案を改定してでも俺たちを戦わせようとするかも知れない。
それぐらい本気でやりかねないのが、怖いところである。
それでも、気合を入れて学校に行って、昨日とは違う、のんびりとした時間を楽しんで来たよ。
それでも、異世界からの侵攻がいつ始まるのかもわからないし、実際に起きたとしたら、どうやって対処するのかわからないんだよ。
それで、じっとしていられなくて、妖魔特区にやって来たんだよ。
「なるほどなぁ。それで、わざわざ妾の元にやって来たのか。乙葉や、暇なのじゃな?」
「白桃姫なら、あっちの世界の人間の対応策とか分かるんじゃないのか? 現に、俺のず〜っと後方で、第六課の退魔官達が集まっているんだけど」
俺が『札幌テレビ城』に顔を出した時、すぐあとに第六課の見知ったひとたちが集まって来たんだよ。
恐らくは目的が同じなんだろうなぁ。
「まあ、まとめて面倒を見てやるわ、忍冬も来たことだからな」
「へ? おや師範、ごきげん麗しく」
「麗しくはないな。一昨日の件で、昨日は証人喚問で呼び出されたからな。浩介、あの水晶柱の向こうから来た奴が人間って本当か?」
「本当ですよ。この俺の鑑定眼は、相手の種族やステータス、レベル、スキルに至るまで網羅できます。そもそも、師範はあれを持っているじゃないですか?」
あれってアレだよ、魂の情報。
これには、その人の全てのステータスやスキルが網羅されている。
とはいえ、かじった程度の技術や知識は、【一般生活】というスキルに網羅されているらしい。
これが、もっと普及したなら、俺の証言も信じてもらえるかもしれないけどさ。
悪用される恐れがあるから、危険なんだよ。
「この魂の情報を生み出す魔法があるなら、応用して対象者を鑑定できるゴーグルとかも作れるだろう?」
「あ〜、それね。作れるし作ったことあるし持ってる。けど、それこそ誰でも使えるから、公開しないし貸し出さないよ」
「……どこまでもチートだな。それがあったら、簡単にあの暴漢が魔族じゃなく人間だって証明できるのに」
そうは言ってもなぁ。
でも、時間限定で貸し出す程度なら構わないのか?
だけど、あの政府じゃあ、貸し出したは良いが、難癖つけて没収されるのが目に見えているわ。
「さて、忍冬のほうから、先に話をするとしようか。今日は、いったい何のようじゃ?」
「ありがとうございます。実はですね……」
忍冬師範の話とは、かいつまんで三つ。
一つ目は、水晶柱から出てくる妖魔対策のために、白桃姫に助力をお願いしたいということ。
そして二つ目は、可能ならば、国会議事堂に現れた騎士型妖魔と戦うために、退魔官の訓練をお願いしたいということ。
そして三つ目は、水晶柱の除去が可能かどうか。
それができるのならば、排除をお願いしたいらしい。
「……まず、前提条件から間違いじゃな。あの水晶柱から出てきたのは魔族ではなく人間。それを踏まえた上で、二つ目の頼みについてじゃが、フェルデナント聖王国の騎士を相手にするとなると、最低でもレベル50はないとは無理じゃよ。忍冬のレベルはいくつじゃ?」
そう問われて、忍冬師範は魂の情報を取り出して確認する。
「レベル3の闘気使いです……」
「話にもならんわ。そこにいる有象無象の退魔官も、おそらくは同じ程度じゃろ? まあ、見ることができぬから、確認のしようがないが」
「凄い、レベル3もあるのか」
思わず、素で驚いたわ。
今まで色々な人を鑑定してきたけど、レベル1の人しか見たことなかったんだよ。
魔術研究部の四名は例外な、俺たちは化け物の部類に含まれるんだろうから。
「浩介は、レベルは幾つなんだ?」
「以前は89レベルの賢者、今は転職して10レベルの大賢者?」
「なんで疑問系なのかよく知らぬが、乙葉は大賢者となったのか。神化に成功したのか?」
「進化? あ、そんな感じかな?」
俺の返答に、忍冬師範は固まった。
まさか、予想外な話を聞くことになるとは、思ってもいなかったのだろう。
「浩介、レベルはどうやってあげるのだ? それがわかったら、俺たちでも訓練は可能なんだが」
「そこがですね、よくわからないんですよ。気がついたら上がってましたし、レベルを上げる方法は、俺たちにとっても謎のファクターなんですよ」
これは真実。
だってさ、本当にどうやったら上がるのか理解できていないんだよ。
マルムの実を食べることで、最大限20レベルは上げることができるのはわかったけどさ、そのあとのレベルアップはわかっていない。
「白桃姫さん。貴方は鏡刻界に住んでいた魔族ですよね? レベルとか職業の概念はどうなっているのですか?」
「どうなっているのかと聞かれてものう。妾たち魔族も人間も、生きていく上で、様々な経験を経てレベルが上がるのじゃよ。その経験がどのようなものなのかは知らぬが、職業に準ずる経験を繰り返すことで、レベルが上がるといわれておるぞよ」
………
……
…
さらに細かく聞いてみると、職業というのは、鏡刻界では自分で好きに選べないらしい。
成人すると、全ての人間や亜人は『教会』で洗礼を受ける。
その洗礼時に、神から職業の加護を授かるらしい。
鍛治師なら『鍛治神の加護』、調理師なら『美食神の加護』といった感じに。
そして、洗礼により、一人平均『二つか三つの加護』を得る。
それが、その人の職業的性であるらしい。
ちなみに職業適性がなくても、訓練や修行を続けると、その職業に準ずる『スキル』を身につけられる。
なお、冒険者という存在に適応した加護は存在しない。『冒険神の加護』など存在せず、『魔導神の加護』を持つものは冒険者・魔法使いになったり、『剣帝の加護』を持つものは冒険者・ファイターになったりという感じになるという。
俺たち現代人には理解出来ないのだが、そもそも鏡刻界と裏地球は同じ神達によって管理されている。
裏地球にも、昔はそのようなものがあったらしい。
今は、神を信じるものが少ないため、加護は早々もって生まれたりしないという。
………
……
…
「……初めて知ったわ。これはみんなと情報共有しておこっと」
「それが良いぞ、瀬川にも伝えてたもれ。あそこに情報を集めておけば、万が一の時にも皆で共有できるじゃろ?」
「そうだな。ありがとう‼︎」
俺と白桃姫はいつも通りの反応なんだけど、忍冬師範は複雑な顔。
「俺は、こう見えても妖魔を何体も倒してきた。闘気修練にも自信があったのだが、それでもレベルは3しかないのか……」
「鏡刻界とこっちの世界を比べるでない。あっちの世界はな、街から外に出たら、そこは死と隣り合わせなのじゃからな。街に住むものは、大抵はレベル1とか2じゃよ。それをスキルで補っているだけにすぎぬわ」
レベルやステータスだけではダメ。
大切なのは、そこにスキルを加えての総合的なバランスらしい。
「あとは、そうじゃなぁ。装備で補うという手もあるが、それは忍冬達では無理じゃろ。乙葉のように、錬金術で装備を作り出すことができるものは他におるまい?」
「そうですね……いえ、一人だけ、心当たりはありますが、そもそも、そのような強力な装備を作り出すためには、材料が足りないのですよ」
「素材のことか。確かに、こっちの世界にはアダマンタイトもミスリルも、クルーラーもない。ドラゴンの牙やオルトロスの毛皮など、手には入らんのじゃろ?」
「ええ。ドラゴンもオルトロスも、私たちの世界では御伽噺のようなものですから」
「でも、昔はいたんだよなあ……」
思わず呟いたよ。
過去に、こっちとあっちの世界が繋がっていたっていう話は聞いたことがあるからね。
開放型転移門っていう奴で。
それが西洋に存在していて、そこからドラゴンが、こっちにきたりとかしていたんじゃないか?
「今は存在しない。そうなると、武具による強化も見込めませんか」
「それはわからぬ。あっちの世界に無くて、こっちの世界にある武具が、大量にあるじゃろ? 銃器とか、戦車とか。そういうものを使うと良いと思うぞ?」
「我が国は法治国家です。いきなり異世界からやってきた方に対して、しかも人間に向かって、無反動砲や銃器を放つほど野蛮ではありません」
「じゃが、フェルデナント聖王国の輩は野蛮じゃぞ? 教義の前には、人の魂など塵芥の価値も見出さない国じゃからな」
それは、この前の戦闘と、マイオスとの会話で理解している。
「では、白桃姫さんの助力をお借りしたいというのも無理ですか」
「無理じゃな。妾はな、戦闘特化ではない。むしろ守りに徹した方が強くてな。【何もしないをする】ことにより、妾は無敵になるからのう」
「そうですか……ありがとうございます」
「まあ、それだけで突き放すのも可哀想じゃからな。武を学ぶのなら、築地の師範を尋ねると良い。妾の知らない相手じゃが、恐らくはかなり高位の魔族じゃよ?」
この一言で、忍冬師範は考え込んでしまう。
祐太郎の師匠はチャンドラ、元八魔将の一角であり、闘気コントロールについては祐太郎の何十倍も凄い。
それについては、以前に、喫茶・九曜で引き合わせた時に話をしていたから知っていると思う。
けれど、あの場での話は全て外に漏らすことは禁止であり、恐らくは忍冬師範もそれを知っているからこそ、考え込んでいるのだろう。
「少し、考えてみます」
「そうするが良い。まあ、時間はそれほどないぞ、次に水晶柱が解放された時は、あちらも本気で来るじゃろうからな」
──ザワッ
その一言で、その場に緊張が走る。
俺としては、忍冬師範と白桃姫の話を聞いていたので、色々と考えさせることになった。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・今回のわかりづらいネタ
Gu-Guガ○モ / 細野不○彦
その他二つぐらい。




