第百四十話・四海兄弟、和を以て貴しとなせよ‼︎(リクルートしませう)
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はいっ、部員が増えましたよ。
幽霊部員ですけどね。
平日の殆どは、有馬父の仕事の手伝いとかで来られないらしいけど、たまに暇を見て顔ぐらいは出してくれるらしい。
ちなみに唐澤のりなちゃんは、毎朝恒例の『築地・闘気訓練』に参加するらしいので、何かあった場合は祐太郎経由で連絡ができる。
まあ、ぶっちゃけると、こういうのって異種族コミュニケーションだよね?
魔族との共存とは少し違うけど、こういうのもいいよね。
魔族代表が白桃姫として、獣人族代表は……チャンドラ、ゲンサイ、リナちゃんの三人。
ここにオートマタの沙那さんも加わり、フレンド枠が増えまくりだよ。
それと、晋太郎おじさんが今朝教えてくれたんだけど、天羽太郎元総理、発見されましたよ。
本人も意識がなかったのだけど、気がついたら、九州の温泉で眠っていたところを地元の議員さんが発見したらしい。
命があって良かったわ案件だよ。
魔族に攫われてしまい、すり替わった魔族が党員をも操って解散発言をしてしまったのは確定なんだが、何分にも証拠がなく、すでに解散は受諾されて衆議院選挙に発展してしまった。
こうなるとやることは一つ、正面から戦うしか無いってさ。
………
……
…
今日はのんびりと。
部活も、のんびりと。
有馬父が作り出した『広範囲洗脳解除装置』を解析して、図面その他は記憶水晶球に登録してある。
これを量産化しようと思ったんだけど、素材が足りない。
そしてカナン魔導商会では取り扱いしていない。
あっれ? このパターンは初めてだわ。
「オトヤン、来週の土曜日の午前中だけど、例の幼稚園の慰問に行くか」
「マジ? 朝一番?」
「当然。オトヤンが忙しそうだったから、先に幼稚園の先生方と打ち合わせはしておいたからな。それで、来週末のオトヤンのスケジュールは? 最悪、俺一人でもどうにかできるが」
「行かないという選択肢はない。行くともさ、新山さんはどうする? うちの近所だから近いよ」
「その幼稚園って、うちの近所ですよ? 同じ町内ですから。時間があったら伺います、折角ですので瀬川先輩も誘ってみますよ」
よし、これで楽しいことになりそうだ。
しかし、幼稚園に行くのも久しぶりだよなぁ。
今から十年ぐらい前の話か。
あの時は楽しかったよなぁ……。
「オトヤン、昔を懐かしがっているのは構わんが、妖魔反応二つ。正門あたりから感じるが」
「俺の頭の中を読むなや。そしてサーチ早いわ」
「普段から、闘気感知を常に張り巡らすようにしているからな。俺の闘気感知に人間以外が反応したから、多分妖魔だと思うが?」
「どれ、ゴーグルゴー、戦え大戦隊‼︎ 上級魔族二つ。これ以上は視認しないと分からんけど、ちょいと行ってくるか」
万が一にも、校内に乱入なんてことになったら大変だわ。
そうならないようにするのが、持つものの義務、ノブレス・オブリージュ。
決してノブナガ・オブ・ルルーシュでも、ノーブラ・オブリュージョーでもない。
………
……
…
外靴に履き替えて、堂々と正門に向かう。
さて、視認有効距離なので天啓眼発動。
『ピッ……公爵級上級魔族『ラッキースター』。対象者の魂を幸福に導く能力を持つ。『幸福の加護』という能力を持ち、怪異名『座敷わらし』の別名で知られている』
『ピッ……騎士級魔族『ブラックハウリング』。魔剣サンダーアームの継承者。『幸福の守護者』という能力を持つ』
うん、祐太郎、助けて。
俺一人だと、かーなーり怖いんだけど。
座敷わらしが部下を伴って殴り込みに来たぞ。
そう思っていたらさ、祐太郎はすぐ真後ろで柔軟体操していたわ。
さすがだ、竹馬の友よ。
「おや、せっかく呼びつけようと思ったのに、堂々とくるとはなぁ、無策にも程があるぞ」
「黒峯、余計なことを言うもんじゃない。はじめまして、現代の魔術師の乙葉浩介さん。そして、魔闘家の築地祐太郎さん。私は、極光姫と申します。彼は、私の守護騎士の黒峯。よろしくお願いします」
「敵対意思はないようですね。はじめまして、乙葉浩介です」
『ピッ、黒峯の鑑定眼にレジストしました』
『ピッ、黒峯のバインドアイにレジストしました』
あ、初めての相手だと、警戒するよね。
そして黒峯が俺を睨みつけているし。
「人間のくせに、何、勝手にレジストしてんだよ。黙って鑑定されろや‼︎ バインドされろや」
「と、この雑魚護衛が申しておりますが? 極光姫さん、いえ、ラッキースターさん。貴方はともかく、こちらの護衛はやる気十分ですよ? そして、ユータロもストップな」
すでに俺の後ろで待機している祐太郎だけどさ、闘気全開でやる気満々なんだけど。
「黒峯、落ち着きなさいといいましたよね?」
「御言葉ですが、極光姫さまが頭を下げているのに、この男が冷静でいられるのが納得いきません。むしろ、この人間が極光姫さまに跪くべきです‼︎」
「落ち着いてと、私はいいましたよね?」
静かに極光姫が呟くと、黒峯の顔が真っ青になる。
突然脱力して膝から落ちると、その場に四つん這いになって呼吸を落ち着けようとしている。
「はぁ、黒峯さんって、貴方の言葉には絶対服従なのですか。それで、この反応なのですね?」
「お察しの通りです。公爵級魔族の言葉には、下位魔族はなかなか抵抗できませんので。実は、お願いがあって参りました……ご助力をお願いします」
「だってさ、ユータロ、どうする?」
「助けてほしいってことなら、話ぐらいは聞くさ。その狂犬を落ち着かせてくれるならな」
祐太郎は腕を組んで、黒峯を警戒している。
まあ、いきなり喧嘩腰だから仕方ないよね。
しかも極光姫の能力が隷属だからさ、警戒もするってものだよ。
「ええ。黒峯、私が命じるまでは、貴方は一切の武力行使を禁じます」
──ガバッ‼︎
極光姫のコマンドのようなものを聞いた瞬間、黒峯がようやく体を起こして立ち上がった。
「大変申し訳ございません」
「まあ、貴方がそういう性格なのは分かっています。そうですね、ここでは目立ちますから、場所を変えましょうか」
「ですよね〜」
ふと気がつくと、遠巻きに俺たちを見ている生徒が大勢。そして教師も数人、こっちを見ているではないですか、困ったものだ。
俺たちがな。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「それで、移動先が学校の近所のこことはなぁ」
人目を気にして移動した先は、学校の近所、西の里にあるフルーツパーラー。
懐かしい響きでしょ、フルーツパーラーですよ?
ということで、やってきました近所のパーラー。
あまり人目につかないようにと奥にあるテーブル席を陣取って、早速話し合いを開始しましょう。
「私は、このプリンアラモードをお願いします。ドリンクはメロンフラッペで」
「俺は、チョコレートサンデーと、ホットチョコレート、マシュマロを二つトッピングで」
「あ、あの、ホットケーキセットをお願いします、オレンジジュースで」
「俺はコーヒーゼリーで。飲み物はマンダリン」
「……卵サンド、コーヒーセットで」
そこの魔族、糖分取りすぎじゃね?
そして新山さんも参戦して、さらにテーブルの糖度が上がりまくりだよ。
「では、乙葉浩介に頼みたいことを説明しよう。仕事を斡旋してほしい」
「我が主人、極光姫さまは、自分に相応しい仕事を探しておられる。決して粗相のないように頼むぞ」
腕を組んでふんぞり返っている黒峯は、この際無視だ。なんでこいつは偉そうなんだよ?
横で頭を下げている極光姫を見習えよ。
「魔族で、仕事を探しているのか? そりゃまた、なんで?」
「なんでと聞かれても。実は、以前はな、小樽というところに住んでいたんだ。だが、住んでいた館の主人が亡くなってな。相続した息子は、私たちを叩き出したのだよ」
「酷いとは思いませんか? 我が主人は、鏡刻界のウィルスプ大陸にあるサンガリア魔王国の王家の血筋であるのだぞ? 偶々、二代目魔人王が裏地球侵攻を宣言した時に、一番槍を命じられて、こちらの世界に突入しただけである」
「そして運が悪かったのか、魔人王は敗北し転移門が閉じてしまいました。そこから先は、生きるために正体を隠し、この北の大地にやってきたのです」
そこからは、聞くも涙語るも涙。
寄り合うものがない小樽で、たまたま、二人を助けてくれた人がいたらしい。
その人が所有している屋敷の一つを無償で借り受け、彼の仕事を手伝うことで恩を返していたと。
それが、代々、遺言のように伝えられてきたのだが、つい先日亡くなった当主の遺言には、その部分が書き記されていなかったらしい。
それで、遺産相続した息子が、二人を追い出したのが今。
正確には、夏前にはどうにかしなさいと猶予期間を与えられたので、引っ越すために仕事を探して今、ここに至る。
「全く。あの馬鹿息子には困ったものです。せっかく我々が住んでやっているのにも関わらず、夏前には改築するから出て行けとは。我が主人のために改築するのかと思いきや、孫夫婦に生前贈与するとは、無礼千万にも程があるとは思いませんか?」
「いや、黒峯、お前が一番無礼だわ」
「原因の一つに、黒峯さんがありそうなのは何故でしょうか?」
「お前の態度だな、問題は」
「はっはっはっ。そんな馬鹿な……極光姫さま、その腐った死体を見るような目で私を見るのは辞めてもらえますか?」
あ〜。本当に、こいつが原因かよ。
「七月いっぱいまでは住んでいて構わないと、息子さんはおっしゃってくれたのですが、黒峯が話し合いの場で『無礼者、それならは、この館を無償でよこすのが道理ではないのか‼︎』と息子夫婦に怒鳴り散らしまして……」
「うん、極光姫、こいつ封印しよう。今後も同じようなことが起こるぞ?」
「はっはっはっ。この私を封印ですと? この時代にそのような術式が残っていると?」
──シュンッ
それじゃあ、まずは封印呪符を作成。
すると黒峯と極光姫の顔色がサーッと青くなったよ。
「ちょ、おま、なんでそんなもの作れるのだ?」
「知らんのか、俺は、転移門を封じた男だぞ? 極光姫さん、まず話し合いの前に黒峯を封印するで良いですね?」
「お待ちください。黒峯は、我が王家に伝わる魔剣が認めた騎士です。私がどうにか言い聞かせますので」
「そこまでいうのでしたら……ですが、仕事、ねぇ」
「あの、極光姫さんは、何ができますか?」
そう新山さんが問いかけると、極光姫は堂々と一言。
「お店番です。お世話になった方の家業をお手伝いしていまして、ずっと店番をしていました」
「俺は、姫さまの護衛だ。戦闘こそ、我が使命」
「店番かぁ……オトヤン、どう思う?」
「いや、どうもこうも、極光姫さんの仕事としては順当だと思うよ? この人、和名では『座敷わらし』っていうんだからね」
「「え?」」
ほら、二人ともメガテン……目が点になっているよ。気持ちはわからなくもないけどね。
「オトヤン、それ本当?」
「マジさ、だから困っているんだよ。その、先代さんは極光姫のことを先々代から聞いていたのだろうけど、今代は聞くまえに追い出しにかかったんだからなぁ」
「その極光姫さんの仕事場なら、繁栄間違いなしですか。その力を信じている方にとっては、喉から手が出るほど欲しいところですね」
「そうなると、おいそれと仕事の紹介なんてできないよなぁ。特技は店番と悪漢退治だからなぁ」
これは難しい案件。
さらにどの程度の能力かも教えてもらったんだけどさ、その気になればブラック企業すら、働き方改革レベルでホワイト企業にレベルアップできるらしい。
一部上場どころか、世界が誇る大企業レベルも可能とか。
そして、彼女を追い出した家については、揺り返しが来るというのだが。
小樽の商家は、二百年分の揺り返し覚悟レベルで災難が訪れるかもと。
「オトヤン、いっそ政治家になってもらって、目指せ総理大臣……彼女の能力で日本が幸せになる。まあ、冗談だけどな」
──ポン
あ、極光姫さん、その手があったか、みたいな顔で手を叩かないでください。
それは洒落になりませんし、そこまで能力強いのですか?
「……すぐに仕事を探すことはできないかもしれませんけど、うちでしたら部屋が多いので、お貸しできますよ? 幸いなことに、うちの両親も魔族の存在については理解していますから」
「それ、大丈夫なの?」
「あのおうち、広すぎるのですよ。二階は改装して、シェアハウスみたいに貸し出してもいいかなってお父さんも話していますし、改装が終わったら大丈夫ですよ?」
あ、あっさり解決か?
両手を合わせて感謝している極光姫と、その横で不満そうな黒峯。
お前は、どこまでダメな魔族なんだよ。
「私としては承服しかねますなぁ。その小娘の家と申しましたが、たかが庶民のすまない迂闊だった」
──チャキッ
俺はフォトンセイバーを、祐太郎はブライガーの籠手を、そして新山さんは浄化術式をそれぞれ展開していた。
さすがにこの状態では不利と分かったのか、黒峯もひらに謝罪している。
「しかし、私は商家以外の場所では、それほど力を発揮しません。せいぜいが家を守護し、強度を高め、老朽化を防ぎ、家主に幸せを届けるだけです」
「はい、お願いします」
がっちりと極光姫の手を握る新山さん。
これで文句はあるまいよ、黒峯さん。
「では、早速、ご案内をお願いしていいかしら? 部屋を借りて加護の移譲をするだけなのですけど」
「では、今日は極光姫さんと黒峯さんを連れて、このまま帰りますね」
「あ、俺も帰るから途中までは一緒に行くわ、ユータロは?」
「俺は寄り道。じゃあな」
ということで、この話は無事に完了。
俺と新山さんは、魔族の二人を連れて帰路につきました、めでたしめでたし。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
妖魔特区、札幌テレビ城前。
ふと疑問ができたので、俺はオトヤンと新山さんと別れて、白桃姫の元にやってきた。
さっきの極光姫の話を聞いていると、本当に人を幸福にする加護を与える力があるのかどうか、疑問に感じたから。
「よお、白桃姫……って、何をしている?」
なんでテレビ塔広場にブルーシートを広げているんだよ?
しかも、その西瓜はどこから手に入れた? ブルーシートのあちこちを押さえている、小さな丸い穴は何者だ? マスクメロンに手足が生えたような存在はなんなんだ?
「見てわからぬか? スイカ割りじゃよ?」
「そのスイカは、どこで手に入れたんだか」
「此奴らが栽培してくれておる。此奴らは、妾の召喚した使い魔じゃ。以前は使えなかったのじゃが、お主らの魔力玉を食べているうちに、妾の力も元気爆発してあったぞ」
す、すごいな。
そういえば、以前、織田が話していたよな。
魔法使いの体液を吸収すると魔法が使えるとか、変な妄想を垂れ流していたよなぁ。
俺も注意するか。
「そ、そうか。それよりもさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいか?」
「闘気玉一つじゃな」
「ほらよ……」
右手を強く握りしめて、手の中に圧縮した闘気を作り出す。それを白桃姫にポイッと放り投げると、横から飛んできた使い魔がパクッと食べた。
──ムキッ‼︎
すると突然、使い魔が光り輝き、巨大化した。
身長2mほどのマッチョマン、頭だけマスクメロン。
「フウォォォォォォォォォ‼︎」
どこから発しているのか分からない声をあげて、ポージングしているが。
「うお、取られた……築地や、投げないでちゃんとくれてたもれ」
「お、悪い悪い。ほら」
今度は直接、手渡しで渡した。
それを使い魔に取られないように、一口で飲み干すと、満足そうな笑みを浮かべている。
「デリシャスじゃ。それで、何が聞きたいのじゃ?」
「鏡刻界にある、サンガリア魔王国ってわかるか?」
「今は存在しない、過去の王国じゃな。確か滅亡した理由が、魔人王が大侵攻のために徴兵を行った時に、第一王妃が、次女に王家を継がせたいとかで王位継承権一位を持つ王女を送り出したという話があってのう」
そこからは、まあ、無惨の一言に尽きる。
極光姫の加護は本物どころか、洒落にならないレベルで強力だっらしい。
結果、転移門が破壊されて鏡刻界と裏地球の接続が切れた途端、王家は衰退を開始。
犯罪の多発と疫病、さらには王家が管理していたダンジョンがスタンビードを起こし、大量の魔物が街を襲ったとか。
その事態を憂いだ、王位を継承したばかりの女王が禁断の儀式を行い、失敗してサンガリア魔王国は巨大なクレーターのようになって滅亡したらしい。
──ゴクッ
「……とまあ、あくまでも物語として伝えられているのはこんな感じじゃな」
「あ、それは実話じゃないのかよ」
「実話としては、まだ続きがある。その加護持ちの王女が魔族大陸を離れたので、魔族が衰退を始めたという噂も……これこれ築地や、まだ話の途中じゃが?」
「いや、もうお腹いっぱいだわ、ありがとうな」
うん。
洒落になってないぞ、あの姫さま。
本当に新山さんの家に住ませて大丈夫なのか?
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




