第百十話・千載一遇、気は心(聞いてないよ、キャンプ千歳)
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深夜0時。
場所は千歳市・航空自衛隊千歳駐屯地。
現在は特戦自衛隊も、同じ場所に駐屯施設を持っている。
正確には、特戦自衛隊は専用の駐屯地を持たず、陸海空各自衛隊駐屯地を間借りしている感じになっている。
深夜に魔法の箒で駐屯地近くまでやってきたものの、内部は警備が厳重なために近寄ることもできない、普通はね。
「さて、本気で行きますか。Gogglesゴー、戦え大戦隊。インビジリング起動‼︎ 魔導機動甲冑に換装っ」
本日はフルモードでお送りします。
まだ魔力の回復が足りなすぎるんですよ、神威を身につけてからは回復速度は上がったようだけどね。
そのまま透明化の状態で、サーチゴーグルで俺の作った魔導具をターゲット指定してサーチ開始。
『ピッピッ……』
あれ?
反応している場所が違うのだが、航空自衛隊千歳駐屯地にいるんじゃないのか?
スマホの地図アプリとリンクさせて見ると、ゴーグルに表示されている目的地は陸上自衛隊東千歳駐屯地の北側区域・キャンプ千歳って表示されている。
キャンプ千歳ってなに?
「……まあ、考えていても仕方ないか。移動開始……と」
再び魔法の箒で目的地に向かって移動開始、ゴーグルの中では目的地が矢印表示されているから便利だよね。
これ、新山さんを探すときにも使ったけど、うまくやれば魔導カーナビとか作れそうだよね?
そんなことを考えつつ、陸上自衛隊東千歳駐屯地に到着したんだけどさ、なんだか物々しいわ。
サーチライトのようなものが点灯しているし、入り口にも大勢の自衛官が詰めているし、なによりも、外を定期的にハンヴィー(HMMWV)が走っているんだよ。
「なんでハンヴィー? 陸自ならパジェロじゃないの? ハーフトラックじゃないの?」
そう思って、目の前を通り過ぎるハンヴィーを見ていたら、運転席には海兵隊。
「……裏でアメリゴも繋がっているのか? ちょいと待て、キャンプ千歳?」
陸自の駐屯地の中にキャンプ千歳とはこれいかに?
おかしいと思ってスマホで調べたらさ、元々戦後には千歳駐屯地のあった場所にはアメリゴ軍が駐屯していたんだってさ。
それが返還されたけれど、土地はアメリゴ軍が暫くの間は借地として使っていたらしく、その後何十年かで日本に全面返還されたらしい。
北海道民だけど、こんな歴史知らんわ。
そして現在、何故か千歳駐屯地の中にキャンプ千歳が復活して、アメリゴ海兵隊が駐屯しているってどういうこと?
「まあ、考えても仕方ないか。突入開始‼︎」
箒に跨ってフワリと飛び上がると、そのまま敷地内に突入。
当然姿は消えているので目視確認なんて無理だし、サーチライトで照らされても影も形もないのは確認済み。
もっとも、赤外線センサーには反応してしまうのが玉に瑕だけどさ、まさかそんなものまで配備しているとは思えないからなぁ。
そのまま目的地である『結界制御装置』の保管されている建物に近寄ると、ここからが本番。
「この距離なら行けるはず」
空間収納から『対象転移の宝珠』を取り出すと、すぐにサーチゴーグルとダイレクトリンク。
この『対象転移の宝珠』は以前、怪しい洋館の中で新山さんが攫われたときに作った魔導具で、使い道ないよなぁって思っていたんだけど、ここに来て本領発揮。
この世界に、無駄なものなんて存在しないのだよ?
必ず何か意味があるのだよ?
「……ターゲット補足、アポーツ開始….」
元々、周囲の魔力を感知して動作するように作ってあるので、俺の魔力消費は起動用の1ポイントのみ。
やがて宝珠を中心に発生した魔法陣の中に、次々と俺の作った結界制御装置が転移してくる。
「ヨシ‼︎」
思わず現場猫のポーズをしつつも、すぐさま回収した魔導具は空間収納に放り込む。
そして最後の一つが回収出来たとき。
──ヴィーン、ヴィーン、ヴィーン
敷地内に警報が鳴り響いた。
「.……ひょっとして、解析中に回収したからバレたパターンかな?」
どうせ俺の姿は透明なので、余裕を持って箒に跨る。
あとは高度を上げて撤収しようとしたんだけど、不意に視線を感じた。
「なんだなんだ? 俺が見えるやつでもいるのか?」
上空から視線の先を確認すると、黒いロングコートに巨大なゴーグルを掛けた男が一人、俺をじっと見ていた。
「鑑定っ‼︎」
『ピッ……機械化兵士。コードネーム『ゴーグル』、特殊加工されたキルリアンレンズ内蔵ゴーグルにより、実態、霊体、精神体問わず認識することが可能』
よし、全力で逃走だ。
そのまま超高速で札幌まで戻ると、あとは自宅に戻ってのんびりとする事にした。
ゴーグルが俺のことを報告するかどうか。
まさか透明化した俺を見れる存在が人間世界にいるなんて思わなかったからなぁ。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
キャンプ千歳。
基地コード『FAC1002』は、本来ならば在日米軍基地の一つである。
様々な経緯により、1971年に『キャンプ千歳の共同使用等に関する日米政府間協定』が締結されたことにより、日米地位協定第2条第4項a(米軍管理・共同使用)に基づいて陸上自衛隊が使用していたこの基地の一角には、現在、アメリゴ海兵隊およびヘキサグラムの共同軍事研究所が設立されている。
設立からまだ一年と経っておらず、基地施設も突貫作業で作られてものが多い。
この基地の存在理由は一つ、『妖魔特区』の監視および『日本国における魔術研究機関の監視』がメインである。
つい最近、日本国特戦自衛隊との共同作戦により、北海道内の『ある地域における、特殊退魔法具の回収作戦』が行われたばかりである。
「……それで、回収した翌日に全て紛失とはどう言うことかな?」
キャンプ千歳司令官に就任したクロム・マンスフィールド大佐は、目の前に雁首揃えて縮こまっている部下に向かって叫んでいた。
まさか、作戦完了翌日に全てが紛失するなどあってはならず、こんなことが本国に知られた自分の立場が揺らいでしまう。
「何処の部隊が、この厳戒態勢のキャンプ千歳に潜入して、あれを奪い去ったと言うのかな?」
「サー、報告します。あれは奪われたのではなく、目の前で消滅したのです。恐らくは、万が一の時のための安全装置が備わっていたとしか思えません」
「それが今回の失態に対する報告なのだな? 我々でさえ知らない、そんな安全装置を日本の猿どもが開発していたと馬鹿げた報告を私がすれば良いのだな?」
激昂しているクロム大佐は、ただ叫ぶだけ。
折角、日本国特戦自衛隊から入手したデータを基に、あの『現代の魔術師』の作り出した魔導具を回収したにも関わらず、基地の監視網を潜り抜けられて奪い取られたのである。
研究員の言う安全装置など、クロム大佐は信用していない。
「ゴーグル、お前も外で監視をしていたんだろう? お前の能力なら、たとえ霧散化している妖魔でさえ見ることができたはずだ、昨晩、あの時間帯に、お前は何か見たのだろう?」
「サー・クロム。残念ながら私はなにも見ていません。万が一を考えての上空監視も強化していましたが、それでも侵入者の姿はおろか、形跡すら確認できませんでした」
なんてこったと、クロム大佐は頭を抱えてしまう。
可能性で言うなら、あの『現代の魔術師』が退魔法具を奪い返しにきたとしか考えられない。
その時、基地の戦力全てを駆使してでも『現代の魔術師』を捕獲するべく監視体制は強化していた。
にも関わらず、だ。
「……下がりたまえ。再度、ターゲットエリアの監視の強化を。同じところに再設置するとは考えられないが、必ず奴らは奪い返した退魔法具を設置し直す筈だからな」
その命令で、その場の全員が部屋から出ていく。
室内には、拳を握りしめて机を殴りつけるクロム大佐の姿だけがあった。
………
……
…
ふん。
なんで俺たち機械化兵士がアメリゴ軍の命令を聞かないとならないんだ?
俺たちは独立組織であり、アメリゴ軍とは協力体制でしかない。
命令系統は独立しているのだから、あのような小さい男の命令など聞いていられるか。
「それにしても……空飛ぶ箒か。良いなぁ、あれ。欲しいよなぁ」
自室に戻ったゴーグルは、人工眼球と接続されているゴーグルを外すと、ゆっくりとベッドに体を倒した。
「キャサリンやマックスの言う通りだな。この日本はスリリングで、ファンタジーが一杯ある……上手くいけば、俺の目も治るかもしれないからな」
機械化兵士で同期であったキャサリンとマックスは、新たな肉体を得てさらに、魔導セクションという新部門に転属になった。
そのときに聞いた話、日本の魔術師は、奇跡が起こせると言うのを聞いて、いてもたってもいられずに日本に転属願いをだしたのである。
身長2m12cm、体重158kg。
特殊チタンフレームにより強化された鋼の肉体を持つ親父は、乙女の心を持ったファンタジー大好きおじさんであった。
(誰が、現代の魔術師がいたなんて報告するものか。俺は、この日本で魔法少女に生まれ変わるんだ)
拗らせ機械化兵士、ゴーグルの未来は、明るいのだろうか。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
はい、翌日も遅刻しましたわ。
熟睡なんてできないし、そもそもアメリゴ海兵隊にヘキサグラムの機械化兵士がいるなんて想像もできないわ。
おっかなびっくり登校したけど、特に何か変化があったわけでもない。
授業の合間に呼び出しがあるわけでもなく、務めて平穏無事に放課後部活タイムが訪れました。
「オトヤン、昨日の夜に行ってきたのか?」
「応。しっかりと全て回収してきたわ」
空間収納から一つだけ取り出して机の上に置くと、瀬川先輩がハァ、とため息を吐いていた。
「万が一のために深淵の書庫を展開して待機していましたけど、問題がなかったようですね」
「それは知らなかった、先輩、申し訳ない」
「いえいえ、何かあったら連絡が来るかなぁと思っていただけですから。何事もなかったのなら良かったですわ」
「ま!まあ、何事もなかった訳じゃないんですけどねぇ……」
そこからは、昨日の出来事についての説明会。
キャンプ・千歳の存在、アメリゴ海兵隊とヘキサグラムを見た事、そして機械化兵士・ゴーグルに見つかったこと。
「そのゴーグルって、敵なのか? 味方なのか?」
「分かんないんだよなぁ。どっちなんだろう? もしも昨日の時点で、俺のことを報告していたなら今ごろは呼び出し確定だろうさ」
慌ててゴーグルで海兵隊をサーチしてみたけど、センサー範囲内には二人のアメリゴ海兵隊員の反応しかない。
「……いるわ、近所に。どうすっかなぁ」
「流石に深淵の書庫でキャンプ・千歳のデーターベースにアクセスするのも危険でしょうから。どうします?」
「まあ、俺が目的なら俺を追跡してくるだろうから、そのときに考えてみるわ。そんじゃ、次の目的地の大雪山について調べてみますか」
あまりのんびりしすぎるのも問題あり。
そもそも、あいつらが俺の魔導具を盗み出したりしなかったら、昨日からこの話し合いが始まっていたんだよ?
それを余計な仕事を増やしやがって、アメリゴ海兵隊許すまじ。
「話は戻しますが、大雪山にあるという退魔法具ですが、乙葉君の話では確か、『大雪山の退魔法具は金庫に預けてある』で宜しいのですよね?」
「そうです。九曜の計都姫にそう教えられましたけど、どこの銀行なのか分からないんですよ」
「大雪山系の銀行って、銀行ATMか郵貯しかないぞ? 貸金庫のある銀行は離れているんだが?」
流石は祐太郎、仕事が早いわ。
そんなこんなで皆んなで頭を悩ませていたら、先輩が深淵の書庫の中でポン、と手を叩いていた。
「可能性ですが、これはあり得るかもしれませんわね」
「え? 何かあったの? 古い屋敷に隠された金庫とか?」
「違いますわ。大雪山系旭岳には、金庫岩という奇岩が存在しますわね」
「「 それだ‼︎ 」」
思わずカエサルとエルヴィンのように俺と祐太郎は叫んでしまったよ。
そうか、岩かぁ。
確かに可能性は十分だよね。
「因みにですが、金庫岩の近くにはニセ金庫岩というのもありますから、間違えないようにしてくださいね。それと、もし来週末に向かうのでしたら、寒波が来てますから……」
「今年は雪が多いからなぁ。寒波はきついわ、恐らくはマイナス20度ぐらいまで下がるだろうなぁ」
「レジストコールドリングでも作る?」
「それもありか。未登録のリングがあるから、俺はそうするよ。オトヤンは?」
「俺は、もう作ってあるから」
以前、俺はレジストコールドリングは作ったのだよ。いくらなんでも、冬の北海道で活動するならそれなりの装備は必要だからね。
だけど、レジストコールドリングがあっても、万が一には備えないとね。
「入山許可は出さないとかぁ。冬山登山はかなり危険だろうからさ」
「要先生にも連絡入れておくか。当日は、瀬川先輩はどうしますか?」
「状況によるわね。新山さんのこともあるから、自宅待機で深淵の書庫を使ってフォローしますわ」
よし、これで概ねの方針は決定。
あとは関係者御一行に連絡を入れて、いざ、週末の旭岳‼︎
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
・今回のわかりすらいネタ
ガール○&パンツァー




