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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
3区画目 新婚時代
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光さす夢

「待ってくれモニカ、いやトワ?ああもう、嬉しいんだけど頭が混乱しているようだ。ともかく、君も着いて来れたんだね?」


 状況整理をする為に頭を抱えながら推定モニカになったトワへと話しかける。スズちゃんがラタン姉に対して慰めながらついさっきまであった召喚の事と未来の顛末のあらすじを始めてくれた。


 あの時僕にはうつ手がないと思っていたが、奇跡が起きてくれたのだろうか。だが、そんな希望を持った質問に彼女は首を横に振った。


「ついてこれたわけではないかと。あのあと、わたしはせいれいとしてのせいをまっとうしました」


 彼女曰く、僕達を見送ったあとは一人世界を彷徨ったのだという。どこにいっても生きた人どころか魔物すら居なくなっていた世界。記憶が正しければ2年くらい経った頃唐突に肉体が崩壊し、存在できなくなってしまったのだという。息苦しさを覚え明確な死気を感じた後、気がついたら今の状況だったらしい。


「それは多分、長い間誰からの信仰も失って寿命を迎えたせいですね」


 スズちゃんからの説明を一通り聞き終えて、目尻に涙を蓄えたラタン姉が話に割り込んできた。そしてトワのことを強く抱きしめる。トワは相変わらず嫌がる様子を見せたが、ラタン姉はそれをも包み込むように、強く、強く抱きしめた。


「トワ、ボクを嫌いになってもいい。母と呼んでくれなくたって仕方がありません。恨んでくれて当然なのです。ずいぶんと、寂しい思いをさせてしまいましたね」


 でも、と彼女は付け加える。


「都合が良いように聞こえるかもしれませんが、ボクがあなたを親として愛したいというのは許してほしいのです。あなたの知っている、ボクの分も」


「っ、やめてよ!わたしがまちがっているのなら、おやならまちがっているっておこってよ!」


 未来の世界で生きた分を含め、実際の精神年齢相応とも言える姿のトワは、自分のしている態度が不当である事をちゃんと頭では理解していた。した上で、それでも記憶している姿と重ねて見てしまい、これまた年相応に感情が制御しきれなかったのだ。


 前世を含めたラタン姉に対する色々な感情や思いがグチャグチャになって、トワの頬を伝い濡らしていく。


「もうおいてかないでよ!いっしょにいたかった、もっとはなしたかった!」


「ならこれからそうしましょう。ボクだってトワとまだまだ話したいのです」


 あやすように肯定しながら頭を撫でるラタン姉に、トワは口では「あたまをなでないで」と言いながらも、もうその手を押し除けようとはしなかった。もう離さないと言わんばかりにギュッとラタン姉へと抱きつき返し、そのまま顔を突っ伏して固まってしまった。


 スズちゃんがラタン姉に確認を取ると、どうやら寝息を立てているらしい。本当に幼子そのものだ。


「本来眠りを必要としない精霊とはいえ、肉体がまだまだ未熟ですからね。本来よりも早い受肉に加えて大量の記憶が流れ込んできたら処理しきれないのです」


 トワの綺麗な髪の毛に指を通しながら、慈しみをたたえた眼差しで我が子を眺めているラタン姉にドキッとする。


「ラタン姉、精霊って信仰を失っても死んじゃうの?」


「ありゃ、前に話したことありませんでしたかね」


 スズちゃんからの疑問にラタン姉はこちらへと顔を上げて返す。精霊が人々の願いから自然発生する事は知っていても、死についての話はちゃんと聞いたことがなかった気がする。


「ちょっと訂正させて貰うと別に人の願い、って訳でもないのですよ。意思を持つ生き物の願いなら発生し得るのです」


 曰く、魔物や動物の願いでも生まれる事があるらしい。その願いに対して誰かからの信仰がある限り、精霊は寿命が伸び続けるそうだ。だから精霊は生を受けたら誰かがその願いを忘れないようにと、個々の意思が渦巻く人間社会に紛れ込んで記憶して貰おうとするらしい。


 逆を言えば、誰からも忘れ去られ記憶されてなかったり、そもそも意思を持たない物に溢れてしまった世界では生きながらえる事ができないのだという。


「最も、寿命がほぼ無期限と言っても外的要因で死ぬ事もあります。まぁ、自我自体がなかったり、元より生死に頓着してない種族ですけどね」


 僕達と会った2年後にトワは寿命で死んだのだという。疑った訳ではないが死んでいく世界というのは言葉通りの意味だったようで、トワが各地で見てきたように、全ての生きとし生けるものが死に絶えていたのだろう。何もいない救いのない世界を一人、放浪させてしまった事に心が痛む。


「自分のことながら、間違えないで良かったと心から思いますです」とラタン姉は言う。そんな彼女へ、僕とスズちゃんは頷き合い二人がかりで抱きつく。


「ラタン姉、僕達にランタンを貸してくれる程の信頼を預けてくれてありがとう」


「その話、どこから……って、この子以外にいませんね。どうです?いかに精霊が自分達人間とは構造が違うって引きましたか?」


 普段はそんな様子を見せない彼女は、人外だからと嫌厭されるのではないかと怯えていたのだ。あちらでのモニカの発言然りつくづく親子なのだと思ってしまう。いや、化け物と言われて落ち込んだ自分だって、間違いなく例外ではないのだろう。


 やる事は山積みだが、今この時だけはこの手放したと思っていた手が触れ合う喜びを噛み締めよう。

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