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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
3区画目 新婚時代
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情報収集

「そういう訳だから、彼女にはそのままメッセンジャーとして戻ってもらったんだ」


 身内に蟠りを作りたくないのでラタン姉と2人きりになり、周りに気配がない事をしっかりと確認してから説明を行なった。彼女が持つ精霊の知識から人を操る能力なり魔法なりを知っているかもしれないと少し期待していたのだが、あいにく聞いたことがないとのことであった。


「それでもやっぱり腹は立つのです!イレーナ家が重臣として支え名家と呼ばれていたのはとうに昔のことだというのに、未だに過去の栄光に取り憑かれた亡霊がこうしてちょっかいかけてくるなんて」


 その気持ちはよくわかる。ラタン姉に限らず、僕だって手立てさえあれば直接ねじ伏せたい思いなのだ。だけど、引っかかることがあるのもまた事実であった。


 それは当代イレーナを名乗るフネイと、今回メッセンジャーとして人形を送り込んできた存在は果たして協力関係にあるのだろうか、という所だ。人形を遣わせた者、これを人形使いとでも呼ぼうか。


 人形の反応を全て信じる訳ではないが、彼女はこの仕事がどんなものか知らなかったという体でやってきた。おおよそ酒場かどこかでメッセンジャーの仕事依頼をフネイがかけて、仕事の内容を知った人形使いが人形を遣わせた可能性があり、フネイが人形使いを認識できているかはわからないのだ。


 この場合、人形使いは僕の事を既に知っていた可能性がある。僕自身、あまり行動を自粛してこなかったからどこから情報を聞きつけられていてもおかしくはない。コンタクトに丁度いいきっかけとしてはおかしくはないのだが、隙あらば情に訴えて手駒を潜り込ませようとしてくるあたり(これに関しては僕がそう思っているだけである)、仕掛け方があまり友好的でないように映る。


「どこかで不況を買ったかな。心当たりは、まあまああるか」


「であるならば、逆に今のグリムメンバーに関しては安心できるのではないですか?既に潜り込んでいるのであれば新たに潜り込ませようとする利点が浮かびませんし」


「それは確かに。だけど人を操れる効果がどんなものかわからない以上、今後も無事であるという保証はできないよ」


 人形化とはどうした時に起こり得るのか。あまりに情報が少なく、感染させたり近くの人へと対象を移すことのできる力ではないという確証がないため、これまで以上に仲間の状態をちゃんと確認しなければ取り返しがつかない事になりそうだ。


「仕方ない、わかっている方から情報を集めよう。現イレーナ家の情報を知ってそうなのはーーツムジさんか、リリーさんになるかな」


 クロムに繰糸の術を教えたのはリリーさんだ。もしかしたら人形使いにも心当たりがあるかも知れない。


「恐らく事情に詳しいでしょうリリーさんは多忙であちこちに行ってますから、そもそも捕まるかどうか……ツムジなら王都にも行きますし少なからず情報持っているでしょうね。ただ、これまでも頼り過ぎですからもうこれ以上の負担をあまりかけたくないですけど」


 迷惑だろうと背に腹はかえられない、困った時はツムジさんである。今日行くとは連絡をいれていなかったが、家を訪問する事にした。


「はいはーい、ってありゃ?キルヴィとラタンさんじゃん。どうしたの?」


 玄関で出迎えてくれたのはナギさんだ。書類仕事をしている時のように、髪を束ねた姿でドアを開けてくれた。


「突然押しかけてごめんなさいナギさん。ツムジさんと話をしたいんだけど大丈夫かな?」


「水臭いなぁ、家族なんだからいつでもおいでよ!と言ったものの用事があるのはお父さんになんだね。んー、今はちょっと申し訳ないけど」


 家の中にツムジさんの気配はあるものの、やんわりと断られてしまう。困り顔で代わりに自分では駄目だろうかと尋ねられたのでラタン姉と顔を見合わせた。ラタン姉もツムジさんがいるのは感じ取れているようだった。


「ツムジに何かあったのですか?」


「実はお父さん、ちょっと具合が悪くて寝込んでいるんです。だから会うのは控えてもらいたいかなと」


 長年の付き合いがあれば癖も分かるようになるもので、説明の時に一瞬だけだが耳たぶを触ったのを見逃さなかった。尤もらしい事を言ってはいるが、これは何か誤魔化そうとしている時の仕草だ。とはいえこんな付け入りやすい隙を見せるなんて、ナギさんらしくなかった。


「そんな、それこそ水臭いじゃないですか。ツムジさんにはいつもお世話になっているんですからお見舞いくらいさせて下さい」


 こう返すと彼女は言葉に詰まる。そこまでして合わせたくないとなると本当に何があったのだろうか?ナギさんはどうしたものかと暫く考えたのちに重たげに口を開く。


「心配かけないように誤魔化そうとしている訳じゃないし、言っていることはほとんど本当なんだけどさ。寝込むというよりは目を覚さないんだ、昨日から」


 それを聞いた瞬間、ナギさんを押しのけるようにしてラタン姉が血相を変えた様子で中へとかけて行く。目を覚さないと聞いて母さんの事が思い起こされたのだろう。


 僕としても少し前の遠征の時スズちゃんが目を覚さなかった事を思い返して、とても怖い気持ちになったのだが、ナギさんをおいて中にはいけない。詳しく説明してもらえないかと続きを促しつつ、ラタン姉の背中を追ったのであった。


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