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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
2区画目 少年時代
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書の中のスズちゃん2

「ここで一方は魔力を結び……結び続けるのかぁ。難しいけど、頑張らなくちゃ」


 ついつい独り言が多くなる。思えば私が1人で過ごしたことなんて、今までないのではないだろうか。いつも近くにはお兄かラタン姉、そしてキルヴィ様が居てくれた。焦ってはいけないけど、急がなくては。


 しかし、イブキさんは対抗する手段と言っていたはずだが、この形式を見るに攻撃魔法ではない。これは……結界魔法?


「ふむ?この書を取ったにしては珍しく澄んだ魔力の持ち主じゃのう?……ああ、ねがいの対価か」


 今この世界には自分以外誰もいないと思っていたのに聞こえてきた声に驚き、パッと振り返る。そこに立っていたのは腕に鳥のような白い翼が生え、犬の頭を持った褐色肌の、やや幼さの残る女の子であった。その目はキルヴィ様のように魔結晶に覆われていて、服装は透ける様に薄い装いをしており、肌の露出の多いそれは踊り子の様な服装であった。


「アードナー……」


 そう呼ばれ、しかし彼女は顔を顰めた。


「左様、じゃがその呼び名は好かん。マ族か、アミスで良い。それがワシの名じゃ。まぁ、何もないところだがゆっくりいたせ。外の話も聞きたいしのう」


 そう言うと、先程までは何もなかったはずなのに何処からか椅子とテーブルが現れ、湯気香るお茶が用意された。


 なるほど、このアミスと名乗る少女は、グラウンさんがダンジョンの中を好きに弄れていたようにこの空間を弄れる存在なのか。


 実際に会った数が少なく、まだマ族と言うものがよくわかっていなかったが、キルヴィ様やグラウンさん、そしてこの出会いから何となく理解が深まった。


 彼らはモノとモノの間、所謂「マ」を相手取って力を行使することができる実力者集団なのだ。知っている実例からは「空間」に影響するものしか見えてこないが、もしかしたら「時間」すらも扱えてしまう可能性がある。そこまで考えて、そんな実力者がグラウンさんが言っていた滅亡寸前までどうやって衰退してしまうのかが頭を悩ませる。


「うむ?どうかしたかの?もしやお茶は苦手であったか?」


 やや戸惑いを纏ったその言葉にハッとして、アミスさんに深く頭を下げる。いけない、考え事をしていて目の前の相手を放ってしまっていた。


「お言葉、感謝致します。しかしゆっくりとしている訳にもいかないのです」


「何やら訳ありの様じゃな……ううむ、人の心の中を覗き見ることは不得手じゃし、あまりしたくないのじゃが仕方あるまい。お主の心、聞かせてもらうぞ」


 そういうと、なんと彼女の耳がピコピコと忙しなく動いた。これはまさか、話に聞いたジ族がやったと言う心を読むという技なのだろうか。その疑問に反応したのか、顔を上げてこちらを見てくる。


「なんじゃ、心聞を知っとるのか。今を生きる心聞を使えるジ族とやらはエルフ種かぁ。ワシらの頃にはただただ長命であっただけの、なんの取り柄もない連中じゃったのだが、そんな適応変化していったとはの」


 アミスさんはくっくっと笑い、懐かしむような顔をしてから再び心聞を再開する。そして突然顔を顰めた。


「今までモヤが張っていたかのように気が付かなんだが、なにやら外から嫌な気配を感じるのう……よもや、使徒が、宗教が復活しておるのではなかろうな?」


「使徒?マ族の仲間ですか?」


 つい気になってしまい、手を止めてそう尋ねてしまった。すると彼女は顔を横にブンブンと振って否定して見せ、危機迫ったような顔を近づけてくる。


「違う!いや、お主ら的には違わないのじゃが、相容れぬ種族じゃ。そもそもワシらが何故迫害されたか知っておるか?結論から言うとそれは奴ら使徒が力に溺れたが故に起きた事なのじゃ。


 ワシらマ族が他種族に比べ個々に優れた力を持っておるのは知っておるな?


 その中でも己への狂信的な信仰の力を得た者が後天的に変化するのが「使徒」なのじゃ。


 奴らは例外なく傲慢で、選民思考の持ち主じゃ。人よりも優れたマ族、それよりも更に優れた存在であると自負し、自分達を頂点とした思想、「宗教」を始めた。森羅万象、全てを好き勝手に弄り、気に障ったものには「天罰」と称して破壊を、逆に媚びへつらう者には恩恵を与えて回ったのじゃ。するとどうなったと思う?


 短期間に気ままに起きる度重なる変化に土地は荒れ、気象は狂い、やがて外界から切り離されるようにこの大陸は孤立したのじゃ。うん?その顔はよくわかっておらんな……今は知らんがこの大陸の外にも、ちゃんと陸があり人がいた世界があったのじゃぞ?


 おっと、話が逸れたの。かくして、使徒及びそれを生み出してしまったマ族掃討が行われたのじゃ。その後のことは……死んでしまったワシよりも、お主の方が知っておるのではないかの?」


 頭を強く殴られたような気分になる。そんな話は生まれてこの方聞いたことがなかった。キルヴィ様程ではないがそれなりに本を読む、私であってもだ。いくつかある重要な部分すら、完全に失伝してしまっている。


 いや、本当に失伝なのだろうか?誰かが意図的に隠蔽した可能性は?知った上でこれを公開しない意図は?


 気がつけば私はすっかり思考の海に溺れてしまい、完全に手が止まってしまったのであった。

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