対ガーランド戦
「くははは、何を言い出すかと思えば仇討ちだと?という事は、アムストルの生き残りか!」
続け様に打ち込まれるモーリーさんの蹴りに対し、ガーランドは笑いながら受け流し、かわし、反撃の手を放ってくる。モーリーさんは最初こそその攻撃に対応できていたが、地力の差から次第に押され始めた。
「わかる、わかるぞ?この打撃、確かに重いがまるでなっていないという事が!お前、戦闘経験の浅いな?付け焼き刃の実力でこの俺に敵うと思っていたのか?身の程を知れ小娘がぁ!」
「きゃあ!」
「おっと、させませんよ」
強烈な反撃により仰け反り、無防備になったモーリーさんの胸元へと迫ったガーランドの鋭い爪を、拳に魔力を練りきったセラーノさんが割り込み受け流す。ガーランドは攻撃が流されたことを見て即座に距離をとった。
「私だって貴方に仕返しをしたいと思っている一人でね……モーリーさん、一つ共闘といきましょうか」
「助けていただき、ありがとうございます。ええ、お願いします!」
「ええい雑魚が何人こようと同じ事だ!貴様らに用なぞない、俺の目的は小僧の首ただ一つよ!」
そう言ってガーランドの姿がブレる。漆黒の風となった彼が2人をすり抜けながら僕に向かって駆け抜けようとしてーーその横っ面を捕らえたセラーノさんに殴り飛ばされた。二、三度はねてから体制を整えてこちらに向き直るも、殴られた箇所が燃え上がる。
「くっ、光属性だと!?その豚面に光属性、貴様ベルモンド家の者か!?」
「その通りですがいちいち叫ばないでもらえませんかね?貴方の声は、ひどく耳障りなんですよ……!」
「黙れ黙れ!ライカンスで、力がありながらも帝国に属すこともなく放蕩する裏切り者の一族が!」
その言葉に虚をつかれたのか、セラーノさんは一瞬呆気に取られた顔をするがすぐに鼻で笑う。何がおかしいとガーランドがまたも怒鳴る。
「いやいや、まさか現在進行形で帝国を裏切っている元将軍からそんな言及をされるとは思いませんで」
「ふん、私は良いのだ!なにせ今の我が君こそが、この世を統べるに相応しいお方だからな!貴様らも死後すぐにでも首頭を垂れる事になるであろう」
「やれやれ……こんな自己中心的な者が帝国の誇る元将軍とは。あの時、キルヴィさん達に頼らずとも帝国側ならばなんとかできそうだった物ですな!」
「貴様ぁ、ほざいたな!いいだろう小僧の前に貴様から血祭りにあげてくれるわッ!」
まさにガーランドがセラーノさんに飛びかかろうと踏み込んだ時であった。ギチギチギチッ!といつの間か巻きついていた鋼糸がガーランドへと食い込み、身動きを封じた。
「これが本当に将軍……?ノーラとは大違いだな」
鋼糸を操っているクロムが訝しむ様子でガーランドを睨む。モーリーさんの危機に怒って突撃する物だと思っていたが、どうやら新たに得た技で補助に回っていたようだ。
「きっ、貴様いつの間に!ええい、こんな細い糸など千切ってやる!」
「やれるものならやってみなよ?キルヴィ、こっちは任せろ」
そう言って力んでもがいてみせるが、千切れるどころか益々食い込み動きをさらに縛りあげていく。アンデット故に痛みは無いようだが、一部は骨にまで達しているように見えた。
「貴様ら、奇襲に加え、1人相手に寄ってたかってズルいぞ!おい、正々堂々と戦え!」
その言葉に、対する面々は苦笑すら返さなかった。もはやこいつの言っている事に聞いている価値などない。セラーノさんの光属性が他の2人にも付与されると、囲って攻撃を始めるのであった。
セラーノさん達がガーランドを相手にしているのと同じ頃、先ほど崩れ落ちた華撃隊員が腹から血と臓物をこぼれ落としながら再び立ち上がる。相変わらず生体反応は消えたままだと言うことはもうアンデット化したというのか!
「いた、いた痛いいいいい!隊長……ワタ、わたし、死んじゃったたたたたののの!?」
自分が死んだということを受け止めきれないのだろう。こちらに向かって尋ねてくるが、口からこぼれ落ちる血はその滑舌を濁らせる。
こうして問答ができるということは自我を持っているということだ。相手のうち誰かがこちらへの嫌がらせとして意図的にアンデット化させたのであろう。苦い顔をしながらリリーさんが応対する。
「……ええ、そうよエイナ。ごめんなさい」
「うら、恨めしい!まだ、生きたかったのにィ!お前が、お前が死ねばよかったあああ!」
言うが早いか、アンデットとなった彼女は剣を振りかぶりリリーさんへと斬りかかった。
「エイナ……本当にごめんなさい。貴女の身体を、言葉をこうも簡単に弄ばせてしまって!」
まさに一瞬。正面にいたはずのリリーさんは短槍を手にした状態でアンデット化したエイナの後ろに現れた。
「ァ……たイち……ごぶぅ……を」
崩れさる間際、こんな言葉が聞こえた気がした。それからリリーさんはギリっと歯を食いしばり、空の一点に視線を向ける。
「こんな事をするなんて不愉快極まりない。さっさと姿を現しなさい!」
「ありゃりゃー、お気に召さなかった?それはごめんなさいねリリーさん」
何もいなかった筈の空間にイブキさんが戯けた様子で現れたのであった。




