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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
2区画目 少年時代
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愛され隊長

酒場にいた華撃隊最後の1人を捕捉し、目の前へと縮地をする。奥まったところということもあり、自分の目前へとリリーさんがいきなりやってくるとは思っていなかった様子で、手に持っていたグラスを落とす隊員さんにリリーさんはにっこりと微笑んだ。


「良いものを嗜んでいるわね?この鬼にも少し分けていただけるかしら?」


目線を咄嗟に出口へと向かわせ、こちらへと椅子を蹴り当てて駆け出そうとする決断力は見事なものであったが、それは判断ミスだ。僕らが椅子ごときで怯む訳もなく、逆に蹴り返されてすっ転ばされる隊員。容赦なく背中を踏みつけられ、身動きを封じられて御用となった。一瞬の攻防に酒場内に沈黙が訪れたが、押さえつけているのがリリーさんであることがわかると、その手際の良さにワッと歓声が起こる。


「すごい人気ですね」


ここまででも、リリーさんだとわかると皆同じように歓迎した態度をとってくれていた。理由として、前回のイベリとの戦いだけでなく、隊長の人柄もあるんだ、と先に捕まえられ、酒場に連れてこられた華撃隊の人が教えてくれる。


「君がこの町で英雄と呼ばれているように、リリーさんはこの国全体での英雄だからね。隊の身内からするとおっかなくても、国軍の中では比較的庶民派だし、優しいからさ」


そういうものなのか。実力を持っていて多くの人に受け入られる……リリーさんは僕がなりたいものに先んじてなっているんだな。


「にしても、キルヴィさんでしたっけ?その察知能力に加えて制限のない雪遁走術は正直ズルいです。どうです?華撃隊に入隊しませんか?」


「それは良い案だが、既に振られてしまっていてな。彼にも思うところがあるということだ」


流れるような勧誘と、それを制すリリーさん。隊の雰囲気はこのやり取りでだいぶ掴めたし、居心地は悪くないと思ったが、僕にはグリムがある。まずは運用ができるかをやってみて、それでダメだったなら頼ってくれればいいと、リリーさんは後押しをしてくれた。本当に感謝しかない。


「よし、撤収だ撤収。酒場の皆様、お騒がせしました。今後とも華撃隊をどうぞよろしくお願いします」


ふんじばった最後の隊員を担ぎ上げ、マスターに金貨を数枚渡してリリーさんはそうお辞儀をした。マスターが「将軍の奢りだそうだ!」と叫ぶとまたも場内で歓声が上がる。


「おかげ様で手早く片付いた、ありがとう」


そういって親しげに肩に手を乗せるリリーさん。それを見て隊員がどよめく。


「え、あの隊長が男の子にデレた……?」


「嘘でしょう!?ガチレ……同性愛者だと思ってたのに!……いやおねショタ、おばショタか?そういうのもあるのか」


「隊長にも、春が来たんやねぇ」


最後の隊員はのほほんとした発言だったが、他の反応、特に2番目に反応を示した人が酷いものであった。それらの発言を受けてリリーさんは「はっはっは」と笑い声を上げたかと思うと、


「言い遺した最期の言葉はそれで良いか?」


と笑顔のままプレッシャーを解き放った。最後の隊員以外は真っ青になってガタガタと震えだしたところをみるに、恐怖に当てられているのだろう。


「先にその子だけ連れて宿に戻っていてくれないか?ちょっと、ほんのちょっとだけ教育をしてから帰るから」


という言葉とともに、酒場から出ていくリリーさん。隊員達は強制力が働いているのか重い足取りでそれについていった。その背中を「口は災いの元だなぁ」と何とも言えない感情を抱きながら見送り、残った隊員へと向き直る。


「ええっと、キルヴィ君やっけ?ウチ、本当にアレについて行かんでええんかな?」


少し戸惑った様子で隊員の彼女……サチさんはやや青みがかった髪色を揺らして尋ねてきた。うーん、強くなれるから個人的には行ってもいいとは思うけど、罰の意味合いが強そうだからなぁ。リリーさんに言われた通りに引き上げることを告げると、サチさんは「ふぅ」と息をついた。


「ありがと。いやー、ここはついていくのが当たり前やろって言われたらどうしようかと思ったわ。しかし、あの様子やとフルコースやろか……ほんまに死人が出てまうよ」


「それは大袈裟じゃないですか?けっこう疲れる事にはなるでしょうけど」


「そうやった、この子ら隊長並に異常なんやったわ。無理やからね?ここやったら、そうやなぁ……外壁を全力で走らされたりとか?」


それならさっきモーリーさんがやりましたよと言うと、「あの普通の子?嘘やろ……大丈夫なん?」と心配される。終わった後に恋人とイチャイチャしていたと言ったら「ないわー」とドン引きされてしまった。


「いやいやいや。え?あれか?武器こそ扱ってなかったけど昔なんかやってたとかそんな感じなん?」


「いや、普通のどこにいる町娘でしたよ」


「その町の人は子どもでも素手でオーガベアーと取っ組み合いできたり?」


流石の僕だって、子どもの時にオーガベアー相手にそれをやるのは骨であった。あの近くにオーガベアーはいなさそうであったが、いたとしても無理だろう。戦いとは無縁であったモーリーさんなら尚更である。


「いや、この町にいるような、戦闘もしたことがないごく一般的な町娘でした。……もっとも、今ならできるかもしれませんが」


その言葉に対してサチさんはまたも怪訝そうな顔をしてみせたのであった。

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