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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
2区画目 少年時代
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思わぬ襲来

屋敷の門前にでると、その人は壁を撫でながらひとりごちていた。


「ふむ!ここも懐かしいわね。外観は、ちょっと変わったかしら?あいつの屋敷ということを考えると腹がたつけれど、それでもエンジュとアンジュちゃんの思い出があると思えばその気持ちもおさまるわ」


「り、リリーさん!?」


「ああ、久しぶりだなキルヴィ君。あがってもいいかな?」


そこに居たのは、アムストルのあたりまで行っていた筈のリリーさんであった。馬で行った場合片道一ヶ月程かかるというのはあくまで冬季以外の話だ。道が道として機能しなくなるこの季節、とてもではないが往復できる計算にない。雪で視界も足元も悪い筈なのにどうやって往復できたのだろうか?ひとまず、外でずっと立たせるわけにもいかないので家へとあげる。


「不思議そうにしているね?まあ無理もないか。血は繋がってないとはいえアンジュちゃんの子だし、特別に教えてあげよう!」


ありがとうと言いながら屋敷へと入ってくるリリーさん。それはそうとして、色々な人に考えていることを当てられるが僕はそんなにも顔に出やすいのだろうか。


「いつか聞いた君の高速移動の技……縮地だっけ?があるように、私には雪遁走術というスキルがあるんだ。……自身の足首ほどの高さまで雪が積もっていて、なおかつまだ雪がふっている間だけで、適用範囲も私個人のみとひどく限定的だけどね」


「そんなスキルが……」


驚くと、何人か他にも使い手がいるから素質があって頑張れば習得も可能だと言われた。これはクロムが聞いたら喜ぶだろう。以前の戦争の時は初雪を降らせる雲を母さんが集めてしまったというのもあって、リリーさんのところには雪が降らず、使えなかったという。


「で、だ。アムストル、行ってきたよ。跡地といった方が正しいのかな?あそこはヤバイ。単騎では手に負えない」


本題とばかりにリリーさんが切り出す。以前の約束をちゃんと守ってくれているのであろう、リリーさんのプレッシャースキルは恐らく発せられて居ない筈なのだが、懸念事項もあり思わず息がつまる。


「手に負えないって……ヤバイとは、どう」


「城ができていたよ、死の匂いが渦巻く骸の城が。遺留品から見るに、あの骸は全部ドゥーチェの兵だね」


「城?」


骸といえば確かに防壁ラインに死体は放置してきたことになるが、それならそんな表現はしないと思う。防壁のあった辺りだろうかと尋ねて見るが首は横に振られた。


「言葉の通りさ。骨や遺留品を組み合わせて、もしくは装飾品として作られたひどく悪趣味な城。首がなかったり胸に大穴空いているような明らかに致命傷を負っているのに徘徊している、アンデットの兵隊までいた。しばらく観察していたけど間違いなく統率されて知識もある。そんな奴ら、生きてきた中で何件も報告事例がないから撤退してきた」


統率の取れた知力のあるアンデット。僕のMAPには反応しない、不死者の軍隊。それも、生前が精鋭の兵だとするならばそれは相当に恐ろしい存在だ。そしてなによりも頭が痛いのは、これをやってのける存在に心当たりがあり、それが身内だということだ。


「下手に手を出すとドゥーチェ軍みたいに奴らの仲間入り。かといって放置もできない。活発だったからね。外交通して周辺国総出で当たるべき大災害だよ、これ」


まさかウル兄さんを野放しにしたことで、このような事態を招いてしまうとは。あの時に情に流されず、イブキさんもウル兄さんも裁かなければいけなかったのだ。向こうはこちらが折れるのを見越しての自害未遂を行なったのならばイブキさんはこちらより一枚上手であり、飛んだ曲者だったということだ。思わず苦々しげな顔になってしまう。


そこでラタン姉達が僕を気にしてかこちらにくる。リリーさんの姿を認めると「うわっ」て顔をするラタン姉。


「おおカダンちゃん、すまないが邪魔をしているぞ」


「……それはひょっとしなくても、ボクの事を呼んだのですか?ボクはラタンなのです!」


「うん?あれ、間違えたのかな、すまない。奥の子はスズちゃんだったかな?そちらも息災そうで何よりだ」


「は、はは……リリーさん、お久しぶりです」


「ちょ、なんでボクだけ間違えるのですか!?」


暗い話も一転、途端に賑やかな空気に戻る。騒がしさにつられてこの屋敷に住んでいる人達が集まってきた。その中にはアンちゃんもいて、その姿を見たリリーさんは一瞬だけ何か口走りそうになったものの、皆に挨拶することにしたようだった。


「あれー?」


「あなたは……」


「おや、誰かと思えばニニちゃんじゃないか。そちらはカシスちゃん?はっはっは、思わぬところで久しい顔があるものだな」


どうやら2人はリリーさんと面識があるようだった。聞けば、ニニさんとはアムストルで。カシスさんは戦場であったそうだ。


「リリーさん、私結婚したのー。ほらほら、私とトトさんの娘もいるんだよー?」


「そ、それはおめでとう……チィッ!」


「舌打ちがでかいのです!?」


ニニさんが抱えている子を見て大きな舌打ちをしながら、近くに寄り添って居たトトさんの方をギロリと睨むリリーさん。トトさんは訳もわからず蒼ざめてガタガタ震えているのを見るに、プレッシャースキルを限定的に向けているのだろうか。


「……で、カシスちゃんはそれ、どういうことなのか聞いていい?聞かないほうがいい?」


流石は戦乙女の精霊、カシスさんの状態をすぐに見抜いた。そして、敵対象となる相手がこの中にいないという事まで分かるようだった。視線が泳いだのと泣き腫らした目を見てふぅっ、とため息をつく。


「オーケー、わかった。私からは聞かない。けど、力になれるかもしれないから話したければここに居る間に相談してね」


「ありがとう、ございます」


心強い味方に思えたのか、カシスさんはまたも大粒の涙をひとつ、こぼすのであった。


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