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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
2区画目 少年時代
161/303

母と娘と再会と

「ナギさんとのお話は済みましたのです?」


2人は庭先に広げられた卓で、ヒカタさんとお茶をしながら待ってくれていたようだ。MAPによるとこの場にいないツムジさんはどうやら自分の部屋に戻ったようだった。良い香りが辺りに広がっている。


「ヒカタさんこんにちは。2人ともお待たせ。うん、おかげさまでお互いに話したいことは話せたかな?ありがとう」


「こんにちはキルヴィ君。昔はよく問題起こしていたのに、あの子とも仲良くしてくれてありがとうね……あらあら、この空間に私はお邪魔かしらね?」


伸びている袖をちらりと見て、そんな風に言われる。ナギさんの母親だけあって、いともたやすく見抜かれてしまったようだった。そうとは知らないラタン姉とスズちゃんは頭にハテナを浮かべている。


「えっ?そんなことはないのですよヒカタさん。ボク達ともっとお話ししましょうよ?」


「そうですよヒカタ様。皆でのんびりとしながらお話するなんて、素敵な時間だと思いますし」


さっきまでの自分は他者の視点から見るとこうなのか。「知らないだろうから付き合っている話じゃないだろう」と思っているのが僕には恥ずかしく映った。そんな僕の様子も見ながらヒカタさんはナギさんによく似た笑顔で続ける。


「そうねぇ、それは確かに素敵な時間でしょうね。とっても魅力的だわ。でも、遠慮しておくわ。だってせっかくの町でのデートのひと時ですもの、邪魔者はいない方がいいでしょう?」


「えっ?あぅえあ!?」


「なんで!?」


途端にしどろもどろとなる2人。ラタン姉なんか意味のわからない言葉を発した。みるみるうちに顔が真っ赤になっていくのにつられて僕の耳も熱くなってくる。


「うふふっ、その可愛らしい反応が見られただけでも私は満足だわ。さぁ、あなた達はここからが大変なのだし、それでいて面白い時間となるのだから。一刻も無駄にしないで楽しんでいらっしゃいな」


2人の疑問に答えずにそういって、僕達を門の外へと難なく押しやるヒカタさん。相変わらずその小さい体のどこにそんな力があるのかと場違いなことを感じてしまった。


「最低でも日が沈みかけるまではこの家に戻ることは許しませんからね?それじゃ、良い日を!」


お邪魔虫と自称しながら僕達を締め出すという、なんというかおかしな状況だ。厳重に門を閉められてしまった。その門に向かって必死に言い訳やら照れ隠しやらを並べる2人だが、MAPによるとヒカタさんはさっさと家の中に引き上げていってしまったようだった。……なんというか、行動力に関してはイブキさんもナギさんもヒカタさんを見て育ったんだろうなぁ。


因みに僕の力からすればどんなに閉ざされていようとも門の中に入ることは容易いのだが、冷静でない2人は気がつかないみたいだった。まぁ、いう必要性もないか。


「締め出されちゃったね。当初の予定通り町を見て回ろうよ?」


未練がましく門にすがりつく2人に声をかける。


「……はい!そうしましょうかキルヴィ様、こうして皆に作ってもらった時間がもったいないですしね」


スズちゃんはすぐに気持ちを切り替えてくれたようだったが、ラタン姉は「まさかヒカタさんにからかわれる日が来ようとは」と落ち込んでいた。一段と小さく見える後ろ姿が愛おしいものに見え、思わずその頭をポンポンとする。


「……うぅ、そんな風に優しくしないでください。しみじみ落ち込んでいられないじゃないですか、もう」


またも顔を赤く染めながらラタン姉はこちらに振り返ったのだった。



「はー、キルヴィ様の袖を少し見ただけでそんな風に見て取れるなんて凄いですね」


人もまばらな街の中を3人で歩きながら、先程のネタバラシをする。スズちゃんは右に繋いでいる手を上にあげてまじまじと袖を見ている。


「そんなにひっぱったつもりはなかったのですけど、言われてみれば伸びてますね」


左に繋いだ手の袖をクイクイと引っ張りながらラタン姉はもう反対の手で頭をかいた。それを見てスズちゃんも真似して引っ張り始める。


ナギさん達に言われて意識しているからか、今までどおりのこの流れも、当たり前で特にどうといった感想を持っていなかったのとても幸せに思えてしまう。


くい。


くいくい。


くいくいくいくいくいくい。


……2人とも、ちょいと引っ張りすぎではないかい?あーあー、首元までダルンダルンになっちゃってるんだけど。


そうこうしている間にオススメされたお店に到着する。おや、知っている反応が中にあるぞ?


「いらっしゃい……おや?姉さんがいるということは英雄殿じゃあないか。スフェンに戻ってきていたんだな?」


そこでは本屋のお姉さんと結婚した筈のあの兵士のおじさんが店番をしていたのだ。その手には作りたてで、美味しそうなお菓子が抱えられていた。


「お久しぶりです。兵士、辞められたのですか?」


「ああ、所帯を持ったからな。俺は親を早くに亡くした身だ、子供にそんな思いをさせないようにリスクの高い兵役は辞めさせてもらったんだ」


幸い、嫁さんが物知りだったし、賛成してくれたからこんな自分でも色々とやれる事が見つかったんだとおじさんは言う。まさかお菓子作りが1番向いているとは本人も思わなかったようだが。


「せっかくだ、出来立てを食べて感想を聞かせてくれないか?あんたらに食べてもらったとなれば店の箔もつくだろうしよ」


「僕とこの店の評価とに関係性があるかはわかりませんが、ナギさんにオススメされたのでそうさせていただきますね。2人とも、いいかな?」


「ええ、でも評価となったらいくら知り合いとはいえボクは贔屓せず辛口でいきますよ?」


ふふん、と胸を張るラタン姉。なんだその反応、ノリノリか。


「ラタン姉ったら、食べ物になると相変わらず目がないんですね。でもキルヴィ様好みの味だったら勉強させてもらおうかな?」


そんな様子を苦笑いしながらスズちゃんはそう答えたのだった。

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