そして訪れた夜
次に僕が目を覚ました時、空には満天の星空が広がっていた。皆はというと僕に寄り添うようにひとかたまりとなって寝ているようだ。無警戒と言える状態だが何事もなく無事目を覚ます事ができてよかった。MAPで周囲を確認をする。
ノーラ側の敵対反応は少数が散会的にウロついているだけのようだ。対してドゥーチェ側は会敵した位置からは移動したようだが見える範囲にまだ多く残っている。光の定規だけではインパクトが足らなかったのだろうか?
その時、ランタンがうっすらと灯る。言わずもがな、ラタン姉のものだ。特に何もしていないのにこうなるということは、もうすぐ目を覚ましそうなのだろう。せっかくなので起きる前の寝顔を拝見させてもらう。ギュッと閉じた目元が赤く腫れ、眉間にしわを寄せた顔。怖い夢でも見ているのだろうか、うなされていた。髪の毛は汗でじとっとしている。依然プレゼントしたリボンと髪留めは毎日つけてくれているようで、渡した身としては嬉しい。
いつも心配かけてしまってごめん、ラタン姉。手が自然と伸び、その頭を撫でる。そこでラタン姉の目がパチリと開き、僕の方を見た。すぐに手を引っ込めようとするも、掴まれる。
「……何してたんですか、キルヴィ?」
寝起きだというのに意識はしっかりしているようで、僕の手を握ってくる。
「ラタン姉の寝顔を見てただけだよ。そしたらなんか、頭を撫でたくなっちゃって」
そういうと、少し間を開けて僕の手を頭の方に引き寄せられた。頭をグリグリと押し付けられる。撫でろということだろうか。
「……なら、撫でればいいのです。キルヴィもやっとボクを労ってくれる気になったんですねぇ」
強すぎず、優しめに何度も撫でる。ラタン姉は嬉しそうに目を細めた。う、ううん。意識してやるとなんだか恥ずかしいぞ。
「ってもう夜ですか!?いつの間に寝てしまっていたんでしょうか」
突然の大声で、寝ていたクロムとスズちゃんもむずがりながら起きる。僕も耳元だったので頭がグワングワンした。
「あっ、ごめんなさい。ところで、あのおじさんはどうしたのですか?どうやら近くにいないみたいなのですが……」
ラタン姉が寝てしまった後のことを話す。すると、「恐れていたことが起きてしまったのです」とラタン姉は頭を抱えてしまったのであった。
「キルヴィ、すでに起きてしまったことなので今更どうしようもないのですが、今後アムストルの人に近づかない方が身のためです。おじさんがどこまで周りの人に影響力があるのかはわかりませんが、今彼らにはボク達は第三の敵として映っている筈です」
そ、そんな。僕の頑張りは、無駄だったというのか。
「努力は必ずしも報われるとは限られないという事です。誰かのためと思っても空回りしてしまうこともあるのです。……人の世で生きるって難しいのですよ」
「じゃあ、この後はどうしましょうか」
クロムが尋ねる。そうだ、この中ではクロムが1番アムストルに対して並ならぬ思いを持っているのであった。
「とりあえずここで夜を明かすのもなんですし、一度さっきの仮拠点まで戻って様子を見ましょう。ツムジ達とも合流したいですし……キルヴィだけ警戒されているだけであるならば、ボク達だけで行って試してみましょう」
「だそうだ、キルヴィ。留守番を頼めるかな」
頷く。少し悲しいが、僕のせいで他の皆も町には入れなくなってしまうのはなお辛い。
少し回復した魔力を使い、僕達は仮拠点まで戻ったのであった。




