対騎士戦
「ほう、大した奴だ!この数の騎士相手に1人で捌ききるかね!」
最初の防壁の牢も一部を食い破られ、騎士達がどんどんと出てくる。魔法弾と魔法罠、それから矢と投石の応酬をしているとどうやらリーダー格らしい例のエルフがそう笑う。子供の頃とは状況が違いすぎてさすがにいっぱいいっぱいだ。近くに来た騎士を棍棒で殴り捨て、囲まれそうなところを縮地で間合いを取る。
「それにただの汚い骨棍棒かと思えばなかなかの逸品のようだ、あの青年のように武器に振り回されていないな!」
ええいうるさい。少しでも黙らせようとリーダー格に魔弾の投石を放つも、どういうわけか軌道を察知した他の騎士に阻まれてしまった。リーダーの代わりにその騎士の頭が弾け飛ぶ。くっ、成功率の数字が高かったからすんなり当たると思ったのだが、防がれてしまうとは。
「馬鹿者め、無駄に命を使いよって!庇うのであれば体を張らずとも対飛び道具用の魔法壁をつかえばいいものを」
庇われた側がそんなことを言うのだから、庇った側は報われない。こいつら仲間をなんだと思ってるんだろうか。そんな心を読んだかのようにこちらをニタリと笑うリーダー格。
「理解できぬと言う顔だな?いちいち死にゆく者について考えているのでは、戦場では長く生き残れんのだ!利用し利用されるビジネスライク、それが我ら騎士における強みであり仲間の定義だ!」
なんだそれは!僕にはとても理解ができない世界だ。それについて考える時間も与えてくれない騎士達の猛攻が僕一点をめがけてやってくるのを自身に対しての球形防壁設置で阻む。
「展開までが恐ろしく早いな!いったいどういった仕掛けなのやら。だが、無限に作り出せるわけでもあるまい?」
武器による攻撃から一転、魔法での攻撃に移る騎士達。魔法の重ねがけにより頑丈に作った防壁をただの土塊へと変えられる。縮地が間に合わねば自分の魔法で死ぬところだった。
恐ろしく戦闘慣れをしている。これが、騎士。冷や汗が背中を走った。
とにかく冷静に戦おう。武器同士の打ち合いに乗ってはダメだ。リーチの差もあるが熟練の戦士達と素人の僕では技術面でも能力面でも力負けしそうだ。数的にも抑え込まれたらおしまい。となると、縮地であちこちに移動しながら得意の投石で数を減らすか。
「なるほど、懸命だな。自分の力量でできることを考えるか。確かにその移動を阻むのも察知するのも我々には厳しく、そして並外れた軌道と威力を持つ投石ならば魔法壁をも破りかねんからな」
先程から感じていたが、こいつ、もしかして本当に僕の心を読んでいる?エルフにはそんな能力があるのだろうか。
「はっはっは!私が心を読んでいることにようやく気がついたか。だが、惜しいな。ただのエルフにこの技は使えん!私はアードナーの血を引くジ族のオスロ・ダブリン!百聞のオスロとは私の事だ。私の力で貴様の心の声を聞いたまでよ!」
百聞のオスロと名乗ったリーダー。心の声を聞く?……ジ族、つまりは耳か!そういえば奇襲の際もこちらの行動を音で判断したといっていた。耳が良い血族とみて間違いないだろう。しかし、心の声を聞くとはどう対処すればいいのか。何も考えなければいいのか?
「必死に無心でいようとしているな?だが青い、実に青いな少年!それで抑えられぬのが心の声というものよ!」
なおも迫り来る騎士をさばきながら対オスロについて考えているこちらの必死な様子に、気を散らすかのような言葉を放ってくる。
「百聞の名は伊達ではなく、私のところには自然と世界中の情報が集まってくる。いい噂も、悪い噂もな。だが青髪の少年よ、そんな私が確かな実力者のはずの貴様については何も知らぬ。世間の噂にないのは不思議ではあるが、そのまま表舞台に出ることもなく沈むがよい!」
このままではキリがない。仕方がない、奥の手を使うか。そう思いながら縮地で陽動をかけつつ、まだ動ける騎士の大半を一直線上へと集める。
このまま無作為に放つのもアリだと思うがそれで勝てるビジョンが見えない。かといって攻撃を避けつつ、展開できるまでの時間稼ぎのことを考えた移動となるとなかなかに手間がかかる。それでも、ラタン姉達がこちらにたどり着きそうになるまでにはなんとか準備は整えることができた。
射線上には1番初めに囲んだ大勢を閉じ込めた防壁の牢。その防壁の一部を解除し、新たに左右を阻むように2列の防壁を展開してみせる。騎士にとって後ろは牢、前には僕という位置に縮地で移動した所で、どうやってか範囲から1人抜け出したオスロが訪ねてくる。厄介な、まさかまた読まれたか?
だがそんな思いとは裏腹に騎士達は僕めがけて突撃をしてきた。
「ふむ、何をしようというのか。逃げ場をなくしたつもりなのかもしれないが、先程同様この壁など破ることができるぞ」
どうやらオスロは完全には心を読めないみたいだ。僕の狙いを読まれなかった。これは好都合、その間に魔法陣を宙へ浮かせる。オスロはそこで初めて動揺してみせた。
「む!?いかん、それを放つ前に仕留めよ!届かぬと感じたら防壁を張れ!」
展開が終わる頃には騎士達はすぐ目の前まで迫ってきており、手にした槍が僕の胸元へと吸い寄せられていく錯覚に陥る。
「でも残念、そのあと一歩が遠かったね」
僕にとっての大技、光の定規を放つ。白い光が視界いっぱいに広がった後、残っていたものはほとんどいなかった。




