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MAP機能で世渡りを  作者: 偽りの仮面士
2区画目 少年時代
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死者蘇生

 墓穴を覗き、無くなっているものを確認する。骨となった母さんを見て、静かに眠らせてあげることができなく申し訳なさを感じた。


「一緒に埋めたあの像がないですね……」


 母さんが大事にしていた、羽の欠けた天使の像が見当たらなかった。あれは確か、ウルさんにとっても思い出深い品だったはずだ。


「こちらも、ウル君を入れたらしい棺と骨が見当たらない……もっとも、年月経ってるから判別ができないというのが正しいかもしれないが」


 こちらは土に還っていてもおかしくない年月が経っている。だが、そう考えたいところではあるが楽観視はできない。


「死者蘇生、ということですか?」


 クロムがそうラタン姉に尋ねる。


 死んだ者は余程のことがない限り生き返らない。これは魔法が存在するこの世界でもごくごく普通の話である。

 死者を媒介としたアンデットは存在するが、基本的に自我はなく生きている者に対して嫉妬と憎しみを持って暴れるだけのあれは元の生き物として生きているとはとても言えない。せいぜい魔物どまりだ。稀にグラウンさんみたいなアンデットなのに自我も自己抑制もできる存在もいるらしいが、グラウンさん自体規格外である。よってあてにならない。


 では、死者蘇生とは何か?それは一種の隷属魔法といってもいいだろう。死者に対し代償に生贄を支払うことで、自分に従うアンデットへとなってもらう魔法だ。眠りについた死者を無理矢理アンデットにするもので死者への冒涜であり気軽に行って良いものではない、現在ではどの国においても使ったことが他者にバレれば死刑も辞さない禁術中の禁術だという。


 その理由は過去、死者蘇生を使いアンデットを兵として使う血の流れない戦争が起きたらしい。聞こえはいいがその光景は地獄絵図であり、国民は休みなく争う音と地底からの恨みが込められた怨嗟の声が戦場から常に聞こえたそうだ。数多くのアンデットを維持するには沢山の命が必要となる。このままでは生贄にされるかもしれない、そして死んでからもこき使われるという恐怖から人々は国を離れて行ったそうだ。最終的にその国の王の血族が増えすぎたアンデットに食われ、国は滅んだという事を以前母さんに教えてもらったことを思い出す。


「十中八九死者蘇生だと思われます。ただ、噂では死んでから時間が経つごとに成功率は低くなっていくと聞いています。ウル君は死んでからだいぶ経っているのですごく成功率が悪いはず。成功したかまではわかりませんが……」


 そんなラタン姉の言葉に被せるようにツムジさんがぶっきらぼうに口を出す。


「したんだろうよ。低確率だろうがなんだろうが成功しちまったんだ。してなきゃ泣きながらでも諦め悪くここに居座り、今頃ここで俺達に何をしていたのか問い詰められてるはずだからな。あいつならそうする」


 それは親として、自分の娘ならこうするだろうと確信しての言葉であった。


「キルヴィ君、相変わらずイブキの事はMAPでは追えないのかい?」


 眉間に皺を寄せ鋭い視線でそう尋ねてくるツムジさん。残念ながら位置は拾えていない。首を横に降る。


「ツムジ、見つけてどうするつもりなのですか」


 先程からのツムジさんの様子から、不安そうにラタン姉がそう尋ねる。そこは僕もきになるところだ。険しい顔つきで、しかし多少の迷いがあるような言い方でツムジさんは答える。


「死者蘇生を使うものを出したのは、身内の恥だ。すぐに死者を解放させ、軍に引き渡す。裁判とは名ばかりのものが行われて……死刑となることだろう」


「そんな!死刑とわかってて軍に引き渡すなんて……ツムジ、あなたそれでもイブキちゃんの親なのですか!?」


 ラタン姉の悲鳴に近い声に対し、それを上回る声量でツムジさんも応える。


「親だからこそ!……親だからこそ、しなければならないこともあるんだラタン姉。一人では行かせないさ。行く時は俺も行く。娘にやってはいけないことを教えてこなかった、俺の教育が悪かったんだから俺の責任でもあるんだ」


 それは、彼なりのケジメの付け方なのだろう。この中で一番そうしたくないはずの人からそう強く言われて、僕達は黙るしかなかった。


「死者蘇生じゃない可能性は、あるんですか?」


 痛い沈黙の中スズちゃんが縋るようにそう尋ねる。だがラタン姉もツムジさんも首を横に振るばかりだ。


「それ以外の物で思い当たるものはないのです。でもアンジュの魔法のように本には纏めず口伝で伝えられる、世の中には知られてない魔法もあるので何とも言えないですけど」


 つまり他の可能性に関しては望み薄ということか。だが、無いわけでもないと。少しは希望が持てるだろうか。


「……少し、疲れたのです。気持ちを切り替えるためにも当初の予定通りそこで一休みしましょう」


 ラタン姉がどんよりとした顔のまま、屋敷の無事そうな所を指差してそう言う。重い足取りでそこに向かい、座り込んだ。ラタン姉がこの壁の内側に入った時からずっと灯していたランタンを置き、クロムが携帯食を出し、皆に渡して回る。クロム製なので美味しい筈なのに、今は何故だか味がしなかった。


「これから、どうするかなぁ……」


 ツムジさんがそう呟いた時、屋敷の中から床の軋む音。かすかな音だったがツムジさん以外即座に臨戦態勢に入り、音のした方を見据える。


「屋敷に余り手を加えたくはないのですが……いざとなったらキルヴィ、お願いします」


 ラタン姉がランタンの灯りを奥に向けながら小声で僕にそう告げる。はたして、音の主が現れた。


「もしかして、おきゃくさまなの?」


 屋敷の奥から現れたのは、あどけない顔でこちらを見てくる小さな女の子であった。想定外の存在に毒気を抜かれる。が、封印をしていた筈の屋敷で、MAPに反応を示さない少女がいるのは怪しすぎる。僕等は警戒しながらその子の方を見つめる。


「アンジュ!?えっ、なんで?」


 そんな時、ラタン姉が信じられないと声をあげたのであった。

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