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ダブル・デザイア 〜最強の力は神をも超える〜  作者: 真心の里
シン【神玉編】
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溶けた氷(シン編)

 

 シンはブルーに近寄り睨みつける。

 余裕のある顔ではない、完全に激怒した顔にブルーは後ずさる。



(なんだ…いきなり雰囲気がより禍々しさを増しやがった、魔力も異常なまで増幅してやがる、だがそれでも魔力の増量は俺の方が上だ、純粋な力なら勝てるはずだ)



 そう思ったブルーはシンに近づき、手を向ける。



「貫け、戦術級氷魔法【氷槍の雨】」



 地面と壁から氷の槍が生成されシンに向いて放たれる。

 シンは人差し指を立てながら両手を伸ばし魔法を発動する。



「固有魔法【魔消】」



 人差し指から放たれた魔法が氷の槍を粉々にした。

 そのことに驚いているブルーに三本指を向けシンが魔法を放つ。



「災害級闇魔法【混沌】」


「なにっ…!?」



 三本の指の先端から放たれた大きな黒い玉がブルーを包み込んだ。

 そして玉の中にいるブルーがグニャグニャと不規則に曲がる。



「ガァァァッ!」



 ※【混沌】…敵を黒い玉の中に捕らえ、重力で中の敵を捻じ切る魔法。時間がたつごとに消費魔力が増やす代わりに重力も増す。



(これはマズい……災害級を使えるとは思っていなかった…)



 ブルーは混沌の中で翼と両手を何とか広げ、魔力を限界まで溜める。



「アァァ!水の精霊よ…全てを……凍らせろ!災厄級氷魔法【氷世界アイスワールド】」



 ブルーを中心として凄まじい勢いで冷気が放出され、洞窟内を包む。

 地面は深くまで凍り、空気も冷やされ結晶化するほどの冷気の中心に合った混沌も完全に凍り、ブルーを解放した。



(はぁ…はぁ…災厄級を勇者でもない奴に使うとは……だが奴は魔法の勇者より強かった、ここで殺して正解だろ…)



 すでに殆どの魔力を使いきったブルーは地面に膝をつき、下を向いて、息を整えるために深呼吸をする。

 そんなブルーの前にゆっくりと降りる音が聞こえる。その音に反応してブルーは目を見開く。



(ありえない…あの距離で氷世界アイスワールドをくらったんだぞ…なんで…なんで…)



 ブルーは信じられないといった表情で顔を上げ、目の前にいる敵の顔を見る。



「何で…生きてるんだ!」


「……」



 至近距離で放たれた強力な一撃が直撃したはずのシンは無傷でブルーを見下していた。

 無傷な様子のシンにブルーは驚きよりも恐怖を覚えていた。



「なんでだ…なぜ無傷でいられるんだ…」


「猿の本気で人間が傷つく思うか?勝負で少し体温が上がってたんだ、冷やしてくれてありがとうな」



 ブルーはシンの言葉でようやく理解した。

 シンと自分の明らかな差を…猿という言葉は罵倒ではなくシンにとって事実だったのだ。



(こいつは勇者なんか優しいもんじゃない…純粋な強者、悪意のない悪意、心の底から自分以外を見下しているんだ……こいつを魔王城に向かわせてはいけない、今の幹部では全員で勝負を挑もうとも、傷一つ与えられない…なんとかして引きとめなければ)



 ブルーはシンをここに止めておく方法を頭をフル回転させ考える。

 そして何かを思いついたかのように目を見開き、シンの顔を見る。



(いかにこいつとは言え、洞窟の仕掛けは気づかないはずだ…)



 ブルーは残った魔力を手に集め何かをしようとする。

 それに気がついたシンはブルーの顔を覗き込む。



「猿がなにするつもりだ?」


「……」


「無視とは、言い御身分じゃないか、猿の癖に」



 シンはそう言ってブルーの顔面を蹴り飛ばした。

 ブルーは空中を舞い、地面を転がり壁にぶつかる。それと同時に、地上とつながる亀裂が閉じた。



「…残りの魔力で閉じ込めたか」


「はぁ…はぁ…これで貴様も終わりだ!この洞窟は中から出れないように魔法が組み込まれている!魔力を込めることによって発動するんだ!解除は外からしない限りできない、貴様も俺と共にここで死ぬんだ!」


「……」


「貴様がいくら強くともここからは抜け出せない!油断したな!」


「……」



 ブルーがいくら笑顔で馬鹿にしようがシンは真顔で無言を貫いていた。

 その様子を不気味に思ったブルーはシンに話しかける。



「なぜ何も言わない!」


「…お前が言ってる仕掛けは魔法を外側に通さないのと同時に発生する遮断魔法の一種だろ?」


「そ、それがなんだ」


「遮断魔法はすでに解除済みだ」


「なん…だと…?」



 シンの言葉が信じられないブルーは目を見開き口を開きながらつぶやく。

 そしてシンは左手の手のひらに魔法を発動させ、説明を始めた。



「お前の仲間にも説明したが俺の使う魔法には二つある。一つは普通の魔法だ、もう一つは魔法を形成する魔法陣を破壊…つまり魔法を無効化する魔法だ」


「魔法を無効化だと…」


「こんな風にな」



 シンは掌に発生させた魔法を、逆手で放った魔法で消滅させた。

 その現象を信じられないといった表情でブルーは驚いていた。



「それが本当だとしてもいつ無効化しやがった」


「何度も俺が猿に魔法をかわさせると思うか?」


「なるほどな…何度も避けられたのは壁に魔法を当てるためだったのか」



 シンに最後の切り札を読まれていたことに驚きよりも諦めの感情が芽生えていた。

 しかし、そんな様子のブルーは心の底からあきらめてはいなかった。



「無効化は本当のようだな…しかし、無効化したところで貴様の死は変わらない!なぜなら……」


「この洞窟は魔法が無くなった時に自動で崩れるようになっているから…だろ?」


「それも知っているか、諦めるんだな、ここは地下深く、崩れてきたら助かる可能性はゼロだ」


「そうかもな、閉じ込められたのが猿だったらな」


「なに…!?」



 シンの自信に充ち溢れた表情にブルーは反応する。

 それと同時にシンの魔力が今までと比べ物にならないほど増え、可視化できてしまうほどの魔力が全身に集まる。その異常な光景にブルーは言葉が出なかった。可視化できるほど濃密な状態の魔力を全身が覆う。その事象でブルーは規格外のシンの魔力量を知った。



「猿には勿体ない景色だ、死ぬ前によく見てろ」


「あ…ぁ…」



 シンは手をパーの形にして天井に両手を向ける。

 それはシンの本気の魔法を放つことを意味していた。



(魔法使いなら分かる…こいつの異常さに、こいつの魔法によって俺は死ぬ…最後に魔法使いとしての最高峰を見れてよかったというべきだろうか…)



 ブルーは死を悟ったというのにもかかわらず笑顔だった。

 それは魔法使いとして、戦うものとして、自分では至ることができなかった境地を見ることができたからだろうか。



「炎の精霊よ、無限の炎に包め、【無限のインフィニティフレイム】」



 シンの詠唱省略で放たれた魔法により、両手から凄まじい大きさの蒼い炎の柱が凄まじい勢いから発射される。

 その炎の熱によりシンを中心とした半径200mの大きな穴が地上と洞窟をつなげた。



「……」



 シンの周りは魔法で守られていたが少し離れていたブルーは影響をもろに食らい、灰すら残っていなかった。

 それを見たシンは無言で少し悲しそうな顔をしていた。そんな顔をしている自分に気がついて首を振り真顔に戻った。



「まだ甘さが残ってんのか…あまり感情を高まらせるのはよくなさそうだ…」



 シンはそう呟き、風魔法で洞窟から脱出し、次の目的地に向かった。

 その目的地は魔王城…敵の本拠地だった。




 ◆




 魔王城の中心にある大きな部屋、8人の幹部と魔王用の椅子が大きな机を囲んでいた。

 その椅子は二つの席を除いて埋まっており、座っている者たちは真剣な表情で魔王を見ていた。



「魔王様、いきなり招集して何かあったのですか?」


「…ブルーが死んだ」


「「「…!?」」」



 魔王の言葉に三人の幹部が信じられないといった表情をしながら椅子から立ち上がった。

 そして魔王の近くに立っている銀紙の音の魔族…シルバーが座るように指示を出すと、三人は謝罪をして静かに座った。



「仲の良かったレッドとオレンジが取り乱すのも分かる。他の者たちも取り乱していないだけで冷静ではないはずだ」



 そう言って赤髪の魔族が他の幹部たちを見る。

 幹部たちは冷静を装っているが、拳を強く握っていたり、歯を食いしばっていたりと怒りを静かに露わにしていた。



「ブルーを倒すほどの敵だ、グリーンの情報から推測するに勇者が動き出した」


「勇者!?勇者は俺らが殺したはずです!」


「お前たちに入っておく必要がある。これについてな…」


「それは…!?」



 魔王は模様から神玉を出し、幹部たちに見せる。

 幹部たちは知っていた、神玉を、それが勇者の資格だということを…だから魔王が持っていたことが信じられなかった。



「これは勇者の資格だと教えていた神玉だ、だが本当は違う。今まで嘘をついてしまい申し訳なかった」


「魔王様が頭など下げないでください!」



 魔王がそう言って頭を下げると、幹部たちは慌てて頭を上げるように言った。

 幹部たちの言葉で魔王は頭を上げて説明を開始する。



「許してくれて感謝する。これは神玉、神の力を手にすることのできる代物であり。神たちの戦争の切り札になる存在に渡す者だ」


「神たちの戦争?」


「そうだ、神たちはなにも人間側にだけいるわけじゃない、俺たち側にもいる。魔王になるというのは神玉に選ばれるということだ」


「ま、待って下さい!話に追いつけません」



 赤髪の魔族が話を慌てて止める。

 それと掃除に幹部たちも同意の意として小さく静かにうなずいた。



「細かく説明すれば、俺たちが戦争している理由は神たちの戦争の代行をするためだ」


「神の代行?この戦争のきっかけは人間が魔族を迫害して始まったのではないのですか?」


「それは神が指示を出した狂信者の行動だ、つまり戦争が起きるように神たちは動いているということだ」


「それでは私たちは掌で踊らせられていたということですか?」


「いや、神たちの計画ならば今変わった。この事実は魔王だけ知っている、他に話そうとすれば死ぬような呪いが掛かっている」


「では魔王様はなぜ…?」


「それは呪いが発動しない条件がある。それは勇者ではない神玉使いが戦争に関わることだ。おそらくだが【勇者解放】を持っているだろう、しかし勇者の資格は【勇者解放】を持っていることではなく、種族が勇者となることだ」


「ブルーを殺害したものは勇者でなく神玉使いだと」


「そう言うことだ」



 魔王の話した真実に幹部たちはそれぞれで処理する。

 理解した者もいればできない者もいたが、魔王の言葉は誰も疑っていなかった。



「では魔王様も【勇者解放】を使えるのですか?」


「いや、俺の場合は魔族だからな【魔王解放】だ」


「なるほど…意外と安直なんですね」


「そんなもんだ」



 魔王は少し笑いながら答える。

 ピンク髪の女の魔族の言葉により重かったひゃの空気が少し軽くなる。



「俺がこれを言った理由は次の魔王に神玉を理解した部下が必要だからだ」


「次の魔王…まさか、魔王様死ぬつもりですか!?」


「…俺とシルバーはこちらに向かってくる神玉使いを迎え撃つつもりだ、神玉との相性が悪かった俺は多分負ける。俺が死ねば新しい魔王が生まれる。しかし、俺の思想を受け継ぐ魔族が魔王になるためには少しの時間が必要だ。それまでそいつを守って欲しい」


「魔王様が戦うなら私たちも…!」


「いや、お前たちは必要だ、停滞していた世界が動き出した今、戦争の事実を知る者が多く必要だ」


「ですが…!」


「これは最後の命令だ!」



 魔王の強い言葉に幹部たちは無言になり俯く。魔王の最後の命令…細かい説明は無くとも身を隠せという意味は分かった。

 そして幹部たちは小さく返事をして、部屋から黙って出ていく。魔王は見送ると立ち上がり壁を壊す。



「シルバー本当に良かったのか?」


「私にとって魔王様は命より重いのです。それに守る命が次の魔王様、つまり魔王様の子どもなら」


「死んだ魔王の子孫は迫害されるのを知っているだろ?それに魔王になる素質があるかもわからない」


「迫害の指示を出すのは残った部下です。幹部たちがするとは思いませんね。ホワイト様は才能に溢れています。心配せずとも魔王に選ばれます」


「そうか、幹部として置いておいたんだが実戦経験は摘ませられなかったな」


「実戦経験は無くともしっかりしております。魔王様が死ぬといった時も感情を押さえていました」


「それもそうだな」



 魔王とシルバーが笑いながら壊した壁から外を見て話す。

 自分が統治している土地を見ながら魔王は悲しそうに話す。



「先代魔王の恐怖政治の被害者である魔法の勇者には謝らなければならないな」


「パープルの勝手な判断とはいえ家族までも無くなってしまいましたから許してもらえるでしょうか」


「許してもらうまで何度でも謝るだけだ」


「魔王様らしいですね」



 魔王がシルバーの顔を少し見て、また正面を向きなおした。

 そして魔王がシルバーの肩に手を伸ばし、自分の方に寄せる。



「最後まで魔王様と呼ぶのか?」


「…私たちの子供は立派に生きますよね、あなた」


「当たり前だ、ヘル・ゴールドとフィーラ・シルバーの子供だぞ」


「そうですね、あなた…最後に…」


「あぁ……」



 シルバーが目を瞑りそう言うと、魔王…ゴールドがやさしく唇にキスをした。

 唇を離すと、シルバーはゴールドの目をまっすぐ見る。



「愛しています、あなた」


「俺もだ、シルバー」



 二人は笑顔は互いに向け合い、壁から飛び降りる。

 そして二人は綺麗な翼を開き、向かってくるシンを迎え撃つ。




 ◆




 シンが魔王城を視認できる距離まで来ると、待ち構えている二人の魔族に気がつき急停止する。

 そしてニヤニヤとした表情で二人に話しかける。



「お前が魔王か…横の奴は直属って奴か」



 レイドは悪い笑みを浮かべた表情でふたりをマジマジと観察する。



(こいつ本当に人族なの?私たちのような悪とは違う、こんなにも悪意に満ちた生物がいるなんて…)



「魔王にしか用が無いんだ、戦術級雷魔法【雷槍】」


「…っ!」



 シンが前触れもなくシルバーに二本指を向け魔法を放とうとする。

 その瞬間に、何かを察知した魔王が腕を掴み地面に向けさせた。



「これに反応するとは流石は魔王だな」


「いきなり攻撃とはまるで先代魔王だな」


「先代魔王とかどうでもいいんだ、お前の神玉をくれよ」


「…やはりこれが目的か、お前のような奴に渡すわけにはいかない」


「くれないなら奪うだけだ」



 シンが関節技で掴んでいる腕を解かせて距離を取ろうとする。

 魔王はそうはさせまいと解かされた腕とは逆の手で腕をつかもうとする。



「休憩は終了してるんだ、見えてるぜ」



 魔王の行動を読んでいたかのように簡単に腕を弾き距離を取る。

 そして、三本指を魔王に向け魔力を集める。



「戦術級闇魔法【闇渦】」



 シンの目の前に黒い渦が出現し、魔王を引き寄せた。

 引き寄せられた魔王はあらがうことを諦め、その勢いを利用し攻撃を放つ。

 その攻撃を読んでいたシンは魔王の拳を避け、そのまま地面に向かって投げた。



「さて…やろうか、猿の王様」



 シンが笑顔で地面に着地した魔王を見る。

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