嘘(レイド編)
レイドは深呼吸をして集中力を高める。
「ふぅ…よし、行くぞ!」
レイドは覚悟を決めて攻撃範囲に侵入した。
今までと違い、プロテクターはゆっくりとレイドに近寄って来た。
「へぇ…いきなり攻撃仕掛けるのは騎士道に反するってか?」
レイドはそう言いながらプロテクターに近寄る。
そして両者ともに攻撃が届く範囲まで歩み寄った。
「絶対に先制攻撃はしないのか?」
「……」
「なら、遠慮はしねぇ!戦術級剣技【百繋ぎ】」
レイドが近くで睨んでくるプロテクターに攻撃を仕掛ける。
無駄のない百回の攻撃をプロテクターは全て弾いた。
「やるじゃねぇか…上級剣技【重力斬】」
「上級剣技【重力斬】」
弾かれた勢いを殺さずに体を回転させて重い一撃を放った。
その攻撃をプロテクターは同じ剣技で受け止めた。
「戦術級剣技【瞬連斬】」
次はプロテクターがレイドに攻撃を仕掛けた。
「戦術級剣技【全流し】」
プロテクターの早い連続攻撃をレイドが華麗に流した。
その流した攻撃により、地面に剣の傷がついた。
「やっとまともな戦いができそうだ、戦術級剣技【牙狼剣】」
「戦術級剣技【牙狼剣】」
またもやレイドの攻撃を同じ技で受け止める。
そのことに違和感を覚えながらもレイドはさらに攻撃を加えていく。
「戦術級剣技【一点突き】」
同じ攻撃で止められないように剣先をつきたてて攻撃した。
その瞬間、プロテクターも同じ技で剣先に剣先を当ててきた。
「な、なにっ!?」
予想外の防御の仕方に驚きの表情が隠せなかった。
そして、レイドは距離を取りプロテクターを観察しようとした。
「上級剣技【断斬】」
「チッ!観察させてくれねぇか、上級剣技【燕返し】」
プロテクターは距離を取ったレイドに対して距離を詰め攻撃を仕掛けた。
その攻撃を手首を上手く使い下方向に向けた。
「上級拳技【刃脚】」
レイドが足を上げてプロテクターを攻撃した。
その攻撃をガードすることなくプロテクターは受け止めた。
「なにっ…上級拳技【列脚】」
剣を地面に突き刺して体を回転させて二発蹴りを入れる。
その攻撃もプロテクターは動くことなく受け止めた。
「かてぇ…」
「戦術級剣技【重連斬】」
レイドがそう呟いた瞬間、プロテクターが攻撃を仕掛けた。
一発目を距離を取って避け、二発目以降を受け止めた。
「半年ぶりのまともな勝負だ、戦略級剣技【万楊斬】」
「戦略級剣技【流天】」
レイドの不規則な攻撃をプロテクターが下から一発で全て流す。
剣を打ち上げられたレイドは無防備な状態になる。
「戦略級剣技【蝶舞斬】」
「な…めるなっ…!戦略級剣技【千本桜】」
レイドは攻撃が当たる瞬間に受け止め防御した。
プロテクターが蝶が舞うように剣を振るのに対し、レイドは凄まじい数の斬撃を生みだし応戦した。
「これでもダメか…ならっ!」
レイドは一度距離を取り、プロテクターが自分から向かってくるように仕向ける。
「災害級剣技【蜂音斬】」
「戦略級剣技【灯籠流し】」
凄まじい速度で剣を振る音が蜂の音に似ている剣技をプロテクターが受け止めようとするが段々と押され始める。
最初は拮抗していたが数秒後にはレイドが一方的にプロテクターを斬っていた。
(この野郎、斬っているのに全く効かねぇ)
鎧にすら傷をつかない防御力に驚きながら剣を振り続ける。
しかし、体勢を立て直したプロテクターのパンチによって攻撃の手が止まる。
「ぐあっ…!」
「上級拳技【重拳】」
少し体を曲げてしまったレイドに対して腹に重い一撃を入れた。
肺に合った酸素をすべて吐き出し後ずさる。
「俺の攻撃は…効かねぇ…くせに…」
「上級拳技【重拳】」
前かがみになっているレイドの顔面に振りかぶった重い一撃を放つ。
何回転もしながら攻撃範囲の外まで吹き飛んだ。
「いってぇ…よくもやりやがったな」
レイドはすぐに立ち上がり口の血を拭って再度プロテクターに攻撃を仕掛けた。
剣を大きく上に振りかぶりプロテクターを斬った。
「わかってたさ、効かないのはな!」
剣が弾かれた瞬間に剣から手を離し、剣が宙を舞う。
そして空いた両手でプロテクターの両足をつかんで引っ張り、プロテクターを宙に浮かせる。
「固いならずっと殴ってやるぞ!」
レイドは宙に浮いているプロテクターの頭をつかみ地面にたたきつける。
そして、馬乗りになって顔面を殴り続けた。
「戦術級拳技【重連拳】」
プロテクターの防御力は凄まじく、鎧に傷一つつかない。
そしてプロテクターは下からレイドを攻撃して吹き飛ばした。
「ぐっ…!」
レイドは空中で飛んでいた剣をつかんだ後、体勢を立て直した。
重力を利用し、プロテクターを攻撃した。
「戦略級剣技【突貫】」
レイドの突きがついにプロテクターの鎧に傷を付けた。
しかし、それは傷をつけただけで、貫くまではいかなかった。
「これでもダメか…」
「上級拳技【連打拳】」
プロテクターが下から連続で攻撃をする。
それを回避したレイドは鎧を貫くための方法を考える。
(あの鎧は物理的には厳しそうだ…精神攻撃でもしてみるか…)
レイドは剣をしっかりと握り距離を詰めた。
「精霊剣技【精神切り】」
レイドはプロテクターの精神を攻撃しようとした。
しかし、その剣技は発動することが無く鎧にはじかれてしまった。
「なにっ…なぜ使えない!」
「戦術級剣技【一点突き】」
予想外の事態に動揺したレイドにプロテクターが攻撃を放ち、体を貫いた。
レイドは何とかあらがい、腕を体から抜いてヒールスポットに向かった。
(まずい…この傷は深すぎる…)
レイドは急いで攻撃範囲から出ようとしたが追いつかれ地面にたたきつけられた。
反撃することはなく立ち上がり、無我無心でヒールスポットに向かった。
「クソが…!上級拳技【瞬歩】」
プロテクターが放った攻撃を【瞬歩】の加速で避け、ヒールスポットに転がり込んだ。
その瞬間にプロテクターがレイドを追うのを止め、定位置に戻った。
「はぁ…はぁ…なんとか間に合ったか」
レイドは負傷した場所を押さえながらそう呟いた。
そして目を閉じ、深い眠りについた。
二日目…完全に復活したレイドはプロテクターの目の前に立つ。
「昨日あんだけ殴っても先制攻撃はしてこないか、騎士道って奴かねぇ…」
レイドはそう呟きながら頭をかく。
そして目の前の敵を睨みつけてボディーブローを入れた。
「なら…この攻撃で終わらさせてもらうぞ!」
レイドはそう言ってプロテクターの頭をつかみ地面にたたきつける。
そして空中で縦に回転して頭にかかと落としを決めた。
「胴体の硬さは認めてやる、でもな…」
起き上ったプロテクターがレイドに攻撃を仕掛ける。
その瞬間にレイドは剣を鞘から抜いて攻撃を仕掛ける。
「何回も同じ場所に攻撃すりゃ、少しは効くだろ!戦術級剣技【重連斬】」
レイドの重い連続攻撃がプロテクターの首に直撃する。
関節部分をちょうどよく狙った攻撃にプロテクターがひるむ。
「やっぱり関節部分が弱点か…」
レイドはさらにプロテクターの首の関節に攻撃を加えていく。
プロテクターも反撃するが、その攻撃を全て避けながらまったく同じ場所に攻撃を加えていく。
「これは骨が折れそうだ」
レイドは華麗な剣さばきでプロテクターの攻撃を後ろに受け流し、攻撃をさらに加速させた。
耐久力はあるが、速度はさほどないプロテクターは昨日よりはるかに速いレイドに翻弄されていた。
(体の調子がいいのか…前より遥かに速く動ける)
レイドは自分の身に起きている現象を自分なりに分析をする。
それをするほどレイドには余裕があった。
(日が経つごとに確実に成長し、苦戦していたはずの敵を一日で圧倒できるようになる、明らかに成長の速度が異常だ…)
『やっと気がついたかい?』
ロキがいきなりレイドに話をかける。
(原因を知っているかのような口ぶりだな)
『それはそうだよ、だって知ってるからね』
(……お前、また何か俺にしたのか?)
『…今い教えなくても、もう少しでわかるさ』
そう言ってロキとの会話が終了した。
その間にも攻撃は続いており、レイドの速度も上昇し続けていた。
「災害級剣技【蜂音斬】」
剣技により攻撃に緩急がつき、さらにプロテクターを圧倒し始める。
鎧についていた傷も段々と深くなり、切断も時間の問題だった。
(思えば猿の時からおかしかったんだ…俺は勇者の時に才能の上限に達したはず、何週間、何ヶ月経とうが急激な成長はしないはずなんだ)
レイドは自分の成長に不信感を抱く。
しかし、そんなレイドの不安とは反対に攻撃の速度はさらに加速した。
(まだ余力がある、今の俺なら…)
レイドはそんなこと思いながら最大火力の技を出すためにプロテクターから距離を取った。
「本当に俺の能力が上がってるなら使えるはずだ…災厄級剣技【大陸切り】」
レイドは両手で剣を持ち上から下へと全力で剣を振り下ろした。
地面が綺麗に真っ二つに割れプロテクターのガードした両手ごと縦に真っ二つにした。
「……っ!手が痺れてまともに動かせないか…」
自分のふるえている両手を見ながらそう言った。
そして自分の攻撃によってできた目の前の跡に思わず笑ってしまった。
「これが災厄級…ようやく…ようやくレイヴの場所までたどり着いたぞ…!」
昔、完敗した男の顔を思い浮かべてそう叫んだ。
『もう災厄級を手にしたのか…随分と早かったね、神玉と同化するのが』
「同化…?」
『そうそう、だからこの空間はもういらないかな』
ロキはそう言ってレイドの前に現れる。
そして手を鳴らすと、今さっきまでいた場所は真っ白になった。
「これは一体…?」
『元々この空間はね、ある人が創りだした君の訓練施設なんだよ』
「ある人だと?」
『多分そろそろ来ると思うよ』
ロキのその言葉の数秒後、白い空間が崩れ去り、元の世界に戻った。
そして神秘的な遺跡の後ろから長髪の中性的な人物が現れる。
「はじめまして、レイド・ロキさん、僕の名前はルージュ・レル・オーラ」
ルージュはそう言って手を目の前に出した。
その手を握ってレイドも挨拶をする。
「どこのどいつだか知らないが、はじめまして」
レイドが何の躊躇もなく手を握った理由には自分の力に自信があったからである。
それは傲慢なわけではなく、ルージュからはまったく力が感じられなかったからである。
「それで俺がいた空間がお前の創ったものだって聞いたんだが、説明してもらえるか?」
「そうだね、僕とロキは君がルシファーと戦ってる間に出会ったんだ、それで今仲良くしているわけだけど質問は?」
「まてまて、…疑問だらけなんだが、まずロキがお前を信頼した理由、あの空間を作ったのが本当にお前なのか、そして俺になぜ協力するのかだ」
レイドは一回頭を整理してルージュに三つ質問をした。
「ロキは僕について何も言ってないんだ」
『うん、その方がわくわくするじゃん』
「じゃあ最初から教えてあげるよ」
レイドは一切警戒心を緩めることなくルージュの顔を見ながら話を聞く。
そんなレイドの様子を見て、ルージュは口角を上げて話し始める。
「先に謝るけど、僕はロキに深く関係した能力を持って生まれた、つまりロキに作られた生物なんだ」
ルージュの言葉に眼を大きく開きレイドは驚いた。




