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ダブル・デザイア 〜最強の力は神をも超える〜  作者: 真心の里
レイド【神玉編】
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歩み(レイド編)

 

 太陽が沈み月が昇り、暗闇に包まれ、植物までもが寝る深夜。

 ザーザーと降る雨の中、包帯を巻いたレイドがヴァラーグの死体の前で俯いている。



「……」



 何分、何時間、寒い雨の中、レイドは一歩も動かずただ無言だった。

 その後ろには魔法で雨を弾きレイドを心配そうに見つめるアニムス。



「……」


「レイド…」



 アニムスはレイドのことを心配そうな声で呼んだ。

 しかし、レイドはなにも反応せずに無言を貫く。



「……」


「レイド…帰ろ?」



 アニムスはそう言ってレイドに近寄り声をかける。

 その時に見えたレイドの顔は怒りの表情と涙であふれていた。



「レイド…」


「……俺のせいだ」


「…今回は誰も悪くない」


「……」



 レイドは静かに天を見て昔を思い出す…

 自分の家族を魔王に処刑された日のこと、リック達に村を壊された日のことを。



「まただ…また力が無かったからだ…」


「……」


「あの時も、その前も、今回も、全部…!全部、俺の力が足りなかったからだ!」



 レイドは血が出るほど拳を強く握り、涙か雨がわからないものを頬に流した。



「…少し力を手に入れた程度でなんでもできるように勘違いする、失敗するときはいつもそうだ、俺の愚かさが失敗を呼ぶ」


「……」


「なにが神玉だ、なにが世界を作り直すだ、大事な仲間一人も救えなねぇ奴が、一体なに言ってんだ!」



 レイドが横にある木を叩き倒しながらそう叫んだ。

 アニムスはそんなレイドにさらに近寄り話しかける。



「ねぇ、レイド…私達は信頼できる関係になった?」


「…信頼しているさ、信頼しているからこそ辛いんだ!これ以上死んでいくのが!俺の力不足で死んでいくのが!」



 レイドは立ち上がりそんな質問をしたアニムスに当たるように叫んだ。

 しかし、アニムスは後ずさることなくレイドの目を見続けた。



「自分の夢を語るだけ語って、それを叶える力もありやしない!そのクセして自信だけありやがる!

 その自信が大事なものを…大事な存在を目の前から消していくことに気づかずに、人のせいにして被害者面しやがる」


「……」


「これが愚かって言うんだろうな!俺は…俺は……」



 無言のアニムスに見つめられながら力無く木を叩いたレイドが俯きながら小さい声で言う。



「…これ以上、これ以上仲間を失いたくない」


「……」


「俺は…静かに暮らす。神玉を捨てればどうせ100年ほどの人生だ、辛いことがあろうとも仲間がいれば耐えられる。

 この世界で生きる辛さより、仲間を失う辛さの方がはるかに辛い」


「…レイドはそれでいいの?」


「それでいいかだと?……いいわけがないだろ!」



 足に力を入れ地面を踏み砕きがら叫んだ。



「本当は変えてやりたい!だがな…お前たちを思って言ってるんだよ!」


「私たちのためって…私たちはそんなこと望んでない!」


「…ッ!?」



 レイドが叫びながら言うとアニムスは大声で反論した。

 今まで聞いたことのないような声にレイドは驚き後ずさりした。



「レイドは私たちを使って夢をあきらめる言い訳にしてるだけ!」


「ぐっ……」


「私たちはレイドと一緒に夢をかなえるためについてきたの…夢を諦めさせるためついてきたんじゃない!」



 今まで自分の意見を強く主張してこなかったアニムスの初めての主張にレイドは押されていた。



「本当に私たちの為なら、夢を諦めないで!」


「俺は…もう…お前らに夢を見せれるほど自信が持てない…」



 アニムスがそう言うとレイドはさらに下を俯きながらボソッと呟いた。



「じゃあレイドは私も信じられない?」


「…アニムスは信じている、だから死なせたくないと…」


「私はレイドを信じている、レイドが自分を信じれなくともレイドが信じている私がレイドを信じている」



 アニムスの質問でレイドは顔を上げて悲しい顔をしながら説明する。

 そして顔の上げたレイドの目を見ながらアニムスはそう言った。



「自分自身が信じれないなら私を信じて、レイドを信じている私を信じて」


「……」


「夢への歩みを止めようとしないで、意志さえあれば歩き出せるから」


「…だがその歩みで仲間が死んでいく」


「歩くのには犠牲はついてくる、蟻を踏むことを躊躇っていたら歩くことはできない」


「……」


「ヴァラーグが命をかけて守ったレイドは静かに生きるレイドじゃない、夢を目指すレイドだよ」


「…!?」



 アニムスの言葉にレイドは目に生気を取り戻して大きく開いた。



「蟻役をヴァラーグは自分の意思で選んだ、だからもう誰も死なない、ヴァラーグの為にもレイドは歩みを止めちゃダメ」



 アニムスの言葉を聞いたレイドは涙を拭いてアニムスと逆の方向を見た。



「アニムス…」


「なに?レイド…」


「一度止まった俺でもついてきてくれるか?」


「…当然」


「不可能に近い夢を向かう愚かな俺についてきてくれるか?」


「もちろん、とても大きな夢に向かうカッコいいレイドに私はついて行くよ」



 レイドは涙を見せまいと天を見ながら鼻をすする。

 そしてそれと同時に夜が終わり雲が無くなり晴れになった。



「…ダサい姿見せた」


「仲間の死で泣くことはかっこ悪い事じゃない」


「…あー、その、なんだ?」



 レイドは振り返り謝るとアニムスは笑顔で答えた。

 そして恥ずかしそうにアニムスの顔を見てレイドは言う。



「ありがとう、そしてよろしく」


「うん!よろしく、レイド」



 レイドはアニムスに改めて挨拶をする。

 アニムスはさらに笑顔になり満面の笑みで答えた。



「…反逆の力、今こそ我の力になりすべし、剣の力に変へ、その力を貸したまへ【魔剣練成】」



 ヴァラーグの死体に手を置いて【魔剣練成】を使用すると、段々と死体が剣に変わった。

 その剣はヴァラーグの鱗と同じ色で凄まじい力を持っていた。



(ヴァラーグ、近くで見ていてくれ、お前が命をかけて守った男が世界を変えるところを)



 レイドはそんなことを考えながらその剣を鞘にしまい、腰にかけた。



「行こう、レイド」


「あぁ…帰ろう、仲間のもとに」



 レイドとアニムスはそう言って転移魔法で隠れ家に戻った。

 そして…



(必ず世界を変えてやる…過去をやり直すんじゃない、こいつらが幸せになれる…そんな世界に変えてやる)



 レイドはさらに決意した目で遠くを見た。

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