我の強さ(レイド編)
ウルが引いた線にハデスが侵入する。
その瞬間、ウルが抜刀しハデスに攻撃を仕掛けた。
「聖剣技【聖斬】」
その攻撃をハデスは右手で簡単に受け止めた。
剣で切ったのにもかかわらずハデスの腕が傷つくことはなかった。
「くっ…!聖剣技【聖連撃】」
「その程度で我が倒せると思ったか!」
ウルが凄まじい速度でハデスを切りつける。
しかしその攻撃がハデスの体に届くことはなかった。
「な…!?聖拳技【聖脚】」
攻撃が終わると同時にさらに足を勢い良く振りハデスの顔を襲う。
ハデスはそれをいとも簡単にかわし、ため息をついた。
「貴様、いくら中途半端とはいえ【勇者解放】を使えるであろう。なぜそれを早く使わない」
「……」
「使わずとも我に勝てると思っているのか」
ハデスがウルの腹にパンチを打ち込む。
ウルはぎりぎりでその攻撃を受け止め反撃をする。
「聖拳技【聖拳突き】」
「そんな小手先の技が通じると思うのか」
反撃を避けられたウルは少し体勢を崩す。
そのウルに蹴りを入れて近くの木に吹き飛ばす。
「ガッッハッ…!」
ウルは背中を強く打った衝撃で体内の空気の全てを吐きだした。
ハデスはあきれたように再度ため息をついてウルに問いかける。
「貴様…なぜ【勇者解放】を使わない、正義の勇者なら相手との力量がわからないわけでもないだろうに」
「ケホッ、ケホッ!…使わなくても十分なんだよ」
「…力量も測れんほど未熟だったか」
ハデスはウルに近寄り両手で猛攻を仕掛ける。
ウルは両手でガードしその猛攻に耐える。
「どうした!これでわかったであろう!早く使え!」
「グッ…!」
ハデスの猛攻は終わりを知らないかのように休まず続く。
ウルはその攻撃になすすべがないように縮こまって防御に徹している。
「なぜ使わん!早く使え、我を楽しませろ!」
「グッ…!もう少し…あと少しで…」
「このまま死ぬのか、貴様は!」
「早く…まだなのか…?」
ハデスの問いかけを無視しながらウルは呟く。
ハデスはさらに攻撃のスピードを上げてウルを追い詰めていく。
(…ウル!みんなもう逃げたよ!)
ウルの頭の中にどこからとも知れぬ声が聞こえてくる。
「…よし、もう気にしなくて済むな!」
ハデスの攻撃をすり抜けてウルの攻撃がハデスの顔面にあたる。
それで一瞬攻撃が止み、ウルはそこから一瞬で距離を取る。
「ほぉ…なるほどな、孤児院にいる孤児が気になっていたのか」
「ばれたか、絶対にあいつらは攻撃させないぞ!」
「安心しろ、貴様が死ぬまで我が手を出すことはない」
「その言葉信じるぞ…お前が見たかった力、見せてやる!」
ウルが剣をしまい詠唱を開始する。
「正義の力、今こそ解放しろ【勇者解放】」
「……」
ウルの腕の模様が光り出し、穏やかな空気が周りを満たす。
その影響か鳥が張ると勘違いし鳴きだし、動物はリラックスして寝てしまった。
「これが、お望みなんだろ?」
「その力だ…我の相手にふさわしい」
「後悔すんなよ、自称神様!」
ウルの今までとは比べのにならない速度の蹴りがハデスを襲う。
ハデスはそれを避け、反撃に移る。
「その力、試させてもらうぞ、【破壊拳】」
「そんな大振りが効くと思うか!聖拳技【光脚】」
ウルは地面に剣を刺し、それを軸に体をひねらしてハデスの攻撃を避けた。
そして空中にいる状態のままハデスの顔面に蹴りを入れた。
「…軽い、軽いぞ!【破壊連】」
「勇者の力、目に集まり、その力を発揮せよ【聖眼】」
凄まじいほどの連続の攻撃をウルはぎりぎりで避ける。
ハデスの攻撃中にウルが何回も攻撃を入れるもハデスはひるむことなく攻撃を続ける。
「チッ!聖剣技【光斬】」
ウルは痺れを切らし刺さっている剣を引抜きハデスを切りつけた。
ハデスは後ろに飛びその攻撃を避けるとともに距離を取った。
「お前避けたな?流石にお前もこの攻撃は受け止められないってことか」
「…くっくっくっ、がっはっはっ!」
ウルが馬鹿にするようにそう言うと。
ハデスは一瞬だけ真顔になりその後に大笑いした。
「何がおかしい!」
「がっはっはっ!…すまんすまん、戦えるのが楽しくてな、久しぶりでたまらんのだ」
「戦いたいなら腕自慢の大会にでも行けばいいだろう!なぜここを狙う!」
「そんなものは簡単な理由だ、我がそうしたいからだ」
ハデスがそう胸を張って自信満々に当たり前だろうといった態度でそういう。
ウルは怒りをあらわにして剣を強く握る。
「ここはお前の娯楽で壊していいような場所じゃない!みんながようやく手に入れた幸せなんだ!」
「それがどうした?」
「お前のように自分勝手な理由で捨てられた子たちがたくさんいるんだ!お前みたいな自己中がいつもあの子たちを不幸にするんだ!」
「そうか、それは運が悪かったな」
「なっ!?」
ウルが大声でハデスに訴えかけるもハデスはまったくもって興味ないような態度を取る。
それでさらに怒りを増したウルは声を荒げて言う。
「お前は何とも思わないのか!何の罪もない子がこんな不幸に合うことを!」
「何の罪もないか…それは違うぞ、あやつらにも二つ罪がある」
「い、一体あの子たちに何があるて言うんだ!」
「それはまず弱い罪だ、弱くなければ不幸を打ち壊していけるからな」
ハデスの暴論にさらに怒りを爆発させる。
しかし感情のコントロールをギリギリのところでしていた。
「そして二つ目は生まれてきた罪だ、クズが生まれてくるから、弱いのに生まれてくるのがいけないのだ」
「き、貴様ぁ!それを本気で言っているのか!」
「そうだ、奴らは生まれてきたことが罪なのだから我の気まぐれで殺しても何の問題はない」
「こ、このクズやろぉ!」
ウルはハデスとの距離を一瞬で詰め殺意に満ちた攻撃を仕掛ける。
ハデスはそれを受け止め話しかける。
「我は殺したいから殺すだけだ、誰にも文句は言わせん」
「お前みたいな!お前みたいなやつがいるからあの子たちは!聖剣術【聖瞬斬】」
ウルが攻撃を仕掛けるもその攻撃を空を切った。
そしてハデスはウルを蹴り飛ばした。ウルはしっかりと受け身を取りすぐに臨戦態勢をとった。
「お前はここで殺す、俺が必ず!精霊たちよ、我の体を使いその力を解放せよ【精霊体】」
ウルが天に剣を仰ぎながら詠唱を唱えると体に空中に出現した赤、青、緑、茶色、白の球が吸い込まれていく。
そして吸収が終わると同時に体から光を発した。
「ほぉ…【精霊体】か、まだ楽しませてくれるとは上質なクズだったか」
「言っていろ、お前の最後の言葉くらいは聞いてやる」
光が収まると銀髪になったウルがそこにいた。
そしてハデスに剣を向けてそう言った。
◆
「アリア、何か得体のしれない強大な奴が近づいてきている。他の子たちをもしもの時を考えて地下に逃がしてくれ」
ハデスと戦う少し前に自分に言われた言葉を思い出す女性…
孤児院の職員であり、ウルと同じ2期生のアリア。
「アリアお姉ちゃん、なんでここにいるの?」
アリアに小さい子供達が心配そうに話しかける。
そんな子供達を心配させまいと抱きしめて頭をなでる。
「今ね、ウルお兄さんが少し強い動物と戦っているみたいなの、でもウルお兄ちゃんはみんな知ってるように
すーんごく強いから心配しないで」
「じゃあ、今日の朝ご飯はその動物のお肉かな!」
「そうだね、テリーお兄ちゃんにみんなで頼んでみようか」
「うん!」
「そのためにも、今は静かにしてないとね」
「「「はーい!」」」
アリアの言葉に手を上げて元気そうに答える。
しかし、これで騙せるのは小さい子供だけだった。
「アリア…」
「アリア姉さん…いったい何が起きてるんですか?」
小さい子供たちがいなくなった後、他の職員や上級生達がアリアに質問する。
「私が【通信】で話した時は明らかに戦闘中だったわ。テリーも【把握】で何かわかっているんじゃない?」
アリアがそう言うと集まっている人たちはテリーの方を見る。
テリーは下を向きながら答える。
「多分…ウルは勇者の力、さらに【精霊体】を使ってる」
「「「なっ…!?」」」
テリーの言葉に信じられないといった表情で皆一斉に驚いた。
それもそのはず、みんなウルの力を信頼していたからである。
「状況から勇者の力はわかっていたけど【精霊体】を使うほどなの?」
「僕の【把握】ですら戦闘のせいで妨害されてしまっている。詳しいことはわからない…でも!ウルなら絶対に勝つよ!」
テリーの言葉には何の根拠もなかった。しかしその根拠のない言葉をみんな信じていた。
それは魔族をも退けたウルの力に絶大な信頼を置いているからだった。
「そうだよね…ウルが負けるはずがない、私たちは信じて待ちましょう」
ありはそう言いながら孤児院の地下にある地下室からウルが戦っているであろう地上を見上げる。
そして手を合わせて神にウルの勝利を願っていた。目を瞑ったその瞬間…
「アリア!【把握】で戦闘は感じれなくなった、戦闘は終わったんだ!」
「ウルは!?ウルは無事なの?」
「【把握】で勇者の力を感じ取れる!ウルが勝ったんだ!」
テリーの言葉にみんな喜びすぐに外に向かった。
外はすでに明るく新しい日付になっていた。
「もう少しだ…ウルも怪我を負ってるかもしれない、急がないと!」
「そ、そうね!」
しかし怪我を考慮して小さい子供と上級生は孤児院においてアリアとテリーだけで向かった。
少し走るとついにハデスとウルの戦闘していた場所が見えてきた。
「ここらへんだ…」
「テリー!あそこ!」
少し遠くに砂煙が立ち何かの影が見える。
自分の目で確認したアリアは心底ほっとして砂煙に近づく。
「ウル!無事だったの…ね…」
「お前心配さ…せ」
砂煙が消えるとそこには確かにウルの姿があった。
しかしそれは元気な姿ではなく心臓を一突きされて生気のない目をしたウルだった。
「嘘だろ…?嘘って言えよ!お前が死んでたら何で勇者の力があるんだよ!」
「ウル!嘘でしょ?返事してよウル!」
テリーは倒れているウルを抱き寄せて揺さぶって声をかける。
アリアは信じられないといった表情で涙を流していた。
「そやつの仲間たちか?」
まだ消えていなかった砂煙からハデスがそう言いながら2人に近づく。
2人は怯えながらも睨み質問した。
「あなた!あなたがウルを殺したの!」
「そうだが」
「なんで、俺たちを狙うんだ!」
「そやつと同じ質問をするのだな、仕方ないから答えてやろう」
ハデスの言葉をつばを飲み込み心して二人は聞く準備をする。
「我がお前たちを殺したいと思ったからだ」
「は…?」
テリーはハデスの常軌を逸した言葉に意味がわからないといった声でそう言った。
アリアは怒りを表しながらハデスとウルの間に立つ。
「ウルはあなたみたいな人が殺していいような人じゃない!あなたみたいなクズが!」
「貴様も我をクズというか…どれ身の程を教えてやろう」
アリアの言葉に反応してハデスが攻撃を仕掛ける。
アリアは死を覚悟したように目を瞑る。しかしいつまでたっても痛みが来ることがなかったため恐る恐る目を開いた。
「ア、アリ…ア…早く子供たち連れて…に、逃げ…ろ…」
テリーはアリアとハデスの間に入り攻撃を妨害した。
しかしハデスの手はアリアには届かずともテリーの体は貫通した。
「テ、テリー?テリィー!」
「早く…逃げるんだ…」
「テリーも、テリーも一緒に…」
「俺はもう死ぬ…俺らの死を無駄にしないでくれ…」
「で、でも…「アリア!」」
テリーの最後の力を振り絞って声に驚き、その後、テリーの笑顔に涙を流しながらもアリアは孤児院に急いで向かった。
しかしハデスはテリーの体から手を引き抜きアリアに攻撃を仕掛けようとする。
「さ、させるか…よ!」
「クズが…我の邪魔をするな」
ハデスの腕にしがみつき何とか離れないようにするテリーをゴミを見るような目で見る。
そして地面に思いっきりテリーを叩きつける。しかしテリーは手を離さなかった。
「このクズ…邪魔をするなと言っているだろう!」
ハデスは少しばかり怒りをあらわにしてさらに強く何度もテリーを地面にたたきつける。
何回たたきつけられても話さなかったテリーも十回を行くあたりで絶命し腕を離した。
「ふぅ…時間を取られてしまったな、楽しくはないが仕方あるまい」
ハデスはため息をつきながらアリアに手を向けて【破壊】を発動しようとする。
しかし発動の瞬間に魔法がハデスの腕をづらしアリアに近くに合った木が腐り倒れた。
「…待っていれば会いに行くのにもかかわらず、待ちきれなくなってしまったのか?」
「あんたみたいなクズを招く予定はなかったわよ…レイド!」
「まったく今日はクズにクズ扱いされるのが随分と多いな」
シーカはハデスをレイドと勘違いして睨みつける。
セレナは死んでしまっている2人を一瞬で回収して遠くに避難させる。
「【瞬間移動】か、優秀な助手だ。クズにしては、だがな」
「レイド…あんた随分と雰囲気変わったね。もう一人の私から聞いた情報だと悪い奴だけど
孤児院を襲うほどクズだとは知らなかったわ」
「もう一人の私…そうかレイドは貴様ではない他の人格の貴様に復讐したいわけか」
「あなたも、二重人格だったとは知らなかったわ」
ハデスは頷きながら納得した。
シーカもレイドの名前を呼ぶレイドに違和感を覚えて自分と同じだと判断した。
「しかし、我の知ったことではないがな、どっちにしろ絶望を味あわせれば復讐は完了だろうに」
「あなたが何者か知らないけど、私の大事な子供を殺した罪、死んで償ってもらうわ!」
「少し予定が来るってしまったが、貴様を先に殺すことにしよう」
シーカとハデスは向き合いどちらも同時に臨戦態勢に入った。




