リックへの復讐(レイド編)
リックは静かに目を覚ました。
(ここはどこだ…俺は確か、レイドと戦って…)
リックは今現在の状況を把握するために周りの様子を見る。
その部屋は暗く怪しい雰囲気が漂っていた。
(足と手には鎖…な俺を殺さずにいったい何をしたいんだ?)
リックがこの後何をされるのかを考えていると暗闇の奥から木箱を持ったレイドが出てきた。
「起きたのか…」
「俺を生かして何のつもりだ」
「ただ殺されるだけで終わりだと思ったのか?」
レイドがそう言いながら木箱から様々な拷問器具を取り出す。
リックは拷問されることを覚悟する。
「俺を拷問で苦しめて殺すなら勝手にするんだな」
「…最初はそれも考えていたんだがな」
レイドはそう言いながら手に持った拷問器具を木箱の中に放り投げた。
そしてリックの髪をつかみ顔を覗き込む。
「その程度で許してやるほど甘さはお前らに取られちゃったみたいなんだわ」
「い、いったい何をするつもりだ」
レイドはリックの質問を笑いながらあしらい【空間倉庫】から50を超える中身の入った袋を取り出した。
リックはその中身を恐る恐るレイドに聞いた。
「そ、その中身は何だ?」
「お前が随分と寝ていたからな暇つぶしに取りに行ってきたんだ…お前のメンバーホームにな」
※メンバーホーム…20人を超える大型のクランで功績を認められた場合ギルド本部から支給される建物。
「なっ…!?」
レイドは理想通りの反応をしてくれたリックに袋の中身を目の前の机に並べていく。
その中身は…リックが率いているジュエリニアの篝火のメンバーの生首だった。
「き…貴様ぁぁ!」
リックは大事な仲間を殺した怒りによってあばれだす。
そんなリックを無視してレイドは黙々と首を並べる。
「冒険者のエリートとは言え、神の力の前では一時間もあれば殲滅できる」
「レイドォォ!よくも!よくも仲間を!」
「おいおい…」
レイドは生首を並べおえるとまたリックの髪をつかみ覗き込んで目を見ながら冷たく言う。
「仲間の俺を殺したお前に…仲間が殺されて怒る資格はない」
「…っ!」
レイドの言葉にリックは反論することができずに言葉を詰まらす。
そして何かを思い出したように凄まじい剣幕でレイドに問う。
「そ…そうだ!家族は…息子達と妻は…」
「あぁ…やっぱりそうか、生かしておいてよかった」
「い、生きて…生きているのか…?」
リックはレイドの言葉に安堵する。
そんなリックを横目にレイドは暗闇の奥からリックの家族を連れてきた。
その家族は木に釘で貼り付けられ耳栓と目隠し、口がふさがれていた。
「な…!?」
「生かしておいてよかった…より絶望を与えられる」
「レイド、頼む!家族には何の罪もない!俺は罪を認める!だから家族は…「黙りな」」
リックの懇願にいら立ちを覚えたレイドは顔を右手でつかみどすの利いた声で言った。
レイドは言っても静かにならないリックにあきれながら家族の口を解放した。
「痛い…怖いよ…助けて!助けてお父さん!」
「うぅぅ…痛い、やだ…死にたくない、助けて…パパ助けてよ」
「お願いします!子どもは…私はどうなってもいいので子どもだけは!」
「おまえら!今すぐ助けるからな!お父さんが助けてやるからな!」
苦しみ泣きながら助けを請う子どもたちと子どもの命だけは守ろうとする妻の様子を見たリックは
作り笑いをしながら聞こえるはずのない子供たちに声をかけた。
「いいねぇ…美しい家族愛だ…より壊したくなった」
「頼む、レイド!俺は何でもする…死ねと言うなら死ぬ。栄光を捨てろというなら捨てる!
だから家族だけは…家族だけは見逃してくれ…頼む…」
リックは頭をできる限り下げてレイドに頼む。
レイドはその様子を楽しそうに見て何かを閃いたかのように手を叩いた。
「そうだ…なら条件をつけよう。この家族の中で助けられるのは一人だけ」
「なっ…そ、そんなの決められるわけがないだろ!」
「うーん…確かにそれは一理ある。だから話し合って決めよう」
レイドはそう言って三人の目隠しと耳栓をはずした。
視覚と聴覚が戻った三人は今現在の状況を確認しようとして周りをきょろきょろと見た。
「お、お父さん!助けて!」
「パパ、怖いよ…助けて」
「あなた!無事だったのね…よかった」
「待ってろ、絶対に助けてやるからな!」
「あーあー、感動のシーンを邪魔して悪いんだが、リック早速決めてもらおうか」
リックと家族が感動の再会をしているその真中に割って入り
リックのほうを向いて決めるように促した。
「あなた…決めるって何を?」
「……」
「おいおい、奥さんのこと無視すんなよリック」
「あなた…」
「はぁ…仕方ない俺から言ってやるよ、この家族の中で一人だけ生かします。それをみんなで話し合って決める。ただそれだけ」
レイドが満面の笑みでリック家族に教える。
あまりの狂気じみた発想に驚いたリックの妻は声が出なかった。
「俺は寝てるから決めといてね」
そう言ってレイドはリックの目の前で眠りに就いた。
「パパ!今のうちだよ!こんな奴倒しちゃって!」
「そうだよ、お父さんならこんなやつぼこぼこでしょ!」
「……」
息子たちの期待のまなざしと希望に満ちた言葉がリックを逆に責めていた。
リックは息子たちに返事することができずに下を向いて黙っていた。
「パパ…?」
「お父さん…?」
「あなた、いったいこの人は…?」
「すまない…こいつにはお父さんじゃ倒せない」
いままで最強と信じていた父親の衝撃の言葉に息子たちはショックを受けていた。
妻だけはそれを悟っていたのかショックは受けてはいなかった様子だが不安は隠し切れていなかった。
「この人の言うことを聞くしかないの?」
「…なんとかして、子どもたちだけでも」
「リック…チャンスやろうか?」
レイドがいきなり目を開けてリックにそう話しかける。
リックはいきなりの言葉に驚きながらも繊細を聞いた。
「チャンスというのは…?」
「簡単な話だ…お前たちは子供だけでも生かしてほしいんだろ?」
「あ…あぁ」
「ならお前たち夫婦に試練をあたえる、それを突破できれば子どもたちは生かしてやろう」
「妻は関係な「あなた!」」
リックがレイドに文句を言おうとするとそれを邪魔するようにリックの妻が大声を出した。
今まで聞いたことのないような大声にびっくりしながらも妻のほうを向きなおした。
「子供たちが助かるなら私はなにがあっても大丈夫…大丈夫だから」
「うっ…わかった、レイドその試練っては一体…」
「そうだな…奥さんが縛られている木があるだろ?これは特別な木でな火をつければ消すまで永遠に燃え続けるんだ」
「ま、まさかお前!」
「この木をお前の魔法で燃やせ…お前は火のコントロールができる魔法があったはずだ、それで火の温度をコントロールして設定時間ずっと奥さんを死なせるな。
お前がちゃんとコントロールできれば死ななくて済む…時間はそうだな、俺の故郷を苦しめた時間だからだいたい、2時間ぐらいか」
(いかれてやがる…確かに俺の魔法は火の温度までコントロールできるが集中力が必要…二時間もできるのか?)
リックは心の中で自分の実力を疑いながらも家族のほうを見る。
その視線の先には決意した自分の愛する人、守るべき息子がいた。
(…できるかじゃない、やるしかない、俺は成長したんだ!あの時とは違うんだ、絶対に息子は助ける!)
こうしてリックと奥さんの試練は開始した。
本来コントロールする魔法はとても難しい魔法だったが決意したリックの集中力はすさまじく残り20分まで何の苦しみも与えていなかった。
「…つまらない、どうせなら俺も少し加わるか」
レイドはそう呟き最初に持ってきた木箱の中からペンチをとりだしてリックに近寄る。
そしてペンチで足の指の爪をはがし始めた。
「…ぐっ!?」
「きゃあぁぁぁぁ!」
爪をはがされた痛みにより集中が途切れたリックにより火のコントロールが解けてしまった。
魔法が無くなった火は奥さんの体を焼き始めた。リックは妻の悲鳴に反応してもう一度魔法をかけた。
「すまない!…集中だ、集中!」
「はぁはぁはぁ…あなた無理をしないでね、少しなら私も生きていられるから…」
「心配するなもう二度と魔法は「もう一枚~」…っ!?」
リックと奥さんが話している最中にレイドはもう一枚、爪をはがした。
しかし、今回は痛みで魔法を切らすことはなかった。
「…絶対に「もう一枚~」…ぅう、きらさない…安心しろ」
その後もレイドが足の爪、手の爪を次々とはがすもリックは一度も魔法を途切れさすことはなかった。
レイドはその様子に不満を持ちさらに激しい痛みを与えることにした。
「あと…あと、10分…」
「あなた…」
「ぱぱ…」
「お父さん…」
爪をはがされても自分たちの為に頑張るリックの姿に泣きながら応援する。
その様子が心底気に食わないレイドはのこぎりで足の指を切り始めた。
「グアァァァ!」
「あなた!キャアァァァ!」
爪をはがされる痛みとは秀はないレベルの痛みによりリックは魔法を切らしてしまう。
火が奥さんを燃やし始め叫び声が部屋に響いた。
「ァァ…す、すまな…アァァァ…い!」
謝りながら魔法をかけ始めようとするもレイドがのこぎりで足を切る痛みにより魔法どころではなった。
しかし、根性を入れなおして何とか魔法をとぎれとぎれでもかける。
「あぁ…これだよ、この声が聞きたかったんだよ!」
「あ…グゥウ…もう少し…アァァ…耐えてくれ!」
「キャアアアア!」
レイドは欲しがっていたおもちゃを与えられた子供のように楽しそうにリックの指を切って行った。
そして…その悪夢のような時間もリックの足の指が無くなると同時に終わりを告げた。
「はぁはぁはぁ…」
「おめでとう…時間は終了した、さて結果は自分の目で確かめようか」
レイドは魔法の炎を【魔滅剣】で消してリックの鎖をはずしてうなだれている奥さんの目の前に引っ張ってきた。
その奥さんの眼にはすでに生気がなかった。
「おめでとう!君は愛する人を殺した…殺人犯だ」
「あ…あ、アァァァ!!!」
愛すべき人を自分の力不足で殺してしまった衝撃に耐えきれず発狂を始めた。
あばれまわるリックを冷静にするために顔面を思ういっきり殴った。
「成長しても大事なものは守れなかったな…いまから目の前でさらに壊してやるよ」
「止めろぉぉぉ!」
「すこし黙ってみてな」
レイドは襲いかかってきたリックの腹に蹴りを入れて黙らせる。
そして木箱からナイフを取り出して子どものうちの一人に刺した。
「痛い!痛いよぉ!パパ、助けてよ!パパ!」
「グゥ…ゥオオオオ!レイドぉ!」
息子の助けを呼ぶ声によって起き上ったリックは無謀にもレイドに襲いかかる。
レイドは振り返り剣を抜いて両足アキレス健を切った。
「グァァァァ!」
「よし…これで君たちと遊べるよ」
「パパ!」
「お父さん!助けて!」
そうしてレイドはリックの息子たちにゆっくりと地獄を教えていった。
ナイフで刺し気絶しては刺しておこしを繰り返し一人は死んだ。
もう一人はゆっくりと腕と足をのこぎりで切られ痛みで絶命した。
「ふぅ…やっと終わった、ねぇお父さん、子どもたちが目の前で苦しめられる様子はどうだった?」
「…す、…ろす」
「何だって?」
「殺す!殺してやる!」
リックはレイドの顔面を見ながらそう泣きながら叫んだ。
その様子が心底おもしろいレイドは腹を抱えて笑った。
「いい…リック!俺はこのために契約したんだからな!」
「殺す…ころす…ころ……いや…ころしてくれ」
「はぁ、折れるのが少し早かったな、お前と家族を…あの世でも合わせるわけにはいかない」
「これ以上…なにを…」
「俺の能力には死んだあとに魂と肉体を使いその特性を生かした魔剣を作る能力が存在する。
その魔剣の力はその肉体や魂の強さに比例する。お前にはもう伸びしろがないからな、ここで俺の剣になってもらう」
「い、いやだ…せめて、せめてあの世に生かしてくれぇぇ!」
「安心しろ、ちゃんと愛用してやるからな」
レイドはそう呟いて剣でリックの心臓を一突きした。
これでレイドのリックに対する復讐が終わった。
「よし…反逆の力、今こそ解放しろ【勇者解放】」
レイドが力を解放して右目に神玉を出現させた。
そしてリックの死体に手を置き詠唱を唱え始めた。
「反逆の力、今こそ我の力になりすべし、剣の力に変へ、その力を貸したまへ【魔剣練成】」
リックの体がぐにゃぐにゃに変化して少しづつ剣の形になっていった。
そして出来上がった剣は紅く火を象徴するような剣だった。
「すこしは使えそうだな…」
レイドはそう呟いて新しい剣を【空間倉庫】にしまった。
そしてリックの仲間の生首と家族の死体に手をかざすと生首は黒い液体に変わり、地面に垂れていった。
『ふーん、家族たちは殺さずに逃したんだ』
「俺の復讐対象にこいつらは入っていない、悪であってもクズじゃダメなんだ……」
レイドはそう言ってリックへの復讐を完了した場所を後にした。




