復讐の理由(レイド編)
遅れてしまい申し訳ありません…
リックとレイドが睨みあいながら向き合う。
そのリックの横にはレイドにやられ気絶しているベールがいる。
「レイド、復讐をしに来たらしいじゃないか」
「よくわかってるじゃねぇか、リーヴァーからにでも聞いたか」
リックは倒れているベールを持ち上げながらレイドに問いかける。
「炎の精霊よ、力貸し目の前のモノ運びたまう、今こそその力を貸したまへ、上級炎魔法【炎搬】」
リックの魔法により空中に炎でできた舟が出現した。
ベールをその舟に乗せると舟は都市ジェネルへと向かって飛んで行った。
※都市ジェネルはシンが滞在している都市です。
「邪魔すると思ったんだが何もしないんだな」
「確かにあいつの首を見せつければお前に少しでも精神的なダメージを与えられるかもしれないが…
そんなことがどうでもよくなるほど、お前に早く復讐したいんだよ」
ケラケラと笑いながらレイドはうれしそうに言った。
リックはそんなレイドと対照的に悲しそうにしていた。
「お前が復讐を誓ったのは多分あのときだろう…俺はあの時お前を殺したのを後悔したことはない。
それは殺した時からずっとそれは正しい判断だと思っているからだ」
「くっくっくっ…そうか…そうだよな、お前は正しいと思うよな、そう考えるしかなかったんだよな…
そう考えなければおかしかったんだよな、俺が魔王との共闘者って考えるしかなかったんだよな」
そしてレイドは眼を瞑りながらあの時…魔王討伐の時を思い出す。
◆
二人の男と一人の幼女…その者たちの目線の先には豪華な服を聞いた角が生えた男。
勇者一行と魔王が玉座のある部屋にてにらみ合いをしている。
「よくきたな…レイドなしでは魔王城は少しばかり大変であっただろう」
「貴様!レイドをどこにやった!」
リックが魔王にそう叫んで問いかける。
魔王はそんな様子のリックを馬鹿にするように答える。
「あいつは随分と演技がうまいんだな…おい、こっちに来い」
魔王がそう言って手を叩くと玉座の後ろから突如としてレイドが現れた。
そのいきなりの登場に勇者一行は驚きを隠せなかった。
「お前何をしているんだ!」
「……」
リーヴァーがレイドに問いかける。
レイドはその問いかけに無視するように沈黙を貫いた。
「なぜ答えないのかしら」
勇者一行の一員の幼女が確認をするような声で問いかける。
レイドは「仕方ないなぁ」と言わんばかりの態度で答える。
「まだわからないのか、シーカ…俺は魔王の協力者だよ」
「「「なっ!?」」」
レイドの衝撃の発言に勇者一行は完全にパニック状態に陥った。
そんな様子を見ている魔王はその三人に提案をした。
「まぁそういうことだ…勇者の力がないお前たちの俺を倒すことはできない、レイドを信じ続けたお前たちは少しばかり同情する。
だからお前たちのことを形だけでも英雄にしてやろう」
魔王はそう言いながら【空間倉庫】から魔王の角に酷似した角を取り出して三人の前に投げた。
さらにレイドも右手を切り落として、布で包み三人に差し出した。
レイドはすぐに回復魔法を使い右手の復活させた。
「これを使えばお前たちは魔王を倒し、裏切り者の勇者までも倒した英雄だ」
「「「……」」」
三人は魔王の言葉を黙って聞く。
「しかしだな、少し厄介なことがあってな、レイドの故郷がどうしてもそれを否定するだろう。
あの村にはレイドのものか確かめる手段が存在してしまう。まぁ、つまりその村を滅ぼせばいいわけだ」
「なっ!そんなことができるわけがないだろ!」
リックが魔王の発言に手を大きく振って糾弾する。
しかし魔王は笑いながら話を続ける。
「なに、安心しろ…お前たちが滅ぼすのは魔族領の村だ」
「はぁ?レイド故郷が何で魔族領にあるんだよ」
魔王の発言にリーヴァーが悔い気味に質問する。
魔王はレイドに「教えてやれ」と言い、レイドは従うようにステータスを三人に見せた。
「な、なんで?」
「うそでしょ?」
「そんなばかな…」
三者三様の反応をしてレイドのステータスに驚く。
そこには知っているステータスはなく、種族には魔族と書かれていた。
「いままで俺はステータスを偽装していた、旅の途中でおかしいと思ったことがいくつかあるだろ?」
レイドのその言葉に三人はレイドとの戦闘の記憶をさかのぼりおかしいところを見つける。
三人は「たしかに…」といった様子で納得してしまった。
「魔族領の村を滅ぼしたところでお前たちはなにも非難されない、むしろ称賛されるかもしれない」
「けど…レイドはそれでいいのかよ!」
リーヴァーはレイドに個強が滅ぼされてもいいのかと聞くと
レイドは当たり前のことを言うように…
「あの村は邪魔なだけだ、俺の足を引っ張る存在はなにもいらない」
レイドのその冷たい言葉にこの状況が現実なんだと三人は認識した。
魔王はそんな様子の三人を楽しそうに見ながら手を叩いた。
「それじゃあ、頼んだぞ」
魔王のその言葉と共に得体の知れない未知の力が発動して三人は魔王城の入口の前に転移した。
三人はその信じられない現象に驚きその場に倒れてしまった。
「魔王はいつでも俺らを追い出せたんだ…」
「格が違いすぎた」
リックとリーヴァーがそう呟いた後に三人には沈黙の時間が流れた。
誰かが話を切り出さないか…それを三人とも待っている状態だった。
「どうするか…」
リーヴァーが勇気を出して話を切り出すと三人は様々なことを話し合った。
レイドのこと、村のこと、これからのことを…
◆
レイドは思い出すのを止めて眼を開きリックを見つめる。
「魔王の発言にたぶらかされ…俺の故郷を滅ぼした、随分と一方的だったらしいじゃないか。
さぞ楽しかっただろうな…裏切り者の俺の大事な人を殺したのは!」
「……」
「途中で俺は気がつき故郷に向かった…遅かった、何もかもな」
レイドは滅ぼされている故郷の様子を思い出しながらスタスタと歩きながら話し始めた。
手の中が切れて血が出るほど拳を強く握りながら。
「俺の知っている平和そうな村はそこには存在しなかった…あったのは村を燃やすお前の炎。
リーヴァーに切られ死体となった大人、魔法により無残な姿になった子ども。そんな地獄だけだった」
「……」
「意外だった…悲しみながら仕方なくやっているかと思えば、楽しそうに切った首を持っているリーヴァー、
楽しそうに子どもを実験体にしているシーカ、発狂しながら村を燃やしてるリック」
レイドは一瞬でリックに近寄り顔を急接近させて嫌味ったらしく言った。
「俺がお前らにつかみかかって聞いた…何があってこんなことになっているのかを。
お前らは全員口をそろえて「騙された」って言ったが…実は全員気が付いていたんだよな」
「……」
「リーヴァーは俺の偽物に渡された右手に刻まれた模様が消えていることに気がつき騙されていることを知った。
シーカは俺と魔王との戦闘を感知して気がついた。お前は俺の父親と母親の写真を見て俺が魔族ではないことに気がついた」
レイドはもう一度リックから離れてまたスタスタと歩きだして話し始めた。
その様子をリックはずっと黙って目で追いながら聞く。
「その段階で皆やめていれば…まだみんな助かった、しかし止めなかった。なぜだと思う?」
「……」
「答えは簡単だよな、気が付いていないことにしておけば楽だからだよな。
あのふざけた強さの魔王を倒さなくて済む…この村を壊すだけで栄光が待っている。
そしたら…壊すしかないよな、仕方ないよな、騙されたんだからなぁ!」
レイドは拳を握りつぶすほどの力でこぶしを握って声を荒げる。
その様子に怯える様子もなくリックは沈黙を貫いた。
「でも俺が来てしまった…殺すしかなかった、三人で話し合いその結論に至った。
唯でさえ三対一だ、少しは苦戦を強いられる。しかし負けることはなった…テメェらが
村人を使わなかったならなぁ!」
「……」
「俺は死んださ…確かに俺は死んだ、あの甘い俺はあの時お前らが殺した!」
レイドは強く荒げた声でそう言いながら剣を構えた。
リックもレイドに反応して鞘から剣を取り出した。
「言い訳を繰り返せよ…俺は正しかったって、正しいって。あの世でもずっと言い訳を繰り返してな!」
「こい…レイド、今度こそ正義を執行してやる」




