いいぞ、そうだもっとだ、もっと俺を楽しませろ ! お前もただの救助訓練ではないのだろ ?
「3」「2」「1」「ドッカーン」
「わーい」「なぜなにじえいたい」
「ちょっと質問があるんだけど、いい ?」
「えっ、お姉さんからの急な質問。いいぜ救助訓練の質問ならな」
「うん、救助訓練のことだから。それと一々カッコつけなんていいから」
「お、おう。そうか、じゃあ……言ってみそ」
「この救助訓練の前提は航海中足を滑らせてかどうかして、海に落ちた一人を助けるためにやっている訓練よね」
「あぁ、概ねその通りたけど」
「なら二人以上、数十人が並みにさらわれてかして落ちたらどうするの ?」
「ああそれね、それは冒頭にも言ってたよね。救助艇用意って」
「でも用意だけで実際に下ろしたり、それで人形を引き上げたりしてないわよね」
「うっ、痛い所を突いてくるなぁ。救助艇というのは内火艇のことで、外洋でこれを下ろすのは危険なんだ」
「どんな風に危険なの ?」
「まず外洋は『うねり』が大きいんだ」
「うねりは波とは違うの ?」
「まあ似たような物なんだけど、一般にうねりとは波と違い大きくてタスマン海峡行ったときうねりが酷かったな」
「ああ、いつも荒れている海ね。でどう酷かったの ?」
「艦の全長が百メートルで排水量が二千トンぐらいなんだけど、その艦がどえらく傾くんだ。それなのに波はない、表面はツルンとしている」
「傾くってどれぐらいなのかな」
「うん、当時右見張りだったんだけど手を伸ばせば海面にとどくかも。と思えるぐらいに、当然六ノットか八ノットで走ってるのにだよ」
「ほとんど九十度じゃない !」
「それでも立ち直るんだから凄いね護衛艦。おっと話がそれたね、外洋で内火艇を下ろすてぇ話だったね」
「日本近海じゃそんな大きなうねりは無いわよね」
「それは台風の時以外はないだろうね。でも止まっちゃうとうねりの影響をもろに受けてしまうんだ」
「左右にロールするのね」
「そう、だからそんな時に内火艇を下ろすのは危険な行為なんだ」
「どんな風に危険かというのは又来週ね」
「そう、それじゃあみんなー」
「「バイビーー」」
ガタンと終わりのフリップが落ちてくる。




