表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定】愛など初めからありませんが。(第一章完結、第二章準備中)  作者: ましろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/67

55.これからのこと(2)

「痛い痛い痛いっ!!」

「はい、お疲れ様でした。マッサージ終了ですよ~」

「先生のマッサージ、よく効くけど痛いわ!」


ダイアナさんが涙目でプリプリ怒っています。

話し合いから1週間ほど経ち、ようやく、リハビリを担当して下さる方が見つかりました。

エイドリアン・ブリュー、28歳の独身男性です。

最初に紹介された時は心配しました。駄女神の毒牙にかかってしまうのでは?と。

だって、エイドリアン略してエイディーは結構な美丈夫だったのです。

ですが……


「おーっほほほ!今までさぼっていたツケですわ!」


そう。中身は素敵なオネエ様なのでした。



ダイアナさんが変わったか否か。

それは、変わりたい気持ちのある甘ったれ。そんな感じです。

『見ていて子供達、私頑張るわ!』とリハビリを始め、5分で泣きが入る。そんな感じ。

ですが、意外な事に『もう無理』『死んじゃう』『痛い』とギャアギャア騒ぎながらも、最後までやり切っておりました。

まあ、どちらかというと、そんなダイアナさんに笑顔で付き合えるエイディーさんの方が凄いのですけど。


「アンタね、どれだけ自分を甘やかせたの?筋肉が拘縮してきてるし、股関節の稼働域も狭くなってるわよ!

義足の練習も全然だし、人生舐めてるの!?

30代で動けないお荷物になるつもり?人形なら美貌は永遠だけど、アンタは劣化する一方でしょう!

真面目にやらないと生ゴミと呼ぶわよっ!!」


初日から叱られまくり、ダイアナさんも逆らってはいけない人だと認識したようです。

甘ちゃんなダイアナさんにはぴったりの方だと言えるでしょう。


それから、3日前にダイアナさんのご両親が駆け付けました。ダイアナさんの顔を見るなり、


「この馬鹿娘がっ!!」


と、盛大な拳骨をお見舞いした子爵様と、


「どうしてアンタはそう甘ったれで考えなしなの!」


と、往復ビンタを食らわせた子爵夫人。


こんなに常識があって厳しそうなご両親なのに、どうしてダイアナさんがこう育ったのか本当に不思議です。


「伯爵夫人には大変ご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありません!」


子爵夫妻は私に土下座をしそうな勢いで謝罪して下さりました。

確かに、駆け落ちした前妻が戻って来て、今後も伯爵家から資金援助を受けるというのは非常識なのだろうなと思います。


「どうぞ頭を上げてください。ダイアナ様と話し合うべきだと勧めたのは私なのです。資金援助も子供達の為だと納得しております。ですから、これからの話し合いを致しましょう」


そこからは、『いえいえあり得ません、娘は連れて帰ります、修道院に入れます』と譲らず。

ああ、本当に真っ当な考えのご両親だわ、と可哀想になったほどです。


「子爵。どうか可愛い孫達の為に、彼女がやり直すチャンスを与えてもらえないだろうか」


旦那様も引き下がりません。何故なら子供達の希望を叶えたいからです。


「時々は会える?」


と、期待の眼差しを向けられれば、否とは言えません。


「もちろんだ。お前たちの為に頑張るのだから、成果を見せる必要があるだろう」


堂々とそう宣ったのです。だから絶対に約束は破れません。

事前に説得する為の資料を作っていた旦那様は、何とか子爵夫妻を納得させ、当初の予定通りに進める事が決まりました。

ダイアナさんは正式に子爵家から籍を抜き、平民となりました。


そして、ブレイズは。


「……この金額は……」

「1年間の君の生活費だ。家賃、光熱費、食費、被服類。まあ、一般的な金額だと思うが。ただ、家賃はあの家の立地がいいからな。買値から換算した金額なので、少し割高になるのは仕方が無いだろう。

駆け落ちの慰謝料を免除したのだ。感謝してほしいくらいだ」


借用書にはおよそ500万くらいの金額が記入されていました。


「分割返済も許そう。ああ、ダイアナと一緒になるなら、結婚は3年後だ」

「なぜ別れたくせに貴方が決めるんだ!」

「甘やかせる為に資金援助するわけではない。彼女が1人で生活し、仕事が出来るように支援するんだ。

お前と(ねんご)ろになってすべてが(おろそ)かになるなど(もっ)ての外だろう。そうしたら、彼女は横領の罪で捕らえることになっているからな」

「……この悪魔めっ!」


さすがダイアナさんと共に行動した悲劇2号。頭のおかしさが同じのようです。


「ブレイズさん、知ってます?貴方って極悪犯なのですよ?

貴方は伯爵夫人を(そそのか)して駆け落ちを促し、更にはお金を横領までさせて王都で豪遊していたのです。もし、ダイアナさんが亡くなっていたら、お金はすべて貴方の物だったでしょうね?」

「な、違うっ!私は本当にダイアナを愛しているんだ!」

「それなら、そう言えばよかったでしょう。旦那様に、どうしてもダイアナさんと一緒になりたい。許して欲しいと土下座でも何でもすればよかったのです。

そして、貴方だけの力でダイアナさんを支えればよかったでしょう?

それなのに、駆け落ちなんて卑怯な真似をして、そのくせ旦那様のお金で生活していたなんて。悪魔は貴方の方です。

旦那様、ブレイズは反省する気が無いようなので、憲兵に突き出していいんじゃないですか?この人がいなかったらダイアナさんだって駆け落ちなんかしなかったと思いますよ」


この二人の場合、どちらの方が悪いとは言い切れませんが、立場というものがあります。使用人が主人の妻を奪っておいて、さらに悪魔呼ばわりとはさすがに許しがたいですよ?






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ