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【書籍化決定】愛など初めからありませんが。(第一章完結、第二章準備中)  作者: ましろ


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37.持ち合わせのない感情

人生はままならない。


そんなにも長く生きたわけではありませんが、それでも、今までの人生で私が学んだことです。


私が望んだことなど本当にちっぽけなことで。

ただ、両親に褒めてほしいとか、可愛い娘だと言われたいとか……ただ、抱きしめてほしいとか。

ですが、それはとても難しく、手に入れることができないのだと、幼い頃に諦めました。

なぜなら、私は望まれた男児ではなく、父が望むような金髪碧眼でもない地味な女の子だったから。どう努力しても覆すことは不可能で、諦める以外、道はありませんでした。

それでも、私には弟のデイルがいました。

あの子だけは私に温もりをくれるのです。笑顔を見せ、姉さまはすごいと褒めてくれる。大好きだと抱きついてくる弟は私の救いでした。

あの子が本当に愛しくて。でも、あの子はお父様に愛されています。お母様も嫡男を産むことが出来た安堵でしょう。子供に対して愛情は無くても、ご自分の成果としてデイルには優しいお顔を向けていました。

私を幸せにしてくれる弟は、私に惨めさも教えてくれる存在でした。

でも、それは、あの子が悪いのでは無く、両親の心の有り様が問題なだけだと思うようになりました。

だって、可愛いデイルに悪いところなどないのです。では、何が悪くて、何が私を傷付けるのか。

犯人など、すぐに見つけてしまいました。

ああ、こんな人間にはなりたくないなと、人としての悪いお手本なのだと思うようになりました。

そうでも思わないと、私は生きていくのがつら過ぎたのかもしれません。可愛げがないと言われるのは仕方がなかったのでしょうね。

それからは、両親の愛は欲しいものではなくなりました。

デイルをこんな人間にしない。それが私の目標になりました。

両親は基本的に子どもの面倒は見ません。時折、勉強の様子を聞き、あの子の綺麗な笑顔を見て満足する。その程度でしたから、デイルがいつも一緒にいる私の言うことを聞くのは当たり前のことなのでした。

教えると言っても、思い遣りを忘れない。日々の努力を怠らない。その程度のことです。

それでも、あの子はずっと優しく、いい子のまま育ちました。

それが私の心の支えになっていました。

でも、そんなある日、私は、弟を守り、慈しみながら、本当は愛が欲しかった幼い自分を投影して可愛がっていただけの自己満足なのかもしれないということに気が付きました。

私はデイルに謝りました。だって私も結局は自分のことしか考えない狡い人間だったのです。


「何が駄目なの?自分のことみたいに大切にしてくれたのでしょう?」


デイルはそう言ってくれました。……そうなのでしょうか?その時の私は自分が信じられなくて、弟の前で泣いてしまいました。


「だって僕は姉様がいなかったら不幸だったよ?外見と男であることしか望まれてなくて、愛情なんてなくて、ふふっ、ついでにお金もないしね!

僕は姉様の愛で生き延びたんだ。ありがとう、僕を憎まないで愛してくれて。大好きだよ、ミッシェル姉様」


その後は二人で泣いてしまいました。

そうね。お互いにそれで幸せならば、もうそれでいい。

こうして、私は家族の愛という、すてきな宝物を手にすることができたのです。


つらつらと、意味不明なことを並び立てている自分に呆れます。だって。要するに、フェミィ様の爆弾処理ができない理由を人生を振り返ってまで言い訳しているのですから。


「誰が誰を好きですって?」


それは、親愛や家族愛ではないのですよね?

残念ながら、私の中にはその2つしか登録されていません。恋愛事情は本当に範疇外なのです。


それに……


旦那様はまずありえませんよね?愛はないけど、また、妻を失いたくなかったということでしょうか。

所有権の問題?それとも立場的にニ度目は恥ずかし過ぎるからかも。


ノーランは……何でしょう。

確かに、少し距離感がおかしいと思うことはあります。勝手に触れるし。なんなら抱きしめられたりもしました。

でもねえ。まったく甘さがありません。

よく分かりませんが、恋とは甘酸っぱいものなのでしょう?

ノーランは、強いて言えば兄?だって彼との触れ合いに、性的な危機を感じたことはありません。


「ねえ、ミッチェ」

「どうしました?コニー様」

「ミッチェのすきなひとってだあれ?」

「……なんのお話でしょうか」


あら?まさか考えてたことが口から出ていたりとか……いえ、絶対にありません。


「だって父さまふられちゃったのよ」


……旦那様?一体何を話したのですか。


「コニー。その面白そうなお話を詳しく教えてちょうだいな」


フェミィ様!どうして食い付くのですか!


「んとね。ぼくが、母さまとミッチェのどっちがすき?ってきいたの」

「……なぜ聞いちゃったのですか」

「それは男どうしのおはなしなのよ」


あ、その言葉が気に入ったのですね。可愛いです。


「それで?どっちが好きって?」

「2人にはきらわれてるからって。ほかにね、好きな人いるからっていってたよ。

だからね~、ミッチェがすきなのはだぁれ?」


コニー様が小悪魔に見える日が来るとは思いませんでした。何なら隣でニヤニヤしているフェミィ様もセットで小悪魔ですわ。


「……私が大好きなのはフェミィ様とコニー様です」

「コニー、諦めて。ミッチェはね、まだまだお子ちゃまなのよ。初恋もまだよ、きっと。もう人妻なのにね」


くっ、何も言い返せません。仕方がないのですよ。私の世界はとっても狭かったのです。家族愛以外知らないんですよ!

おかしいです。なぜ、昨夜から急に恋愛話が持ち上がるのですか。

旦那様……そう。旦那様のせいですね。


おのれ。私まで巻き添えにするとは許しがたいです。

絶対に今日、お話ししなくては!







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