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【書籍化決定】愛など初めからありませんが。(第一章完結、第二章準備中)  作者: ましろ


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27.遅ればせながらの祝福を

「ダイアナを寝かせたい。部屋の準備を」


第一声がそれですか。流石です。期待を裏切らない男ですね。


「グレン、待って。奥様に御挨拶を」

「いいから」


ねぇちょっと。ダイアナ様の言葉すら聞かないのですか?


「……ノーラン。どうやらここに人攫いがいるわ。通報なさい」

「畏まりました」

「はっ?!待てっ!まさか私のことかっ?!」

「他にいないでしょう、ノーラン早く」

「あの、人攫いではないので待ってください!」


さすがにダイアナ様が慌てて止めに入りました。

やっとお顔が見えました。旦那様より年上なはずですが、とってもお綺麗でお若く見えます。さすがは旦那様の女神様です。


「旦那様。貴方様がダイアナ様のお体を(おもんぱか)って移動の手伝いをするだけならば許します。

ですが、ダイアナ様の意思を無視して、旦那様の思う通りに連れ去るならば、それはただの人攫いです。通報の必要がありますわ」

「……は?」

「ダイアナ様は私に挨拶をと仰いました。彼女の今のお立場を考えれば当然のことです。

それなのに、旦那様はそれを無視して勝手に屋敷に運ぼうとなさっています。

それがダイアナ様を傷付ける行為だと、何故お分かりにならないのですか」


本当に視野が狭いというか、ダイアナ様の姿しか見えていないというか。体だけでなく、心を気遣えと言っているのですよ。


「ダイアナ様、私はミッシェルと申します。お部屋を用意してございますので、まずはそちらでお休みになられてください。お医者様は必要でしょうか?」


ダイアナ様には常識がおありなようですのに、このように旦那様に抱きかかえられたままということは、歩行が困難なのかもしれません。


「ミッシェル様、このような格好での挨拶になり申し訳ございません。

私はダイアナと申します。現在はただの平民ですので、呼び捨てで構いません。

王都の治癒院で薬を用意してもらっておりますので医師は不要ですわ。

突然の訪問をお許しくださりありがとうございます。お気遣いに感謝申し上げます」

「はい「何を言っている!?ここは君の家じゃないかっ!」


……本当に旦那様が邪魔ですね。


「旦那様、会話を遮らないでください。非常に迷惑ですし不愉快です。私だけでなく、ダイアナ様も同じお気持ちだと思いますよ」


そう言って睨み付けると、私とダイアナ様を交互に見てオロオロしています。これで三十二歳の伯爵なのだから世も末ですね。


「……もういいです。とりあえず、移動手段の旦那様はそのままポーラについて行ってください」

「旦那様、お部屋まで案内させていただきます」

「あ、ああ、頼む」


疲れる……とっても疲れます。何でしょうね、アレは。


旦那様に同行した侍従とメイドから詳しく話を聞かなくてはいけません。でも、その前に。


「さあ、フェミィ様、コニー様。中に入りましょう。馬車での長旅は疲れたでしょう?」

「あのね、べんきょうべや!」

「ミッチェ、先に勉強部屋に行きたいの!」

「?はい、ではそちらに参りましょうか」


なぜ勉強部屋?よく分かりませんが、必死なことだけは伝わりました。

歩きながらも、右手にフェミィ様、左手にコニー様にギュッとしがみつかれていて幸せいっぱいです。


「ミッチェ、きれいね」

「本当ね。私達がいなくても平気だった?」


もう、なんていじらしいのでしょうか。


「全然平気ではありませんでした。お二人がいないのが寂しくて大泣きしてしまいましたわ」

「ほんと?」「本当に?」

「ノーランに聞いてみてください。彼のシャツは私の涙でグチャグチャになりましたから」


あれは本当に申し訳なかったと思っています。鼻水は付かなかったはずですが……


「ぼくもね!とってもとってもさびしかったの!」

「……私もよ。早く家に……ミッチェのところに帰りたかった。だってあなたってば私達が大好きだもの」

「はい、お二人が大好きです。帰ってきてくださって本当に嬉しいですよ」


そんな告白を三人でしあいながら仲よく歩くこの至福……もう、旦那様もダイアナ様もどうでもいい気がします。


「まっててね!」

「入ってきたら駄目よ?」


お二人が勉強部屋に走って行かれました。

廊下にぽつんと残されるのは寂しいのですが。


ですが、すぐにお二人が出てきました。

そして。


「「ミッチェ、誕生日おめでとう!」」


満面の笑顔でのお祝いの言葉でした。


「これプレゼントッ!」

「こっちは私からよ」


何ということでしょう、お二人はずっと前からプレゼントを用意してくださっていたようです。


「ありがとうございます、開けてみてもいいですか?」

「もちろん!」


フェミィ様からの包みを開けると、綺麗なリボンが入っていました。リボンには金糸で私の名前とお花の刺繍がしてあります。


「まあ、もしかしてこの刺繍はフェミィ様が?」

「そうよ、頑張ったの!」

「とっても上手ですね。嬉しいです」

「しまったら駄目よ?ちゃんと使ってね?」

「はい、大切に使わせていただきますわ」


コニー様からはプレゼントは、色鮮やかで幸せそうな絵です。


「まあ!これは私ですか?」

「そうなの、これがミッチェでー、これが姉さま。こっちがぼくなの」

「上手に描けていますね。お花も明るいお色で綺麗です」

「父さまね、カブトムシになったんだ」


え?この黒い虫は旦那様なの?


「……カブト虫でいいのではないでしょうか」

「じゃ、これ虫さんね。父さまないないね」

「はい、ありがとうございます。お部屋に飾らせていただきますね」


いつの間にこんなにもすてきなプレゼントを用意してくださったのでしょうか。あ、勉強部屋ということは、まさか授業中に?

それは先生に申し訳なかったです。今度、お礼をいたしましょう。


「こんなに嬉しい誕生日は生まれて初めてです。本当にありがとうございます」

「遅くなっちゃったけどね」

「嬉しいからいいんです!一応、誕生日にケーキは食べましたし」

「え~!たべちゃったの?」

「はい、食べちゃいましたよ」


だってノーランが持ってくるのですもの。あれはヤケ食いというものでした。


「フェミィ様のお誕生日は一緒に食べましょうね」

「ぼくの!ぼくのたんじょうびも!」

「そうね、次は三人でお祝いよ」


あら?三人でいいのでしょうか。

どうやらフェミィ様も何やらお怒り中みたいです。





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― 新着の感想 ―
妻役って言ったり、妻であるかのように扱ったり、やっぱり妻じゃないって感じだったりこの男は最悪だと思う。子供たちとだけ仲良くしていけばいいんじゃないかな。
頑なに使用人役と言い張っていたのに、前妻が帰ってくるとなると手のひら返しで女主人ムーブか 正直主人公に同乗する気持ちが無くなる 子どもたちにあなた達の母親は一人だけだよと言っていたのはなんだったのか…
子どもたちは、お父さんがいなくてもミッシェルがいれば幸せそう(笑) パパ、とうとう虫扱いに w
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