41:共に在る
久しぶりに砂糖を書きたかったと供述しており...
月が昇り闇夜に己の存在を示しているのをレイルは窓から静かに見上げていた。
レイルは自らの手を見つめる、そこには人とは比べものにならないほど硬くなった爪と手の甲に僅かに浮き上がった鱗があった。
クロムバイトの血を浴びてからレイルは自身の中にある竜の血が更に強まったのが分かる、自身の魔力がより強大で複雑な色に変わったと実感があった。
(いずれ竜になる、か…)
強くなる事に未練はなかった、だが竜になるという事は人から外れ、下手すれば人よりも遥かに長い刻を生きるという事に他ならない。
この戦いが終わり、その先があったとしても自分がどうなるかレイルには分からないが先への不安が僅かに心にあった。
「レイル」
部屋へと戻ったセラがレイルの傍へと向かう、呼び掛けられて手を隠そうとするがそれを察したセラがレイルの手を取ると吐息が掛かるくらい近付ける。
「…また強くなってる」
「…そうだな、そろそろ人だと胸を張って言えなくなってきた」
観念したレイルがそう言うとセラは浮かび上がった鱗や硬くなった爪を愛でる様に触れる、むず痒い感触を堪えているとセラが口を開いた。
「怖い?」
「どうしてそう思う?」
「…不安そうな顔してたから」
「…怖くはないんだ、これからの戦いも自分が竜になる事にも…選んだのは自分自身だからな」
ただ、と付け加えてレイルは心の不安を話す、どことなく自身の情けなさを感じながら話しているとセラは徐にレイルを抱き締めた。
「え?」
「大丈夫、もしレイルが竜になっても私が傍にいる」
「だが…」
「先生の姿、疑問に思った事ない?」
突然の質問に少し意表を突かれるが言われてみれば確かに疑問が浮かぶ、40年前にライブス教皇達と共に戦っているのにその見た目は十代前半の少女なのだ。
「先生のあの姿は魔力で肉体を活性化させてるから、先生も歳は百から先は数えてないって言ってた」
「百…」
「ん、それで先生に聞いたら今の私にも充分使えるって教えてくれたの、だから…」
セラはそう言って区切ると抱擁を一層強くする、離すまいと言外に伝えてくる姿はひどく愛おしかった。
「大丈夫、どんなになってもレイルは独りじゃない、独りになんてさせてあげないから」
ふわりと浮かび向けられた微笑みにレイルは安堵すると同時に愛おしさが湧き上がってくる、気付けばセラの顔に手を添えて唇を重ね合わせていた。
「ん…」
僅かに零れる吐息すら逃さないとばかりにセラの唇を塞ぐ、最初はただ重ね合わせただけだったが次第にレイルの舌がセラの口の中へと入り込んで舌同士を絡めていた。
「…大きくなってる」
「…すまん、抑え切れなかった」
顔を離したセラが頬を朱に染めながら呟く、レイルの昂ったそれを認識しながら続ける。
「抑えなくて良いけど出来ればベッドの上が良い…」
「分かった、ただその前に…」
昂りを抑えながら再びセラを見つめる、している間はきちんと言えないからこそ、その前に伝えたかった。
「好きだ、セラがいてくれるなら…セラの為なら世界が敵に回ったとしても戦える、だからずっと傍にいて欲しい」
セラの手を取りながら想いを告げる、セラはそれに応える様に笑顔で返した。
「私もレイルが好き、今も、これから先も…レイルの傍にいる…レイルの傍はずっと私のものにさせて欲しい」
お互いの想いを吐露し合うとレイルはセラを抱えてベッドの上へと下ろすと再び唇を塞ぐ、そして月が姿を隠すまで部屋には二人が交じり合う音と互いを求め合う声が響いた…。
重い愛も受け入れたらただのいちゃラブ




