34:古竜墜ちる
空に起きている異変をクロムバイトも感じ取っていた。
「あれは…っ!」
上空で雷光を従える様に背負うレイルを見て気付く、エルグランドは倒せていた訳ではない、クロムバイトの一撃を受けた時に仮初めの体をほどいて展開していた雷雲の中で力を蓄えていたのだと。
地上からでもびりびりと体が震えるのが分かる、全盛を誇る今の肉体ですらあれを受けてはならないと警告を発していた。
「ちいっ!!?」
腕を掲げて魔術を構築する、するとクロムバイトの頭上には全てを呑み込むのではという規模の“黒水の月”が展開された。
その直後に“黒水の月”に向けて第一から第四の全てが掛け合わされた大規模な“絶凍地獄”が放たれる、黒い月は放たれた氷獄の嵐を呑み込むと収縮していき消え去った。
「…その魔術、規模や威力を関係なく無力化できるみたいだけど一度しか防げない上に貴方でも容易に発動できない、違う?」
「貴様ぁっ!!!」
「レイルの話と一度目にすればこれくらいの推測はつく」
セラの言う通り“黒水の月”の発動は容易ではない、重力魔術は強力な反面制御を誤れば術者に及ぶ危険が大きい魔術でもある。
自身を対象から外し自らに及ぶ攻撃のみを吸収するなど如何にクロムバイトと言えども再発動には相応の精神力や構築時間が必要になる。
セラがそう言うと同時に“氷獄王”が解除される、クロムバイトは翼を拡げて飛び立とうとする、自らに掛かる重力の方向を真横にして飛ぼうとするが地面から出てきた鎖がクロムバイトの全身に絡みつき鎖を魂達が掴んで抑えつける。
「亡霊共めがぁっ!!?」
全身の力を漲らせて自らを戒める鎖を力任せに引き千切る、その間も上空からの重圧は増していきクロムバイトに焦りをもたらした。
真横に向いた重力による落下の速度と飛翔の速度を掛け合わせて飛ぶ、巨体を音速に近い速さでクロムバイトはその場を離れようとする。
レイルは静かに剣をクロムバイトに向けると鋒から雷が放たれる、空を走る雷はクロムバイトの背中に突き立った剣へと落ちて全身に走った。
(っ!?まさか剣を残したのは偶然ではなくこの為か!!?)
クロムバイトの全身に走る雷とこれまでの蓄積されたダメージが動きを止める、その状態でもクロムバイトは地面を踏みしめてレイルを睨むと身を焦がされながらも魔力を集約させて漆黒のブレスを放った。
降り注ぐ雷を呑み込んでブレスがレイルに向かう、レイルは迫るブレスを意に介さず構えると雷光の尾を引いて急降下する。
雷光を纏って天を飛ぶその姿はまるで古き時代に語られし空を穿つ流星や天を裂く雷に例えられた竜を想起させた。
「竜剣術…」
ブレスとレイルの永劫争剣が衝突する、ダインスレイヴは雷光の中に紅い輝きを灯しながらブレスを斬り裂き蹴散らす、ブレスを斬り裂いたレイルはより速度を高めて一直線にクロムバイトへと向かった。
「おお…」
クロムバイトの隻眼にレイルの姿が映る、雷光を鱗の様に身に纏い、自身を斬り裂く剣を向けた竜の姿が…。
「『天裂穿牙』!!!」
ダインスレイヴがクロムバイトに振り下ろされる、鱗を裂き肉を斬り骨を断ったその一閃はクロムバイトの心臓にまで達した瞬間、戦場を強烈な閃光が包み込んだ…。
ようやく折り返し




